フィジカルテストの考察とプログラムデザイン‐野手編‐【トレーナーマニュアルvol.30】

いつもトレーナーマニュアルをご購読頂きありがとうございます。
C-I Baseballの増田稜輔です。

今回は、副代表の佐藤康とともに
「フィジカルテストの考察とプログラムデザイン」について解説していきます。

12月に入り、本格的にオフシーズンとなりました。
各チームは春の大会に向け、カラダを強化する時期になります。
このオフシーズンのトレーニングは
「チームの目標を実現するため」にプログラムを組んで実践していきます。


①選手の状態 strong pointとweak pointの把握
障害発生リスクの把握
目標に対するプログラムを作成するためには上記の2つの項目を把握することが必要になります。
その手段として「フィジカルテスト」を用いていきます。

そしてフィジカルテストの結果から
来シーズンへ向けた強化ポイントを洗い出し
チームや個人トレーニングプログラムへ反映させていきます。

フィジカルテストを行う前に

テスト項目を列挙する前に
フィジカルテストの目的について整理していきます。

フィジカルテストの目的

スクリーンショット 2021-12-05 21.53.15

フィジカルテストは大きく分けて2つの要素に分けます。
①チーム・選手の状態把握
→パフォーマンス要素
②障害発生リスクの把握
→障害予防的要素

1シーズン戦うには、パフォーマンスアップだけでなく
障害を予防していく観点も重要になってきます。
強化と予防の両側面の視点を持っておくことが必要です。

そのため、パフォーマンス要素の項目だけでなく
動きの基礎となる可動性や動作コントロールなどの項目も
フィジカルテストの評価対象になります。

スクリーンショット 2021-12-05 22.21.26

評価した項目を分析しトレーニングプログラムを作成する

フィジカルテストを行ったら、ただデータを出して満足するのではなく
必ずデータを分析してトレーニングに繋げていきます。
課題点をPICK UP
対応するプログラムデザインを作成

スクリーンショット 2021-12-05 22.41.12

フィジカルテストのデータを分析することが1番重要な作業になります。

測定から出た結果を客観的に分析し
チームや個人にどのようなstrong pointとweak pointがあるのか
どんな障害のリスクが高いのか洗い出していきます。
この作業を行った結果、来シーズンへ向けて取り組む
トレーニングプログラムを作成することが出来ます。

フィジカルテストを行なう前に前述した
・フィジカルテストの目的
・データは分析しプログラムを作成する
この2つを整理してからフィジカルテストを実施することをオススメします。
ただ闇雲に、とりあえずフィジカルテストやってみよう!!
これでは、目的も曖昧で、ただ測定しただけになってしまうので
「なににつなげる測定なのか?」を常に念頭においておきましょう!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ここからはフィジカルテストを実施するにあたり
どのような項目をPICK UPし測定するのかを解説していきます。

フィジカルテストの測定項目

トラック

フィジカルテストの項目をPICK UPするには以下の4項目を考慮して考えていきます。
パフォーマンス要素
障害発生リスク
前シーズンの課題点
チーム目標の明確化

スクリーンショット 2021-12-05 23.06.12

野手のパフォーマンス要素と障害発生リスクの測定

バッティング、走塁、守備の3つです。
この3つのパフォーマンスは
筋力、パワー、スピード(アジリティを含む)、動作コントロール、
可動性の5つの要素から構成され、各項目に対応する評価を実施していきます。

スクリーンショット 2021-12-05 23.11.13

筋力の測定

筋力では、上肢下肢の最大筋力を中心に測定していきます。
パワー、スピードの要素や障害予防にもつながるため非常に重要な項目になります。

下肢筋力の測定
下肢筋力は下肢のpush動作、pull動作に必要な
・スクワット
・デッドリフト
の2種目の最大筋力筋力を測定します。

‐測定方法‐
ウエイトトレーニング経験が未熟な選手には複数回数の測定法を使用し
1RMを算出します。

ここから先は有料部分です

続きを読む

フィジカルチェックの考察とプログラムデザイン‐投手編‐【トレーナーマニュアルvol.29】

C-I Baseballの佐藤康です。
今回も現場向け記事では、CIB代表の増田と2週にわたり配信していきます。

今回は投手編と野手編に分けたフィジカルチェックについてまとめていきたいと思います。

冬季シーズンの野球はさまざまな年代のカテゴリーで試合などの実践の機会が減り、移行期を経て、カラダづくりをする強化期に入ります。

画像

いわゆるトレーニング主体の練習メニューとなります。トレーニングと想像すると、筋力強化やランニングなどを連想される方も多いと思います。

画像

強化期間の約2-3か月の中で、
何を強化すべきか。

下記の「ピリオダイゼーション」の記事でもお伝えしましたが、これにはカラダづくりに併せ、「テーマを持ったトレーニングのプログラミング」が求められます。

ピリオダイゼーション‐トレーニングメニューを考える‐|佐藤 康|noteC-I Baseballの佐藤康です。 今回は野球チームにかかわる上でチーム・選手のトレーニングをプログラミングする「ピリnote.com

・体力・スタミナをつける
・スイングスピードを強化する
・ケガをしにくい身体をつくる

など、現場によりさまざまなテーマがあると思います。

これらのテーマを取り組むうえで、
トレーニングの介入する目標設定が必要となります。

チームがどのレベルを目指すのか?
・選手個人のモチベーション
などにも大きく関わってくるところです。

その目標設定の“ものさし“として、
今回はフィジカルチェックをまとめていきます。

画像

試合期を中心とした1シーズンを振り返り、フィジカルテストの結果とケガやボール速度やスタミナなどの面をみて、来シーズンに向けて、チームと個人の目標設定やトレーニングプログラムに反映させるために行っていきます。

画像

投手に求められるフィジカルとは?

はじめに、フィジカルテストの項目を列挙する前に、投手に求められる「フィジカル」について考えていきます。

これには測定項目を考える上で、対象競技に求められる体力・運動能力を把握し、その動きを分析することが必要となります。

画像

パフォーマンスが高いとされる投手の特徴として、
・速球が投げられる
・スタミナがある
・コントロールがいい

などが一般的に挙げられるかと思います。

画像

また、パフォーマンスの観点に加え、
障害発生の予防の観点からも考えていく必要があります。
・肩/肘の投球障害
・腰痛
・下肢障害

そのため、前述した競技特性に近い動作・運動能力に加え、その土台となる関節機能や姿勢などの基礎項目を併せて評価していき、弱点項目やトレーニングにおける強化ポイントの指標にしていきます。

画像

チームから要望されることも多い
「スタミナ」「球速」を例に解説していきます。

速球-瞬発力-

速球を投げるためにはどのような運動要素が求められるでしょうか。
後述するスタミナの項と重複する点もあるため、速球に特化した点をまとめていきます。

画像

筋パワー‐無酸素性パワー‐
無酸素性パワーとは爆発的に大きな無酸素性エネルギー(ATP-CP系)を出す能力として捉えます。

画像

上図での無酸素性のパワーにおける最大強度での運動の継続時間は、生理的に10秒間程度が限界とされています。そのため、短距離での最大スプリント速度や跳躍・投てき能力が求められるといえます。

最大筋力
最大筋力の向上は、神経・筋機能の改善を狙いとし、高強度・低回数・長い休息時間を用いて行うことが特徴です。

高強度で行うことで、運動単位の動員数が多くなり、筋断面積当たりの筋力を高めることにつながります。

スクワット1RMで上げられる重量が大きくなるにつれてボール速度が高くなることや、60㌔の負荷でのデッドリフト10回のタイムが短縮するほどボ ール速度が高くなる。

(澤村ほか、2006)

画像

ここから先は有料部分です

続きを読む