投球動作とコレクティブエクササイズ【トレーナーマニュアルvol.163】

こんにちは!
C-I Baseball サポートメンバーの野坂光陽と言います。

現在は理学療法士として整形外科のクリニックで勤務しながら
野球選手のために日々情報発信をしたり、CIBでサポートしている
大学野球部のトレーニング指導をしています!

NoteやXでは理学療法士向けの記事を書いていたり
instagramでは実際のトレーニング動画を日々更新中です!

もしよろしければそちらのチェック、フォローもよろしくお願いいたします!

今回の記事の内容

今回の記事の内容として、投球動作における
「コレクティブエクササイズ」についてテキストと画像、動画にて
記事にしていきます!

昨今SNSではトレーニング、エクササイズについての情報が
たくさん出回っており、情報過多であるのが現状です
その中で、我々理学療法士やトレーナー、指導者には
「選手に適切なエクササイズの指導」が出来るかどうかという
スキルが非常に重要になってきていると考えています

私もSNSで発信する中で、万人ウケするようなエクササイズではなく
必要な人に対して届いてほしいという願いを込めて
日々情報を発信していますし、不利益にならないように
自分で吟味し、実際に自分が行った上で
情報を鵜呑みにしない姿勢が重要かと考えています。


なので、今回ご紹介するエクササイズについても
この記事内で学んだことは、実際に読者の方が
自分でやってみる」ことを強くお勧めします

その中で、
目の前の選手に対してためになるか、
有効になるかどうかを

初めて吟味できると思います。

この記事を読んで、一人でも多くの選手が救われ
一人でも多くの指導者のお役に立てるようであれば幸いです!

それでは内容に移っていきます!!

コレクティブエクササイズとは?

コレクティブ:Correctiveとは

コレクティブエクササイズとはなんなのかという説明と定義を
先にお話しする必要があります。

コレクティブとは
corrective:(形式))[形]
1 矯正(きょうせい)する,正しくする
2 中和する

といったような意味合いを持ちます

つまり、エクササイズにて動きをコレクティブする
つまり動作を正しくする、是正するといったものを
コレクティブエクササイズと言います

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通常のエクササイズとは何が異なるのか?

どんなスポーツ選手にとっても共通なのが
競技に対して能力を向上させるときには
トレーニング、エクササイズというものはスキルの土台となる
とても重要な要素であることは間違いないかと思います。

その中で、トレーニングやエクササイズの位置付けとして

✅ストレングストレーニング
・・・神経的要素や筋肉量、筋断面積を向上させることにより
パフォーマンスを向上させる目的で実施する

✅ストレッチ
・・・スタティックストレッチやダイナミックストレッチなど
筋肉の柔軟性や関節の可動域を改善させ、パフォーマンスを改善させる
目的で実施する

✅スキルトレーニング
・・・競技特異的(競技特有の体の使い方や意識の仕方など)スキルの
向上を目的に実施されるもの

✅ヨガ、ピラティス
・・・自分の身体の感覚を研ぎ澄まし、感覚閾値を上げ
動作におけるパフォーマンスの向上を図るもの

トレーニングやエクササイズはその目的や方法によって
多義に渡ります。

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その中の一つに、コレクティブエクササイズというものが存在しますし
どちらかというと、フィジカル(身体的要素)を加味した中で
選手のスキルをどうやって上げていくかという部分の
橋渡しという位置付けでイメージしていただいた方が良いかも
しれません。

これらを実施する目的の最終地点は
選手のパフォーマンスアップに他なりません。

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パフォーマンスアップとは何かと一言で言い表すことは
なかなか難しいですが、最終的には選手が試合で
結果を残せるように、下準備をしていく必要があるということです。

個別性とコレクティブエクササイズ

さて、コレクティブエクササイズとはどんなものなのか
どういった位置付けで行なっていくかという概要がお伝えできたところで
さらに深掘りをしていきたいと思います。

結論、選手個々でコレクティブエクササイズの内容は変化していきます。

というのも、コレクティブエクササイズというのは
パフォーマンススキルで問題、異常があった場合に
フィジカル面に何か問題、是正する必要がある場合の
橋渡しとなるものであると前述しました。

例えば、投球動作内で「リリースの力強さ」
具体的に言えば、
・上肢の振りをもっと加速させたい
・リリースの瞬間の力発揮を強くしたい
・0 position(肩関節が安定し、最も力発揮しやすい角度)でリリースしたい
など、要望であったり達成したいものがあった場合に
コレクティブエクササイズでそれらを修正、是正していくことを
イメージしていただくといいかと思います。


また、投球動作時の並進運動についても
・股関節の可動域を上げたい
・並進速度を速くしたい
・並進運動から回転運動の速度を高めたい

あげればキリがないくらい、動作の修正って出てくるものであり
その動きを修正、是正することが「コレクティブエクササイズ」
になります。

しかも、これは選手個々で伸ばすべきポイントとその優先順位が
変動することがあります。

可動域に問題があるのか
筋出力に問題があるのか
動作の感覚に問題があるのか
怪我による影響でそのパフォーマンスが発揮できない状態なのか

選手によって、問題点や是正する点はオーバーラップしていることは
十分にありますが、動作を見て、問診をして
優先順位をつけてアプローチをするということが
非常に重要であると考えています。

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そして、上記した問題点の列挙でお気づきかもしれませんが
コレクティブエクササイズというのは概念であり
選手によっては筋力トレーニングがコレクティブエクササイズに
なり得るし、ストレッチがコレクティブになり得るし
もちろん感覚値の向上がコレクティブになるといったもので
どんなトレーニングでも選手にとっては「コレクティブ」な
トレーニングになり得るということです。

そういったものを念頭に置いて
この先も読み進めていっていただけると幸いです。

投球動作における「修正点」

アトラクターを考える

フラン・ボッシュ著 コンテクスチュアルトレーニングに
記されているように、スポーツ動作には
アトラクターとフラクチュエーターという概念が存在します。

アトラクターとは、
ある動作において、どの選手にも共通して
出現する動きのことを言います。

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なぜアトラクターを重視するのか?

アトラクターというのは、いわゆる動作における
パフォーマンスの高い選手の共通項という意味合いがあります。

野球選手、特に投手においては
「打者を打ち取り、得点されることなく勝利に導く」
ことが最優先事項となります。

球速アップもそうですし、コントロールも良くならないといけない。
効率よく投球することで疲労軽減につながり、自身が重ねられる
投球回数や投球数も多くないといけない。
さらには、怪我を防ぐという側面も考慮される必要があるので
投手に求められることって非常に多い現実があります。

そこで、理学療法士やトレーナーの役割としては
上記した達成すべき目標や課題に対して選手を誘導できるだけの
能力や知識が必要になるのと同時に
選手自身がその能力を高めていく必要があります。

トレーナーや指導者、理学療法士が出来るのは
効率の良さ、身体機能の向上の手助けである。
ということで、向上するためには、アトラクターという概念を知り
その共通項を知る必要があるということです。

アトラクターには、参考書籍から引用できるものとして
9つの分類がなされています。

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定位能力を高める‐成長期のトレーニング-【トレーナーマニュアルvol.162】

いつもお読みいただき、ありがとうございます。C-I Baseballの佐藤です。 C-I Baseballでは2024.1月より東京都内で小学生を対象にしたアカデミー事業を運営しております。2022年からは東京都内のリト … 続きを読む

野球選手に多い姿勢の特徴と改善エクササイズ【トレーナーマニュアルvol.161】

C−I Baseball2期生の戸高です。
今回の配信はサポートメンバーシリーズとなります。

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私が配信する内容としては「ピラティス【pilates】」というメソッドが1つのツールとして投球障害の治療、予防、パフォーマンスの向上にどう活かしていくかに焦点をあてて、配信させていただいております!

今回は「野球選手の姿勢」について解説していきます。
姿勢の重要性からエクササイズという流れになっていますので、エクササイズから読みたいって方は飛んでいただければと思います。

姿勢の重要性

野球に限らず、あらゆるスポーツにおいて体幹の重要性が広く認識されています。体幹の強化は、姿勢の改善だけでなく、パフォーマンス向上や怪我の予防にも繋がります。

姿勢と怪我との関連

姿勢が重要な理由の一つは怪我との関連があります。
姿勢と腰痛に関しては多くの方がご存知かと思います。
しかし、姿勢と肩・肘痛となるとあまりトピックとならないので結びつかない可能性もあります。

松井らの報告によると、中学生では上肢下垂位での腰椎前弯角度の増大高校生では上肢下垂位から上肢挙上位の胸椎伸展の変化減少を認めたと報告され、肘関節痛との関連性を報告しています。

肘:理学初見陽性を陽性群としたときの姿勢変化
・中学生は下垂時での腰椎前弯角において健常群21.9±8.8度、陽性群28.5±10.8度であり、陽性群が高値を示した。
・高校生は胸椎後弯角において、下垂時と挙上時の変化量が健常群11.6±7.8度、陽性群8.1±7.1度であり、陽性群が有意に低値を示した。

中・高校生野球選手における姿勢と肘関節痛との関係.日本肘関節学会.2018

この報告からも後ほど姿勢の特徴でお伝えしますが、胸椎後弯姿勢、腰椎前弯の増加姿勢を取る選手は肘痛のリスクがあることがわかるかと思います。

この理由としては、以前もお伝えしたように投球動作には胸椎の伸展が必要です。
腰椎前弯が増大すると胸椎はバランスを取るために後弯しますので胸椎の伸展は出づらくなります。この胸椎伸展につきまして今後のnoteで獲得するステップやエクササイズ方法などをお伝えできればと思います。

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