チェンジアップの投げ方(後編)【トレーナーマニュアルvol.160】

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さて、前回の私の記事は『チェンジアップの投げ方(前編)』でした。

今回はその続きで後編をお伝えいたします。

さて、今回は『チェンジアップ』の投げ方の【後編】となります。

前回は、『チェンジアップ』の投げ方の【前編】として、チェンジアップの軌道に始まり、基本的な投げ方のレクチャー、そして、岡本秀寛さん(元東京ヤクルトスワローズ)の動画解説も入れながら説明して参りました。

そして、前編ではチェンジアップは、シュートの方向にスピンすることをお伝えしました。

また、チェンジアップを投げるポイントとして、少し内旋(うちネジリ)をピュッとする感覚で投げる事を挙げさせていただきました。

※【後編】では動画が合計8本あります。これらの動画でも説明をさせていただいております。充分、満足していただける内容となっております。

握り方のコツ

チェンジアップの握り方には、サークルチェンジと人差し指と薬指でボールを挟む握り方が大きく分けてあります。

人差し指と薬指で挟むタイプの方が、抜ける感じはわかりやすい傾向があります。

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投球動作×バイオメカニクス – 海外文献から得た知見 -【トレーナーマニュアルvol.159】

初めまして!C-I Baseball3期生メンバーの三好航平と申します.
今回は2023年から開始したサポートメンバーによるnoteシリーズです.

本noteで私が書かせていただく内容は,野球関連の海外文献レビューになります.

私は今年3月まで大学院生として,多くの英語論文を読んできました.
その経験を活かして,皆様に野球に関する近年の英語論文をご紹介させていただければと思います.

文献情報

今回ご紹介する論文はこちらです.

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Crotin, Ryan L., Jonathan S. Slowik, Gene Brewer, E. Lyle Cain Jr, and Glenn S. Fleisig. 2022. “Determinants of Biomechanical Efficiency in Collegiate and Professional Baseball Pitchers.” The American Journal of Sports Medicine 50 (12): 3374–80.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36122355/

背景

Pitch Efficiency(投球効率)は効率的な投球メカニクスを定量化するために使用された指標であるが,”Pitch Efficiency”という言葉は1イニングあたりの投球数が少ないという意味で使用されることがアメリカでは一般的である.混同を避けるために,この研究では,Biomechanical Efficiency(バイオメカニクス的な効率の良さ)という言葉で新たな指標として提言している.

Biomechanical Efficiency:単位肘内反トルクあたりの球速の値
この数値が大きい投手は,肘関節への負荷を抑えつつ球速が速い投手であると言える.

Crotin et al. The American Journal of Sports Medicine. 2022

一般的に球速が速い投手は投球時に生じる肘関節内反トルクが大きく,障害リスクが高いことが言われており,肘にかかる負荷を抑えつつ球速を高めることはパフォーマンスと障害予防の双方から考える上で重要であり,Biomechanical Efficiencyは投球を評価する指標として有用であることが示唆されている.

では,何がBiomechanical Efficiencyに影響を与えるか.
この研究では,動作指導により修正可能と考えられる投球キネマティクスとBiomechanical Efficiencyの関連を調査することを目的としている.

仮説

  1.  投球キネマティクスとBiomechanical Efficiencyは関連し,Efficiencyが高い投手と低い投手で異なるキネマティクスを呈する
  2.  プロの投手の方が大学生投手と比べてEfficiencyが高い

方法

545名(大学生98名,プロ447名)の投球データを解析しています.モーションキャプチャー(12台の赤外線カメラ,240Hz)で投球動作を測定,対象者は18.44mの距離を5-10球,ストレートを全力投球を行った.

対象者特性とキネマティクスについて,ステップワイズ多変量解析を用いてBiomechanical Efficiencyの決定因子となるものを検討.また,決定因子についてMann-WhitenyのU検定を用いて高効率群と低効率群で比較し,カットオフ値を算出した.

算出項目

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Crotin et al. The American Journal of Sports Medicine. 2022より著者作成

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トレーナーのとしての振る舞い【トレーナーマニュアルvol.158】

いつもC-I Baseball「トレーナーマガジン」をご購読頂きありがとうございます。

今回の内容は「トレーナーとしての振る舞い」です。
トレーナーとして、知識やプログラム構成、指導も重要ですが、人と人との仕事ですので、振る舞いも重要になります。
特にチームトレーナーとして活動する場合には、選手、指導者、チーム関係者など多くの人に関わります。
トレーナーは常に評価されています。これは私も体感してきました。
チームにとって必要とされるトレーナー、必要とされないトレーナー、厳しいですがはっきりと分かれます。

必死でやっているつもりでも、チームから必要とされなけば仕事にはなりません。
必要とされるトレーナーになるためのひとつに「振る舞い」があります。
選手や指導者の方やチーム関係者は、トレーナーのスキルだけでなく、どのような振る舞いをしているか。をとても重要視します。

今回はトレーナーとして、どのように振る舞っていけば良いかをお伝えしていきます。

トレーナーとしての振る舞いとは?

トレーナーとしての振舞いは、チームの成功や個々の選手の成長に大きな影響を与えます。そのためトレーナーがどのような「人」であるかが重要になっていきます。

「人がすべて」
どのチームの成功を支えるのも人である。トレーナーの最も重要な仕事は、選手が試合で実力を発揮し、成長し、発展できるようにサポートすることである。

振る舞いに必要な6つのコアバリュー

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 私はトレーナーとしての振る舞いは、技術や知識だけでなく、情熱、礼儀、規律、誠実、冷静、貢献といった要素を持ち合わせ、日々の指導や生活にに反映させることが必要であると考えています。

1. 情熱(Passion)— すべての基盤となるもの

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 トレーナーとして最も大切なのは「情熱」です。選手の成長やチームの勝利を心から願い、どんな状況でも全力でサポートする姿勢が求められます。
「野球に関わりたい」「選手を良くしたい」「怪我をなくしたい」「チームに勝利してほしい」この強い思いこそが、日々の行動を支える原動力となります。
 チーム関係者、選手から本気かどうかは、言葉だけではなく 「行動」 や 「態度」 で評価されます。
立ち振舞い、姿勢、声の張り、そのすべてに気を配り、選手やチームに対して 「誰よりも熱く、誰よりも元気に」 行動することが求められます。


●目の前の選手に100%の熱量で対峙する
一人ひとりの選手の成長やチームの勝利を常に考え、そのために最善のアプローチをしていきます。
よくある例を2つ紹介します。

・自分の技術に固執する
→トレーニングですべて良くする、徒手に自信があるから徒手療法だけでアプローチするなど、固執してしまうことです。
目的は「選手やチームを良くする」なので、そのために何が必要かを考え、最善の行動をし続けることが情熱ある関わりのひとつです。

・トレーナーの個人の感情を持ち込む
→トレーナー個人の気分によって選手への対応が変化するのはNGです。
今日は疲れているからトレーニング時間を短くしよう、ケアの時間を短くしよう。
このような行動は選手に100%の情熱で向かっている行動ではないです。
また、この選手は好きだから指導する、嫌いだから指導しないなどもNGです。どんな選手にも、平等に対応してこそ、情熱ある行動になると思います。

野球に関わり続ける覚悟を持つ
→ 野球が好きで、プレーすることはなくても、野球に関わり続けたいという思いを大切にする。

常に人からの見られかたを意識する
→ 疲れていても、猫背でダラダラ歩かない。常に胸を張り、選手が頼れる存在であることを示す。常に人から見られてる意識で行動するようにしましょう。

声で、チームを活気づける
→ 挨拶からトレーニング中のキューイングなど、トレーナーの声がグラウンドに響いているか?
トレーナーが率先して前向きな声を出し、チームの雰囲気を作りましょう。
グラウンドで一番元気なのはトレーナーであるようにしましょう。

チームに本気で貢献する
→ トレーナーは 試合に出ることはできないが、勝利に貢献はできます
試合前のウォーミングアップ、試合中のコンディショニング管理、リカバリーの徹底、これらを 100%の情熱でやり切るかどうかが、チームの勝敗に影響してきます

トレーナーがいると安心すると思わせられるか
→ 「この人がいるから大丈夫」と思われるトレーナーは、単なるケア担当ではない。選手が苦しいとき、不安なときに最初に頼る存在である。
「痛いけどどうしよう」ではなく「痛いけど、あのトレーナーに相談しよう」と思ってもらえるか鍵になります。


「選手を良くしたい」「怪我をなくしたい」「チームを勝たせたい」
この思いがあるなら、それを 行動で示す ことです。
選手や指導者の方は目の前の試合に何としてもこの試合に勝ちたい、
レギュラーを取って試合に活躍した、応援してくれる家族のために活躍したいなど、熱い想いを持っています。

トレーナーもより選手やチームが高い成果が得られるよう、最大限の情熱を込めて、選手と向き合っていく必要があります。
「この人は本気だ」と選手や指導者に思われたとき、トレーナーとして 本物の信頼 を得ることができる。
だからこそ、 情熱こそが、すべての基盤となる。
選手や指導者の方は目の前の試合に何としてもこの試合に勝ちたい、
レギュラーを取って試合に活躍した、応援してくれる家族のために活躍したいなど、熱い想いを持っています。


2. 礼儀(Respect)— 信頼を築くための根本

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野球トレーナーとして 選手・指導者・チーム関係者から信頼されるために最も重要なものの一つが「礼儀」です。
礼儀とは単なるマナーではなく 「相手に敬意を払う心」 そのものです。
日本には 「武士道」 という精神があり、これは 自分を律し、他者を敬い、感謝を忘れない生き方 を意味しています。
トレーナーは、選手の身体を預かる重要な立場だからこそ、 「礼節を重んじる姿勢」 を貫くことが信頼につながります。

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