スクワット動作獲得のためのMobility Drill【トレーナーマニュアルvol.203】

はじめに

野球に関わらずほぼ全てのアスリートにおいて、トレーニングでスクワットを行うと思います。
正しくスクワット動作が遂行できない場合、腰や膝を痛めたり重量が伸びにくかったりします。

今回はスクワット動作が正しく行えるようになるためのモビリティドリルやそのチェック方法をいくつかご紹介できればと思います。

スクワットの深さと筋活動

スクワットは深さによって名称が異なります。
1.クォータースクワット(Quarter Squat)
 ●膝の角度:おおよそ 45度程度
 膝が少し曲がる程度。しゃがみが浅い。

2.ハーフスクワット(Half Squat)
 ●膝の角度:おおよそ 90度

3.パラレルスクワット(Parallel Squat)
 ●特徴股関節(大腿骨上部)と膝が同じ高さになる程度

4.フルスクワット(Full Squat)/ディープスクワット(Deep Squat)

 ●膝の角度:90度以下、股関節が膝より下にくる
 しゃがみきる動作に近い。可動域が最大。
 ●用途:可動域の改善、柔軟性向上、筋力・筋肥大向上に効果的。

ストレングストレーニングとして行う場合、基本的には4のフルスクワットを推奨しています。(競技特性上、体幹の剛性を一時的に高めたい場合などは別)

フルスクワットで可動域を求めた方が浅いスクワットよりも臀筋群、大腿部への筋肥大効果が高いことは先行研究でも報告がなされています。

スクワットの深さ(浅い、パラレル、深い)と足幅(標準、広い、最も広い)が大腿四頭筋の筋活動に与える影響を調査。結果、スクワットの深さが増すほど大腿四頭筋の筋活動が増加し、足幅の違いによる有意な差は見られなかった。

Matt Denning, Brad Gardiner, Tyler Standifird, Lauren Williams. Does Squat Depth and Width Influence Quadriceps Activation?. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2019

異なるスクワットの深さ(最大膝屈曲と90°膝屈曲)および負荷(体重、50% 1RM、80% 1RM)が下肢筋の筋活動に与える影響を調査。結果、深いスクワットと高負荷条件で大腿四頭筋、ハムストリングス、臀筋の筋活動が有意に増加した。

Zachary Sievert, Joshua T. Weinhandl, Stacie I. Ringleb, Laura C. Hill​. The Effects of Squat Depth on Electromyography of Lower Extremity Muscles. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2016

深いスクワット動作と股関節、膝関節、足関節の可動域および筋力との関係を調査。結果、深いスクワットを行うことで、これらの関節の可動域と筋力が向上することが示された。

The Relationship Between the Deep Squat Movement and the Hip, Knee and Ankle Range of Motion and Muscle Strength. Journal of Physical Therapy Science. 2020

今回はフルスクワットに焦点を当てて、深いスクワットを獲得するためのドリルを紹介していきます。

Mobility Check&Drill

World Greatest Stretch

股関節屈曲開排位における体幹前傾機能を獲得するために行います。
✅Check Point
・肘が床に付くか
・脊柱は屈曲しすぎていないか
・足関節の真上に膝関節がきている(もしくはやや膝が外に位置)状態でできているか

回旋動作を省き、モビリティを見てみましょう。
横から評価すると分かりやすいと思います。脊柱が過度に丸まっていない状態で、膝よりも体幹を低くすることができれば十分な可動性があるといえます。そのままストレッチとしても実施可能です。

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野球選手に必要なストレングストレーニング -その2-【トレーナーマニュアルvol.202】

最初に

みなさんこんにちは!
理学療法士として、神奈川県と東京都で勤務している
野坂と言います!

また、先日NSCAという団体で
CSCS:Certified Strength and Conditioning Specialist
という資格を取得させていただきました!

今回のメインどころとして、前回の僕の記事と同様になりますが
理学療法士の観点ではなくCSCSの視点から、野球選手に必要な
ストレングストレーニング=筋力トレーニングについて
このnote記事にまとめていきます!

もちろん、身体の専門家である「理学療法士」としても
学ばせていただいているので、そちらの観点からも
ストレングストレーニングを紐解いていければと思います!

まだまだ学びの途中なので、情報不足であったり
間違った知識を公開してしまうかもしれませんので
もしこの記事をお読みになった方でご意見がある方は
遠慮なくコメントや私のSNS宛てにDMいただけると幸いです!

画像
X: ko_yo_1101 で検索!
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インスタグラム:k_nosaka_pt で検索!

ストレングストレーニングについての概要は、前回の僕の記事の最初で
触れているので、そちらから読んでいただけるとこの記事もさらに
楽しめるかと思います!
下記よりご覧いただき、このパート2もご覧ください!

このnoteの意味合いについて

僕が現役だった10数年前は、筋トレ=きつい。質より量。限界まで頑張る
といったいわば根性論であったり、根拠の全くない「古典的かつ伝統的」な
トレーニングが主流だったと記憶しております。

また、現代でもそのようなチームは多い印象はあります。

しかし、現代はテクノロジーが発展し、パフォーマンスの高い選手は
どこの筋力が高いかというデータもすごい数の論文が裏付けています。

そして、そのデータを基に「パフォーマンスコーチ」なる人たちが
選手に介入したり、チーム契約をしていたりと、僕が現役の時では
考えられないくらい時代は進んでいます。

SNSやそういった人たちの存在、機材や環境の発展により
選手や保護者、指導者がすごく知識を持って一丸となって指導や
練習に励んでいるところを考えると、我々トレーナー業を営む人間としては
しっかりとした知識を持ち合わせていることが前提条件となります。

なので我々は常に学び続けていく必要があります。

今回はそれらの知識を皆さんと共有できたらと思い、書いていますので
最後で読んでみてください!

ストレングストレーニングの目標とは?

除脂肪体重を上げよ!!

結論としてストレングストレーニングの目標は、筋肉量を上げていくこと
つまり、除脂肪体重を上げることにあります。

除脂肪体重とは、体重から脂肪の量を除した値つまり筋肉量になります。
厳密には、計算上では内臓などの重量を引くことができないので
より正しい数値は、体組成計という器具を用いて測定することで
算出されるものにはなりますが、おおまかな計算は行うことができます。

除脂肪体重=体重-(体重✖︎体脂肪率:これが体脂肪量になる)で算出できます。

データでは、この除脂肪体重が現在のトレンドになっていますし
選手や指導者には、この言葉をぜひ使ってほしいです。

野球選手に必要なトレーニング 投手ステップ足編

論文から見る必要なトレーニング部位について

まず、いい投手(球速の速い投手)の特徴といえば「下半身が太い」
これに尽きるのではないでしょうか?
それは今も昔も変わらないことだと思います。

僕も現役時代は、「いい選手ほどケツや太ももがでかいんだぞ!!」と
言われていました。笑
ただ、どんなトレーニングをしたらいいのかわかりませんでしたが。。。

とにかく、投手はまず下半身を鍛えるのがマストになります!

データとしても、とある集団の身体各部位の太さを計測したところ
球速が速い投手ほど下肢の筋肉量が多く、大腿部や
下腿(ふくらはぎ)が太いということがわかっています。

投球動作は並進+回旋である

速いボールを投げるということは、ほとんどの野球選手が
憧れ、それを目標に練習に励んでいるのではないでしょうか?

投球動作は、ワインドアップから始まる一連の動作の中で
いかにパワーを生み出し、下肢から上肢、そして指先さらには
ボールまで伝え、最大限の出力でボールを投球するか?
という、動きは大きいですが緻密なスポーツ(動作)に
なります。

ここで重要なのは、投球動作というのは
並進運動と回転運動の切り返しという点です。

投球動作をその動作で分解をしていきます。

投球動作を分解する時には
ワインドアップ
アーリーコッキング
レイトコッキング
アクセラレーション
減速期
に分けることが一般的なので、こちらで説明をしていきます。

画像

スライドにお示ししている通り、投球動作というのは
フェーズわけをすると、レイトコッキングで並進運動から
回転運動に切り替わると考えられます。

並進運動と回転運動は似て非なるもの。
力の方向が全く異なるものになるので、ここでの
パワー伝達がうまくいくかいかないかで
パフォーマンスに大きく影響を及ぼすと考えられます。

切り替えには「止まるための軸」が必要!

止まるための軸、つまりは動作の切り替えのための
「変化点」が必要となります。

ここで重要なのはズバリ「ステップ足の股関節」です。

並進運動で生まれた力(パワー)を回転運動に変換するためには
ステップ足での減速動作が重要となります。

並進運動で生じたエネルギーは、軸足の減速動作(ストップ動作)
によって回転運動に変換され、このタイミングで上肢に伝達されます。

よってこの減速動作を生じさせ、転換点となるステップ足の
下半身周りの力は非常に重要となるわけです!

並進から回転運動に繋げるにはどんな力が必要なのか?

並進運動を回転運動に変換させるためには
並進方向の力を止められるだけの力が必要となります。

不良な動作としては、並進運動がステップ足で止められない結果
ステップ足の膝が回転運動を始めるタイミングでも
屈曲方向(膝が前に曲がってしまう動き)が出てしまうことです。

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