野球選手に必要なストレングストレーニング -その1-【トレーナーマニュアルvol.190】

初めに

こんにちは!
理学療法士として、千葉県で勤務しております
野坂光陽と言います!

現在は、理学療法士としてクリニックで勤務しながら
休日などを用いて、野球選手のパフォーマンスアップのために
パーソナルトレーニングを行っております。

また、先日NSCAという団体で
CSCS:Certified Strength and Conditioning Specialist
という資格を保持しております。

今回のメインどころとして
理学療法士の観点ではなく
CSCSの視点から、野球選手に必要な
ストレングストレーニング=筋力トレーニングについて
note記事にまとめていきます!

もちろん、身体の専門家である「理学療法士」としても
学ばせていただいているので、そちらの観点からも
ストレングストレーニングを紐解いていければと思います!

現在私はパーソナルトレーニング現場において
ストレングストレーニングのフォーム指導やプログラムデザインも
実施しております。

まだまだ学びの途中なので、情報不足であったり
間違った知識を公開してしまうかもしれませんので
もしこの記事をお読みになった方でご意見がある方は
遠慮なくコメントや私のSNS宛てにDMいただけると幸いです!

画像
画像

みなさんでよりよい知識を学び、選手に還元できるように
頑張っていきましょう💪

ストレングストレーニングとは

ストレングストレーニング=筋力トレーニング?

世間一般的に言われているのが「筋力トレーニング」という
言葉ではないでしょうか?

僕は小〜高校まで野球を続けてきた中で、
筋力トレーニング:筋トレというのは
腕立てや腹筋背筋、ウエイトトレーニングと
とりあえずなんでもかんでも身体を鍛えることを
筋トレと呼んでいましたし、考えていました。

そして、それは今考えるとそこまで深く考えられたものでなく
ある意味伝統的であり古典的でもある昔ながらのトレーニングが
実施されていたように思います。

専門的な勉強を行う中で、もちろんそれら伝統的かつ古典的な
方法が間違っているとは到底思えませんし、もちろんプログラムの中に
取り入れることがあるのでそれらを否定したいというわけではありません。

今回私がこの記事内でお話していく「ストレングストレーニング」とは
バーベルなどを取り扱う類のトレーニングであるとご容赦ください。

トレーニングという概念の再定義

どんなトレーニングにおいても、それ自体が目的化しないように
するべきだと考えています。

どういうことかと申し上げると、、、

プッシュアップ:腕立て伏せを例に取りましょう

これも私が現役時代のお話になりますが
プッシュアップをするのは、ただ純粋に数をこなし
腕を太くするものであると考えてひたすらやっていました

しかし、時代が進み専門的な学習をする中で
プッシュアップで得られる恩恵がどれだけのものであるかを
思い知らされることになります。

プッシュアップ(別法含む)で得られる恩恵
・頭部-体幹-下肢の安定性
・腹圧の安定化
・前鋸筋-上腕三頭筋-大胸筋の共同収縮
・肩甲帯の安定化
・RFDの向上
・Anti-Rotationでの肩甲帯や体幹の安定性強化

挙げられるように、プッシュアップの恩恵って
めちゃめちゃ多いです。

ただ単純にプッシュアップをこなすと、これはプッシュアップをするという
「目的化」となってしまい、恩恵はフルに受けられないでしょう。

上記の恩恵を考えながら、意識も変えながら行っていくと
プッシュアップが「手段化」します

手段としてトレーニングを実施できるようになると
「足りない、もしくは向上させたい機能や能力」を補うための
「手段」として「プッシュアップ」がトレーニングプログラムとして
選択されることになります。

この「目的化」と「手段化」の施行の違いが
トレーニングプログラムひとつを取り出しても
大きく違うことがご理解できたかと思います。

トレーニングは、足りないもしくは向上させるための
一つのツールであり、それを「手段化」することで
最大の恩恵を受けることができます。
そして、「手段化」するためには
指導側がもちろん圧倒的な知識量や情報量、勉強量を
積まなければならないのと、選手側もしっかりと
考え、自分で学び、行動していく必要があると考えています。

ストレングストレーニングの必要性

まず第一に挙げられるのは間違いなく
「筋力の向上」のほかありません。
そもそも、ストレングストレーニングの目的の最重要項目だからです。

ストレングストレーニングプログラムでは、ピリオダイゼーションに基づき
その期ごとにトレーニングの目的は変化しますが
それらを期分けしたものが下の写真になります。

画像
レジスタンストレーニングのためのピリオダイゼーション NSCAより

野球を例に出して説明をしていくと、冬のシーズンがピリダイゼーションでのオフシーズンになります。
ここでのレジスタンストレーニングの目的は
「筋肥大と筋力及び基礎筋力の向上」になります

上記のように、その期に応じたレジスタンストレーニングの目標地点が
異なります。
なので、シーズン通して一律のトレーニングプログラムを組むのではなく、
そして冬だからといってきつい練習ばかりをするのではなく
「その期に応じたトレーニングプログラムが存在している」と
ご周知いただければと思います。

基本的な流れとしては、
筋肥大(筋肉量)の向上⇨筋力の向上⇨筋力発揮速度の向上
といったような流れでトレーニングプログラムを形成しております

第一段階の筋肥大段階では、筋肉量を底上げしていくイメージです。
いわば、身体の土台作りをしていくようなイメージで大丈夫かと思います。

第二段階では、第一段階で筋肉の「量」を底上げしたので、
今度はそこに「筋力」という要素を付け加えていく作業になります。
力というのは、簡単にいうと
「どれだけ重い物を持ち上げられるかどうか?」という機能になります。

これは、筋肉の肥大による重さを持てるだけのキャパシティ:準備期間が
あることによるものが大きいです。

春先のキャンプでのニュースで、
「〇〇選手、今冬で体重が〇〇kg増えて。。。」
のようなニュースが出ると思いますが
これらは筋肉量が増加したのか、脂肪量が増加したのか
ちゃんと測定してみないことにはわかりませんが
この時期では「筋肉の量」の増加が重要であることが言えます。

そして筋力段階で得られた「重い物を持つ能力」から今度は
第一以降期及び試合期にて、
軽い負荷でも力発揮をしていく必要があると考えていく段階に入ります。

最終的にはボールという軽い質量のもの
または1000gくらいのバットを高速で動かすためには

1.まず筋肉量を増やす
2.増えた筋肉がしっかり機能するように重い物を持てるようにする
3.機能的になった筋肉が速い動きでも機能するように負荷を変化させる

この順番が重要になります!

ウエイトの恩恵1 エネルギーフロー

ストレングストレーニング(ウエイトトレーニング)を
行うことで得られる恩恵は、前項でお話した通り
最終的に、ボールやバットを高速で動かすために必要なことと
お伝えしました。

それ以外にも実はウエイトの恩恵があります。

それは、運動の効率化です。

ここから先は有料部分です

続きを読む

CIB Academyの挑戦-BAXIS-【トレーナーマニュアルvol.189】

いつもマガジンをお読みいただき、ありがとうございます。
C-I Baseballの佐藤康です。

C-I Baseballでは、
・トレーナー育成
・野球現場でのトレーニング指導
・野球の臨床専門領域での教育
・ジュニア世代を対象としたアカデミー事業

を行っております。

画像

トレーニング領域では、野球に特化し、Medical・Physical・Skillの分野を理解した理学療法士が監修したトレーニング内容を実際に現場で指導できる人材育成を目指しています。

小中学生を対象とした少人数制でのアカデミーでは、運動機能・成長発達に合わせた野球の競技に共通して求められる要素を中心に構成し、「野球特化型トレーニング」を提供しています。

アカデミー発足1年目である2024年は、
・基礎運動
・スローイング
・スイング
・スピードアジリティ

の4つのコースを3か月クールで進め、
各回ごとのフィジカルチェックを開催してきました。

画像

特に、成長の個人差・個体差の大きい小学生のパフォーマンスデータは、今日報告されているものも少なく、その基準づくりの1歩としても進めていきたいと考えており、活動をしています。


BAXIS-野球の軸を鍛える-

画像
2025年よりスタート

まず、はじめに
2025年より、当アカデミーのネーミングを「BAXIS」(ベクシス)といたしました。私たちの活動や形がこの名前の由来に込められております。

画像

B:Baseball(野球の)
AXIS:軸(C-I Baseballが目指す)
そしてXには”無限の可能性”をもつ選手の意が含まれています。

これらのワードを統合し、
「野球の軸を鍛え可能性を広げる」
ことが私たちが目指す思いです。

私たちが目指す“軸”というのは
アカデミーのコンセプトにもある
「基礎的な運動能力を向上する」
ことにあります。

つまり、基本動作を構築し、身体の土台となる機能・基礎運動能力の向上を図ることがねらいにあります。

画像

子供のうちから、ひとつの競技だけに特化した運動経験により、上のスライドにある”ピラミッド”の最上位にある「スキル」に偏ったパターンが多いといわれております。

競技技能を高める練習が優先されるのはもちろん大事なことですが、その根底にある運動要素が低い選手も実際に多くいることが現状です。

神経発達の著しい時期にスキルの土台となるさまざまな基礎運動能力を高める環境づくりの必要性を感じております。

私たちは、一般的な野球のアカデミーにあるような、スキルの指導ではなく、運動の土台となる部分を強化し、競技パフォーマンスに繋げることを目標としています。


Academy Training

C-I Baseballでは2024年1月C-I Baseball Academyの運営をスタートしました。
対象は野球チームに所属する小学5〜6年生・中学生とし、野球に必要な身体の基礎の構築を目的としたトレーニングを毎週1回提供しています。

下記の記事では、当アカデミープロジェクトの経緯などをご紹介しておりますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

U-12コース‐小学生‐

小学生クラスでは、
現在、小学3年生から6年生までの選手が参加しております。

小学生クラスでは、主に「基礎運動能力」
フォーカスした内容を構成しています。

画像

発達学的にも成長期における動作の習得には高校生や大人と比較し、基礎的な運動要素の経験が競技専門的な動きの習熟に密接にかかわっています。

すなわち、育成年代における取り組みとして、
基礎運動の構築・獲得の重要性が高いといえます。

様々な運動経験をすることが身体操作性、動きの自由度を高め、技術向上に繋げて行くことを目的にしています。

画像
フィジカルチェック:スピード・アジリティコース

今回は、スピードアジリティコースの一例をご紹介していきます。

ここから先は有料部分です

続きを読む

投球動作における胸椎伸展のstep②    ー コントロール編 ー【トレーナーマニュアルvol.188】

C−I Baseball2期生の戸高です。今回の配信はサポートメンバーシリーズとなります。 私が配信する内容としては「ピラティス【pilates】」というメソッドが1つのツールとして投球障害の治療、予防、パフォーマンスの … 続きを読む

中学生になる前の身体づくりで準備しておきたいこと-食事編-【トレーナーマニュアルvol.187】

はじめましての方も、以前の記事を読んでいただいた方もこんにちは。
福岡県でスポーツ栄養士×アスレティックトレーナーとして活動している後藤優子です。

福岡ではトレーナーやスポーツインストラクターを養成している専門学校での講師、こども食堂の運営サポート、市の離乳食教室&キッズクッキング教室、企業の健康支援でトレーニング指導、女性向けパーソナルトレーニングなどをおこなっていて、オンラインでは、千葉県のジュニアサッカークラブの食事サポートやダンスアカデミーの栄養学講座を担当しています。

また、食にまつわるイベント(農業体験、オリジナルスポーツドリンク作りなど)を開催したり、食育と運動をかけ合わせた遊びを考案してイベントに出店したりと、「楽しく学ぶ」をモットーに日々奮闘しているところです。

画像

自己紹介はこれぐらいにして、さっそく本題に入ります。

今回のテーマは「中学生になる前の身体づくりで準備しておきたいこと」を栄養学の観点からお伝えする、です。

中学進学、高校進学などのカテゴリが上がったタイミングでのケガや身体の不調が起こりやすく、それらをいかに防ぐことができるかは、選手としても長く野球を楽しんでいくためにもとても大切です。

トレーニングとあわせて食事にも意識を向け、皆さんの心身ともに健やかな野球ライフのお役に立てれば幸いです。

1.はじめに

身体づくりのお話しをするうえで必ず伝えていることがあります。

「なぜ食事が大切なのか?」

それは、野球の練習や持久力アップ、スピードアップのトレーニングをする前の段階までさかのぼります。

画像

厳しいトレーニングを支えるのは身体。
その身体をつくるための材料は食事(栄養)。

ケガや病気がない状態にする、体調や気分がよい状態を保つことを「コンディショニング」というのですが、食事はコンディショニングを支える土台になっています。

土台ということは、これをおろそかにすると、トレーニングや練習の成果が思ったように出ない状況に陥りやすくなります。

さらに、小学生から高校生の間は身体(見た目)が大きくなることはもちろん、からだの中も目まぐるしく変化している期間=成長期です。

そのため、食べているつもりでも食事量や必要な栄養素が不足しているなんてことも起こりがちです。

食事やトレーニングとあわせて忘れてはならないのが「休養(睡眠)」。
小学生は9~10時間、中学生は8~9時間の睡眠が必要とされています。

練習時間、塾などの習い事、ゲーム、動画視聴、スマホでのやり取りなど1日のスケジュールを見直して、まずは睡眠時間の確保を優先しましょう。


2.自分がとるべきエネルギー摂取量とは?

わたしたち栄養士は選手の食事サポートをおこなう際に、必ず「推定エネルギー必要量」というものを数パターン算出します。

その際に必須となる数字が体重です。
皆さんは体重をはかっていますか?

画像

成長が止まってしまった大人は、活動して消費したエネルギー量と食べ物や飲み物から得られる摂取エネルギー量を同等にして体重を維持することが求められますが、背が伸びる、筋肉がつくなど組織がどんどん大きくなる成長期にはそれではいけません。

では、いったいどれぐらい摂取すれば不足することがないのか、実際に計算してみましょう。推定エネルギー必要量の計算式は以下の通りです。

基礎代謝基準値×現在の体重×身体活動レベル+エネルギー蓄積量

用語の解説をしていきます。

①基礎代謝基準値
基礎代謝基準値とは体重1kgあたりの基礎代謝量の代表値のことで、年齢や性別で異なります。

※基礎代謝とは、ひとが生きるうえで必要な最小限のエネルギーのこと。

※数値は5年ごとに見直しがあり、現行は2020年版の食事摂取基準の数値を用いていますが、2025年版の食事摂取基準では、以下に紹介する数値が変わる可能性があります。

画像

②身体活動レベル
座位安静時を1.0としたときに、日常生活や運動、活発な活動が何倍にあたるかを示した数値のことで、年齢毎に数値が異なります。

ほぼ外出せずに家で座って過ごすことが多い場合は「低い」、通学や通勤、買い物、家事、散歩などはあるものの座っている時間が長い場合は「普通」、立ち仕事や頻繁にスポーツ活動を実施している場合は「高い」を選択します。クラブ活動や部活動をしているお子さんは「高い」に該当します。

画像

③エネルギー蓄積量
成長期には筋肉や骨などさまざまな組織が大きくなっていきます。そのために必要なエネルギーを「エネルギー蓄積量」といいます。

ここから先は有料部分です

続きを読む

投球の『回転数』について【トレーナーマニュアルvol.186】

C-I Baseball「トレーナーマニュアル」をご購読頂きありがとうございます。

C-I Baseballでは野球現場のトレーナー育成も行っています。

ホームページはこちらから。

C-I Baseball -野球の未来を現場から変えていく-c-ibaseball.com

CIBトレーナーマニュアルについて

①野球現場でのトレーナー活動
 チームトレーナー、育成年代への関わり、パフォーマンスについて

②臨床現場での選手への対応
 投球障害への対応、インソールからの介入

③ゲストライターによる投稿
 バイオメカニクス、栄養…など各分野の専門家の方が執筆しています

④C-I Baseballメンバーによる投稿
 2020年からC-I Baseballへ加入し育成メンバーとして活動していたメンバーがライターとして情報を発信しています。

C-I Baseballで学び、成長してメンバーの投稿もぜひお楽しみにしてください!

画像
画像

前回の私の担当記事は『球速』についての内容でした。

昔から、投げられたボールに対して「回転が綺麗」だとか、「回転が真っ直ぐ」などというフレーズは、野球経験者であれば聞いたことがあると思います。

しかし、長らくの間、それを数値化することは容易ではありませんでした。


現在、巷では、通常のスピードガンだけではなく、ラプソードやトラックマン等のトラッキングシステムが浸透してきています。

ラプソードHP

野球 – Rapsodo Japan (ラプソード)ラプソードの野球向け商品は、MLB全30球団、NPB10球団を始めとし、​国内でも社会人、大学、高校、中学硬式とアマチュアrapsodo.co.jp

トラックマンHP

トラックマン野球 – 練習用即座のフィードバックと業界でリードする正確なデータを使用して、練習を最適化します。 トラックマンであなたの技術を次のステーwww.trackman.com

私も2022年からラプソードを所有し、500人以上のピッチングデータを測定しています。

そこで、球速以外にも測定可能な項目があり、今回は、より『回転数』について掘り下げていき、野球の現場に関わる方々に『回転数』についての理解をより深めていただきたいと思います。

1. 「回転数」とは

「回転数」とは、ラプソードでは、投球されたボールが1分間に何回転したかを表し、RPM (Revolution per minute)という単位で示されます。

実際には、2000回転や、1500回転と表記されますが、リリースから捕手が摂るまでの、投球間に記録された回転数ではない点に注意が必要です。

NPB、MLBともにストレートの平均回転数は約2200から2300回転くらいとなっています。

しかし、それでも150km/hのボールで考えてみると、ざっくり計算でピッチャーの手からボールが離れて、ホームベースに到着するまでだと13回転(2000RPM)と16回転(2400RPM)と3回転しか違いません。

たった3回転、されど3回転ということでしょう。

ストレートに関しては、球速と回転数はある程度の相関は認められていて、球速が速いほど、回転数も多くなる傾向があります。

ここから先は有料部分です

続きを読む

AIをフル活用して論文を探す【トレーナーマニュアルvol.185】

C-I Baseball 3期生メンバーの三好航平と申します.
今回は2023年から開始したサポートメンバーによるnoteシリーズです.

これまでの私のnoteでは海外文献から得た知見として,英語論文を紹介するnoteを執筆させていただきました.

たくさんの方に読んでいただきありがとうございました.

今回,そして次回のnoteではそもそも「海外文献はどのように探しているか」「どのように読んでいるのか」という部分にフォーカスを当てて書かせていただこうかと思います.

海外文献を読んで最新の知見を知識にすることは重要であると考えるセラピストは多いかと思いますが,全編英語ということもありハードルが高いと感じるかもしれません.

私自身も英語自体は決して得意ではなく,文献を探す・読む上でなにかいい方法はないかと大学・大学院時代から模索していました.そんな時にAIを活用した文献検索,読解がかなり便利であることを発見しました.便利なツールを活用することにより,これまで以上に海外文献を探す・読むことのハードルが下がったと感じています.

今回のnoteでは,AIツールを最大限に活用した海外文献の探し方をご紹介させていただければと思います.

文献の探し方

私は文献の探し方には,大きく分けて2つのパターンがあると考えています.

ここから先は有料部分です

続きを読む

中学生になる前の身体づくりで準備しておきたいこと-食事編-【トレーナーマニュアルvol.183】

はじめましての方も、以前の記事を読んでいただいた方もこんにちは。福岡県でスポーツ栄養士×アスレティックトレーナーとして活動している後藤優子です。 福岡ではトレーナーやスポーツインストラクターを養成している専門学校での講師 … 続きを読む

腱板機能を全身から捉える~介入編~【トレーナーマニュアルvol.182】

こんにちは。
C-I Baseballの1期生の北山達也です。
今回はサポートメンバーからの投稿となります。

はじめに

私は日頃は整形外科病院に勤務しており外来診療において投球障害の選手を治療しています。
その中で腱板機能が低下している選手を多く経験します。
その低下している腱板機能を改善するにあたり、局所だけでなく全身から捉えることで改善することも経験します。

そこで前回は「腱板機能を全身から捉える」という内容でnoteを書かせてもらいました。


まだご覧になってない方はこちらからご覧ください。

また腱板の局所機能を改善する方法はこちらのnoteをご覧ください。

今回のnoteでは「腱板機能を全身から捉える」ことに対しての介入方法を中心に紹介していきたいと思います。

立位と座位での腱板機能評価

前回のnoteでも紹介しましたが、「腱板機能を全身から捉える」ためには、まず立位と座位で腱板機能を比較することが必須であると考えています。

臨床上、立位と座位で腱板機能が異なることはしばしば経験します。
この評価を実施することで、「下肢機能が腱板機能へ影響を与えているか」をスクリーニングすることができます。

画像

当然実際の野球動作は立位姿勢で行われるため、仮に腱板エクササイズをたくさん行ったとしても下肢機能の低下によって腱板機能が低下していた場合は、実際の野球動作でなかなか出力が改善してこないということが予測されます。

そのため下肢機能が腱板機能へ影響を与えていた場合は、速やかに改善する必要があると考えます。
ただし、座位で腱板機能が正常、立位で腱板機能が低下していた場合のみであり、座位と立位で両肢位とも腱板機能が同程度低下していた場合は局所機能を優先するべきだと考えています。

今回は全身から腱板機能を見る際の下肢機能と腱板機能の関連について、そしてそのあとに体幹機能と腱板機能の関連に着目して紹介していきます。

まずは以下のフローチャートに沿って、下肢機能が腱板機能へ影響を与えている場合について紹介していきます。

ここから先は有料部分です

続きを読む

投球障害肘~動的安定性と尺骨神経~【トレーナーマニュアルvol.181】

C-I Baseball「トレーナーマニュアル」をご購読頂きありがとうございます。

CIBのトレーナーマニュアルについて

①野球現場でのトレーナー活動
チームトレーナー、育成年代への関わり、パフォーマンスについて

②臨床現場での選手への対応
投球障害への対応、インソールからの介入

③ゲストライターによる投稿
 バイオメカニクス、栄養…など各分野の専門家の方が執筆しています

④C-I Baseballメンバーによる投稿
 2020年からC-I Baseballへ加入し育成メンバーとして活動していたメンバーがライターとして情報を発信しています。
C-I Baseballで学び、成長してメンバーの投稿もぜひお楽しみにしてください!

野球トレーナーマニュアル|C-I baseball|note【C-I Baseballトレーナーのトレーナーマニュアル】 投球障害肩・肘、腰痛、捻挫、肉離れ、下肢障害など野球におけるnote.com

画像

はじめに

野球選手の障害の中で多くは肩肘関節に多いですが、
一般的に肘関節に対する治療の多くは

”全身的なコンディショニング不良が原因なので、
       全身的な機能改善を図りましょう!”  私見

とすることが多いと思います。

もちろん、私もその意見に賛成です。
全身の機能が原因で、短軸しか動かない肘関節に屈曲伸展軸以外の動きが加わることで障害に至るということが多くはありますし、
障害予防としての観点でも非常に重要です。

画像

全身的に介入し、肘関節に少しでも負荷を少なくし、
もう次にケガをしないようにということです。

しかし、
中には局所的な機能低下が原因で
投球障害肘になっている選手もいる!と考えています!

全身の機能のみが原因だとしたら、
今まで肘なんて一度も痛くなったことのない、ピンピンした選手が一球のエピソードで内側部痛や内側側副靭帯損傷にいきなりなる!ということが考えにくいからです。
(もちろんその場合もありますが。。。)

ですので、
全身的な評価治療がもちろん重要だと考えた上で
しっかりと局所のことについても学んでいく必要があるかと思います。

その一助になれば幸いです。

投球障害肘とは

投球障害肘(Thrower’s Elbow)は、野球やソフトボールなど、繰り返し投球動作を行うスポーツ選手に多く見られる障害です。

いわゆる肘が痛くて投げられない選手のことすべてを指します。

特に、肘関節への過度な負担が原因で発生し、靱帯、軟骨、骨、神経などさまざまな組織に影響を及ぼします。

代表的な病態としては、図の通りに挙げられます。

画像

症状として、肘の痛み、可動域の制限、さらには筋力低下が挙げられます。

成長期の選手では、骨端線の損傷(リトルリーガーズエルボー)や離断性骨軟骨炎が多く見られます。

画像
画像
画像

一方で成人選手では内側側副靱帯(UCL)の損傷や尺骨神経障害が問題になるケースが増えます。

今回は、UCL損傷の原因となる内側の動的安定性についてと、尺骨神経障害について記載します。

動的安定性とは

肘関節における安定性とは、
外反ストレスに対して抗する力とすることができます。

安定性が低下すると、肘関節の内側裂隙が開き、靭帯損傷や尺骨神経障害が生じます。

エコーで観察するとこのように見えます。

動揺性ありと定義されるのは、左右差が3mm以上ある場合です。

画像
※伊藤恵康ほか:整・災外. 2003

投球においては、MERやBRに外反ストレスが強く働きます。

画像
※Fleisig GS, et al.: Biomechanics of the elbow during baseball pitching. Am J Sports Med, 23. 233-239, 1995 ※Solomito MJ, et al.: Elbow flexion post ball release is associated  with the elbow varus deceleration moments in baseball pitching. Sports Biomeca: 1-10, 2019.

『静的安定化』とは、肘の内側の靭帯のことを指し、自ら収縮できない組織が内側の関節を守ることを言います。

しかし、内側の靭帯の破断強度は、32Nmまでであり、
投球中の内側靭帯への負荷は34Nmであります。

上記のストレスをそのまま受けると、1球で肘の靭帯は壊れてしまいます。

画像
※Fleisig GS, et al.: Biomechanics of the elbow during baseball pitching. Am J Sports Med, 23. 233-239, 1995 ※Morrey DR, et al.: Articular and ligamentous contributions and motion analysis of the elbow joint. Am J Sports Med 11: 315-319, 1983

そこで、『動的安定性』が重要になっていきます。

「動的安定性」とは、肘を動かす筋肉や腱が協調的に働くことで、投球中の負荷に耐え、関節を安定させる機能を指します。

特に、前腕屈筋群や回内筋群の働きが、肘の内側を保護し、内側側副靱帯(UCL)の補助的な役割を果たします。

画像
※Otoshi Kenichi, et al.: Ultrasonographic assessment of the flexor pronator muscles as a dynamic stabilizer of the elbow against valgus force. Fukushima J. Med. Sci. 60, No2, 2014

投球時、肘には極めて高いストレスがかかり、特にリリース時にはUCLや筋肉の協調動作が重要になります。

動的安定性が低下すると、関節構造への負担が増大し、靱帯損傷や神経障害につながるリスクが高まります。
そのため、筋力や柔軟性の向上、動作解析による適切なフォーム修正も重要です。

局所的な内側の動的安定性の筋肉としては、
先行研究では、
・浅指屈筋
・円回内筋
・上腕筋
が言われています。

画像
※Shota Hoshika, et al.: Medial Elbow Anatomy: A Paradigm Shift for UCL Injury Prevention and Management. Clinical Anatomy 32:379–389. 2019 引用改変

いくつかの動的安定性に関する研究がありますが、そのほとんどが前腕回内屈筋群に関するものです。

では、他の筋はどうでしょうか?

我々の研究では、以下のような結果になりました。

我々の行った内側動的安定性の研究結果

肘関節の内側裂隙間距離がどの筋肉を収縮させたら狭くなるかを見た研究です。

画像

結果としては、以下の通りです。

ここから先は有料部分です

続きを読む

投球動作における鼠径部痛へのアプローチ -Groin pain syndrome 内転筋編-【トレーナーマニュアルvol.180】

トレーナーマニュアルにて定期的にnoteを投稿させていただくことになりました。
C-I Baseball サポートメンバーの 久我 友也 と申します。
私は整形外科クリニックで勤務しており、メディカルな視点でお話しさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

画像

今回の記事は
以前に投稿させていただきました
「投球動作における鼠径部痛の病態とアプローチ -Groin pain syndrome編-」の続編となります。
Groin pain syndromeについて、病態と病理解剖学的な評価方法を解説しておりますので、まだご覧になっていない方はぜひ下記のリンクからどうぞ!


本シリーズの記事では
野球選手の投球動作中に発生する鼠径部痛について、
現場で実践しやすい評価・実用的なアプローチ方法を解説していきます。

細かい病態や画像所見などは成書をご覧ください。
可能な限りのエビデンスや解剖に基づいた話をメインにさせて頂きます。

画像

はじめに

今回はタイトルにある通り
Groin pain syndromeの中でも
”内転筋” について話していきます。

まずは
なぜ ”内転筋” なのか。

Groin pain syndromeと内転筋について

Groin pain Syndromeの病態として画像所見でよく報告されているのは
以下のMRI所見があります。
・内転筋の恥骨付着部における高輝度像(Cleft sign)
・恥骨の骨髄浮腫(Bone marrow oedema)
・恥骨結合円板の突出(Central disk protrusion)

画像

Branci S, Thorborg K, Bech BH, Boesen M, Nielsen MB, Hölmich P. MRI findings in soccer players with long-standing adductor-related groin pain and asymptomatic controls. Br J Sports Med. 2015;49(10):681.

この中で”内転筋”そのものと関係があるのはやはり
内転筋の恥骨付着部における高輝度像である ”Cleft sign” です。

そのCleft signは2つにわけられています。
①恥骨上肢に生じるSuperior cleft sign(長内転筋の付着部)
②恥骨下肢に生じるSecondary cleft sign(短内転筋、薄筋の付着部)

画像

Byrne CA, Bowden DJ, Alkhayat A, Kavanagh EC, Eustace SJ. Sports-Related Groin Pain Secondary to Symphysis Pubis Disorders: Correlation Between MRI Findings and Outcome After Fluoroscopy-Guided Injection of Steroid and Local Anesthetic. Am J Roentgenol. 2017;209(2):380-388.

この所見は基本的には内転筋の付着部症(Enthesopathy)とされています。
他の部位でいうと、
・前腕伸筋群の付着部症:外側上顆炎
・アキレス腱の付着部症:アキレス腱の付着部症
と同様の病態として整理されています。

内転筋由来の鼠径部痛に関わるメカニカルストレスとは

ここから先は有料部分です

続きを読む