野球選手の足関節捻挫の病態と動作【トレーナーマニュアル16】

C-I baseballの病態・動作の発信を担当する小林弘幸です。

スポーツDrと一緒にエコーを用いて、選手の病態を理解し
障害の原因追及を大切にしています。

病態を理解することによって、医療機関と現場との橋渡し的な役割を果たすことができると思います。

基本的な部分ですが、なるべくわかりやすく発信していきたいと思います。

捻挫の概論

足関節捻挫は、スポーツ選手であれば重軽症に関わらなければ、
誰もが経験したことがあるのではないでしょうか?

足関節捻挫の中でも圧倒的に多い割合を占めるのが内返し捻挫であり、
足関節にみられる全外傷のうち約75%を占めるといわれています。

※Garrick, J. G. : The frequency of injury, mechanism of injury, and epidemiology of ankle sprains. Arn J Sports Med. 5(6) : 241-242, 1977

青年期に多く発症し、足関節捻挫の約半数が10~20歳代前半に集中しています。
ジャンプや切り返しが多いスポーツであるバスケットやサッカーにおいて
発症率が多いとされています。

・捻挫の約半数が10~20歳代前半に集中している

※Waterman BR Owens BD, Davey S, et al. The epidemiology of ankle sprains in the United States. J Bone Joint Surg Am 2010 : 92 : 2279-84

・ジャンプや切り返し動作中に発症することが多く、バスケットボール中に起こる全外傷中の約45%、サッカーの約31%を占める

※Ekstrand J, Tropp H. The incidence of ankle sprains in soccer. Foot Ankle 1990 ; 11 : 414.

野球においては、スライディングや、バットやボールを踏んでしまうこと、ベースの端を踏んでしまい受傷することが考えられます。
スライディング時の受傷は、骨折を伴うことが多いとされています。

※浅井忍ほか:野球のスライディングによる足関節果部骨折. 東日本スポーツ医学研究会会誌 3: 200-203, 1981

野球では、他のスポーツと異なり、金属の刃がついたスパイクが使用されます。非常に引っ掛かりが強いので、ケガの予防・パフォーマンス向上に向けて、刃の形状にも着目すべきと考えます。

人工芝と天然芝とで、スパイクの引っ掛かりも違うので、
リスクファクターとなり得ます。

捻挫は発生率や再発率の非常に高い疾患であり、そのまま放置しておくと
慢性足関節不安定症(Chronic ankle instability: CAI)へと発展してしまい、
慢性的な疼痛、パフォーマンス低下を引き起こすことが考えられます。

CAIは、距骨下関節の安定性が重要であると報告されています。

しっかりと病態把握をしていき、
再発予防や、症状改善に努めていくことがトレーナーとしての役割かと考えます。

足関節の解剖

外反捻挫において、間違いなく理解しなくてはならないのが、
足関節外側靭帯であり、

・前距腓靭帯(ATFL)
・後距腓靭帯(PTFL)
・踵腓靭帯(CFL)

の3つに靭帯から構成されます。

※熊井司ほか:足関節捻挫の病態. MB Orlhop. 18 (11) : 1-9, 2005
図を引用改変

後に、足関節捻挫の分類ということで述べますが、
ATFLとCFLの正確な評価ができるか否かで分類のGradeが変化してきます。

正確な解剖をこちらで理解しましょう。

〇前距腓靭帯:ATFL

ATFLは距腿関節の関節包の一部を担い、関節包靭帯と呼ばれることが知られています。

付着部は、腓骨前結節遠位から距骨外側突起遠位となります。

靭帯の走行からもわかるように、足関節底屈内反で最も伸張されるので、
その肢位で受傷します。

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