投球障害肩に必要な”小円筋”のエコー【トレーナーマニュアルvol.70】

C-I Baseballの小林弘幸です。
今月で私たちの活動も3シーズン目を迎えました。
これまで多くの方々にいつもマガジンの記事をお読みいただきありがとうございます!

C-I Baseball3シーズン目は
「実践力」をテーマにライター一同noteを配信していきます!

今シーズンの私が担当する配信では、「エコー」を通じて
肩関節の解剖とそれに対する実際のアプローチを学んでいこうという
コンセプトの元、Noteを書かせていただきます。

元NPBチームドクターのスポーツDrと一緒にエコーを用いて、
野球選手の投球障害肩を診てきました。

投球障害肩になってしまうと、
『痛くて投げられない』
『何をしても良くならない』
『自分のプレーに集中できない』
『野球が楽しくない』
と悪循環になってしまいます。

私はそのような投球【障害】肩を持った選手に対し、
エコーを通じて、細かな解剖を理解しアプローチすることで
治療効果が奏功することを経験しました。

もちろんそれだけでは解決しないことも多数ありますが、
ケガからの復帰をするということを考えると、
細かな解剖を学んでいくということは必要なのではないかと考えています。

解剖書で見る肩関節だけではなく、
エコーを通じて、3次元的に捉える肩関節を一緒に学んでいけたらと思います。

投球障害肩における小円筋

投球障害に対する小円筋は、
前回の許可金同様に非常に関係が深いと感じています。

いわゆる『肩関節後方タイトネス』に対しては、
小円筋が関与していると感じています。

投球時の肩関節にかかるストレスは、
外旋トルク :最大肩外旋直前、17.7±3.5N.m 
肩関節牽引力:ボールリリース時(BR)またはその直後に、214.7 +/- 47.2 N
となっています。

・上腕骨の長軸を中心とした外旋トルクは、最大肩外旋直前に17.7±3.5N.m(2.7%±0.3%体重×身長)のピーク値に達した。214.7 +/- 47.2 N (49.8% +/- 8.3% 体重)の肩関節牽引力は、ボールリリース時、またはその直後に発生した。
※Sabick MB, Kim YK, Torry MR, Keirns MA, Hawkins RJ. Biomechanics of the shoulder in youth baseball pitchers: implications for the development of proximal humeral epiphysiolysis and humeral retrotorsion. Am J Sports Med. 2005 Nov;33(11):1716-22.

BRやその直後は、
内旋運動に対抗する外旋筋が遠心性収縮し、伴って肩関節牽引力も加わるため、
小円筋(棘下筋)にかかる負担が非常に大きくなると感じています。

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図示するとわかりやすいので
下記の図を参考にイメージしてください。

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1球投げるごとに、
小円筋の遠心性収縮が働くことがわかります。

さらに
小円筋を含めた、肩甲上腕関節の後方軟部組織のタイトネスは
投球障害に直接関与します。

・内旋と水平内転の健患差が投球障害側では低下している
※Myers JB, Laudner KG, Pasquale MR, Bradley JP, Lephart SM. Glenohumeral range of motion deficits and posterior shoulder tightness in throwers with pathologic internal impingement. Am J Sports Med. 2006 Mar;34(3):385-91.

なので、
小円筋のタイトネスは、投球障害では
改善しなくてはならない問題と考えております。

投球後の小円筋のタイトネスに関しては、一種の外傷だと考えています。

小円筋の解剖

①支配神経:腋窩神経

支配神経はC5~6になります。

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後神経束へ入り込んだ神経は、
その後分岐し、上腕骨頭の下を通り後方へ走行します。

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オーバーヘッドスポーツでは、
上肢挙上位での神経の走行が重要ですので、
挙上位の模式図もお示しします。

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上腕骨頭の真下を通って
腋窩神経が走行するのがわかります。

関節包に対する神経支配として、
腋窩神経は関節包の
下方に位置します。

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また、腋窩神経からの分岐としては、多数の組織へ分岐していきます。

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・腋窩神経からの分枝は、下記へ分岐する。
SAB(肩峰下滑液包):12/20
LHB(上腕二頭筋長頭腱):8/20
下方関節包:16/20
後方関節包:3/20
LHT(上腕三頭筋長頭腱):3/20
※Nasu H, Nimura A, Yamaguchi K, Akita K. Distribution of the axillary nerve to the subacromial bursa and the area around the long head of the biceps tendon. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2015 Sep;23(9):2651-7.

肩の後方以外に疼痛を訴える選手は、
腋窩神経の絞扼等が考えられるかもしれません。

腋窩神経の絞扼があり、
肩関節上・前・下方の疼痛がある症例は、
小円筋の機能障害が隠れているかもしれません。

②筋の付着部

起始:肩甲骨後面の外側縁
停止:上腕骨の大結節、肩関節包

小円筋は、肩の後下方に位置します。

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小円筋は、肩関節のいわゆる
3rdポジションでの内旋位で一番伸長します。

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また、後方の関節包に付着するため、
長期間に渡り軽微な拘縮が生じていると、
後方関節包の肥厚が生じてしまいます。

身体評価

可動域:肩関節屈曲位内旋(3rd内旋)
筋力:Horn blower Test

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育成年代のトレーニングvol.3-プライオメトリクス-【トレーナーマニュアルvol.69】

C-I Baseballの佐藤康です。
前回の記事では、
スプリント能力を上げるために求める
「ジャンプ動作と腱の機能」に着目し、
お伝えさせていただきました。

ジャンプ動作は筋力やパワーの向上が期待できる反面、強い運動強度により障害を招くリスクも生じます。そのためには、運動時の適した姿勢や機能、頻度などの負荷設定に注意しなくてはいけません。

ジャンプ動作を行うにあたっては、賛否両論ありますが、今回の記事では、前回の内容に加え、ジャンプトレーニングを行う目的から実践まで動画も交えながら、野球現場で導入する方法をまとめていきます。

なぜプライオメトリクスに着目したのか?
育成年代に必要か?

はじめに、私がなぜプライオメトリクスに着目したのかに触れていきます。

➊野球の競技特性
➋成長期の基礎運動能力・神経系の発達過程

野球の競技特性より、競技中の攻守場面において、ワンプレーは数秒から十数秒で行われます。また、プレーの場面場面において、瞬間的に爆発的な力の発揮が求められ、それが繰り返される競技といえます。

すなわち、1試合を通してパフォーマンスを発揮し続けるためには、プライオメトリクスの概念が重要な位置を占めると捉えています。

瞬発的な動作が常に要求される運動では、特に筋・腱の瞬間的に引き伸ばされて縮むときに大きな力が発揮される「Stretch-shortening cycle(SSC)
により、瞬発的な力発揮能力(素早い切り返しや爆発的なパワーの発揮など)の強化が見込めます。

すなわち、SSCを効果的に使うための
トレーニングが「プライオメトリクス」です。

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プライオメトリクスに代表されるジャンプトレーニングでは、直接的なジャンプ能力に限らず、さまざまな体力要素を向上させられるとのエビデンスが示されています。

走る・跳ぶ・投げる動作に関連付けられるスポーツ活動は、動作スキルと神経筋系の発達の観点からも重視されている。子供にとって1~5秒程度の爆発的、高速の運動が理想的である。子供は神経筋系に関与するプライオメトリクスと高速の運動によって、運動能力の向上が促進されることが明らかになっている。

書籍:アスレティック・ムーブメントスキルより引用

その他、「ジャンプトレーニングにより、下肢の筋力やパワーを向上させる手段としても有効」とされており、「スプリント能力をはじめ、方向転換能力やアジリティにも良い影響を与える」と、さまざまな文献でも多く報告されています。

育成年代に導入するメリット

そのような専門的な動きは
「カラダの形態的な成長が落ち着いてきてからではないか?」と問われることもありますが、大人に求める効果とはやや相違があり、成長期の時期から求める重要な要素をまとめていきます。

➊身体形態的側面
➋神経系の発達

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パフォーマンス向上のための投球動作×足部【トレーナーマニュアルvol.68】

Early cockingからAccelerationにかけてのポイントは『ステップ足の肢位と下腿の傾き』です。

接地が回内位になると下腿は内側に傾きKnee-inになります。そうなると骨盤の回旋量は低下し上半身や肩・肘に負担がかかり、コントロールも悪くなります。

●なぜステップ足の下腿が安定しないのか
●ステップ足を安定するためのエクササイズ

【今回の内容】
①理想の足部の動き
②距骨下関節不良肢位と投球フォーム
③足部エクササイズを今回はお話しさせていただきます。

投球動作や送球が乱れる選手はEarly cockingの軸足Late cockingのステップ足に注意してみましょう!

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距骨下関節の肢位

距骨下関節肢位は中間位・回内位・回外位の3通りあります。距骨下関節には回内・回外を分ける『中間点』があり、その肢位は左右により中間位は異なります。私は非荷重位(OKC)で評価を行います。

⬇️⬇️⬇️異なる中間位の評価方法は過去の記事をご参照ください⬇️⬇️⬇️

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投球時の距骨下関節・横足根関節

投球時、軸足と踏み込み足の機能は異なります。
 軸足:バランスを取る→蹴り出す
 踏み込み足:加速した身体を支え、踏ん張り、力を逃す

軸足の機能はセットポジションで両足の支持基底面内にある重心を軸足に移動しバランスをとることや、Wind-upから捕手方向へ重心を移動するために足部を硬め蹴り出す役割があります。

踏み込み足は軸足から移動してきた身体を支えて踏ん張り、上半身の力を逃すようにしなければなりません。

上記の動きが足部で出来れば重心移動や上行性の良好な運動連鎖が遂行可能となります。

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投球時足部の肢位と動き

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Early cocking(前回の復習)

Early cockingで軸足距骨下関節の力を支持から蹴り出しへ使うことができると、骨盤の早期回旋抑制やステップ足のKnee-in抑制ができます。

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Late cocking 軸足とステップ足の機能

Early cockingから軸足距骨下関節は回外方向へ動くことで足部を剛体にしながら母趾で蹴り出しを行います。

Late cockingはステップ足距骨下関節は中間位で接地し支持しながら骨盤が回旋する相です。

《Late cocking軸足の機能》
 ●距骨下関節の理想は回外位
 ●蹴り出し

《Late cockingステップ足の機能》
 ●距骨下関節の理想は中間位

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ステップ足距骨下関節はEarly cockingからの力を逃さずに、身体を支え骨盤を回旋させて肩甲骨・上肢へ力を伝達できる機能が必要です。

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ステップ足の足部機能と下腿

理想は接地したときから距骨下関節は中間位で下腿は地面に対して垂直です。この時の大腿(膝)は捕手方向に向いていないとボールリリースにかけて下肢が動いてしまうため安定しません。

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Early cocking〜Late cocking

ステップ足は中間位接地することでステップ足下腿の崩れがなくなります。

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Late cocking〜Acceleration

Late cockingからステップ足距骨下関節は中間位接地で下腿が正面を向くことで骨盤の左回旋が行いやすくなり体幹の回旋もスムースになります。

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回内接地すると足底は地面に対して内側部分しか接地していないため下腿は内側に傾きます。Accelerationに向けて距骨下関節は中間位になることで下腿の軸は地面に対して垂直に近づいていきます。

Early cockingで回内接地し下腿が傾いてしまうとAccelerationにかけてステップ脚は不安定になり上行性の運動連鎖がスムースに行われなくなります。

プロ野球の投手を見ているとステップ脚は接地から下腿・大腿はほとんど動かずに骨盤の回旋が行われています。(YouTubeなどで見ることができます)

距骨下関節不良肢位と投球フォーム

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軸足不良肢位

《軸足距骨下関節肢位がステップ足に影響を及ぼすパターン》
軸足距骨下関節が回内
しているために下腿の傾きが大きくなるのと下腿内旋がみられます。この状態では重心が身体の前方(写真だとつま先側)に移動してしまうため、ステップ足股関節は内転内旋傾向になり、外転外旋が行いにくくなります。その結果ステップ足足部は回内しながら接地します。

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ステップ足不良肢位

ステップ足が回内位で接地すると下腿は内側に傾きます。
回内位だと足趾が使いにくい状態になり膝が外反し股関節内旋、骨盤の左回旋量低下、体幹投球側傾斜、肩甲骨下制が起こりやすくなります。

不安定例①

足底内側接地すると床反力で一気に回外位になります。
下のスライドの写真真ん中では距骨下関節回内位で下腿は内側に傾いています。下腿の傾きによるknee-inにより骨盤の回旋がスムースに行われません。

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不安定例②

Early cockingでステップ足踵内側接地し回内位で全面接地します。
ステップ足が全面接地する時の底屈速度が速いく、回内接地することで足底からの床反力が外後方に向かうため骨盤のswayが見られます。

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パフォーマンスを上げるための体幹トレーニング−理論編−【トレーナーマニュアルvol.67】

C-I Baseballの増田稜輔です。
今回も野球現場で活動して方・こらから野球現場に出たい方へ
トレーニングに関する情報をお伝えしていきます。

今回のテーマは
「パフォーマンスを上げるための体幹トレーニング〜理論編〜」
ついてお話していきます。

はじめに

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数年前から球速や飛距離など野球パフォーマンスを上げるために
「体幹トレーニング」に取り組む選手やチームが多くなりました。
また、障害予防の観点からも「体幹の安定性」が重要と
されてきています。

近年のSNSの発達により「体幹トレーニング」を検索すれば多くの方法を知ることが出来ます。
その中で「体幹トレーニング」という言葉が先行し
体幹トレーニングの意図や目的を見落としてしまっているケースがあります。

野球現場に行くと
・プランク1分
・下級生はとりあえず体幹トレーニングから
・時間が余ったから体幹トレーニング

このように「体幹トレーニング」が安易に行われているケースがあります。

限られた時間の中で取り組むメニューなので
とりあえず体幹トレーニングではなく
・体幹トレーニングを行う理由
・体幹トレーニングの効果
・体幹トレーニングの選択
この辺りをしっかり考え、効果を最大限活かすトレーニングにしていきましょう!

今回のnoteがそのきっかけになれば幸いです

体幹とは

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皆さんもご承知かと思いますが基本的なところから解説していきます。

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体幹とは
体幹とは筋肉を表す言葉ではなく
身体における四肢・頭部を除いた「部位」を示す言葉です
ここには肋骨・脊柱・骨盤・中枢神経や内臓系が存在します。
体幹筋とは
体幹筋は脊柱の安定性に関与する筋群を表します。
機能的な役割から2つの分類されます

・ローカルシステム
体幹深層で脊柱に起始停止を持つ筋が属し腰椎の弯曲や椎体間の機械的安定性などの局所 の調節に関与しています。
[腹横筋・多裂筋・骨盤底筋群・横隔膜など]

・グローバルシステム
胸郭と骨盤に起始停止を持つ大きな筋が属し脊柱全体の運動を調節しながら、体幹に加わる外的負荷と均衡を保っています。
[腹直筋・外腹斜筋・内腹斜筋・脊柱起立筋など]
※内腹斜筋はローカル・グローバルシステムの両方に含まれる場合もあります

イメージとしては
ローカルシステムが「体幹筋」と言われることが多いですが
2つのシステムが協調的に働くことで、体幹の機能を果たします。

体幹トレーニング=プランク??

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体幹トレーニングの王道といえば「プランクトレーニング」だと思います。
私自身も選手時代に経験しましたし、皆さんも同様のご経験があると思います。

では、このプランクトレーニングは目的や得られる効果はなんでしょうか?効果としては下記のようなことが考えられると思います。

・体幹筋の強化
・腹圧を上げる
・脊柱を安定させる
・姿勢を保持する

皆さん、体幹筋を強化を目的にプランクトレーニングしていましたか?
皆さんは体幹筋を強化した先に球速アップや飛距離アップを目的にして
プランクに取り組んでいたと思います。

私の個人的な考えでは
球速や飛距離など野球パフォーマンスに繋げるためにトレーニングとしては
「プランクトレーニング」は選択すべきではないと思います。

「プランクトレーニング」を否定するのではなく
「目的としている効果」に対する「トレーニングの選択」に相違があると考えているからです。

パフォーマンスアップに体幹筋の活動や体幹の機能は非常に重要な要素です。
そのため、「体幹トレーニング」に対してもう少し深く考える必要があります。

体幹に求められる機能

ここからは体幹に求められる機能を考えていきましょう。
体幹の機能にも種類があります。つまり目的によってトレーニング選択するにはそれぞれの機能を理解する必要があります。

野球パフォーマンスに繋げる「体幹トレーニング」として
腹横筋や腹斜筋が注目されています。
腹横筋の機能を高めることで、下部体幹を安定させる
回旋スポーツである野球では腹斜筋の出力が重要
など効果は様々です。

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Gray cookのMovementにこんな表現がありました。
体幹の1つの筋群のみを選択的にトレーニングしても
Aの動作では正常に働いても
Bの動作では筋の働きが不十分になる可能性がある
と表現されています。

私もこの考えに共感でき
野球のように四肢の運動をダイナミックに行うスポーツでは
特定のパターンだけでなく様々な動作パターンで体幹が機能することが求められます。

体幹に求められる機能分類

体幹トレーニングにも種類があり、どの機能に対して行うのかを選択していきます。

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・腹腔内圧の上昇(体幹の剛体化)
・先行的筋活動(姿勢制御)
・動的安定性(運動制御)

腹腔内圧の上昇(体幹の剛体化)

腹腔内圧は、腹腔構成筋群の同時収縮で増加し、安定性や脊柱の伸展モーメントを産生します。腹腔内圧の上昇には、横隔膜、腹横筋、骨盤底筋などが重要となります。

この腹腔内圧には姿勢と呼吸が深く関係してきます。

胸腔内圧と姿勢

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野球選手のための腱板トレーニング【トレーナーマニュアルvol.66】

C-I Baseballで投球障害についての記事を担当しております新海 貴史と申します。

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普段は整形外科クリニックで投球障害の選手のリハビリテーションを行い、競技復帰をサポートしております。私の記事では臨床目線でお話させていただければと思います。

今回の記事では野球選手のための腱板トレーニングについて私なりの意見も交えながらご説明できればと思います。
最後までお読みいただけると幸いです。

初めに

今回の記事では野球選手のための腱板トレーニングについて、投球障害からの復帰という観点で解説していきたいと思います。

セルフエクササイズというよりはセラピストやトレーナーがいる場合に行う方法メインで解説して行きたいと思います。

回旋筋腱板(Rotator Cuff)とは?

回旋筋腱板(以下、腱板)とは皆様もご存知の通り、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋のことを指します。
三角筋、大胸筋、広背筋などは表層に存在する筋群であるため通称”アウターマッスル”と呼ばれますが、腱板はより関節に近い場所に存在するため肩関節における”インナーマッスル”ということになります。

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回旋筋腱板(rotator cuff)


腱板の役割は、

✔︎ stabilizer
 上腕骨頭の動的な安定化
✔︎ depressor
 骨頭の下制、インピンジメント防止
✔︎ rotator
 回旋筋

✔︎ accessory ligament 
 靭帯の補助

などがあり、構造的に不安定である肩関節を安定させるために重要な役割を担っています。

腱板機能に影響を与える因子

ここからは腱板機能に影響を与える因子を8つに分けて説明していきます。

1.腹圧機能(胸骨下角)

静的な胸骨下角は70~90度と言われています。
胸骨下角のアライメント不良は腹部の筋の「長さ-張力曲線」の関係より、
腹圧機能の低下を招き、土台となる体幹部分が不安定な状態になってしまいます。
土台の安定性を欠く事で肩甲骨の安定性も失われ、腱板の出力は低下します。

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胸骨下角の徒手誘導によっても腱板の出力は変化するため、静的な位置取りも重要となります。

さらに、その位置を保とうとする安静時の筋緊張により、動的に胸骨下角のコントロールが出来ていれば、腹斜筋―前鋸筋などの筋連結により肩甲骨の安定性が向上して、腱板が働きやすくなります。

また胸骨下角が拡大して、肋骨が外旋傾向の場合、肩関節外旋などの際に本来主に働くべき肩関節の動く割合が低下します。
代償的に肩甲骨の内転や外旋の動作の比率が高まる傾向
となり、肩関節の使用率が低下することで機能低下が加速すると考えています。

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2.肩甲骨位置

肩甲骨の位置についてはしっかり”基準点に基づいて評価すべき”かと思います。
ただ右側が下がっているから右肩下がりではなく、基準点に位置していれば右が正常で左肩が上がっていると評価すべきです。
基準点に対する肩甲骨のズレ幅が腱板の働きに大きく影響しており、しっかり捉えることが重要となります。

①肩甲骨の高さ

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肩甲骨上角は一般的にTh1とTh2の間に存在すると言われていますが、そこに位置しているかを評価する事が非常に重要です。
今回着目している腱板もその位置に大きく影響を受けており、その位置に誘導して出力を確認すると出力が高くなることを確かめる事が出来るかと思います。

そのため、腱板の強化を行う時はしっかり肩甲骨の高さを整えた上でエクササイズを実施することが重要と考えております。
その位置でエクササイズする事により、腱板の強化に加え肩甲骨をその位置で保持するための肩甲骨保持筋の賦活にも繋がります。

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肩甲骨の位置を修正すると最初は自分の今までの位置に対して違和感を感じる事があるかと思いますが、それは認知面の問題であり、運動を繰り返し行い学習することによって修正されていくかと思います。
ぜひ継続して取り組んでみてください。

②肩甲骨の回旋角度・棘鎖角

肩甲骨の高さに加え、肩甲骨の回旋具合も腱板の機能に大きな影響を与えます。鎖骨と肩甲棘が成す角を「棘鎖角」と言いますが、それぞれ前額面に対して30度ずつ角度を成しており、合計60度で棘鎖角を成しています。腱板の機能はその棘鎖角に影響を受けます。
肩の1stポジションにおいて棘鎖角が60度の場合、筋出力は高くなるかと思います。

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チューブなどで腱板のエクササイズを実施する時に肩甲骨の回旋の位置を正して行う事が非常に重要となります。

肩甲骨が前方突出しているような選手に対しては肩甲骨の位置を修正させた状態でエクササイズを指導する事があるかと思いますが、過剰に内転・外旋させている状態ではアウターと腱板の出力の不均衡が起きるため注意が必要です。程度の問題があるため、その時は肩甲棘が30度の角度の位置になる程度に留めておくようにすると良いかと思います。
『案外、寄せない方がいいんだな…。』と感じる事でしょう。

3.上腕骨頭の位置

これは基本的な事になりますが、関節窩に対して上腕骨頭がどの位置にいるのかによって腱板の出力は大きく異なります。

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元々定位置でありながら筋や関節包の伸張性低下によりobligate translationするようなケースでは、初期は出力は良いが最終域に近付くと出力が低下するのが特徴かと思います。
一方、定位置の時点でその位置が不良な場合は中間位の時点で出力が低下しています。そのため、出力を評価する場合は中間位での出力と最終域近くでの出力と少なくとも2つは見るべきかと思います。

定位置がずれているかどうかの確認は骨頭を前方に偏位させた場合の出力と後方に偏位させた場合の出力の両方をチェックしてみると評価しやすいかと思います。
臨床的には多くの選手は骨頭が前方に偏位しているため、骨頭を押し込んだ状態で出力をチェックすると向上することが確認出来るかと思います。
またその押し込み具合に関しても、どの程度まで押し込むとより良い出力になるのかを確認する事で治療するべき移動の幅も確認出来るため、方向に加えその移動量も意識して介入する事をお勧めします。

4.筋腱の滑走性

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過剰使用などにより筋・腱の滑走制限が生じているケースの場合は滑走不全が生じている部位に対して、関節運動の時に筋・腱の動きを促す方向に誘導する事で出力の向上を認めます
また出力低下のみならず、滑走不全が起きている場合は滑走不良部位に集約するようなストレスをかけると、そこで圧縮ストレスが生じて痛みが生じる場合があります。
棘下筋が棘下窩外側で脂肪体と滑走不良になって、肩外旋動作時に後方でインピンジメントするようなケースがそれにあたるかと思います。

5.筋硬結

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今度は先程と異なり、逆方向に誘導すべきケースです。代表的なケースは腱板損傷などにより筋硬結が生じている場合です。
そのようなケースでは筋全長の中で過度に短縮している部位と過度に伸張されている部分が混在しており、過度な伸張が加わっている部分には大きなストレスが生じます。この場合、短縮している部分を引っぱり出す事によって筋の伸張の割合を均一にする事により局所のストレスが減り、出力が向上します。
現状では症状もなく問題がないと自覚する選手の中にも筋硬結は多く存在しており、この硬結に伴い腱損傷に移行する場合もあるかと思います。
これを見極められる能力を身につけるためにも日頃の評価で意識するべき着眼点かと思います。

6.手根骨のアーチ

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遠位の関節機能によっても腱板の出力は変化します。

手根骨のアーチがしっかり保たれている状態の場合、橈骨手根関節への適切な軸圧が保たれた状態となり、腱板の出力は安定します
一方、手根骨のアーチが低下した状態では、肩甲上腕関節への圧が低下し、肩関節が不安定となります。その代償として抵抗運動に対して過剰な努力が必要な状態となってしまいます。

手関節背屈時に手首を突き出すような動作が習慣化している場合、さらに上腕骨頭の前方偏位を助長してしまうため、安定性が失われてさらなる過剰努力を強いる事となります。

7.グリップの選択(ベンチプレス編)

高校生以上であればトレーニングとしてベンチプレスを行っている選手も多いかと思います。
その際、グリップの選択も腱板の出力に大きく影響すると思います。トレーニング時の代表的なグリップとしてサムアラウンドグリップサムレスグリップがありますが、それぞれのグリップによって腱板の働きは異なります。
トレーニング初心者はサムアラウンドグリップ、熟練者はサムレスグリップなどと指導する場合もありますが、機能的にはサムアラウンドグリップ一択かと思います。

サムレスグリップの問題点について👇

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さらにベンチプレスなどの時には

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一方、サムアラウンドグリップでは上記メカニズムの影響は少ない状態でエクササイズが可能になります。サムレスグリップでは三角筋前部の出力が挙がってしまい、サムアラウンドグリップでは大胸筋の出力が向上するかと思います。
両グリップで比較して、その主動作筋の違いについて感じてもらえばと思います。

8.握り方(ベンチプレス編)

最後に握り方についてですが、サムアラウンドグリップの時の握り具合も腱板の機能向上のため重要となります。
一般的に正しい握り方は指先が舟状骨(母指の付け根にある骨)に向かうのが正常と言われています。
そのためベンチプレスなどを行う際にもそのような意識で握ることが重要かと思います。

懸垂やローイング系のエクササイズの時にもしっかり握れているか握れていないかによって背中への効き方が異なりますので、ぜひ確かめてみてもらえればと思います。

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腱板が上手く機能していない場合、握る時に指先を巻きつける形ではなく、手関節の付け根を突き出すようにして握る込んでいる場合が多いです。
これにより腱板の機能低下を招き、肩の怪我を引き起こすトリガーになるため、実施する際には特に注意すべきと考えています。

腱板トレーニングの実際

腱板機能評価方法としては一般的な整形外科テストで良いかと思います。
具体的なやり方に関しては以下のnoteをご参照下さい。動画付きで解説しています。

投球障害予防チェックポイント ー肩関節ー
https://note.com/embed/notes/n9205989d6166

どのトレーニングにも言えることは、

✔︎重だるさが出るまで追い込む
 ➡︎最終的には50回くらい連続で実施できることが望ましい
✔︎軌道を意識する(毎回同じ軌道になるように)
✔︎肩甲骨の代償に注意する

これらを意識して実施すると良いかと思います。

外転エクササイズ

外転初期のsetting phaseを意識して、収縮が入る瞬間である外転初期に肩甲帯が挙上してしまわないように注意します。
*三角筋などのアウターも含めたトレーニングになります。

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ピッチングスタイルについて考える【トレーナーマニュアルvol.65】

C-I Baseballの高橋塁です。

まずは、私の自己紹介から

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また、同時に、私自身がMetaGate(メタゲート)という『野球技術系サイト』も運営しております。

ご興味あります方は、一度、ご覧ください。

【ホームページ】
META GATE | 2.5次元をとらえろ

【note】
Meta Gate【メタゲート】|note

【オンラインサロン】
オンラインサロンLP | META GATE

【Youtube】
BaseballスーパースローチャンネルMeta Gate [メタゲート]

今回は育成プログラム第3期、私の担当の第2回になります。

前回から始まりましたが、私の担当では、『野球の技術』についての記事を中心に、紹介させていただけたらと思います。

前回は、『バッティングスタイルについて考える』についてでした。

今回は、『ピッチングスタイルについて考える』についてです。

皆様はピッチングをどのようにみられていますでしょうか。

ピッチングスタイルでも右投げ、左投げに始まり、オーバースロー、スリークウォータースロー、サイドスロー、アンダースロー等にも分けられます。

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上記の写真のように、プロ野球でも、個人個人で投げ方が違います。

ただ、ピッチングスタイルも考えるにあたり、日本人投手と外国人投手との違いをみることにより、ピッチングスタイルの分析をしやすくなります。

下記の図をご覧ください。

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投球障害肩に必要な棘下筋のエコー観察【トレーナーマニュアルvol.64】

C-I Baseballの小林弘幸です。
今月で私たちの活動も3シーズン目を迎えました。
これまで多くの方々にいつもマガジンの記事をお読みいただきありがとうございます!

C-I Baseball3シーズン目は
「実践力」をテーマにライター一同noteを配信していきます!
今シーズンの私が担当する配信では、「エコー」を通じて
肩関節の解剖とそれに対する実際のアプローチを学んでいこうという
コンセプトの元、Noteを書かせていただきます。

元NPBチームドクターのスポーツDrと一緒にエコーを用いて、
野球選手の投球障害肩を診てきました。

投球障害肩になってしまうと、
『痛くて投げられない』
『何をしても良くならない』
『自分のプレーに集中できない』
『野球が楽しくない』
と悪循環になってしまいます。

私はそのような投球【障害】肩を持った選手に対し、
エコーを通じて、細かな解剖を理解しアプローチすることで
治療効果が奏功することを経験しました。

もちろんそれだけでは解決しないことも多数ありますが、
ケガからの復帰をするということを考えると、
細かな解剖を学んでいくということは必要なのではないかと考えています。

解剖書で見る肩関節だけではなく、
エコーを通じて、3次元的に捉える肩関節を一緒に学んでいけたらと思います。

投球障害肩における棘下筋

投球障害に対する棘下筋は、
非常に関係が深いと感じています。

いわゆる『肩関節後方タイトネス』に対しては、
棘下筋が関与していると感じています。

投球時の肩関節にかかるストレスは、
外旋トルク :最大肩外旋直前、17.7±3.5N.m 
肩関節牽引力:ボールリリース時(BR)またはその直後に、214.7 +/- 47.2 N
となっています。

・上腕骨の長軸を中心とした外旋トルクは、最大肩外旋直前に17.7±3.5N.m(2.7%±0.3%体重×身長)のピーク値に達した。214.7 +/- 47.2 N (49.8% +/- 8.3% 体重)の肩関節牽引力は、ボールリリース時、またはその直後に発生した。
※Sabick MB, Kim YK, Torry MR, Keirns MA, Hawkins RJ. Biomechanics of the shoulder in youth baseball pitchers: implications for the development of proximal humeral epiphysiolysis and humeral retrotorsion. Am J Sports Med. 2005 Nov;33(11):1716-22.

BRやその直後は、
内旋運動に対抗する外旋筋が遠心性収縮し、伴って肩関節牽引力も加わるため、
棘下筋(小円筋)にかかる負担が非常に大きくなると感じています。

図5

棘下筋を含めた、肩甲上腕関節の後方軟部組織のタイトネスは
投球障害に直接関与します。

・内旋と水平内転の健患差が投球障害側では低下している
※Myers JB, Laudner KG, Pasquale MR, Bradley JP, Lephart SM. Glenohumeral range of motion deficits and posterior shoulder tightness in throwers with pathologic internal impingement. Am J Sports Med. 2006 Mar;34(3):385-91. 

なので、
棘下筋のタイトネスは、投球障害では
改善しなくてはならない問題と考えております。

棘下筋の解剖

①支配神経:肩甲上神経

支配神経はC5~6になります。

上神経幹へ入り込んだ神経は、
その後すぐ分岐します。

図8

棘上筋の深層から棘窩切痕へ入り、
棘下窩から棘下筋深層へ走行します。

図9

棘下筋深層では、
棘下筋下脂肪層の部分が棘上神経を包み込みます。

図21

この脂肪体周囲の可動域はとても重要ですので、
後述していきたいと思います。

関節包に対する神経支配として、
肩甲上神経は関節包の
後上方に位置します。

図7


肩の後上方に疼痛を訴える選手は、
肩甲上神経の絞扼等が考えられるかもしれません。

肩甲上神経の絞扼があり、
肩関節上方の疼痛がある症例は、
棘下筋の機能障害が隠れているかもしれません。

②筋の付着部

棘上筋と棘下筋の付着部は、
教科書的な報告と近年の報告では異なっています。

図11

・棘上筋は大結節の前内側に限局して付着
・棘下筋は大結節の前外側まで幅広く付着
※Mochizuki T, Sugaya H, Uomizu M, Maeda K, Matsuki K, Sekiya I, Muneta T, Akita K. Humeral insertion of the supraspinatus and infraspinatus. New anatomical findings regarding the footprint of the rotator cuff. J Bone Joint Surg Am. 2008 May;90(5):962-9. doi: 10.2106/JBJS.G.00427. PMID: 18451386.
上記文献を参考にし、図を作成した

棘下筋の付着部を考えると、
最も伸張位になるのは、GHの伸展内旋位になるのが理解しやすいかと思います。

図13

さらに
内旋していくことでさらに伸張位になります。

肩関節伸展位での内旋が
棘下筋が最も伸張する肢位だと思います。

身体評価

可動域:肩関節伸展位内旋(肩関節内旋)※結滞動作
筋力:外旋テスト、外旋ラグテスト

棘下筋の評価としては、
上記の評価を用いています。

肩甲上腕関節の内旋制限は、棘下筋の軽微な損傷でも生じると考えています。

理由は、

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育成年代のトレーニングvol.2‐ジャンプ動作と腱機能の強化‐【トレーナーマニュアルvol.63】

C-I Baseballの佐藤康です。
7月は中学生・高校生は総体や全国予選があり、最上級生は引退をかけた学生野球の集大成となる大会が連日開催されています。

先日、私も帯同するチームの試合を見てきました。
試合の勝敗を分けたのは進塁やカットプレーにおける細かな差が表れました。ここで感じたのは盗塁などの結果として出るものではなく、結果に見えない打球のチャージや一つ先の塁に進める走塁などの「走る能力」の差でした。

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「走れる」チーム・選手の集団は強い!傾向は少なからずあると思います。
やや短絡的な表現になりましたが、学生野球のさまざまなカテゴリーをみさせていただく中で、Warm-upや練習時の走動作は欠かさずチェックしております。その中で走動作につながる基本動作やメニュー(スキップやバウンディングなど)が適切にできていない選手を多く見かけます。

前回の記事では、育成年代に関わるチームのトレーニングの組み立てについて配信させていただきました。今回はその続編として、まとめていきたいと思います。

走る能力を向上するためには

前回の記事のおさらいにもなりますが、育成年代のトレーニングの関わりとして、神経系発達の著しい時期には特に様々な運動要素の経験が必要であることをお伝えさせていただきました。

↓↓前回の記事はコチラ↓↓

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今回のテーマでもある「走る」ことにおいては、この成長期の時期に”走り込み”をすることが適しているとは言えません。そのため、走動作の要素を分解し、その要素を統合したメニューを実践していくことになります。

スプリント能力をあげるにはさまざまな要素が挙げられますが、スタート・加速時における瞬間的な力の発揮については特に重要であると捉えています。

そこで重要な運動の一つに「ジャンプ動作」を挙げています。

ちなみに”ジャンプ力のアップ”となると、筋力の発達や野球の場面での動作の特性からジャンプ力が求められる競技というわけではないため、ジャンプ力を求めることに偏るのはやや間違いがあるかもしれません。

そのため、ジャンプ動作で強化される力の大きさというよりも力の発揮の仕方(地面からの反発に対して強い力を発揮する)を成長期の時期から養うという意でお伝えしています。

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ジャンプ動作

走動作に加え、ジャンプや投動作は神経系の発達の観点からも重要視されており、成長期の子供にとって、1-5秒程度の爆発的・高速の運動が理想的とされています。

成長期では神経筋系に関与するプライオメトリクスと高速の運動によって、運動能力の向上が促進されることが明らかになっています。

アスレティック・ムーブメント・スキル:NAP limited

Stretch Shortening Cycle

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パフォーマンス向上のための投球動作×足部 ーWind-up〜Early cockingー【トレーナーマニュアルvol.62】

球速、コントロールはどうすれば良くなるのか?故障しにくい投球動作は?
Wind-upからEarly cockingまでの軸足の使い方、動作不良例、足部トレーニングを紹介致します!

C-I Baseball の須藤慶士です!

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私の今シーズンのnote内容は『投球動作×足部』です。

  • 投球時の足部の動き
  • 足部が崩れによる投球時の不良動作
  • 投球相に合った足部エクササイズ

足部は地面に接している唯一の部位です。足部が安定することで下肢からの良好な運動連鎖が行われます。

その足部でも重要なのが『距骨下関節』です。
選手の距骨下関節の構造は左右異なります。理想の投球時の軸足・ステップ足、それぞれの距骨下関節の動きを把握し、選手の足部評価を行うことで動作の崩れを予防や変えることができます。


私が担当する『投球動作×足部』の今後の発刊予定です。投球・打撃におけるそれぞれの相における足部の理想の動きや、足部から起こる不良動作、足部エクササイズをご紹介します。

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距骨下関節の肢位

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距骨下関節肢位は中間位・回内位・回外位の3通りあります。

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距骨下関節には回内・回外を分ける『中間点』があり、その肢位は左右により中間位は異なります。

私は非荷重位(OKC)で評価を行います。中間位の評価方法は過去の記事をご参照ください⬇️⬇️⬇️

投球時の距骨下関節・横足根関節

投球時、軸足と踏み込み足の機能は異なります。

軸足:バランスを取る→押し出す→蹴り出す
踏み込み足:加速した身体を支え、踏ん張り、力を逃す

軸足の機能はセットポジションで両足の支持基底面内にある重心を軸足に移動しバランスをとることや、Wind-upから捕手方向へ重心を移動するために足部を硬め蹴り出す役割があります。踏み込み足は軸足から移動してきた身体を支えて踏ん張り、上半身の力を逃すようにしなければなりません。上記の動きが足部で出来れば重心移動や上行性の良好な運動連鎖が遂行可能となります。

次のスライドの足部の肢位と動きは私の経験からの考えを表にしました。

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投球時足部の肢位と動き

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Wind-up

Wind-upは軸足への重心移動を行う動作です。

Wind-up軸足の機能
●距骨下関節の理想は中間位から回外位
●母趾屈曲

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Wind-upは骨盤は投球側へ回旋します。距骨下関節が中間位もしくは回外位だと骨盤はスムーズに投球側へ回旋します。さらにここで大事なのは投球側回旋時に母趾が機能することです。立位体幹右回旋時(投球側)は母趾が屈曲することで良好な運動連鎖を遂行することができます。Wind-upは体幹回旋動作です。足部が機能することでEarly cockingへ上行性の運動連鎖を発揮することが可能になります。

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Early cocking①

Early cocking①はWind-upで貯めた力を反対方向へ動かす切り返しの開始相です。

Early cocking軸足の機能
●距骨下関節の理想は中間位から中間位
●4•5趾屈曲
●骨盤左回旋開始

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Early cockingの初期は骨盤はWind-upで右回旋していたものを非投球側(左)への反対回旋が始まる相です。

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距骨下関節が中間位で4・5趾が機能していれば骨盤の開きは抑制されます。
体幹左回旋時の右の足趾は4・5趾が機能しないと運動連鎖の破綻が起こります。足趾が機能することで距骨下関節の急激な速度での回内を抑制することが可能です。

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開きが早いフォームの足部から考えられる原因は↓
●距骨下関節が回内位
●足趾機能低下
➡️後半で紹介します

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パフォーマンスを上げるためのHip hinge を構築する方法〜実践編〜【トレーナーマニュアルvol.61】

こんにちはC-IBaseballの増田です。
いつも【トレーナーマニュアル】をご購読頂きありがとうございます。
野球現場で活動するトレーナーの方、これから野球現場に出たい方、臨床で選手の対応をしている方のお役に立てればと思います。

トレーナーマニュアルは現場編・臨床編の両側面の内容を毎週配信しています。

前回の内容

前回はHip hingeの理論について解説していきました・
・HIp hingeとは

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HIp hingeとは
Hip→股関節 hinge→蝶番
言葉の意味から考えると「股関節が蝶番に動く」という意味になります。
もう少し深く考えると
股関節→骨盤と大腿骨なので
大腿骨上を骨盤が蝶番に動くことを示します。

このHip hingeは野球パフォーマンスにおいてなぜ必要なのか?
・構造的観点
・力学的観点
・野球パフォーマンスとの関係性
3つの観点から解説していきました。

前回の内容を知りたい方はこちらからご覧ください。

今回はHip hinge trainingの実践編をお伝えしていきます。
どのようにHip hingeを構築していくのを解説します。

Hip hingeを構築するための要素

Hip hingeの構成要素について整理していきましょう。
Hip hingeは前屈とは異なり、脊柱の湾曲を維持した状態で
大腿骨上を骨盤が前傾方向に動きます。
そのため、後面筋の柔軟性だけでなく、関節機能や上半身質量のコントロールが必要になります。

Hip hingeを構築するための要素
・股関節屈曲
・骨盤前傾
・上半身質量のコントロール
・機能の統合

ここから先は「どのようにして各要素を構築するのか?」を解説していきます。

股関節屈曲を構築する

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Hip hingeを行う際の股関節の屈曲には
骨盤前傾と股関節内旋運動連鎖として生じます。
また、上半身重心の前方移動に伴う、骨盤の後方移動が生じます。
骨盤の後方移動に制限が生じると、上半身重心の前方移動制限を引き起こし
結果として腰椎の屈曲性を強めることになります。
そのため、Hip hingeでは下肢後面筋の柔軟性獲得が重要になります。

筋柔軟性を改善する方法

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