理学療法士がチームパフォーマンスにどう関わるのか?【トレーナーマニュアルvol.131】

いつもC-I Baseball「トレーナーマニュアル」をご購読頂きありがとうございます!

○今期のトレーナーマニュアル構成

①野球現場でのトレーナー活動
チームトレーナー、育成年代への関わり、パフォーマンスについて
②臨床現場での選手への対応
投球障害への対応、インソールからの介入
上記の①、②においては今まで同様にC-I Baseballスタッフが執筆致します!
そして今期はなんと
◎ゲストライターの登場
バイオメカニクス、栄養、各分野の専門家の方に執筆
◎C-I Baseballメンバーの登場
2020年からC-I Baseballへ加入し育成メンバーとして活動していたメンバーがいよいよライターとして登場します。

C-I Baseballで学び、成長してメンバーの投稿もぜひお楽しみにしてください!

野球トレーナーマニュアル|C-I baseball|

2023年の増田が担当するnoteテーマは「チームトレーナーとして働く理学療法士について」です!
1年間かけて皆様に4つの内容をお伝えしていきます。

①チームトレーナーとして働く理学療法士の役割
②チームの障害を予防するために
③理学療法士がチームパフォーマンスにどのように関わるのか?
④今後、理学療法士に求められるスキル、能力について

3本目の今回は
チームトレーナーとして働く理学療法士の役割について
「チームパフォーマンス」
をテーマに執筆していきます。

■C-I Baseballセミナー情報

○バッティングのバイオメカニクス

講師に株式会社DAH 高木紀史さんをお招きし「バッティング動作のバイオメカニクス」について全2回コースでお話頂きます。
ピッチングのバイオメカニクスについては多くのセミナーが開催されていますがバッティング動作についてはC-I Baseballセミナーしか開催していまいせん!!
参加ご希望の方は下記のリンクよりご参加下さい!!

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野球動作のバイオメカニクス理論編(ビッチング・バッティング・スプリント)全6回コース

なぜ今回のシリーズでは理学療法士のチーム内での働き方について執筆しているのか?

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3本目にして、このnoteで「チームトレーナーとしての理学療法士」について執筆しているのかをお話していきます。

理学療法士がトレーナーとしてスポーツチームに所属した際に悩むことはなんでしょうか?
・トレーニングについて
・外傷対応について
・アスレティックリハビリテーションについて
・選手のパフォーマンスアップについて

上記のようなことが挙げられるのではないかと思います。
このような悩みはどうやって解決すれば良いでしょうか?

方法は
・経験がある方に指導してもらう
・セミナーへ参加する
・自分自身で練習する
・SNS等で情報を収集する
などの解決策が様々あると思います。

解決策があるということは自分自身で行動すれば改善できますし
世の中にはたくさんの情報が溢れています。
なのでここに挙げた悩みは「表面的な悩み」だと考えています。

では「本質的な悩みはなんでしょうか?」

それは「チーム内でのトレーナー(理学療法士)としての動きや考え方、存在意義」ではないでしょうか?

チーム内でどのように自分自身の居場所を作り、価値を生み出し、生きていきのか?
そのような方法や経験を教えてくれるコンテンツは少ないと思います。

なので、このnoteでは私自身が経験した「チーム内でトレーナー(理学療法士)」についてご紹介していきます。

チームパフォーマンスとは?

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本題に入る前に「チームパフォーマンスとはなにか?」について考えていきましょう。

チームの定義

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チームとはなにか?
チームと似た言葉でグループがあります。
チームとグループではなにが違うのでしょうか?

・2人以上の人が集まっている→グループ
・「共通の目的」を持った人が2名以上集まっている→チーム

チームとグループの違いは「共通の目的」を持っているか否かで大別することが出来ます。

パフォーマンスとは?

パフォーマンスとは、「成果」と表現することが出来ます。
選手が実力を発揮し、成果を出すことを指します。
トップアスリートは最大の実力を発揮出来ることで、大きな成果を得ることが出来ます。

チームパフォーマンスとは?

では、チームパフォーマンスとはなにか?
今までの話をまとめると、「共通の目的を持った2名以上が成果を出すこと」をチームパフォーマンスといいます。

野球チームにおいての最大の成果とは何でしょうか?
それは
「チームの勝利」です!

トレーナー(理学療法士)がチームパフォーマンスに関わるということは
すなわち「勝利に関わる」ということになります。

トレーナーは試合中にサインを出してチームを勝利に導くことは出来ません。
なのでトレーナーの最大の成果は
「チームが勝利に貢献するための選手のコンディショニングを維持・向上すること」です。

チームパフォーマンスの決定因子

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チームパフォーマンスの決定因子には様々な要素があります。
・フィジカル
・スキル
・戦術
・チームワーク
・コンディショニング
・役割分担 適材適所

上記のように数ある因子の中で理学療法士はどこに関わるのでしょうか?

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中学野球におけるチームトレーニング② –アセスメントの実際– 前編【トレーナーマニュアルvol.130】

C−IBasebal1期生の平川です。
今回の配信はサポートメンバーシリーズとなります。

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今回は8月に書かせていただいた前回配信の−プログラム立案−に続く内容となります。

中学野球におけるチームトレーニング①–プログラム立案–
中学野球におけるチームトレーニング②–アセスメントの実際–
中学野球におけるチームトレーニング③–トレーニング3年計画–

プログラム立案の内容に含まれていた身体に関するアセスメントについて詳しく解説させていただきます。
それでは早速内容に入らせていただきます。

はじめに

アセスメントは、クライアントや選手、チームの現状を把握するための専門的な手段の1つです。
選手やクライアントの管理、人選や才能の発掘、標準化されたトレーニングプログラムの立案に関して、意思決定の有効性についての重要な指標とされます。

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競技スポーツに関するアセスメントはいくつか存在し、それらをパフォーマンスピラミッドによって分類することができます。

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今回は

– 身体計測
– メディカル(ムーブメント)チェック
– フィジカル(パフォーマンス)テスト→後編

について解説していきます。
※以後それぞれカッコ枠内の名称に統一させていただきます。

身体計測

一般的に身体形態・身体組成のアセスメントはパフォーマンステストの枠組みとされていますが、身体形態・組成はファンダメンタル(身体構成)のアセスメントにあたり、ムーブメントチェックの土台になると考えます。
このことは、パフォーマンスピラミッドからみてわかるようにファンダメンタルの変化によってその上のムーブメントやパフォーマンスへと影響を及ばします。

さらに、中学世代は身体変化が生じやすい思春期にあたります。
その変化に影響を及ぼしやすい栄養・睡眠・ホルモン・疲労などの変化を確認する上でも身体計測はアセスメントの基礎として重要となります。

https://twitter.com/hrkw031yk/status/1652593027960164352?s=20


一般的に身体計測では、

– 身長
– 体重
– 身体組成(体脂肪率、除脂肪体重の算出)
– 筋形態

が計測されます。

中学世代では、特に身長と体重の定期的な測定が必要と考えています。
身体組成および筋形態に関しては、
発育発達パターンより中学生の筋成長(筋肥大)が著しくないことや
In-BodyやMRIを用いての計測となり時間的・金銭的にコストがかかるため、優先度が低くなります。
そのため、今回は割愛させていただきます。

身長

成長期では、身長とスキルパフォーマンスに相関があると多くの報告がされているため、身長を伸ばすことが良い意味で捉えられます。

その一方、中学世代は第二次性徴の出現によって身体形態、筋力や身体スキルのパフォーマンスに急激な変化が起こります。
「動きのぎこちなさ」といわれる運動連鎖の破綻による障害発生やパフォーマンス低下も同時に生じていると考えられます。

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ポジション別に考える金具スパイクの選び方【トレーナーマニュアルvol.129】

金具スパイクを購入する際に何を基準に決めますか?金具に色々な特徴があるのはご存知でしょうか?

同じメーカーでも本数、位置、形状が異なるものがあります。

本数や位置が異なるということは動きの向き不向きがあります。野球はポジションにより動きが異なります。ですから、ポジションにあった金具を選ぶことがパフォーマンスアップにつながります。

今回のノートはポジションの動きを考慮した金具の選び方という形でご紹介してまいります。

いつもC-I Baseball「トレーナーマニュアル」をご購読頂きありがとうございます。CIBスタッフの須藤です。


↓↓↓まだまだ参加可能な勉強会とトレーナーマニュアルのご紹介です↓↓↓

野球動作のバイオメカニクス理論編(ビッチング・バッティング・スプリント)全6回コース野球動作のバイオメカニクス理論編(ビッチング・バッティング・スプリント) 全6回コース ※CIBオンラインコースへ入会し、ptix.at

野球トレーナーマニュアル|C-I baseball|note【C-I Baseballトレーナーのトレーナーマニュアル】 投球障害肩・肘、腰痛、捻挫、肉離れ、下肢障害など野球におけるnote.com

グローブやバットはこだわりを持っているのですが、スパイクは履きやすさや値段を重視している選手が多く見られます。

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是非スパイクは金具を見て選んでください!

*今回は『右投げ』でお話しをさせていただきます。

投手向きの金具

どのフェーズを意識するのか?

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意識するフェーズ(投球相)により金具の位置は変わります。

足部の動きの特徴
Early cocking:ホームへの押し出し 
Late cocking:前足部で斜め方向への蹴り出し
Acceleration:前足部で前方への蹴り出し

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Early cocking

Early cockingでは投手により足底内側で行う場合と、足底外側で行う場合があります。
どちらを意識するのかにより異なります。

内側を意識 ➡️ 金具が内側に多くある
        内側の金具の面が側方を向いている
外側を意識 ➡️ 金具が外側に多くある
        外側の金具の面が側方を向いている

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チームサポート〜リトルリーグ編〜育成メンバーの声【トレーナーマニュアルvol.128】

いつもC-I Baseball「トレーナーマニュアル」をご購読頂きありがとうございます。

C-I Baseballでは現在40名を超えるメンバーが在籍しており、野球トレーナーとしての知識・技術を学んでいます。

■セミナー情報

【encounter × C-IBaseball コラボセミナー】

腰椎分離症に対する ”本当の” 検査・評価・治療アプローチ
〜再発ゼロと戦い続けたセラピストの死闘〜

広尾整形外科リハビリテーション科 科長
石谷勇人先生


【セミナー内容】
腰椎分離症患者に対して本来しなければならない検査測定、病態に合わせた治療アプローチ、そして、スポーツ現場で再発ゼロを目指した取り組みも合わせてご紹介致します。

お申し込みはこちらから↓↓

腰椎分離症に対する ”本当の” 検査・評価・治療アプローチ 〜再発ゼロと戦い続けたセラピストの死闘〜”ESO会員”とは月額制のサービスです。・過去のセミナーがアーカイブで視聴可能 ・セミナーが無料(一部有料) ※注意事項:peatix.com

C-I Baseballチームサポート

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C-I Baseballでは「リトルリーグのチームサポート」も行っております。
現在は、世界一、全国優勝経験があるリトルリーグチーム1チームのサポートを行っております。

「チームサポート」へは、スタッフだけでなく育成プログラムで知識・技術を学んだ育成メンバーもチームに派遣されます。

学んだこと、体得した知識を発揮出来る環境があるのもC-I Baseballの強みです。

今回のnoteではC-I Baseballサポートチームに帯同している「育成メンバーの声」を皆さんにお届けします。

リトルリーグ現場での活動

・チームトレーニング

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リトルリーグ現場ではチームトレーニングを中心に行っております。
リトルリーグ選手に「身体のベースの構築」をテーマに毎月1回トレーニング指導をしております。

・選手の身体・運動リテラシーの向上

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トレーニング指導の冒頭では、今後選手が自分自身で考え、気づきトレーニングやケアを行えるように「身体やケガについての勉強」の時間を設けています。
選手のリテラシーを向上させることで今後長く活躍できる選手を育成していきます。

リトルリーグ現場へ派遣された育成メンバーの声

今回は3名のメンバーに野球現場で活動して何を感じたかを聞いてみました。

●テーマ

・小学生に対するメニューの考え方
・他のカテゴリーと比べた関わりの違い
・他のカテゴリーを経験したことで小学生に生かせること

●派遣メンバー

・吉田亮太郎
・神谷紘生
・三輪智輝

吉田亮太郎

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・小学生に対するメニューの考え方

『様々な動きを取りいれる』
現代の小学生は、公園で遊具にふれたり、外で身体を動かしたりする機会が減っております。また、洋式の生活に慣れた結果として、「しゃがむ」ことさえ出来ない小学生も多いです。それは、野球という競技をしている小学生も例外ではなく、そういった能力が低下してしまっていると感じます。子供が獲得すべき基本動作に関して、発達発育学者の中村和彦氏が提唱している『36の基本動作』というものがあります。これは、子供が成長していく過程で学習する動きを大きく36のパターンに分けたものです。この中でも、

・這う
・転がる
・くぐる
・押す
・飛ぶ

等の動きは、苦手な選手が多い上に、野球につながる基本動作でもあるため、メニューにうまく組み込みたいと考えております。具体的なメニュー例としては以下のようなものが挙げられます。

・馬跳び
飛ぶ人→「押す」「飛ぶ」能力
支える人→股関節屈曲を作って支える能力

・三角のポーズの下をくぐる
三角の人→上肢支持をして、股関節屈曲・上肢支持する能力
くぐる人→「這う」「潜る」能力・脊柱の側屈機能

・視覚刺激(指示者によるグーパー)や聴覚刺激(ホイッスル)の反応で転がる
「転がる」という運動に対して、異なった刺激を与え、刺激に対して反応して運動を遂行する能力

・他のカテゴリーと比べた関わりの違い

『いかにして集中させるか』
基本的に、どのカテゴリーの選手に対しても、正しい動きを伝えることや、メニューのポイントを伝えることは難しいものです。
中でも特に、小学生に対して指示を出すことは格段に難しく感じます。他のカテゴリーに比べて、選手の注意が様々な方向に移ってしまい、1つのメニューの間さえ集中を保つことが難しいことも多くあります。

そこで、選手に指示を出す際には、「大きく、短く、メリハリのある」指示を出すことを心がけています。また、集中の持続が難しいと感じたときには、一度レクリエーション要素のあるメニューを入れたりすることも必要だと、最近感じております。気づいたら選手が「楽しく」トレーニングに集中している状態が、自分としては理想ではないかと考えます。

『保護者の方への情報提供』
高校生、大学生等の上級カテゴリーと比べると、選手の保護者の方の役割というのが非常に重要になります。小学生の身体を作っているのは、保護者の方の毎日の食事であり、言ってみれば、毎日の練習やトレーニングよりも欠かせない部分になって来ると思います。当チームでは、毎週1回LINEの配信を行っており、私は主に食事と栄養について情報発信を行っております。保護者の方からは、栄養や食事に関する相談は多く、
「ジュニアプロテインの有用性」
「一日の中での食事のタイミングや量」

等の質問を多く受けます。小学生世代の親御さんたちは、毎日忙しく仕事をしていて、つい食事のメニューに関して時間を避けないことも多いと思います。そのため、「手軽に購入できる高栄養食品」等の情報も発信することも意識して行っております。・他のカテゴリーを経験したことで小学生に生かせること

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フォークの投げ方(前編)【トレーナーマニュアルvol.127】

いつもC-I Baseball「トレーナーマニュアル」をご購読頂きありがとうございます!
C-I Baseballはで4期目を迎えました。

ここまで、C-I Baseballの活動を続けられているのは、我々の活動を応援し、必要として下さる皆様のおかげです。

この場を借りて感謝申し上げます。

前回の私の担当ではツーシームの投げ方を紹介させていただきました。

さて、今回はフォークボールの投げ方を紹介します。

フォークボールと言えば、メジャーリーガーの野茂英雄さんや佐々木主浩さんを思い出させる方もおられると思います。

今回も、記事の内容をしっかりと理解していただければ、野球歴や、年齢、ポジション問わず、誰でもがフォークボールが投げるようになれますので、ぜひ、ご一読ください。

フォークボールの軌道

落ちるボールを投げられるとピッチングの幅が広がります。

その代表格なのがフォークボールになります。

プロ野球を見ていると最後にフォークボールで空振りというシーンをよく見ます。

フォークを投げたいが、実際に指で挟んで投げても少し遅いストレートになってしまうのがほとんどの選手。

フォークを徹底研究して投げられるようになりましょう。

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パフォーマンスアップのための足部トレーニング【トレーナーマニュアルvol.126】

初めに

こんにちは!理学療法士の野坂光陽です!

理学療法士として整形外科のクリニックに勤務しながら
主に高校野球の現場で、トレーナーとして活動をしております。

前回、育成メンバーとしてnoteにて執筆させていただいたのですが
今回は第2弾として、パフォーマンスアップのための足部トレーニング
と題しまして、記事にさせていただく機会をいただきました!

パフォーマンスアップには、足部の機能が非常に重要であると
考えています。

なぜなら、足部は身体の土台として機能しているからです。
そして、その足部の機能の恩恵で、自分の走力(スプリント)や
アジリティ能力が向上すると考えられています。

今回はそんな足部機能について、深掘りをしていきながら
後半はしっかりとトレーニング動画を載せていますので
今回のnoteをご覧いただき、今後のトレーニングの一助に
なれば幸いです。

前回の記事も貼り付けてあるので、そちらも合わせてご覧ください。

それではいきましょう!!

そもそも【足】とは?

足の【解剖】

人の足には、片足で

28個の骨
107本の靱帯
19の筋
33の関節

という、とんでもない数が存在し、
人体の中で最も複雑な構造と言われています。

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片足における組織の総数

その特徴である複雑な構造ゆえに、地面などの接触面に応じて
足部の形状が柔軟に変わることで、身体の平衡とバランスを
保てるのが、足部の最大の特徴の一つと考えられています。

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そして、直立二足歩行である人間の特徴として、
唯一地面に触れているのが「足部」なので、
足部には人の動きに関与する機能が多くあると言われています。

足の【機能】

前述したように、足部には複数の関節があるおかげで
地面との接地面に即して、足部自体の形状を変えて
その結果として、身体の平衡機能、バランスをとるという
重要な機能があります。

また、足部の機能として重要なものの一つに「バネ」としての
機能があります。

専門用語でいうところの「Stretch Shortening Cycle」という機能が
パフォーマンス向上のキーとなります。

足部における重要な機能
1.バランスをとる
2.支持をする
3.バネの役割

足部機能について(各論)

今回は内容の関係上、足部のバランス機能についてお話を進めていきます

野球動作においてのバランスを考えた時に、
このnoteで取り上げるのは、
投球動作における片脚立位と
ステップ足のバランス

そして、バッティングの時の軸足、
そしてステップ足のバランスです。

足にできるベンチ(たこ)ができる位置と投球障害

2018年の安田先生の論文では、投球障害の既往歴を有する野球選手を
調査したところ、既往歴を有する選手の足裏の前足部、特に外側部分に
ベンチ(たこ)が確認される例が有意に多く存在したと報告されています。

ベンチ(たこ)というものは、皮膚と床面(靴)との摩擦や剪断力で
生じる皮膚の硬結のことです。

この文献を読んで、外側にあれば投球障害のリスクが高まることが
考えられますし、逆に内側にあるのは問題ないと結論づけるのは
時期早々ですが、前足部外側にできるということは、動作中に
外側荷重もしくは外側に剪断力が過剰にかかってしまっていることが
考えられます。

どちらにしても、剪断力が生じてたこができているということは、
足部が過剰に動いていることを証明する証拠となります。

そして、足部の過剰な動きというものは、すなわち
足部より上位の身体の過剰な動き、もしくはその過剰な動きを代償するために、より過剰な固定を強いられているということを意味しています。

どちらにしても、足部に存在するベンチ(たこ)という重要な情報を
見逃さないようにしていただきたいですし、
剪断力がかかっていることを意味しているということを念頭において
評価や観察をする必要があると考えています。

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投球障害肩に活かす肩甲胸郭機能【トレーナーマニュアルvol.125】

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いつもC-I Baseball「トレーナーマニュアル」をご購読頂きありがとうございます!
C-I Baseballは2023年5月で4期目を迎えました。

ここまで、C-I Baseballの活動を続けられているのは、
我々の活動を応援し、必要として下さる皆様のおかげです。
この場を借りて感謝申し上げます。

2023年7月よりトレーナーマニュアルもリニューアルしお届けしております。

今期のトレーナーマニュアル構成

①野球現場でのトレーナー活動
 チームトレーナー、育成年代への関わり、パフォーマンスについて

②臨床現場での選手への対応
 投球障害への対応、インソールからの介入
 上記の①、②においては今まで同様にC-I Baseballスタッフが執筆致します!

そして今期はなんと…
③ゲストライターの登場
 バイオメカニクス、栄養、各分野の専門家の方が執筆します

④C-I Baseballメンバーの登場
 2020年からC-I Baseballへ加入し育成メンバーとして活動していたメンバーがいよいよライターとして登場します。

C-I Baseballで学び、成長してメンバーの投稿もぜひお楽しみにしてください!

はじめに

理学療法士として、投球障害肩を診る以前に、まず肩関節の機能を理解しなくてはなりません。

肩関節の機能を理解するにあたり、
・肩甲上腕関節
・肩甲胸郭関節
この二つの理解が必要です。

小林が担当するNoteでは、
機能解剖に基づく内容等に触れてきました。

今回は、肩甲上腕関節ではなく、肩甲胸郭関節における
運動の繋がりについて記載していきたいと思います。

肩甲骨運動の定義

肩甲胸郭関節機能を考える上で正常な運動を考えなくてはなりません。

投球障害肩においても、純粋な
・屈曲
・外転
が正確に最終域まで可能な症例は多くないと考えています。

厳密にみると、
最終域のところで脊柱で代償していたりと純粋な運動ができていないということがあります。

正確にみていくことが重要です。

肩甲骨がどのように動いていないか?を議論するときに、下記の肩甲骨運動の定義が必要です。

肩甲骨運動を整理します。

バイオメカニクス的には5方向に分けることができます。
しかし、それぞれの軸が異なります。

肩鎖関節軸で考えられるもの
・内旋 外旋
・上方回旋 下方回旋
・前傾 後傾

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胸鎖関節軸で考えられるもの
・内転 外転
・挙上 下制

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上記の5方向に分けられます。
この定義を持って議論しなくてはなりません。

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上肢挙上時の正常な肩甲骨運動

上肢挙上時における肩甲骨運動を整理します。

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・Ludewig PM, et al. J Orthop Sports Phys Ther. 1996
・Lukasiewicz AC, et al. J Orthop Sports Phys Ther. 1999
・McClure PW , et al.: J Shoulder Elbow Surg. 2001
より引用

基本的には、肩甲骨の上方回旋と後傾が重要だといわれています。

上方回旋に関しては、その割合も重要とされ、
大まかに肩甲骨1に対して、肩甲上腕関節2の割合で動くとされています。

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※Codman E A. The Shoulder. Thomas Todd, Boston. 1934.
※Inman V T, Saunders J B, Abbott L C, et al. Observations on the function of the shoulder joint.  J Bone Joint Surg Am, 1944; 26: 1-30.

しかし、その2方向だけでなく他の運動も重要です。
その1つとして、障害(インピンジメント)の例を見てみます。

インピンジメントがある症例は、
上方回旋と後傾に加えて、肩甲骨外旋も欠如しているという報告が多数あります。

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画像内の引用文献参照

また、肩甲骨運動も身体の他部位の影響があります。

まずは、頭頚部の影響を診ます。

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※Thigpen CA, et al.: Head and shoulder posture affect scapular mechanics and muscle activity in overhead tasks. J Electromyogr Kinesiol, 20(4): 701-709. 2010

頭位前方位、いわゆるForward Head Posture(FHP)といわれるものは、
肩甲骨運動に影響を与えます。

・肩甲骨の上方回旋低下
・前鋸筋出力低下

が言われております。

頭頚部→胸郭→肩甲骨といった繋がりがあり、肩甲骨運動を阻害してしまうことが考えられます。

次に、胸椎の影響を診ます。

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※Finley MA, et al. Effect of sitting posture on 3-dimensional scapular kinematics measured by skin-mounted electromagnetic tracking sensors. Arch Phys Med Rehabil. Apr;84(4):563-8. 2003


胸椎が後弯することにより、

・肩甲骨の後傾低下
・肩甲骨外旋低下

が生じます。

つまり、上肢挙上しにくいアライメントになるかと言えます。

さらに、
男女の差も多くあります。
女子野球の選手を診るときは、考えなきゃいけません。

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※Hiroko Nakayama, et al.: Analysis of scapular kinematics in three planes of shoulder elevation: A comparison between men and women J Phys Fitness Sports Med, 7 (1): 65-74 (2018)
※Schwartz C, Croiser JL, Rigaux E, Brüls O, Denoël V and Forthomme B. 2016. Gender effect on the scapular 3D posture and kinematic in healthy subjects. Clin Physiol Funct Imaging 36: 188-196. ※Cameron KL, Duffy ML, DeBerardino TM, Stoneman PD, Jones CJ and Owens BD. 2010. Association of generalized joint hypermobility with a history of glenohumeral joint instability. J Athl Train 45: 253-258.
※Wolf JM, Cameron KL and Owens BD. 2011. Impact of joint laxity and hypermobility on the musculoskeletal system. J Am Acad Orthop Surg 19: 463-471.

簡単に言うと、
男性の方が肩甲骨が良く動く
女性の方が肩関節が良く動くというところです。

女子野球選手は、肩関節が柔らかいからこそ、
肩甲骨運動は重点的にやっていかなくてはなりません。

肩関節屈曲と外転時の胸郭、脊柱運動の違い

さて、いままで、様々な条件での肩甲骨運動の違いを述べてきました。
また、性別でも異なることがわかりました。

ここからは、肩関節の
・屈曲
・外転
時の肩甲骨運動、胸郭、脊柱運動の違いを述べていきます。

屈曲と外転の肩甲骨の動き

まずは、動きの違いを診てみます。

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球速とピッチングのバイオメカニクス【トレーナーマニュアルvol.124】

みなさん、こんにちは。帝京大学スポーツ医科学センターの、大川靖晃です。 こちらでは、7月に引き続き2回目の投稿となります。前回の記事はこちらから 今回は、11月9日に行われる予定のencounter×C-I Baseba … 続きを読む

トレーニングと眼球運動【トレーナーマニュアルvol.123】

いつもお読みいただきありがとうございます。
C-I baseballの佐藤康です。

私は現在、さまざまなカテゴリーの野球現場に携わらせていただいておりますが、中でもジュニア世代の関わりの重要性に強く関心があります。

育成年代の特徴としては、学年が同じでも、成長の個体差があることで球速や打球の飛距離など体力差が顕著にみられることもしばしばあります。反対に、カラダが小さくても運動能力に優れていることでその関係が逆転したり、野球のパフォーマンスに生かされていることもあります。

これには、成長発達過程において、いかにさまざまな運動経験をしてきたかが重要な点の一つであると思います。野球現場にて指示された動きを身体ですぐに表現できる選手などもそういった印象は強く受けます。

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<C-I baseballセミナー紹介>
11月9日(木曜)21:00-23:00開催!!
パフォーマンスに関わるトレーナー・セラピストには必見の内容です!
球速アップをテーマに、MPI Tokyo大川靖晃先生、元横浜DeNAトレーナーの高橋塁先生による研究・野球現場のプロがみる両視点から見解を聞ける貴重なセミナーです!

球速アップのためのバイオメカニクスについて

<C-I baseballセミナー紹介>
10月28日(土曜)スタート
野球動作のバイオメカニクス理論編
・ビッチング・バッティング・スプリント 全6回コース


待ちに待った方も多いのではないでしょうか⁉
これまでにもセミナー開催し大好評であった高木紀史先生!
バイオメカニクス理論編と題し、
なにを考え、なにを基準にして、動作を捉えているのか?
一気に学べる機会はなかなかありません!

野球動作のバイオメカニクス理論編

https://twitter.com/C_IBaseball2020/status/1716226097904505018?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1716226097904505018%7Ctwgr%5Eb205f5f5eaefa0c4d18059ae4401ab261b6b3049%7Ctwcon%5Es1_c10&ref_url=https%3A%2F%2Fnote.com%2Fc_ibaseball%2Fn%2Fn7207df5982c2

前置きが長くなりましたが、タイトルに挙げました「トレーニングと眼球運動」についてまとめていきます。

野球という競技は一つのボールを用いて選手が動きます。その中で、ランナーの動きや守備シフトの動きなど、もの・人の対象の動きに注意を向けたことが試されるスポーツです。

視機能について

スポーツ選手のルーティンワークなどにより、スポーツビジョンやビジョントレーニングというワードをご存知の方も多いと思います。

これは視機能を高めるワークですが、野球での視機能の重要度は他競技に比べても高いという報告があるように、野球はボールや選手の動きをみて情報入力し、瞬時に判断し対応することのスピード・精度が求められる競技です。

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参考|American Optometric Assosiation

上図にもありますが、
一般的な「視機能」の8つの要素を整理していきます。

8種類の視機能

①静止視力
止まっている目標を見る能力
➁深視力
前後の距離の差を感じる能力
➂瞬間視
見えたものを一瞬のうちに入力する能力
④眼球運動
静止した目標間に視線を移す能力
⑤コントラスト感度
明暗のコントラストを識別する能力
⑥KVA動体視力
まっすぐ近づいてくる目標を見る能力
→例:高速で近づくボールの認識
⑦DVA動体視力
横に移動する目標を見る能力
⑧目と手の協応動作
目で捉えた目標に手で反応する能力
→例:守備時の打球処理・捕球

これらが相互に協調的に機能することで、視機能として表現することができます。また、それらの各要素を抽出した形式で視機能を高めることにつながります。

視力との関係性

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メニコンの研究報告によると、小中学生を対象とした”視力とスポーツビジョンの関係”では、多くの評価項目で視力が高いほどスポーツビジョンの測定値が高くなる結果があります。併せて、視力1.0以上と1.0未満で比較では、とくにKVA動体視力や深視力にて大きな差が出ています。

・視力は1.0以上
・スポーツパフォーマンスを向上させるためには視力の重要度が高い

つまり、スマホやゲームなどスクリーンタイムの長時間化では平面からの情報入力を行い続けることで、さまざまな要素を持つ視機能が低下してしまうことが予想されます。

野球×視機能

表にもあるように、特に打撃(バッティング)ではその要素が特に強くあることが報告もされています。

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参考|村田厚生 他:スポーツビジョンと野球の打撃能力の関係.人間工学

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投球動作におけるearly cocking phaseの軸足機能ついて【トレーナーマニュアルvol.122】

はじめまして。
C-I Baseball1期生の北山達也と申します。

サポートメンバーによるnoteシリーズ第4弾となります!

今回私が書かせていただく内容は、投球動作におけるearly cocking phaseの軸足機能ついてになります。

私自身は整形外科病院に勤務する傍ら、高校野球のトレーナーとしても活動しております。

はじめに

実際にみなさんは投球動作中の軸足についてはどのようなところをみられていますか?
これは言い換えると「下半身が使えているか」どうかをみているということになるのではないでしょうか。
現場レベルでは頻繁に使われる言葉ですが、実際に言語化されていることはあまり多く経験しません。

アトラクター

アトラクターとはその動作において普遍的な動きのことを指し、パフォーマンスが高い選手に必ずみられる動作のことを指します。
つまりパフォーマンスアップにおいて、まずパフォーマンスが高い選手に共通している動作が行えているのか否か確認することが重要になります。
ではearly cockingの軸足におけるアトラクターとは何でしょうか。

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