はじめに
今回の内容は5/20にencounterさんとのコラボセミナーでお伝えさせていただいた内容を改変したものになります。
内側型の投球障害肘のリハビリテーションについて、臨床レベルからパフォーマンスアップまで繋げるための治療やエクササイズについて発表させていただきました。
今回は肩甲骨の運動、中でも前鋸筋の機能を最大限に発揮させるためのアプローチについて解説していきます。
前鋸筋について
解剖と機能についての説明を簡単にさせていただきます。
解剖
前鋸筋の筋束は大きく3つに分類されています。
上部筋束:第1, 2肋骨→肩甲骨上角 【肩甲骨下方回旋・前傾】
中部筋束:第2, 3肋骨→肩甲骨内側縁【肩甲骨外転】
下部筋束:第4肋骨以下→肩甲骨下角【肩甲骨外転・上方回旋】
またそれぞれの筋束は他の隣接した筋群と連結しています。
上部筋束:肩甲挙筋と連結
中部筋束:大・小菱形筋と連結
下部筋束:大菱形筋、外腹斜筋と連結
徒手的にアプローチする際はこの筋連結を意識することが大切になります。
投球動作と前鋸筋
投球動作の中ではレイトコッキング(ステップ足の着地から最大外旋まで)で高い筋活動を認めることが報告されています。
前鋸筋はレイトコッキング期において高い遠心性筋活動を認める.
橘内基純,他:投球動作における肩甲骨周囲筋群の筋活動特性.スポーツ科学研究,2011
またレイトコッキングにおけるテイクバックで肩甲骨が内転した(前鋸筋が伸びている)状態から腕を振り出す際に肩甲骨は上方回旋&外転の動き(前鋸筋収縮)が生じますがそのフェーズで前鋸筋が強く働きます。
ここで前鋸筋がしっかりと働いてくれることによって、リリースまで十分な加速距離を生み出すことができます。
レイトコッキングをさらに細かく分けます。
ステップ足の足底接地で肩甲骨は最大外旋、つまり内側に寄るような動きが生じます。
この際重要なのは肩甲骨内側筋群の筋力で強く引き寄せるのではなく、体幹が回旋することにより相対的に肩甲骨が引き寄せられるということです。
そうすることにより大胸筋などの前胸部の筋群が引き伸ばされた張力を使って腕を降り出すことができるため、球速アップなどにも繋がります。
つまりここでは前鋸筋が活動しながらもしっかりと伸張できる柔軟性・滑走性が必要になります。
その後、肩甲骨は外転しながら上方回旋を強めていきます。
MERに向かっていく局面であるこのフェーズでは障害予防だけでなく、パフォーマンスアップのためにも上腕骨外旋だけではなく肩甲骨の外転・上方回旋機能が重要です。
肩甲胸郭関節の動きを引き出すことで、肩関節や肘内側にかかる負荷を分散させることができます。
次章からはこの肩甲骨の運動を引き出すためのポイントを
・肋骨内旋機能
・肩甲骨可動性
・前鋸筋滑走
・エクササイズ、トレーニング
の4つに分けて説明していきます。
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