CIBトレーナーマニュアルについて
①野球現場でのトレーナー活動
チームトレーナー、育成年代への関わり、パフォーマンスについて
②臨床現場での選手への対応
投球障害への対応、インソールからの介入
③ゲストライターによる投稿
バイオメカニクス、栄養…など各分野の専門家の方が執筆しています
④C-I Baseballメンバーによる投稿
2020年からC-I Baseballへ加入し育成メンバーとして活動していたメンバーがライターとして情報を発信しています。
C-I Baseballで学び、成長していくメンバーの投稿もぜひお楽しみにしてください!
はじめに
今回のnoteでは体幹から上腕骨にかけて走行する広背筋をメインにトレーニングをご紹介できればと思います。
広背筋は上肢挙上位における肩関節伸展・内転・内旋に作用する筋であるため、加速フェーズ中に最も筋活動が高くなり、その後の減速フェーズ→フォロースルーまでその活動を維持しています。
投手のトレーニングで懸垂が大事!とよく言われているかと思います。
(実際私もMLB投手の筋肉を見たことがありますが、腋窩がとんでもなく太かったです。)
広背筋は投球動作における肩関節の主要な運動は内旋,内転であり,この関節運動に関わる筋としてこれまでにも投球側における筋厚の優位性が視診や超音波法により示されてきた.
King, J. W., Brelsford, H. J.,Tullos, H. S. (1969):Analysis of the pitching arm of the professional baseball pitcher. Clin Orthop Relat Res.67,116-123
MRI法や超音波法を用いた研究では,胸筋や広背筋において投球側の筋横断面積や筋厚が大きい.
長谷川伸, 小野高志(2012):野球投手の筋厚の 非対称性とボールスピードの関係.
体力科学,61(2), 227-235.
野球投手の背部では広背筋(投球側: 9.1±1.9mm,非投球側:8.4±1.6mm,p<0.05)の筋厚において投球側が非投球側に対して有意に高い値を示した.
一方,対照群では背部のいずれの筋においても利き腕側と非利き腕側の筋厚に差は見られなかった.
長谷川伸(2017):野球投手の体幹筋における形態的特性.
九共大紀要,7(2)
このように先行研究からも、投手の投球側広背筋の筋厚が非投球側と比べて高いことが報告されています。
広背筋の機能は,肩関節の内旋および内転であるが,投球スピードとそれらの筋力との間に相関関係が認められる.
Pawlowski D, Perrin DH (1989) Relationship between shoulder and elbow isokinetic peak torque, torque acceleration energy, average power, and total work and throwing velocity in intercollegiate pitchers. Athletic Training.24: 129-132.
球速にも影響を与えるため、投手であれば強化して動作の中で使えるようにしていきたい筋になります。
リハビリで用いる”脇”トレーニング
まず初めに、投球障害肩や投球障害肘を呈した選手に実施するエクササイズで重要なものをお伝えします。
広背筋の筋力強化ではありませんが、体幹から上肢を連動させて使うために必要なエクササイズだと考えているものになります。
投球動作で痛みが生じている場合、”このフェーズに来たら痛みが出る”と選手は分かっているため、動作中にどうしても頸部の緊張が入りやすかったり、僧帽筋上部や肩甲挙筋などの肩をすくめる作用のある筋群が収縮しがちになります。
|挙上位外旋→肘屈曲→肩甲骨後傾
このような場合、肩〜肩甲帯の上側ではなく体幹〜脇〜上肢へと繋がる筋群を促通していきます。
体幹と肩甲骨をfittingさせ、上肢への連動性を高めます。
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✍️方法
①挙上位外旋
・腹臥位で額を床やベッドに着き、バンザイした状態で肩関節を外旋させます。この時、脇腹に刺激が入っているの(小円筋の収縮/大円筋・広背筋の伸張感)を感じます。
②肘屈曲
・①の外旋をキープしたまま肘を屈曲させます。
③肩甲骨後傾:アッパー
・肘は約90°屈曲位とし、肩甲骨後傾・肩関節屈曲をします。
💡POINT
①挙上位外旋
・前腕の回外運動のみにならないよう、上腕骨が外旋するように行います。
②肘屈曲
・上腕骨の外旋をキープした状態で実施します。両腕が常に平行に動くようにしましょう。疲れてくると手と手が近づいてくるので注意です。
③肩甲骨後傾:アッパー
・胸椎伸展と肩甲骨後傾を引き出します。肩が内旋方向に動かないように注意します。
胸椎伸展や肩関節屈曲可動域が不足している場合、シュラッグ動作が出やすいため事前に機能を確認しておきましょう。
パフォーマンスアップのための広背筋トレーニング
ここからは、痛みのあるフェーズが過ぎ、球速アップなどの投球パフォーマンス向上につながると考えているトレーニングをいくつか紹介できればと思います。
今回は広背筋や体幹をターゲットにいくつかトレーニングのバリエーションをお伝えします。
|Pull Up
背中&脇トレの王道です。いわゆる”懸垂”になります。
💡POINT
・肩幅より広めにバーを握る(オーバーグリップ)。
・胸を張りながら体を引き上げる。しっかりと広背筋に負荷を乗せる。
・顎がバーを超えたら、ゆっくりと下がる。
・肩甲骨下制が解けて肩すくめ動作が過剰に入らないよう注意します。
純粋な広背筋の筋力強化の場合、動画のような肘完全伸展位からの懸垂(strict pull up)が最も効果的です。自重で余裕のある方は荷重をつけて実施してみるのも良いと思います。
できない選手はバンドを用いて負荷を下げたり🔽
ネガティブ動作の練習🔽をすると良いでしょう。
|Kipping
続いてはkipping(キッピング)になります。
こちらは学生の野球選手に私がよく指導しているトレーニングの一つです。
練習をする際はSupermanとHollow Holdを最初に行うと良いと思います。
〈Superman〉アーチポジション(Arch Position)の獲得
〈Hollow Body Hold〉ホローポジション(Hollow Position)の獲得
Kippingはこれらの動作の繰り返しになります。
1. アーチポジション(Arch Position)
✅ 胸を張り、肩をバーより前に出す
✅ 足を後ろに引いて、体を弓なりにする
✅ 肩甲骨を寄せて、バーを押すような感覚を持つ
👉 体が前方に振られる
2. ホローポジション(Hollow Position)
✅ 体を前に振り、足を前に出して体を丸める
✅ お腹を締めて、体幹をしっかり固定
✅ 腕はまっすぐ伸ばしたまま
👉 体が後方に振られる
投球動作は上肢を挙上した状態で、 胸椎の伸展や屈曲運動が生じます。
Kippingではバーを押す動作が含まれるので、CAT&DOG等では得られない、より投球動作に近い形での刺激を入れることができると考えています。
|Kipping Pull Up
strictの懸垂ができない選手や過剰にシュラッグ(肩をすくめる)動作が入ってしまう選手におすすめのやり方です。
ストリクトプルアップ(Strict Pull-up)と比べ、体の反動を使うことで腕や背中の疲労を軽減できます。
Kippingの勢いを使うことができるため通常のプルアップでは数回しかできない人でも、より多くの回数をこなせるようになります。
|Kipping Knee Raise
KippingをマスターしたらそのままKnee Raiseも実施してみましょう。
上肢挙上位での下腹部の強化にも繋がります。
目安としては膝が胸の位置までくるように反復させていきます。
|Toes to Bar
今回紹介した種目の中で最も難易度が高いトレーニングです。
主に腹筋(特に下腹部)、広背筋、前腕、体幹の安定性を鍛えるのに効果的です。
Kippingを用いたスイング動作につま先でのbar touchを付け加えます。
下腹部の強化に加え、体幹と下肢を繋げる大腰筋も鍛えることができるためおすすめのトレーニングです。
慣れてくると連続でこなせるようになってくるので、前述したトレーニングができるようになったら挑戦してみましょう。
まとめ
今回ご紹介したのはあくまでいくつかの例です。
選手の痛みや身体機能を考慮して適切なエクササイズ・トレーニングをチョイスしてみてください。
トレーニングの引き出しが一つでも増えれば嬉しいです。
今後ともC-I Baseballを宜しくお願い致します。
ライタープロフィール
🖋Writer|新海 貴史(Shinkai Takafumi)
🏥MTXスポーツ・関節クリニック
⚾️MTX ACADEMY [ATHLETIC FIELD]
理学療法士
📍臨床班:投球障害肘担当
📱X:newnewsea
Instagram:taka_shinkai

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