野球選手に意外と多いTFCC損傷【トレーナーマニュアルvol.165】

今回から配信メンバーとして活動させていただきます、三輪智輝と申します。
最初の投稿ということで自己紹介させていただきます。

<経歴>
-2021 広島大学医学部保健学科理学療法学専攻卒業
2021- 整形メディカルプラザ
2021- メディカルベース新小岩
2023- 北砂リトルトレーナー
2023- 共栄大学硬式野球部トレーナー
2023- 若手セラピストの学校 代表

<活動歴>
理学療法に関する講師:20件以上
学会発表:5回
所属学会:日本肩関節学会 日本肘関節学会 日本整形超音波学会 日本臨床スポーツ医学会
論文:
❶ボールの握り方の違いによる投球時の肘外反トルクと投球動作,Jounal of athletic rehabilitation,No.18(1) ,P17-24,2021
❷超音波画像診断装置による浅指屈筋筋腹の収縮動態の検討,日本肘関節学会雑誌,30(2),P293-297,2023

自分自身、幼稚園から大学まで野球をし肘関節内側側副靱帯損傷を経験しました。怪我による痛みを少しでも和らげられるように、そして全野球選手が笑顔で野球ができるように尽力していきたいという思いの元に活動しております。
長くなりましたが、今後もライターとして携わらせていただきますので、何卒よろしくお願いいたします。

▼ここから本題です。

本日は意外と現場で多く経験するTFCC損傷について、概要をまとめていきたいと思います。

1. TFCCとは

TFCCとは、三角線維軟骨複合体(Traiangular Fibro Cartilage Complex)のことを指し、複雑な構造をこのようなひとまとまりの組織のように表現しています。

そのため牽制されることが多いが、この記事ではできるだけわかりやすく構造・病態・病態把握について説明していきます。

TFCCは、手関節尺側に位置する構造物のことを指します。

🔻TFCCの前額面イメージ

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🔻TFCCの冠状断イメージ

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主に三角線維軟骨円板(TFC)を中心に、橈尺靱帯(RUL)、TFC周囲の靱帯組織(尺側側副靱帯:UCL、尺骨月状骨靱帯:ULL、尺骨三角骨靱帯:UTL、尺側手根伸筋:ECUなど)が隣接しています。
これらをまとめてTFC complex➡︎TFCCと呼ばれています。

2. TFCC損傷のメカニズム

解剖のおさらいができたところで実際に現場で対峙するTFCC損傷はどのようなメカニズムで起きるのでしょうか?

TFCCの損傷メカニズムには、これまでに様々な報告がなされています。
まとめると以下のようになっています。

❶尺側手根関節にかかる圧縮応力の増加(尺屈)
❷遠位橈尺関節(DRUJ)の不安定性による回内・外ストレス
❸橈骨遠位端骨折・体操競技のようなDRUJへの外傷性引張負荷
❹ラケット・バットスイングのような尺屈・回内応力の増加 など

このようにTFCCの損傷メカニズムは多岐にわたることが考えられます。
これら一つ一つのストレスを画像を用いて整理していきます。

❶尺側手根関節にかかる圧縮応力の増加(尺屈)

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❷遠位橈尺関節(DRUJ)の不安定性による回内・外ストレス

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TFCC損傷によってDRUJが不安定になることがわかっており、前腕の回内・外に伴って尺骨が背側・外側に移動してしまうことがわかっています。

❸橈骨遠位端骨折のようなDRUJへの外傷性引張負荷

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❹ラケット・バットスイングのような尺屈・回内応力の増加

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先行研究では、前腕の回内運動で背側橈尺靱帯は緊張し、掌側橈尺靱帯は弛緩することがわかっています。そのため、バッティング動作時には尺側への圧縮応力に加え、背側組織が緊張することが考えられます。

また野球に特化したTFCC損傷に言及します。
特に野球で起きる急性損傷は、
バットスイング(特に内角球スイング時)やヘッドスライディング時に見られるとされています。

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3. TFCC損傷 病態

今まで述べてきたようにTFCCは、
尺側手根関節・遠位橈尺関節で起きる運動により損傷することがわかりました。
それではそのメカニカルストレスによってどこに病変が起きるのでしょうか?

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最大外旋時の肩前上方部痛に対するアプローチ例【トレーナーマニュアルvol.164】

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CIBトレーナーマニュアルについて

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 チームトレーナー、育成年代への関わり、パフォーマンスについて

②臨床現場での選手への対応
 投球障害への対応、インソールからの介入

③ゲストライターによる投稿
 バイオメカニクス、栄養…など各分野の専門家の方が執筆しています

④C-I Baseballメンバーによる投稿
 2020年からC-I Baseballへ加入し育成メンバーとして活動していたメンバーがライターとして情報を発信しています。
C-I Baseballで学び、成長してメンバーの投稿もぜひお楽しみにしてください!

野球トレーナーマニュアル|C-I baseball|note

はじめに

今回は投球動作における最大外旋位での肩関節前上方部の痛み、特に上腕二頭筋腱(以下、LHB)の痛みの対処法の一つをご紹介できればと思います。

基本的に肩関節後方タイトネスや下方タイトネスが強い場合、その対側である前方や上方に骨頭が偏位することによりストレスが生じ、痛みが出るケースが多いです。
そのため、介入の初期は優先的にそれらの問題を解決することが望ましいです。

後下方の柔軟性が出ても痛みが解決しない場合や、肩甲骨の運動に問題があるケースは今回のnoteが参考になるかもしれません。

評価

圧痛
上腕二頭筋長頭腱を触診し、圧痛を評価します。
※三角筋前部筋内腱の痛みと混同しないよう注意が必要
前腕の回内外をしながら二頭筋腱をしっかりと触知してください。

MER再現痛

最大外旋位を再現してもらい、肩前上方に疼痛が出現するか確認します。

外旋の作り方がポイントになります。
肩前上方部痛を訴える選手に多いパターンは肩甲骨挙上・前傾、肩関節より肘関節が下に来る(肘下がり)、骨頭前上方突き上げストレスです。

参考動画⏬
良い外旋と悪い外旋

しっかりと肩甲骨下制・外転・上方回旋が作れているかを必ず確認します。
この肩甲骨の動きができていれば肩関節外旋に伴って肘は上がってくるはずです。

|肩屈曲90°出力

LHBの炎症があったり、三角筋前部線維と上腕二頭筋の滑走不全があったりする場合、肩関節屈曲90°でのMMTを実施した際に肩前上方に疼痛を訴える場合が多いので評価していきます。

もちろん体幹や肩甲帯のstability不良や腱板の筋力低下でも左右差が生じることがあるのでそれらの評価も併せて行い、複合的に判断するのが良いと思います。

|背臥位肩関節伸展ROM

三角筋前部線維と上腕二頭筋の滑走不全が生じて肩関節伸展制限を生じているケースがありますので伸展可動域も確認しておきましょう。
投手であれば理想は他動伸展80-90°を目標値としています。

徒手治療

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