腱板機能を全身から捉える~評価編~【トレーナーマニュアルvol.169】

こんにちは。
C-I Baseballの1期生の北山達也です。
今回はサポートメンバーからの投稿となります。

はじめに

私は日頃は整形外科病院に勤務しており外来診療において投球障害の選手を治療しています。
その中で腱板機能が低下している選手を多く経験します。
その低下している腱板機能を改善するにあたり、局所だけでなく全身から捉えることで改善することも経験します。

そこで今回は「腱板機能を全身から捉える」という内容を紹介していきたいと思います。

腱板の局所機能を改善する方法はこちらのnoteをご覧ください。

まずは日常行っている腱板機能評価について紹介します。

腱板機能評価

Full can test

選手を立位または座位とし、母指を上に向けた状態の肩甲骨面外転30~90度※とする。
検査者は選手にこの肢位を保つように指示して抵抗を加える。
※肩甲骨面30度は関節包が最も緩む肢位のため、腱板の安定性が最も必要となる。

Empty can test

選手を立位または座位とし、母指を下に向けた状態の肩甲骨面外転30~90度※とする。
検査者は選手にこの肢位を保つように指示して抵抗を加える。
※肩甲骨面30度は関節包が最も緩む肢位のため、腱板の安定性が最も必要となる。

Belly press test

選手を立位または座位とし、肘関節屈曲90度させ手部を腹部に置いてもらう。
肩関節内旋位、手関節掌背屈0度で保持するように指示して抵抗を加える。

Bear Hug test

選手を立位または座位とし、検査側の手掌を対側の肩に置く。上肢挙上90度、最大内旋位を保持するように指示して抵抗を加える。

infraspinatus test

選手を立位または座位とし、上肢下垂位、肘関節屈曲90度とする。
肩関節は中間位~最大外旋位とし、検査者は選手にこの肢位を保つように指示して抵抗を加える。

上肢挙上テスト

選手を立位または座位とし、検査者は後ろから検査側の上肢を他動で外転させる。
この際検査者が選手の上肢を強く感じた場合や、他動運動に対して上肢全体がついてこず、肘関節屈曲などがみられた場合を陽性とする。
必ずしも腱板機能のみを反映したテストではないが、腱板機能が低下している選手の多くはこのテストが陽性となる。

腱板機能を全身から診る

目の前の選手の腱板機能が低下していて腱板トレーニングを処方しても変化がないことを経験しないでしょうか。
この場合、腱板自体には問題がなく、腱板が収縮しづらい身体環境になっていると考えています。

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投球障害肩で見逃しては行けない棘上筋評価【トレーナーマニュアルvol.168】

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野球トレーナーマニュアル|C-I baseball|note

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はじめに

今回は、第一回CIBFORUMでもお話した棘上筋にフォーカスを当てて
お話します。

棘上筋は、肩関節の回旋筋腱板、いわゆる”インナーマッスル”のうちの一つです。

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棘上筋は、組織学的に非常に脆弱性がある組織です。

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※Sano, H. et al. : Stress distribution in the supraュ spinatus tendon with partial -t hickness tears An analysis using two-dimensional finite eleュ ment mode l. J. Shoulder Elbow Surg. 15 : 100105, 2006
※Nakajima T, et al.: Histological and biomechanical characteristics of the supraspinatus tendon. J Shoulder Elbow Surg., 3 : 79-87, 1994.

腱板損傷では、棘上筋の損傷が多く観察されます。

投球では、肩関節に大きいストレスが生じるため、
棘上筋の損傷(特に微細な)は数多く生じてしまうと考えられます。

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Fleisig GS, et al. Am J Sports Med. 1995

特に、リリースではより大きい負荷が肩関節にかかります。

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Fleisig GS, et al. Am J Sports Med. 1995
DeFroda SF, et al. Caff Sports Med Rep. 2016

なので、肩関節、肩甲上腕関節の評価は詳細にしなくてはなりません。

棘上筋の評価は、非常に見逃されやすい評価と考えられます。

なぜなら、評価するのが非常に難しいからです。

なので、
こちらで少し解説していきたいと思います。

棘上筋の解剖

肩甲骨の棘上窩から上腕骨の大結節上部や肩関節包に付着するといわれています。

しかし、
正確な解剖としては、やや前方へ付着するとされています。

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※Mochizuki T, Sugaya H, Uomizu M, Maeda K, Matsuki K, Sekiya I, Muneta T, Akita K. Humeral insertion of the supraspinatus and infraspinatus. New anatomical findings regarding the footprint of the rotator cuff. J Bone Joint Surg Am. 2008 May;90(5):962-9. 上記文献を参考にし、図を作成した

この解剖から、棘上筋の伸張肢位は、肩関節の内転となることがわかります(後述)が、伸展でも伸張肢位になることが考えられます。

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また、
筋線維を詳細に観察すると、前部線維と後部線維で分けられます。

前部線維:腱性部が多い
後部線維:筋性部が多い

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※Mochizuki T, Sugaya H, Uomizu M, Maeda K, Matsuki K, Sekiya I, Muneta T, Akita K. Humeral insertion of the supraspinatus and infraspinatus. New anatomical findings regarding the footprint of the rotator cuff. J Bone Joint Surg Am. 2008 May;90(5):962-9. 上記文献を参考にし、図を作成した
※M Vahlensieck, M Pollack, P Lang, S Grampp, HK. Genant Two segments of the supraspinous muscle: cause of high signal intensity at MR imaging? Radiology, 186 (1993), pp. 449-454

上記を鑑みると、外旋での方がより棘上筋の柔軟性を反映することができるのではないかと考えています。

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棘上筋の評価

ROM

棘上筋が伸張する肢位は、肩甲上腕関節の内転です。

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内転制限が生じることで様々な問題が生じてしまうといわれています。

腱板断裂を有する症例においてGHJの内転制限を呈する

Yano Yuichiro, et al. JSES international 2020.

夜間痛群ではGHA(肩甲上腕関節角度)が有意に増大(内転)し、
肩甲骨下方回旋位が強くなる傾向がみられた。

赤羽根良和ほか:夜間痛を合併した肩関節周囲炎の臨床的特徴.理学療法学(2017):44(2);109-114

わかりにくい評価だからこそ、
正確に、逃すことなく評価する必要があると考えています。

ただ、
普通に内転の可動域を確認すると、体幹が邪魔でROM測定ができません。

工夫をする必要があります。

肩関節内転制限がある場合、上腕骨が体側から離れてしまします。

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その上腕骨を体側につけると、
肩甲骨の下方回旋が生じてしまいます。

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上記のような適応が生じてしまい、正確にROMを診ることができません。

そこで、しっかりと、肩甲骨の上方回旋をしたうえで、
肩甲上腕関節の内転ROMを観察する必要があります。

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肩甲骨の上方回旋を伴うことで、
真の肩甲上腕関節の内転ROMがわかると思います。

以下の動画で確認ください。

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投球動作における鼠径部痛の病態とアプローチ -Groin pain syndrome編-【トレーナーマニュアルvol.167】

今回から、トレーナーマニュアルにて定期的にnoteを投稿させていただくことになりました。C-I Baseball サポートメンバーの 久我 友也 と申します。私は整形外科クリニックで勤務しており、メディカルな視点でお話し … 続きを読む

シンスプリント に対する後足部からのアプローチ【トレーナーマニュアルvol.166】

シンスプリントの選手はどのように対応していますか?安静にするだけでは再発する可能性があります。痛みを軽減するためには後足部(距骨・踵骨)からのアプローチが有効だと考えます。今回は早期復帰&再発予防を行うためのnoteにしました。距骨踵骨だけでなく、舟状骨、立方骨の動きや足部アプローチをご紹介させていただきます。


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公開セミナー情報

9/29(日)10-14時ごろ

須藤によるセミナーが開催されます。 野球選手をはじめとする各種アスリートの動作を変化させ続けてきた須藤の技術を、オフラインで是非体感してみてください。 オンライン参加もあるので、遠方の方もぜひお申し込みください

https://peatix.com/event/4090527

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シンスプリント とは

ジャンプやランニング等の動作の繰り返しにより脛骨内側後面の痛みを訴える疾患
過労性脛部痛、脛骨疲労性骨膜炎、脛骨過労性骨膜炎 (Medial Tibial Stress Syndrome)とも言う

<原因>
膝関節外反、下腿内旋、距骨下関節回内位、足部過回内などにより後脛骨筋、長母趾屈筋、長趾屈筋、ヒラメ筋もしくはその筋膜の伸長刺激による骨膜の炎症であるとする説が多い

<部位>
脛骨の前面もしくは内側


<POINT>
シンスプリント は
 ●安静にしていても改善はしない
 ●足部を回外に誘導すればいいとは限らない
 ●足部・全体の評価が必要になる

歩行(距骨下関節の肢位と動き)

IC:回外位接地、LRに向けて回内へ動く
LR:中間位から回内接地、ここで距骨下関節最大回内位になり回外へ切り替わる
MSt:回内位から中間接地、蹴り出しにむけて徐々に距骨下関節回外位になる
TSt:中間位から回外接地、蹴り出しにむけて足趾機能を高めるために距骨下関節回外位
PSw:回外位、蹴り出すために距骨下関節回外位

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メカニカルストレス

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内側型特徴

発生機序はICからLRにかけて足部全体(横足根関節)が回内することで後脛骨筋・長母趾屈筋が急激に伸張され下腿内側にストレスがかかり発症します。
本来ならば、LRからMStにかけて距骨下関節は回内、横足根関節縦軸は回外することで足圧中心は外側に移動し4趾5趾が機能しなければいけません。

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前方型特徴

発生機序はICからLRにかけて距腿関節の底屈速度が加速することで前脛骨筋・長母趾伸筋・長趾伸筋が急激に伸張され下腿前方にストレスがかかり発症します。
底屈速度が加速してしまう原因は距骨下関節回内可動域低下や反対側の蹴り出しの低下が考えられます。

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距骨下関節

距骨は下腿からと足部からの連結部位になり上からの大きな力を分散する役割がある。
後足部は距骨と踵骨からなる。
荷重位では踵骨の位置により距骨の位置が変わるので踵骨のアライメントを意識することが大事になる。

距骨下関節は関節面が複数あるため複雑な動きをする。距骨下関節の動きは前額面で見ることが多いと思う。
この後紹介する、回内・回外の動きで舟状骨・立方骨を含めて説明する。

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回内・回外の動き(舟状骨・立方骨・踵骨)

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