投球障害肩に潜む「不安定性」を見抜く— 評価とリハビリテーションの視点から

はじめに

投球動作は、肩関節にとって非常に高い可動域と爆発的なスピード、そして再現性が求められる特殊な運動です。

肩の痛みを訴える野球選手の多くが、「腱板炎」「関節唇損傷」「インピンジメント」といった明確な構造的病変がなくとも、違和感や痛みを訴えるケースがあります。

こうした背景には、
“肩の機能的な不安定性”が隠れている場合が少なくありません。

再現性がはっきりしないような症状。このような症状には不安定性が隠れていることが多いと考えています。

病態と症状が同じにならないということは以前から報告されています。

病態がある方といって、症状があるとは限らないのです。

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明らかな既往障害のない14名の投手の非投球側含めた28肩中、79%に関節唇の異常所見が認められた。

※Miniaci A, et al.: Magnetic Resonance Imaging of the Shoulder in Asymptomatic Professional Baseball Pitchers. Am J Sports Med, 30(1): 66-73, 2002

本稿では、投球障害肩の「不安定性」に着目し、その評価と治療アプローチをエビデンスベースで記載、整理していきます。

「肩の不安定性」とは何か?

肩関節の不安定性とは、肩甲骨の関節窩に対して上腕骨頭の位置保持がうまくいかず、動作中に「ズレる」「抜けそうになる」といった感覚が生じる状態を指します。

もしくは自覚症状が全くないものの、肩関節の不安定性があることから、肩関節内で骨や軟部組織がぶつかりメカニカルストレスが生じてしまうことで肩関節内の症状を誘発してしまうことがあります。

いわゆる、肩甲上腕関節の求心位が逸脱してしまうということです。

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外傷による明確な脱臼や関節唇損傷を伴うケースとは異なり、投球動作の繰り返しで徐々に関節包や靱帯が伸び、“マイクロインスタビリティ(micro instability)”という軽度な不安定性が生じるパターンが多く見られます。これは、特にコッキング期〜加速期にかけての最大外旋位において、肩関節前方に過剰な剪断力が加わることによって誘発されます。

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マイクロインスタビリティを起因とした病態として、関節内インピンジメントである、”後上方インピンジメント(PSI)”が挙げられます。

PSIの病態として、上腕骨頭が前方へ変位してしまい、後方の関節部分で衝突してしまい、後方の軟部組織を痛めてしまうという病態に繋がります。

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※ Walch G.,et al.: Impingement of the deep surface of the supraspinatus tendon on the posterosuperior glenoid rim: An arthroscopic study. J Shoulder Elbow Surg, 1992; 1: 238-245. 参考に引用作図

一見、肩の可動域は広く、筋力も保たれているように見えるものの、「投げると痛い」「肩が抜けそう」といった訴えが出るのが
肩の不安定を起因として病態の特徴です。

野球選手特有の肩の”緩さ”とは?

オーバーヘッド選手、特に野球選手における肩の緩さは数多く報告されています。

投球動作における肩関節のmicro instability(微細不安定性)は、主に外転・外旋の反復ストレスにより前関節包や靭帯が伸張されることで生じる後天的な現象です。

この理論はJobeらによって提唱され、特に野球選手のようなオーバーヘッドアスリートで顕著に観察されます。

以下では、このメカニズムを解剖学的・生物力学的観点から整理し、関連研究を基に補足します。

投球アスリートにおける前方型肩関節不安定性は、治療上の大きな課題である。

※Jobe FW, et al.: Am J Sports Med. 1991

前方の亜脱臼は、前方の弛緩性が多く報告されていますが、
そのほとんどが、2nd肢位での”外旋”の可動域増大のことを指しています。
緩さ=外旋ROMということです。
緩さ≠関節の前後移動量ではないということです。

外旋可動域増加と前方の関節包の伸張が関与。

※Grossman MG, et al.: J Bone Joint Surg Am. 2005
※Warner JJ, et al.: Am J Sports Med. 1990
※Mihata T, et al.: Am J Sports Med. 2004

野球選手における外旋可動域の増加( 5~12°増加)

※Crockett HC, et al.: Am J Sports Med. 2002
※Borsa PA, et al.: Am J Sports Med. 2005
※Borsa PA, et al.: Med Sci Sports Exerc. 2006
※Brown LP, et al.: Am J Sports Med 1988

これは外旋ROMの増大は後捻角の問題もあります。
野球選手は上腕骨頭の後捻角が大きく、外旋可動域の相対的に肩関節外旋角度が大きくなります。

野球選手において上腕骨頭後捻角は右投手左投手関係なく、右側の方が後捻角が大きい

※Takenaga T, et al.: J Shoulder Elbow Surg. 2017 Dec;26(12):2187-2192.

では、野球選手における外旋可動域の増大は、何が原因で生じているのでしょうか?

野球選手における外旋可動域拡大の要因

野球選手における肩関節の外旋可動域拡大の要因は、主に骨性の適応(上腕骨の後捻増加)と軟部組織の変化に分類され、これらが相互に影響し合うとされています。

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投球動作における鼠径部痛へのアプローチ -Groin pain syndrome  インピンジメント編-

こんにちは!C-I Baseball サポートメンバーの理学療法士・久我友也です。
このたびより、トレーナーマニュアルとしてnoteに定期投稿をさせていただくことになりました。

私は整形外科クリニックに勤務しており、医療的な視点から、野球選手の身体の悩みに対する評価や治療のヒントをわかりやすくお伝えしていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

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本記事はGroin Pain Syndromeシリーズの最終章です!

これまで以下の3本の記事で、Groin Pain Syndrome(鼠径部痛症候群)について解説してきました。

①「Groin pain syndrome 総論」

https://c-ibaseball.com/trainer-manual/167/
②「Groin pain syndrom 内転筋編」
https://c-ibaseball.com/trainer-manual/180/
③「Groin pain syndrome 鼠径靭帯周囲・腹筋編」
https://c-ibaseball.com/trainer-manual/194/

そして今回はシリーズ最終章、④「インピンジメント編」です。

はじめに

本シリーズでは、投球動作中に発生する鼠径部痛をテーマに、臨床で再現しやすい評価法と実践的アプローチを紹介してきました。

今回のテーマは「股関節屈曲時の前方インピンジメント」。
投球動作で言えば、フォロースルー期に出現しやすく、特に踏み込み脚側に起こる前方痛がその特徴です。

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股関節前方インピンジメントの病態

股関節の前方に痛みを訴える場合、以下のような3つの病態が主に想定されます。

  • FAI(Femoroacetabular Impingement)/大腿骨寛骨臼インピンジメント
  • AIIS Impingement/下前腸骨棘インピンジメント
  • Iliopsoas Impingement/腸腰筋インピンジメント

これらはいずれも、股関節の屈曲+内転+内旋によって、大腿骨頚部と臼蓋の間で周囲組織がインピンジメントされることで生じます。

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評価の基本:Anterior impingement test

典型的な誘発テストとして、以下のような検査が有用です

  • Anterior Impingement Test
    *FADIRテスト(股関節屈曲・内転・内旋)とも呼ばれる
    股関節を屈曲に加えて、内転・内旋方向に動かすことにより、インピンジメント症状を誘発するテストです。
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逆に屈曲時に外転・外旋方向へ逃す(頚部軸回旋)ことで疼痛が大きく生じずに股関節屈曲が行えることも特徴です。

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なぜ、屈曲時に前方が痛いのか?

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金具スパイクについて 〜野球に関わる方に知ってもらいたいこと〜

■はじめに


今回のnoteは選手だけでなく野球に関わる方々にも読んでいただきたいと思い作成しました。

私が言いたいことは、

スパイクでパフォーマンスは確実に変わります。

中学生以上から使用可能となる金具スパイクの特徴はもちろん金具です。
スパイクに限らず、履き物はサイズやメーカー、デザインなどで購入する機会が多いと思います。
そして購入するのはスポーツ用品店に陳列されているものから選んでいる方がほとんどだと思います。

先にお伝えしたいことは、スパイク購入を決めたら、メーカーカタログもしくはインターネットで検索してください。

私の過去の記事にも金具の種類を記載してありますのでそちらもご覧ください↓↓↓

https://c-ibaseball.com/trainer-manual/179

内容

①足元からパフォーマンスを変える
②値段と履き心地で購入しやすい
③試合と練習でスパイクを分ける
④足・動きに合わないスパイク
⑤金具で選ぶと動きが変わる

足元からパフォーマンスを変える

●足部は地面に接している唯一の部位
●足部の構造・機能でパフォーマンスは変わる

私たちが立位姿勢をとっている時に地面に接しているのは『足』です。
足の構造が扁平足のようにアーチが崩れてしまうと運動連鎖により膝、股関節など全身に波及し不良姿勢、歩行の崩れが生じてしまいます。

足の機能を高めるには、足部トレーニングはもちろん必要です。
シューズの履き方でも足部機能は変わります。

値段と履き心地で購入しやすい

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履き物はサイズやメーカー、デザインなどで購入する機会が多いと思います。そして購入するのはスポーツ用品店に陳列されているものから選んでいる方がほとんどだと思います。

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購入する際に何を重視するのか?

購入方法

サイズは店頭に置いてあるものを試し履きさせてもらい、その金具が自分の動きに合うものならその場で購入した方がいいと思います。
しかし、動きに合わないものならサイズだけ確かめてお店にあるカタログで注文可能か店員さんに確認する必要があります。

スポーツ用品店に置いてあるものはほんの一部です。ですから購入前にインターネットで金具スパイクを調べてみることをお勧めします。

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試合と練習でスパイクを分ける

●練習頻度が多いとスパイクは傷みやすい(たわみやすくなる)
●軽量化スパイクはアウトソールがたわみやすい
●金具が削れる(低くなる)

使用頻度

高校生の練習は週に6回で休みは1日。中学生の場合は部活もクラブチームもだいたい一週間に3〜4回ほどだと思います。
平日練習は4時間、土日は1日でウォーミングアップの時以外はスパイクを履いている時間がほとんどです。一足のスパイクを週6回履いている選手がほとんどではないでしょうか。
スパイクに限らず履き物は湿気を取り除くためにも休ませることが必要です。

2足履きにする

足元が崩れてしまっては試合でパフォーマンスを発揮することはできません。ですから、試合用スパイクと練習用スパイクを用意することをお勧めします。

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練習用スパイク

●練習用スパイクや雨の日の練習試合は安いスパイク
●試合用は自分の動きにあったスパイク
●試合用スパイクがたわんだり、金具が短くなってきたら練習用にする

足・動きに合わないスパイク

●サイズ
●履き方
●中敷が破けている
●スパイクのたわみ
●金具の削れ

サイズ

スパイクに対して足が大きければ足を締め付けることになるのでスパイクの中で足の遊びがなくなり足趾が使えないため機能は低下します。

履き方

靴の脱ぎ履きでは『紐をほどく』『踵を踏まない』この二点が大事です。
紐をほどかず、踵を踏んだり、無理やり履こうとすると靴の形が崩れてしまいます。

中敷が破けている

中敷に穴が開くとそれだけで足の構造が崩れ痛みが出現したり、パフォーマンスが低下します。

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スパイクのたわみ

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野球現場で対峙する肉離れの基礎基本

本記事では、筋損傷とは?というところから、実際に現場で経験した肉離れについてご紹介いたします。
今回は、総論になります。

1.筋損傷とは

筋損傷は大きく3つに分かれます。

・筋挫傷
    
筋への直接打撃や圧迫ストレスが生じた時に起こるもの
(通常は骨に隣接した組織の損傷)
 
例:デッドボールや自打球などの外的損傷、走者とのコンタクトでの損傷

・肉離れ
 急激な筋収縮・伸長ストレスによる損傷
 スプリントタイプ・ストレッチタイプ

・微細損傷の繰り返し
 投球や筋力トレーニングによる筋の微細損傷(筋肉痛・張り)

2.肉離れの基礎基本

 ここでは肉離れについての総論をお話しします。

⚫️疫学
 ・性差 男性>女性
 ・年代別 20代前半が最も多い
 (20代:ハムストリングス 20代より高齢:腓腹筋)

⚫️重症度
 ・JISS分類(MRI)

 Ⅰ度 わずかな損傷(腱膜の輪郭が保たれる)
 Ⅱ度 部分断裂 (腱膜が部分的に断裂している)
 Ⅲ度 完全断裂(腱膜がすべて断裂している)

(仁賀定雄. “ハムストリング肉離れ.” The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 56.10 (2019): 778-783.)

 ・奥脇分類(MRI)

 Ⅰ型 筋腱移行部の血管損傷のみ
 Ⅱ型 筋腱移行部損傷,特に腱膜の損傷
 Ⅲ型 腱性部(付着部)の完全断裂

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(奥脇 透:ハムストリング肉離れ.臨床スポーツ医学をもとに作成)

MRIの横断像で診断されます。以下はⅢ度と診断された症例。

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・エコー所見
  ”エコーはあくまで補助的な役割として活用し、臨床症状や他の画像所見と併
  せて判断することが重要である”
 
(超音波診療のピットフォール、笹原潤、臨床スポーツ医学第42巻5号、 
  2025、p460-463)
  
  我々はセラピストであり、診断ではなくあくまで患部評価の一つの指標として
  使用していきたいです。そのため画像を見ることができる力はX-p・MRI同様
  に重要と感じています。
  基礎として、健側と患側の比較で評価することが重要であるとされています。

   ❶筋線維部の損傷
   低エコー像を呈する筋内に高エコー域

   ❷血腫
   
筋線維損傷部位周囲に低エコー域

  📝血腫の理解
   外傷から最初の数時間以内
   血腫が拡散していてまとまっておらず、筋肉の高エコー像や、
   筋線維束の異常な間隔の拡大が散見
 
   腱膜の断裂
   血腫が筋の境界を越えて拡散し、画像上で確認できない可能性
   筋線維の牽引、皮膚上の皮下出血を注意深く観察

 (Roger B, Brasseur JL, Blum A (1998) Exploration des muscles du sportifs.   In: Blum A (ed) Imagerie en traumat- ologie du sportif. Masson, Paris,pp   31–42)

  ❸腱膜部の損傷
   
長軸像で線状高エコー像を呈する腱膜が不整 その周囲に低エコー像

  ❹付着部の損傷
  
 腱の肥厚所見

  ❺筋挫傷
   高エコー像を呈して腫脹し、内部にまだらな低エコー像

 (超音波診療のピットフォール、笹原潤、臨床スポーツ医学第42巻5号、 
  2025、p470-473)

・エコー所見による分類

    grade0 問題なし
    grade1 筋横断面積の5%未満
    grade2 筋の部分断裂、筋横断面積の5〜50%
    grade3 筋の完全断裂、血腫の貯留あり

  ☑️ Bell clapper sign  
 
プローブで軽く圧迫を加えると、血腫内に浮遊する断裂した筋片の確認

 ※エコーで判断したい所見
  ❶筋線維束の断裂を伴わない損傷 
   1~2週間の短期で回復

  ❷断裂と血腫を伴う損傷
   最低でも4週間以上を要する

 (Rodineau J (1997) Evaluation des lés- ions musculaires récentes et essai   de classification. Sport Med 90:28–30)

 ・現場感について
  Ⅰ型 運動の継続が可能(練習や試合後の訴え)
    Ⅱ型 運動継続困難(動作の変化あり)
      Ⅲ型 明らかなエピソードあり(自重+慣性or外力)

 (肉離れ-今,求められているもの-鎌田浩史、臨床スポーツ医学、第42巻第2号、2025、p118-121)

⚫️復帰時期の目安(時間)

 Ⅰ度 2.0±1.0週(1~6週)
 Ⅱ度 6.4±2.2週(3~12週)
 Ⅲ度 9.8±3.2週(4~16週)

(仁賀定雄. “ハムストリング肉離れ.” The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 56.10 (2019): 778-783.)

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(臨床スポーツ医学, 2025(2),p130を参考に作成)

⚫️復帰時期の目安(MRI所見)

 50~60%ジョギング   高信号残存
 70%以内ランニング   僅かな残存
 80~100%スプリント    低信号像 

(仁賀定雄. “ハムストリング肉離れ.” The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 56.10 (2019): 778-783.)

⚫️身体所見
 ・視診
  陥凹、腫脹、皮下出血

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(側副部の腫脹と皮下出血に対してマイクロカレント)

 ・触診 
  熱感、圧痛、硬結

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熱感は手背部で確認
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圧痛の確認と硬結部の確認

 ・Stretch痛
  他動

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  自動

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 ・運動時痛
  
求心性収縮

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  遠心性収縮

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 ・動作時痛
  収縮速度+持久性

  40cm台でのHip liftはハムストリングの寄与が90%と報告されており、最大速
  度でのHip liftを行うことができるかが重要な所見です。
  これに持久性の要素も加えスプリントがどの程度可能かも確認するようしてい
  ます。
 (Yuto Sano, Masashi Kawabata, Yuki Sumiya, Yuto Watanabe, Yuto
       Uchida, Tomoaki Inada, Masaki Murase, Tomonori Kenmoku, Hiroyuki
      Watanabe, Naonobu Takahira. Evaluating optimal height for hamstring
      activity in maximum-speed single-leg bridge test,Int J Sports Med. 2025
      Feb 11. )
 (Sano Y, Kawabata M, Kenmoku T, Watanabe H, Takahira N. Maximum-
  Speed Single-Leg Bridge Test for Concentric Functional Assessment and
  Exercise in an Athlete with Recurrent Hamstring Strain Injuries: A Case
  Report. IJSPT. 2025;20(5):716-726.)


  競技特性

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 ・主観的評価
  ❶HaOS(hamstring outcome score)
  ハムストリングの機能評価尺度(19項目)
  スコアが低いほどハムストリングの肉離れの既往が多く、新たなハムストリン
  グの肉離れが多いことが報告されている。
 
 (Engebretsen AH, Myklebust G, Holme I, Engebretsen L, Bahr R.
  Prevention of injuries among male soccer players: a prospective,
  randomized intervention study targeting players with previous injuries or
  reduced function. Am J Sports Med. 2008 Jun;36(6):1052-60.)
  (van de Hoef PA, Brink MS, van der Horst N, van Smeden M, Backx FJG.  
       The prognostic value of the hamstring outcome score to predict the risk
       of hamstring injuries. J Sci Med Sport. 2021 Jul;24(7):641-646.)

  ❷FASH(functional assessment scale for acute hamstring injuries)
  自覚的重症度と症状の程度を評価(10項目)
  
 (Malliaropoulos N, Korakakis V, Christodoulou D, Padhiar N, Pyne D,
  Giakas G, Nauck T, Malliaras P, Lohrer H. Development and validation of a
  questionnaire (FASH–Functional Assessment Scale for Acute Hamstring
  Injuries): to measure the severity and impact of symptoms on function
  and sports ability in patients with acute hamstring injuries. Br J Sports
  Med. 2014 Dec;48(22):1607-12.)

3.具体的な肉離れ部位

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スクワット動作獲得のためのMobility Drill

はじめに

野球に関わらずほぼ全てのアスリートにおいて、トレーニングでスクワットを行うと思います。
正しくスクワット動作が遂行できない場合、腰や膝を痛めたり重量が伸びにくかったりします。

今回はスクワット動作が正しく行えるようになるためのモビリティドリルやそのチェック方法をいくつかご紹介できればと思います。

スクワットの深さと筋活動

スクワットは深さによって名称が異なります。
1.クォータースクワット(Quarter Squat)
 ●膝の角度:おおよそ 45度程度
 膝が少し曲がる程度。しゃがみが浅い。

2.ハーフスクワット(Half Squat)
 ●膝の角度:おおよそ 90度

3.パラレルスクワット(Parallel Squat)
 ●特徴股関節(大腿骨上部)と膝が同じ高さになる程度

4.フルスクワット(Full Squat)/ディープスクワット(Deep Squat)

 ●膝の角度:90度以下、股関節が膝より下にくる
 しゃがみきる動作に近い。可動域が最大。
 ●用途:可動域の改善、柔軟性向上、筋力・筋肥大向上に効果的。

ストレングストレーニングとして行う場合、基本的には4のフルスクワットを推奨しています。(競技特性上、体幹の剛性を一時的に高めたい場合などは別)

フルスクワットで可動域を求めた方が浅いスクワットよりも臀筋群、大腿部への筋肥大効果が高いことは先行研究でも報告がなされています。

スクワットの深さ(浅い、パラレル、深い)と足幅(標準、広い、最も広い)が大腿四頭筋の筋活動に与える影響を調査。結果、スクワットの深さが増すほど大腿四頭筋の筋活動が増加し、足幅の違いによる有意な差は見られなかった。

Matt Denning, Brad Gardiner, Tyler Standifird, Lauren Williams. Does Squat Depth and Width Influence Quadriceps Activation?. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2019

異なるスクワットの深さ(最大膝屈曲と90°膝屈曲)および負荷(体重、50% 1RM、80% 1RM)が下肢筋の筋活動に与える影響を調査。結果、深いスクワットと高負荷条件で大腿四頭筋、ハムストリングス、臀筋の筋活動が有意に増加した。

Zachary Sievert, Joshua T. Weinhandl, Stacie I. Ringleb, Laura C. Hill​. The Effects of Squat Depth on Electromyography of Lower Extremity Muscles. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2016

深いスクワット動作と股関節、膝関節、足関節の可動域および筋力との関係を調査。結果、深いスクワットを行うことで、これらの関節の可動域と筋力が向上することが示された。

The Relationship Between the Deep Squat Movement and the Hip, Knee and Ankle Range of Motion and Muscle Strength. Journal of Physical Therapy Science. 2020

今回はフルスクワットに焦点を当てて、深いスクワットを獲得するためのドリルを紹介していきます。

Mobility Check&Drill

World Greatest Stretch

股関節屈曲開排位における体幹前傾機能を獲得するために行います。
✅Check Point
・肘が床に付くか
・脊柱は屈曲しすぎていないか
・足関節の真上に膝関節がきている(もしくはやや膝が外に位置)状態でできているか

回旋動作を省き、モビリティを見てみましょう。
横から評価すると分かりやすいと思います。脊柱が過度に丸まっていない状態で、膝よりも体幹を低くすることができれば十分な可動性があるといえます。そのままストレッチとしても実施可能です。

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野球選手に必要なストレングストレーニング -その2-

最初に

みなさんこんにちは!
理学療法士として、神奈川県と東京都で勤務している
野坂と言います!

また、先日NSCAという団体で
CSCS:Certified Strength and Conditioning Specialist
という資格を取得させていただきました!

今回のメインどころとして、前回の僕の記事と同様になりますが
理学療法士の観点ではなくCSCSの視点から、野球選手に必要な
ストレングストレーニング=筋力トレーニングについて
このnote記事にまとめていきます!

もちろん、身体の専門家である「理学療法士」としても
学ばせていただいているので、そちらの観点からも
ストレングストレーニングを紐解いていければと思います!

まだまだ学びの途中なので、情報不足であったり
間違った知識を公開してしまうかもしれませんので
もしこの記事をお読みになった方でご意見がある方は
遠慮なくコメントや私のSNS宛てにDMいただけると幸いです!

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X: ko_yo_1101 で検索!
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インスタグラム:k_nosaka_pt で検索!

ストレングストレーニングについての概要は、前回の僕の記事の最初で
触れているので、そちらから読んでいただけるとこの記事もさらに
楽しめるかと思います!
下記よりご覧いただき、このパート2もご覧ください!

https://c-ibaseball.com/trainer-manual-vol190

このnoteの意味合いについて

僕が現役だった10数年前は、筋トレ=きつい。質より量。限界まで頑張る
といったいわば根性論であったり、根拠の全くない「古典的かつ伝統的」な
トレーニングが主流だったと記憶しております。

また、現代でもそのようなチームは多い印象はあります。

しかし、現代はテクノロジーが発展し、パフォーマンスの高い選手は
どこの筋力が高いかというデータもすごい数の論文が裏付けています。

そして、そのデータを基に「パフォーマンスコーチ」なる人たちが
選手に介入したり、チーム契約をしていたりと、僕が現役の時では
考えられないくらい時代は進んでいます。

SNSやそういった人たちの存在、機材や環境の発展により
選手や保護者、指導者がすごく知識を持って一丸となって指導や
練習に励んでいるところを考えると、我々トレーナー業を営む人間としては
しっかりとした知識を持ち合わせていることが前提条件となります。

なので我々は常に学び続けていく必要があります。

今回はそれらの知識を皆さんと共有できたらと思い、書いていますので
最後で読んでみてください!

ストレングストレーニングの目標とは?

除脂肪体重を上げよ!!

結論としてストレングストレーニングの目標は、筋肉量を上げていくこと
つまり、除脂肪体重を上げることにあります。

除脂肪体重とは、体重から脂肪の量を除した値つまり筋肉量になります。
厳密には、計算上では内臓などの重量を引くことができないので
より正しい数値は、体組成計という器具を用いて測定することで
算出されるものにはなりますが、おおまかな計算は行うことができます。

除脂肪体重=体重-(体重✖︎体脂肪率:これが体脂肪量になる)で算出できます。

データでは、この除脂肪体重が現在のトレンドになっていますし
選手や指導者には、この言葉をぜひ使ってほしいです。

野球選手に必要なトレーニング 投手ステップ足編

論文から見る必要なトレーニング部位について

まず、いい投手(球速の速い投手)の特徴といえば「下半身が太い」
これに尽きるのではないでしょうか?
それは今も昔も変わらないことだと思います。

僕も現役時代は、「いい選手ほどケツや太ももがでかいんだぞ!!」と
言われていました。笑
ただ、どんなトレーニングをしたらいいのかわかりませんでしたが。。。

とにかく、投手はまず下半身を鍛えるのがマストになります!

データとしても、とある集団の身体各部位の太さを計測したところ
球速が速い投手ほど下肢の筋肉量が多く、大腿部や
下腿(ふくらはぎ)が太いということがわかっています。

投球動作は並進+回旋である

速いボールを投げるということは、ほとんどの野球選手が
憧れ、それを目標に練習に励んでいるのではないでしょうか?

投球動作は、ワインドアップから始まる一連の動作の中で
いかにパワーを生み出し、下肢から上肢、そして指先さらには
ボールまで伝え、最大限の出力でボールを投球するか?
という、動きは大きいですが緻密なスポーツ(動作)に
なります。

ここで重要なのは、投球動作というのは
並進運動と回転運動の切り返しという点です。

投球動作をその動作で分解をしていきます。

投球動作を分解する時には
ワインドアップ
アーリーコッキング
レイトコッキング
アクセラレーション
減速期
に分けることが一般的なので、こちらで説明をしていきます。

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スライドにお示ししている通り、投球動作というのは
フェーズわけをすると、レイトコッキングで並進運動から
回転運動に切り替わると考えられます。

並進運動と回転運動は似て非なるもの。
力の方向が全く異なるものになるので、ここでの
パワー伝達がうまくいくかいかないかで
パフォーマンスに大きく影響を及ぼすと考えられます。

切り替えには「止まるための軸」が必要!

止まるための軸、つまりは動作の切り替えのための
「変化点」が必要となります。

ここで重要なのはズバリ「ステップ足の股関節」です。

並進運動で生まれた力(パワー)を回転運動に変換するためには
ステップ足での減速動作が重要となります。

並進運動で生じたエネルギーは、軸足の減速動作(ストップ動作)
によって回転運動に変換され、このタイミングで上肢に伝達されます。

よってこの減速動作を生じさせ、転換点となるステップ足の
下半身周りの力は非常に重要となるわけです!

並進から回転運動に繋げるにはどんな力が必要なのか?

並進運動を回転運動に変換させるためには
並進方向の力を止められるだけの力が必要となります。

不良な動作としては、並進運動がステップ足で止められない結果
ステップ足の膝が回転運動を始めるタイミングでも
屈曲方向(膝が前に曲がってしまう動き)が出てしまうことです。

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パワーハウス構成筋のエクササイズ【トレーナーマニュアルvol.200】

C−I Baseball2期生の戸高です。
今回の配信はサポートメンバーシリーズとなります。

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私が配信する内容としては「ピラティス【pilates】」というメソッドが1つのツールとして投球障害の治療、予防、パフォーマンスの向上にどう活かしていくかに焦点をあてて、配信させていただいております!

はじめに

姿勢を改善していくためには姿勢が作られる要素を知っておく必要があります。
例をあげると、緊張するような場面だと身体がこわばったり、落ち込むと丸まります。
デスクワークが習慣になっている人は猫背になりやすい。なので、これしたら姿勢よくなりますというわけではなく、いろんな要素からのアプローチは必要になります。

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今回は姿勢を改善したあとに、その姿勢をどう維持していくか?
という視点で「腹腔内圧を構成する筋肉のエクササイズ」を紹介したいと思います。
第一弾として「横隔膜」と「腹横筋」について解説していきます。

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腹腔内圧とは

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腹腔内圧とは、横隔膜の下で主に消化器などの内臓が集まる空間でその内部にかかる圧力のことをいいます。
姿勢をキープするためにはこの腹腔内圧を意識することは重要だと考えられます。

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投球の『回転軸・回転効率』について【トレーナーマニュアルvol.199】

いつもC-I Baseball「トレーナーマガジン」をご購読頂きありがとうございます。 さて、私の直近の担当記事は 投手の『球速』についてと投球の『回転数』についてでした。 ※過去の記事は下記を参照してください。 今回は … 続きを読む

AIをフル活用して論文を読む【トレーナーマニュアルvol.198】

C-I Baseball 3期生メンバーの三好航平と申します.
今回は2023年から開始したサポートメンバーによるnoteシリーズです.

note本編に入る前に2点告知をさせていただきます.
4/26(土)20:00からencounter × C-I Baseballのコラボセミナーを開催いたします!

AI×理学療法 投球障害肩の動作解析と治療アプローチ”ESO会員”とは月額制のサービスです。・過去のセミナーがアーカイブで視聴可能・セミナーが無料(一部有料)※注意事項:1週peatix.com

セミナーの前半部分では,私の方でAI技術を活用した投球動作解析に関してお話をさせていただきます.大学院時代そして現在とAIを活用した投球動作解析に関する研究を行っている経験を生かしたお話をさせていただければと思っております.後半のC-I Baseballの小林先生,新海先生のパートと合わせてお時間ある方はぜひご参加ください!

②大学院時代に取り組んでいた研究がスポーツ理学療法学にacceptされ,先日公開されました!

OpenCapを用いた投球動作中の体幹回旋運動評価の妥当性J-STAGEwww.jstage.jst.go.jp

Xの方でも大変多くの反応をいただきありがとうございました!
無料で読むことができるので,ぜひチェックしてみてください!


前置きが長くなりましたが,note本編に入らせていただきます.

前回のnoteでは「AIを活用して論文を探す」ということにフォーカスを当てたnoteを執筆させていただきました.お読みいただきありがとうございました.

https://c-ibaseball.com/trainer-manual/185

AIの進化はとてつもないスピードであり,前回の記事公開からたった3ヶ月でさらに便利なツールが登場しています.

今回のnoteは,前回の続きでAIを活用した論文検索方法,そしてAIを活用した論文の読み方というところにフォーカスしてnoteを書かせていただきます.

エビデンスに基づいた理学療法,トレーニングを提供する上で英語論文を読むことは重要です.しかし,英語が苦手で英語論文を読むことへのハードルは高く感じるセラピストは多いのではないでしょうか.

私自身も英語が得意ではなく,英語論文を読むことに苦手意識を持っていました.しかし,読むポイントを掴むことで短時間でその論文に書いてあることを理解できるようになってきました.また,AIの目覚ましい進化により「AIとともに論文を読む」ということが可能になってきています.

本noteでは私が実際に行なっている論文の探し方や読み方,読む時に使っているツールなどをご紹介できればと思っています.

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アカデミートレーナーの1年を振り返る―成長と課題から学ぶことー【トレーナーマニュアルvol.197】

いつもマガジンをお読みいただき、ありがとうございます。C-I Baseballの増田稜輔です。 目次 今回のnoteトレーナー紹介アカデミートレーナーインタビュー黒石涼太トレーナーインタビューQ: アカデミーのトレーナー … 続きを読む