野球選手の足関節捻挫に対するトレーニング【トレーナーマニュアル18】

C-I baseballのトレーニングを担当する佐藤康です。

今回の内容は
「足関節捻挫のメディカルリハビリテーションの流れ」
についてまとめています。

捻挫を発症した選手、足関節に不安定性を抱えた選手の
復帰に向けてどのような関わり方をしていくのか?

足関節捻挫として対応することの多い内反捻挫への対応について、ジョギング開始までの流れについてまとめていきます。

画像1

メディカルリハビリテーションのすすめかた

足関節捻挫のリハビリテーションを対応する際に
まずどのような目標を設定し、どのような流れで進めていくのか
を簡単にまとめていきます。

目標設定

今回のテーマに挙げた捻挫ですが、
内反捻挫時には前距腓靭帯・踵腓靭帯が
多い受傷部位として挙げられています。

画像4

リハビリテーションにおける競技復帰の目標においてはランニングができることが目標になります。

負荷強度も含めランニングの前提であるジョギングがメディカルリハビリテーションにおける目標としています。

不完全な治癒のケースでは再受傷するケースも少なくなく、治癒過程において再受傷を予防する足部・身体つくりが求められます。

段階的な対応手順

急性期→亜急性期→回復期→アスリハへの移行
と大きくわけて解説していきます。

画像2

肉離れでの対応に同じく、炎症所見の改善が求められる急性期対応
アスリハの移行に向けて、可動域や筋機能を改善し、動作の獲得を図っていきます。

急性期対応では
患部の保護と腫脹の抑制といった炎症所見の改善が重要となります。

亜急性期では
残存する腫脹の除去対策と可動域・筋力の回復を図っていきます。

回復期では
段階的な荷重運動を通し、動作レベルの向上・獲得を目指しアスレティックリハビリテーションの移行へとつなげていきます。

画像7

メディカルリハを進める上で整理しておくべきこと

メディカルリハビリテーションを進めるにあたって、
以下はおさえておくべき事項であると思います。

損傷した組織の治癒過程(靱帯・腱)
捻挫の重症度
スポーツ復帰までの期間
病態理解(病期に応じた対応)

画像4

内反捻挫の理解を深める病態と評価

今回お伝えする内容は「トレーニング」ですが、
トレーニング方法を理解する前に
病態の解釈・筋機能を中心とした評価方法
については知っておかなければなりません。

病態

評価

トレーニング前におさえておくポイント

トレーニングを進める前に以下のポイントを注意しておきます。
特に重症度の理解は重要であるため、後述してまとめています。

受傷機転
|どのようなメカニズムで受傷したのか?
重症度
|捻挫がどの部位をどの程度損傷しているのか?
治癒過程
|どのような過程で損傷部位が修復されるのか?
初期対応
|炎症を最小限に抑えるための方法とは?
再受傷の危険因子
|負荷の設定方法や運動負荷による再受傷のリスクとは?

内反捻挫による靱帯損傷後、多くの場合保存療法が選択されます。

保存療法で損傷した靱帯を治癒させながら、足関節に構造的な不安定性が起こらないようにすることを目指していきます。

①受傷機転の理解

受傷機転については以下の記事で詳細に解説しているため、割愛します。

非接触型による受傷の多い内反捻挫であるポイントをおさえておきます。

②重症度

Kannusらの報告

GradeⅠ:靭帯の損傷がなくストレッチされた状態でわずかな腫れと圧痛
GradeⅡ:中等度の疼痛と靭帯の部分断裂。軽度から中等度の関節不安定性
GradeⅢ:靭帯の完全断裂。強い腫脹,出血,圧痛,機能低下, 関節不安定性

(引用:捻挫の病態と動作|小林弘幸 より)

一般的な復帰期間として以下の期間が挙げられています。

GradeⅠ:2~4週間
GradeⅡ:4~6週間
GradeⅢ:6週間以上or ope

そのため、復帰を考える上で、
重症度における損傷の程度も重要ですが、
損傷部位を特定して適切に対応することが重要となってきます。

③治癒過程

急性外傷における復帰時期について考えるときは組織の治癒過程を考慮していきます。

画像14

つまり、受傷直後から身体の内面は治癒が始まっており、外力に対する靱帯の張力は3週程度から強くなってきます。

そのため、リハビリテーションを進める上でも、病態診断・病態に応じた治癒過程・期間を十分に把握しておく必要があります。

メディカルリハビリテーションの実際

つぎに、メディカルリハビリテーションの流れを解説していきます。

捻挫受傷後のリハビリテーションの主目的

足関節捻挫の治療では受傷パターンや重症度によって組織治癒に要する期間も異なってきます。

損傷組織や複数の損傷組織によっては復帰時期も異なるが、受傷から復帰までの治療プログラムに大きな変わりはありません。
(安静期間・各種トレーニング期間)

急性期では早期の消炎鎮痛とアライメント・ROM改善が治療のポイントとなります。炎症が軽減して荷重可能となる回復期では、急性期治療を継続しつつ積極的な筋機能回復を図ることで動作レベルの向上につなげていきます。

画像15

運動復帰の基準

続きを読む

野球選手の足関節捻挫に対する評価・アプローチ【トレーナーマニュアル17】

C-I Baseballの評価・アプローチの発信を担当する須藤慶士です。
臨床では評価を大切にしております。評価が確かなものでないと原因に対するアプローチをすることができません。

局所評価だけでなく全体の評価を行うことも大切です。
臨床での経験を元にした評価とアプローチを発信していきたいと思います。

捻挫の評価

捻挫は日常生活・スポーツ現場でも頻度が高い疾患です。

早期復帰・再発予防・パフォーマンスアップのために何が必要なのかを今回のnoteに記載しました。

捻挫は距骨下関節が重要です

距骨下関節の中間位評価が行えることで足部機能を安定させることが可能です。

後半に距骨下関節の中間位評価を載せてありますので参考にしてください。

捻挫に対する病態・動作と合わせて読んでいただき、次回以降のトレーニングを合わせることで、早期復帰・再発予防・パフォーマンスアップが可能になります!

圧痛

前距腓靭帯を触診し、圧刺激を加えた際に痛みが出現する際は靭帯の炎症や損傷が残存している可能性があります。

ストレステスト

足関節を他動的に内反方向に動かし、前距腓靭帯に伸張性のストレスを加えます。

この際に『痛み・不快感』を感じるようなら靭帯の炎症や損傷が残存しているためそれ以上は伸張を加えないほうがいいです。

『伸ばされている』感じなら痛みが出ないようにストレッチを加えて可動域を広げても問題ありません。

捻挫のアプローチ

状態に応じたリハビリ

捻挫直後から開始する場合は、

距腿関節は固定した状態で、足趾・下腿の皮膚誘導・マッサージや、足趾の運動(タオルギャザー・距腿関節固定の足趾で物掴みなど)・膝関節周囲の筋力強化を行いましょう。

足底には多くの感覚センサーが存在するので足底刺激も行うといいでしょう。

膝立ちで行うエクササイズは股関節・体幹に対し荷重下でできるため股関節外転筋力強化やバランス能力向上が期待できます。

*捻挫に対する病態・動作の『他部位への影響』◯膝、股関節の筋機能参照

画像2

安静時・睡眠時のポジショニング

患部の固定方法は受傷度合いに応じて異なります。

受傷後はシーネ固定・バンド固定を行います。

医療機関で巻き方など指導されるとは思いますが、チームトレーナーの立場でしたら、日常生活できちんと固定・誘導できているかの確認をすることが大事です。

下腿の重みで足部に対して下方(床方向)に落ちるストレスがかかり、距腿関節で足部が前方に引き出されるような形になります。

寝るときは下腿と踵骨の下にタオルを入れて重みを取り除き前距腓靭帯へのストレスを軽減しましょう。

画像3

ROMex

底屈方向へのROMexは注意が必要です。

2〜3週間で靭帯が修復しても底屈時に前距腓靭帯に痛みがあれば、それ以上は可動域を広げてはいけません。

伸張痛(伸ばされている・ストレッチされているような感じ)なら内反方向(底屈・内転・回外)へのROMexは行なっていきましょう。

背屈・底屈のROMexする際は、距腿関節の構造・関節軸を意識して動かすことが重要です。

ホールド・リラックスなどを利用して背屈への抵抗運動を行い、前脛骨筋・長趾伸筋・長母趾伸筋などの筋肉を緩めてから底屈方向へのROMexを行うのもいいです。

背屈位でのホールド・リラックス⇨底屈へのROMex

底屈位でのホールド・リラックス⇨背屈へのROMex

筋力強化

筋力強化で重要なのは、

●捻挫中に他部位を強化すること

●医師との連携をとり靭帯の修復をきちんと確認すること

●前距腓靭帯にストレスをかけないこと

●腓骨筋の働きが重要

*捻挫に対する病態・動作の『他部位への影響』◯膝、股関節の筋機能参照

です。

底屈からの背屈運動で距腿関節の軸・構造を把握しながら行うことが重要です。

固定中は距腿関節を背屈していたために足趾が使いにくい状態になっていることが予測できます。

距腿関節・距骨下関節の肢位を変化させながらのタオルギャザーや、足趾での物掴みを行うのも大事です。

荷重位(CKC)での強化は

●固定しているバンドを外して行うのか、使用したまま行うのかは医師に確認しましょう。

●外して行う際はその選手の距骨下関節の肢位が重要です。

●距骨下関節の中間位の肢位は左右によって異なります。

●その中間位の肢位で行うことで荷重位でのトレーニングの効果を高めることができます。

距骨下関節 評価

●体格・体型・形状は個々により異なります。
●一人の体でも左右差があります。
●距骨下関節も同様に構造・動きの左右差はあります。

足部は地面に接している唯一の部位です。

距骨下関節は足部構造の中でも複雑で、重要な関節です。

距骨下関節は約30°の可動域があり、

中間位から回外は20°(全体の3分の2)
中間位から回内は10°(全体の3分の1)

と言われております。

ですから距骨下関節の中間位を評価し把握することは足部疾患をリハビリ・トレーニングしていくためにとても重要です。

画像5

距骨下関節 指標中間位 評価

外果上下にあるラインが直線になる位置を作り、その際の踵骨底面の向きで評価します。

この肢位を距骨下関節の指標中間位と言います。

画像6
画像8

指標中間位を軸にして回内・回外と距骨下関節は動きます。

評価は非荷重位(OKC)で行います。

なぜかと言うと、

CKCの場合、荷重がかかることにより、距骨下関節だけでなく横足根関節や足趾の機能が含まれるので、純粋な距骨下関節の肢位がわかりにくいから

です。

立位で距骨下関節を後側から見た際に、回外位や回内位になっていますがその距骨下関節の肢位が、指標中間位の可能性が考えられます。

ですから、OKCで距骨下関節評価を行う必要があるのです。

理想の距骨下関節肢位は、OKCでの指標中間位のままの肢位で立位がとれることです。

指標中間位のまま立位保持ができれば、立位動作で距骨下関節の回内・回外の動きがスムーズに行えるようになります。

画像7

距骨下関節機能が発揮できることで立位バランスや、足関節周囲の筋肉が収縮しやすくなります。

逆を言えば、機能していない状態でトレーニングしても効果が得られにくいです。

画像16

ここから先は有料部分です

続きを読む