野球選手の腰痛の病態と動作【トレーナーマニュアル21】

C-I baseballの病態・動作の発信を担当する小林弘幸です。

スポーツDrと一緒にエコーを用いて、選手の病態を理解し
障害の原因追及を大切にしています。

病態を理解することによって、医療機関と現場との橋渡し的な役割を果たすことができると思います。

基本的な部分ですが、なるべくわかりやすく発信していきたいと思います。

画像2

腰痛の概論

腰痛を有している人は、現代の全国民においても
男性の第一位、女性の第二位となっています。

したがって、腰痛はスポーツ選手におけるという認識ではなく、
一般的な病態であると考えられます。

しかし、スポーツ選手にとって腰痛の発生頻度は一般の方よりも
多い
とされています。

腰痛の一般的な病態を理解したうえで、
そのスポーツにおける競技特性と腰痛の病態とを結びつけることで
スポーツにおける腰痛が理解出来るかと思います。

野球選手のスポーツ障害では、
肩・肘障害がメインとなりますが
その次に腰部障害が多いという報告が数多くあります。

プロ野球選手のメディカルチェックでは、27%もの選手に腰椎分離症を確認しています。

※延谷壽夫 他:2地区中学生の野球障害に関する調査:整形外科と災害外科43: (4) 1554~1556, 1994.
※松本 學:腰部障害の保存療法.臨スポーツ医 11:1301-1309, 2006
など多数

また体育学部の学生を調査したものでは、バレーボールに次いで野球で腰痛が多いとの報告もされています。

画像3
※Hangai M, et al: Relationship between low back pain and competitive sports activities during youth. Am J Sports Med 38:791-796, 2010 
図は引用改変

スポーツ競技で腰痛の原因となりやすい動作は、
ジャンプやスローイング、回旋動作が多いものです。

理由としては、軸圧が加わる動作や、伸展・回旋動作が多い動作が腰痛の原因となりやすいと考えられます。

野球のダッシュや守備練習、バッティング・ピッチング動作が
腰痛に関与すると考えられます。

ただし、
腰痛の85%は非特異的腰痛といい、原因がはっきりしないものが
多いのも事実です。

腰痛の分類

この画像所見ではわからない非特異的腰痛に対して、
セラピスト・トレーナーがしっかりと機能的評価をして、
対応していくことが重要
かと考えられます。

腰部の解剖

腰椎周囲の解剖で重要な組織を列挙します
・腰椎椎体
・椎弓
・椎間板
・椎間関節
・靭帯(後縦靭帯)
・多裂筋
・脊柱起立筋

腰椎周囲の解剖

上記組織は、
屈曲でストレスがかかる部位、
伸展でストレスがかかる部位

に分かれます。

屈曲では、
・腰椎椎体(圧迫)
・椎間板(圧迫)
・後縦靭帯(伸張)

伸展では
・椎弓(圧迫)
・椎間関節(圧迫)
・多裂筋(収縮)
・脊柱起立筋(収縮)

にストレスが加わります。

腰椎屈伸時の圧力

※赤が圧迫ストレスが加わる部分

椎体の骨構造を理解すれば、
屈伸時にどのようなストレスが加わるかが明確になるかと思います。

また、各組織の感覚受容器の閾値が異なるため、
各組織間で、役割が異なります。

下記に閾値を示します。

・椎間関節     :  6.0g
・傍脊柱筋(深層) :  2.2g

・仙腸関節(後方部):69.5g
・後縦靭帯     :80.3g
・椎間板(前側方部):241g

※山下敏彦 編:スポーツと腰痛 メカニズム&マネジメント. 金原出版株式会社. 2011

上記の受容器機械的閾値の差を見ると、
椎間関節と脊柱筋は、その他組織と比して、
弱い侵害刺激にも反応するということが言えます。

腰椎周囲の閾値

※1~5は閾値の低値順

特にスポーツにおける腰痛は、
主として椎間関節やその周囲筋が関与しているということが多いと
考えられます。

椎間関節包内には、自由神経終末も観察できます。
そして椎間関節周囲には多数の受容器が分布されています。

椎間関節の受容器分布
※Yamashita T, et al: Somatosensory innervation of the lumbar spine and
adjacent tissues. A review of the electrophysiological studies. Trends Comprat Biochem Physiol 1:219-227, 1993 
図を引用改変

椎間関節周囲の症状は、
回旋動作の多い野球という競技特性を踏まえても
非常に重要なのではないかと考えられます。

腰部スポーツ障害のバイオメカニクス

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野球選手の足関節捻挫の復帰後のトレーニング・再発予防の身体作り【トレーナーマニュアル20】

C-I baseballの足関節捻挫から競技復帰後のトレーニング・再発予防の身体作りを担当します高橋塁です。

日々、野球を中心にスポーツの現場で、トレーニング、コンディショニング、技術指導を行っています。

私自身が、日々のスポーツ現場での経験をもとに、障害をいかに防ぎ、かつ再発せず、パフォーマンスアップできるかをお伝えし、医療機関とスポーツの現場との連携をいかにスムースにできるかをわかりやすく発信していきたいと思います。

高橋塁プロフ写真①

足関節捻挫の概論


スポーツ障害で最も多いのが足関節捻挫。足関節捻挫の中でも圧倒的に多い割合を占めるのが内返し捻挫であり、足関節にみられる全外傷のうち約75%を占めるといわれています。

青年期に多く発症し、足関節捻挫の約半数が10~20歳代前半に集中しています。
10代の捻挫での病態は下記の通りです。

・前距腓靭帯損傷(47%) ・前下脛腓靭帯損傷(14%) ・踵腓靭帯損傷(10%)・骨折(5%) ・その他(骨軟骨障害も含む:数%)

野球現場で起こる足関節捻挫は試合中や練習中のプレー場面だけでなくボールを踏んだやトレーニング中に発生することもあります。そのため、現場帯同トレーナーは受傷直後から試合復帰までサポートしていくことが必要です。

野球では、他のスポーツと異なり、金属の刃がついたスパイクが使用されます。非常に引っ掛かりが強いので、ケガの予防・パフォーマンス向上に向けて、刃の形状にも着目すべきと考えます。

スパイクについては、障害予防・パフォーマンス向上両方の側面からもしっかりと考える必要があります。

足関節捻挫は発生率や再発率の非常に高い疾患であり、そのまま放置しておくと慢性足関節不安定症(Chronic ankle instability: CAI)へと発展してしまいます。
CAIは、距骨下関節の安定性が重要であると報告されています。

足関節捻挫のついての復帰・強化トレーニング方法を理解する前に病態の解釈・筋機能を中心とした評価方法については知っておかなければなりません。

足関節の解剖

外反捻挫において、間違いなく理解しなくてはならないのが、足関節外側靭帯であり、

・前距腓靭帯(ATFL) ・後距腓靭帯(PTFL) ・踵腓靭帯(CFL)

 の3つに靭帯から構成されます。

捻挫①

前距腓靭帯:ATFL

ATFLは距腿関節の関節包の一部を担い、関節包靭帯と呼ばれることが知られています。
靭帯の走行からもわかるように、足関節底屈内反で最も伸張されるので、その肢位で受傷します。

捻挫②


厚さはおよそ2mm程度であるといわれ、外側靭帯でも脆弱であるといわれています。

ATFLのWrap around構造

【距骨】に沿ってATFLが囲むような走行

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踵腓靭帯:CFL

CFLは機能的に距骨下関節の安定性に大きく寄与しています。靭帯の走行から、足関節背屈内反で最も伸張。

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野球選手の足関節捻挫の段階的復帰プログラム【トレーナーマニュアル19】

C-I Baseballの復帰プログラムを担当してます増田です。

今回は野球現場で生じる【足関節捻挫】の
段階的復帰プログラムについて紹介していきます。

足関節捻挫をした選手がどのような過程で復帰するのか?
復帰にするにはどんなトレーニングが必要なのか?
再発しないようには?
パフォーマンスを戻すには?

足関節捻挫は軽視せずに対応していくことが重要です。

捻挫の復帰プログラムとは

野球現場で起こる足関節捻挫は
試合中や練習中のプレー場面だけでなく
ボールを踏んだやトレーニング中に発生することもあります。
そのため、現場帯同トレーナーは受傷直後から試合復帰まで
サポートしていくことが必要です。

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足関節捻挫は、比較的受傷頻度が高く
重症化するケースが少ないため
選手・指導者は軽視することが多いです。

しかし、足関節捻挫は再受傷率が高いことや
パフォーマンスの低下を引き起こす可能性があります。
そのため、復帰までには注意しなくてはなりません。

復帰までの注意点

痛みが消失した=復帰可能ではありません。

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足関節捻挫は再発率が非常に高い障害であることです。
いわゆる”捻挫グセ”です。
足関節捻挫は医療機関への受診をしない場合や
1週間程度で復帰をしてしまうケースがあります。
そのようなケースでは足関節の機能低下が残存していることが
考えられます。

捻挫によって損傷した組織の修復には
少なくても6週間はかかります。

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※佐藤康:足関節捻挫に対するトレーニングより引用

組織の修復をせずに復帰すると
関節の構造的不安定性や機能的不安定性を引き起こし
結果的に慢性足関節不安定症につながります。

また、足関節は身体制御やスポーツ動作において
重要な関節であるため機能破綻は
パフォーマンスへ大きく影響します。

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足関節は股関節と共に、身体バランス制御に関わります。
重心制御機能の足関節戦略では小さい動揺に対し作用し立位バランス保持に関与します。
足関節戦略が機能低下を起こすと
野球動作時の片脚立位に不安定性が生じます。

片脚立位不安定性は投球障害の発生要因になることもあります。
肘内側側副靱帯損傷の選手は動的バランスの値が低値(garrison,2013)

前述したように、足関節捻挫発生後十分な経過を追わず
復帰した場合には、パフォーマンスの低下が生じます。

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足関節内反捻挫では、靭帯損傷による
・外側支持機構の破綻
・距骨の偏位
・回内足
などのアライメント不良をきたしやすく
なり
足関節の構造変化が起こします。

前距腓靭帯には、身体制御に関与する
固有受容器が多く存在します。
そのため、前距腓靭帯の損傷による
固有感覚の低下
が起こります。

捻挫による、外果周囲の腫脹や固定による不動期間
荷重不足などが原因

腓骨筋や前脛骨筋、後脛骨筋など足関節の
安定性に関わる筋の筋力低下が生じます。
特に、固有受容器の機能低下と共に、身体バランスに対する
反応速度が遅延する
と考えられえます。

上記した理由により
・足関節のアライメント変化
・固有感覚の低下
・筋の反応速度の遅延
により結果として
身体制御において重要な足関節戦略機能の低下が起こると考えられます。

足関節捻挫後のパフォーマンス低下

足関節捻挫後に野球動作に対して
どのような影響が出るのでしょか?

野球における足関節の機能は
・軸足の支持性
・踏み込み脚での衝撃吸収
・下肢からの運動連鎖
などが考えられます。

上記の機能が低下することで野球パフォーマンスは低下します。

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足関節捻挫の段階的復帰プログラムの進め方

ここからは、足関節捻挫からの復帰について解説していきます。

足関節捻挫の復帰段階は下記の図に示されている手順で進めて行きます。

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急性期〜回復期におけるメディカルリハビリテーションでは
疼痛・腫脹の消失や足関節の機能改善が重要な役割です。

回復期〜復帰までのアスレティックリハビリテーションでは
筋機能や動作の再構築、パフォーマンスの向上が役割になってきます。

段階的復帰プログラムのゴールは
競技復帰が最終目標となりますが
その前にいくつかのステップが必要です。
ステップを踏まずにリハビリテーションを進めてしまうと
関節の不安定性の残存や疼痛・腫脹の長期化を招き
結果として競技復帰までの期間が遅延してしまいます。

そのため下記の項目を靭帯の治癒過程に沿って
段階的にリハビリテーションを進めていきます。

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復帰プログラムの重要点

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足関節捻挫からの復帰では
・疼痛が消失している
・再発させない
・パフォーマンスを低下させない

上記の3つの状態で復帰させることが
野球現場では最も重要になってきます。
そのため、受傷初期から競技復帰までの全期間で
サポートしていく必要があります。

ここからは、受傷直後から競技復帰までの
具体的な対応を説明していきます。

現場での受傷直後の対応

野球現場帯同で経験する足関節捻挫は様々な場面で発生しますが、
特に重要なのが試合中の発生です。
試合中に受傷したケースではその後のプレーが可能であるのかの
判断が求められます。
素早く状態を把握し、プレーの判断をするためには
評価を理解しておくことが必要になってきます。

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野球選手の足関節捻挫に対するトレーニング【トレーナーマニュアル18】

C-I baseballのトレーニングを担当する佐藤康です。

今回の内容は
「足関節捻挫のメディカルリハビリテーションの流れ」
についてまとめています。

捻挫を発症した選手、足関節に不安定性を抱えた選手の
復帰に向けてどのような関わり方をしていくのか?

足関節捻挫として対応することの多い内反捻挫への対応について、ジョギング開始までの流れについてまとめていきます。

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メディカルリハビリテーションのすすめかた

足関節捻挫のリハビリテーションを対応する際に
まずどのような目標を設定し、どのような流れで進めていくのか
を簡単にまとめていきます。

目標設定

今回のテーマに挙げた捻挫ですが、
内反捻挫時には前距腓靭帯・踵腓靭帯が
多い受傷部位として挙げられています。

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リハビリテーションにおける競技復帰の目標においてはランニングができることが目標になります。

負荷強度も含めランニングの前提であるジョギングがメディカルリハビリテーションにおける目標としています。

不完全な治癒のケースでは再受傷するケースも少なくなく、治癒過程において再受傷を予防する足部・身体つくりが求められます。

段階的な対応手順

急性期→亜急性期→回復期→アスリハへの移行
と大きくわけて解説していきます。

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肉離れでの対応に同じく、炎症所見の改善が求められる急性期対応
アスリハの移行に向けて、可動域や筋機能を改善し、動作の獲得を図っていきます。

急性期対応では
患部の保護と腫脹の抑制といった炎症所見の改善が重要となります。

亜急性期では
残存する腫脹の除去対策と可動域・筋力の回復を図っていきます。

回復期では
段階的な荷重運動を通し、動作レベルの向上・獲得を目指しアスレティックリハビリテーションの移行へとつなげていきます。

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メディカルリハを進める上で整理しておくべきこと

メディカルリハビリテーションを進めるにあたって、
以下はおさえておくべき事項であると思います。

損傷した組織の治癒過程(靱帯・腱)
捻挫の重症度
スポーツ復帰までの期間
病態理解(病期に応じた対応)

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内反捻挫の理解を深める病態と評価

今回お伝えする内容は「トレーニング」ですが、
トレーニング方法を理解する前に
病態の解釈・筋機能を中心とした評価方法
については知っておかなければなりません。

病態

評価

トレーニング前におさえておくポイント

トレーニングを進める前に以下のポイントを注意しておきます。
特に重症度の理解は重要であるため、後述してまとめています。

受傷機転
|どのようなメカニズムで受傷したのか?
重症度
|捻挫がどの部位をどの程度損傷しているのか?
治癒過程
|どのような過程で損傷部位が修復されるのか?
初期対応
|炎症を最小限に抑えるための方法とは?
再受傷の危険因子
|負荷の設定方法や運動負荷による再受傷のリスクとは?

内反捻挫による靱帯損傷後、多くの場合保存療法が選択されます。

保存療法で損傷した靱帯を治癒させながら、足関節に構造的な不安定性が起こらないようにすることを目指していきます。

①受傷機転の理解

受傷機転については以下の記事で詳細に解説しているため、割愛します。

非接触型による受傷の多い内反捻挫であるポイントをおさえておきます。

②重症度

Kannusらの報告

GradeⅠ:靭帯の損傷がなくストレッチされた状態でわずかな腫れと圧痛
GradeⅡ:中等度の疼痛と靭帯の部分断裂。軽度から中等度の関節不安定性
GradeⅢ:靭帯の完全断裂。強い腫脹,出血,圧痛,機能低下, 関節不安定性

(引用:捻挫の病態と動作|小林弘幸 より)

一般的な復帰期間として以下の期間が挙げられています。

GradeⅠ:2~4週間
GradeⅡ:4~6週間
GradeⅢ:6週間以上or ope

そのため、復帰を考える上で、
重症度における損傷の程度も重要ですが、
損傷部位を特定して適切に対応することが重要となってきます。

③治癒過程

急性外傷における復帰時期について考えるときは組織の治癒過程を考慮していきます。

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つまり、受傷直後から身体の内面は治癒が始まっており、外力に対する靱帯の張力は3週程度から強くなってきます。

そのため、リハビリテーションを進める上でも、病態診断・病態に応じた治癒過程・期間を十分に把握しておく必要があります。

メディカルリハビリテーションの実際

つぎに、メディカルリハビリテーションの流れを解説していきます。

捻挫受傷後のリハビリテーションの主目的

足関節捻挫の治療では受傷パターンや重症度によって組織治癒に要する期間も異なってきます。

損傷組織や複数の損傷組織によっては復帰時期も異なるが、受傷から復帰までの治療プログラムに大きな変わりはありません。
(安静期間・各種トレーニング期間)

急性期では早期の消炎鎮痛とアライメント・ROM改善が治療のポイントとなります。炎症が軽減して荷重可能となる回復期では、急性期治療を継続しつつ積極的な筋機能回復を図ることで動作レベルの向上につなげていきます。

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運動復帰の基準

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野球選手の足関節捻挫に対する評価・アプローチ【トレーナーマニュアル17】

C-I Baseballの評価・アプローチの発信を担当する須藤慶士です。
臨床では評価を大切にしております。評価が確かなものでないと原因に対するアプローチをすることができません。

局所評価だけでなく全体の評価を行うことも大切です。
臨床での経験を元にした評価とアプローチを発信していきたいと思います。

捻挫の評価

捻挫は日常生活・スポーツ現場でも頻度が高い疾患です。

早期復帰・再発予防・パフォーマンスアップのために何が必要なのかを今回のnoteに記載しました。

捻挫は距骨下関節が重要です

距骨下関節の中間位評価が行えることで足部機能を安定させることが可能です。

後半に距骨下関節の中間位評価を載せてありますので参考にしてください。

捻挫に対する病態・動作と合わせて読んでいただき、次回以降のトレーニングを合わせることで、早期復帰・再発予防・パフォーマンスアップが可能になります!

圧痛

前距腓靭帯を触診し、圧刺激を加えた際に痛みが出現する際は靭帯の炎症や損傷が残存している可能性があります。

ストレステスト

足関節を他動的に内反方向に動かし、前距腓靭帯に伸張性のストレスを加えます。

この際に『痛み・不快感』を感じるようなら靭帯の炎症や損傷が残存しているためそれ以上は伸張を加えないほうがいいです。

『伸ばされている』感じなら痛みが出ないようにストレッチを加えて可動域を広げても問題ありません。

捻挫のアプローチ

状態に応じたリハビリ

捻挫直後から開始する場合は、

距腿関節は固定した状態で、足趾・下腿の皮膚誘導・マッサージや、足趾の運動(タオルギャザー・距腿関節固定の足趾で物掴みなど)・膝関節周囲の筋力強化を行いましょう。

足底には多くの感覚センサーが存在するので足底刺激も行うといいでしょう。

膝立ちで行うエクササイズは股関節・体幹に対し荷重下でできるため股関節外転筋力強化やバランス能力向上が期待できます。

*捻挫に対する病態・動作の『他部位への影響』◯膝、股関節の筋機能参照

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安静時・睡眠時のポジショニング

患部の固定方法は受傷度合いに応じて異なります。

受傷後はシーネ固定・バンド固定を行います。

医療機関で巻き方など指導されるとは思いますが、チームトレーナーの立場でしたら、日常生活できちんと固定・誘導できているかの確認をすることが大事です。

下腿の重みで足部に対して下方(床方向)に落ちるストレスがかかり、距腿関節で足部が前方に引き出されるような形になります。

寝るときは下腿と踵骨の下にタオルを入れて重みを取り除き前距腓靭帯へのストレスを軽減しましょう。

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ROMex

底屈方向へのROMexは注意が必要です。

2〜3週間で靭帯が修復しても底屈時に前距腓靭帯に痛みがあれば、それ以上は可動域を広げてはいけません。

伸張痛(伸ばされている・ストレッチされているような感じ)なら内反方向(底屈・内転・回外)へのROMexは行なっていきましょう。

背屈・底屈のROMexする際は、距腿関節の構造・関節軸を意識して動かすことが重要です。

ホールド・リラックスなどを利用して背屈への抵抗運動を行い、前脛骨筋・長趾伸筋・長母趾伸筋などの筋肉を緩めてから底屈方向へのROMexを行うのもいいです。

背屈位でのホールド・リラックス⇨底屈へのROMex

底屈位でのホールド・リラックス⇨背屈へのROMex

筋力強化

筋力強化で重要なのは、

●捻挫中に他部位を強化すること

●医師との連携をとり靭帯の修復をきちんと確認すること

●前距腓靭帯にストレスをかけないこと

●腓骨筋の働きが重要

*捻挫に対する病態・動作の『他部位への影響』◯膝、股関節の筋機能参照

です。

底屈からの背屈運動で距腿関節の軸・構造を把握しながら行うことが重要です。

固定中は距腿関節を背屈していたために足趾が使いにくい状態になっていることが予測できます。

距腿関節・距骨下関節の肢位を変化させながらのタオルギャザーや、足趾での物掴みを行うのも大事です。

荷重位(CKC)での強化は

●固定しているバンドを外して行うのか、使用したまま行うのかは医師に確認しましょう。

●外して行う際はその選手の距骨下関節の肢位が重要です。

●距骨下関節の中間位の肢位は左右によって異なります。

●その中間位の肢位で行うことで荷重位でのトレーニングの効果を高めることができます。

距骨下関節 評価

●体格・体型・形状は個々により異なります。
●一人の体でも左右差があります。
●距骨下関節も同様に構造・動きの左右差はあります。

足部は地面に接している唯一の部位です。

距骨下関節は足部構造の中でも複雑で、重要な関節です。

距骨下関節は約30°の可動域があり、

中間位から回外は20°(全体の3分の2)
中間位から回内は10°(全体の3分の1)

と言われております。

ですから距骨下関節の中間位を評価し把握することは足部疾患をリハビリ・トレーニングしていくためにとても重要です。

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距骨下関節 指標中間位 評価

外果上下にあるラインが直線になる位置を作り、その際の踵骨底面の向きで評価します。

この肢位を距骨下関節の指標中間位と言います。

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指標中間位を軸にして回内・回外と距骨下関節は動きます。

評価は非荷重位(OKC)で行います。

なぜかと言うと、

CKCの場合、荷重がかかることにより、距骨下関節だけでなく横足根関節や足趾の機能が含まれるので、純粋な距骨下関節の肢位がわかりにくいから

です。

立位で距骨下関節を後側から見た際に、回外位や回内位になっていますがその距骨下関節の肢位が、指標中間位の可能性が考えられます。

ですから、OKCで距骨下関節評価を行う必要があるのです。

理想の距骨下関節肢位は、OKCでの指標中間位のままの肢位で立位がとれることです。

指標中間位のまま立位保持ができれば、立位動作で距骨下関節の回内・回外の動きがスムーズに行えるようになります。

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距骨下関節機能が発揮できることで立位バランスや、足関節周囲の筋肉が収縮しやすくなります。

逆を言えば、機能していない状態でトレーニングしても効果が得られにくいです。

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野球選手の足関節捻挫の病態と動作【トレーナーマニュアル16】

C-I baseballの病態・動作の発信を担当する小林弘幸です。

スポーツDrと一緒にエコーを用いて、選手の病態を理解し
障害の原因追及を大切にしています。

病態を理解することによって、医療機関と現場との橋渡し的な役割を果たすことができると思います。

基本的な部分ですが、なるべくわかりやすく発信していきたいと思います。

捻挫の概論

足関節捻挫は、スポーツ選手であれば重軽症に関わらなければ、
誰もが経験したことがあるのではないでしょうか?

足関節捻挫の中でも圧倒的に多い割合を占めるのが内返し捻挫であり、
足関節にみられる全外傷のうち約75%を占めるといわれています。

※Garrick, J. G. : The frequency of injury, mechanism of injury, and epidemiology of ankle sprains. Arn J Sports Med. 5(6) : 241-242, 1977

青年期に多く発症し、足関節捻挫の約半数が10~20歳代前半に集中しています。
ジャンプや切り返しが多いスポーツであるバスケットやサッカーにおいて
発症率が多いとされています。

・捻挫の約半数が10~20歳代前半に集中している

※Waterman BR Owens BD, Davey S, et al. The epidemiology of ankle sprains in the United States. J Bone Joint Surg Am 2010 : 92 : 2279-84

・ジャンプや切り返し動作中に発症することが多く、バスケットボール中に起こる全外傷中の約45%、サッカーの約31%を占める

※Ekstrand J, Tropp H. The incidence of ankle sprains in soccer. Foot Ankle 1990 ; 11 : 414.

野球においては、スライディングや、バットやボールを踏んでしまうこと、ベースの端を踏んでしまい受傷することが考えられます。
スライディング時の受傷は、骨折を伴うことが多いとされています。

※浅井忍ほか:野球のスライディングによる足関節果部骨折. 東日本スポーツ医学研究会会誌 3: 200-203, 1981

野球では、他のスポーツと異なり、金属の刃がついたスパイクが使用されます。非常に引っ掛かりが強いので、ケガの予防・パフォーマンス向上に向けて、刃の形状にも着目すべきと考えます。

人工芝と天然芝とで、スパイクの引っ掛かりも違うので、
リスクファクターとなり得ます。

捻挫は発生率や再発率の非常に高い疾患であり、そのまま放置しておくと
慢性足関節不安定症(Chronic ankle instability: CAI)へと発展してしまい、
慢性的な疼痛、パフォーマンス低下を引き起こすことが考えられます。

CAIは、距骨下関節の安定性が重要であると報告されています。

しっかりと病態把握をしていき、
再発予防や、症状改善に努めていくことがトレーナーとしての役割かと考えます。

足関節の解剖

外反捻挫において、間違いなく理解しなくてはならないのが、
足関節外側靭帯であり、

・前距腓靭帯(ATFL)
・後距腓靭帯(PTFL)
・踵腓靭帯(CFL)

の3つに靭帯から構成されます。

※熊井司ほか:足関節捻挫の病態. MB Orlhop. 18 (11) : 1-9, 2005
図を引用改変

後に、足関節捻挫の分類ということで述べますが、
ATFLとCFLの正確な評価ができるか否かで分類のGradeが変化してきます。

正確な解剖をこちらで理解しましょう。

〇前距腓靭帯:ATFL

ATFLは距腿関節の関節包の一部を担い、関節包靭帯と呼ばれることが知られています。

付着部は、腓骨前結節遠位から距骨外側突起遠位となります。

靭帯の走行からもわかるように、足関節底屈内反で最も伸張されるので、
その肢位で受傷します。

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野球選手の肉離れに対するトレーニング【トレーナーマニュアル13】

C-I baseballのトレーニングを担当する佐藤康です。

今回の内容は
「肉離れのメディカルリハビリテーションの流れ」
についてまとめています。

肉離れを発症した選手に関わる際に、
復帰に向けてどのような関わり方をしていくのか?

野球の肉離れとして対応することの多い
ハムストリングス・腹斜筋の肉離れへの対応について、
ジョギング・スイング開始までの流れについてまとめていきます。

メディカルリハビリテーションのすすめかた

肉離れのリハビリテーションを対応する際に
まずどのような目標を設定し、どのような流れで進めていくのか
を簡単にお伝えしていきます。

目標設定

今回のテーマに挙げた肉離れですが、
野球ではハムストリングス・腹斜筋の肉離れが
多い受傷部位として挙げられています。

ハムストリングス損傷の目標としてジョグ復帰、
腹斜筋の損傷としてスイング復帰が重要な目標設定となるかと思います。

スプリント復帰やストレングスについては
その後のアスレティックリハビリテーションとして
次週配信する「復帰プログラム」編で詳しく
ご紹介していきたいと思います。

段階的な対応手順‐フローチャート‐

急性期→亜急性期→回復期→アスリハへの移行
と大きくわけて解説していきます。

図で表す通り、各病期において
それぞれの機能・動作の改善が求められると考えています。

治療方針として
重症度に応じて復帰期間が異なり、対応も異なります。

復帰の期間は重症度に応じてそれぞれ異なりますが、
損傷した筋機能の回復・動作の獲得という流れについては
基本的に保存療法であれば大きく異なることはありません。

メディカルリハを進める上で整理しておくべきこと

メディカルリハビリテーションを進めるにあたって、
以下はおさえておくべき事項であると思います。

損傷した筋の治癒過程
肉離れの重症度
スポーツ復帰までの期間
病態理解(病期に応じた対応)

肉離れの理解を深める病態と評価

今回お伝えする内容は「トレーニング」ですが、
トレーニング方法を理解する前に
病態の解釈・筋機能を中心とした評価方法
については知っておかなければなりません。

病態

野球に起こる肉離れの病態・動作

評価

肉離れの評価

トレーニング前におさえておくポイント

トレーニングを進める前に以下のポイントを注意しておきます。
特に重症度の理解は重要であるため、後述してまとめています。

受傷機転
|どのようなメカニズムで受傷したのか?
重症度
|肉離れがどの部位をどの程度損傷しているのか?
治癒過程
|どのような過程で損傷部位が修復されるのか?
初期対応
|炎症を最小限に抑えるための方法とは?
再受傷の危険因子
|負荷の設定方法や運動負荷による再受傷のリスクとは?

受傷後は出血し血腫が形成されて、筋肉内の内圧が高くなることによって痛みが生じます。痛みによって代償運動により必要以上に患部の活動を抑えることで、筋機能の回復が遅れ、その期間が長くなることによって痛みの増悪・復帰期間の延長といった流れが肉離れの対応として注意すべきことではないかと思います。

①受傷機転の理解

受傷機転については以下の記事で詳細に解説しているため、割愛します。

②重症度

奥脇の分類

肉離れの病態と動作|小林弘幸 より

Ⅱ型の損傷にみられる腱膜自体に損傷があるかないか
復帰の期間は大きく左右されます。

腱膜は修復までに時間がかかるため、
治癒にかかる時間も要します。

そのため、復帰を考える上で、
重症度における損傷の程度も重要ですが、
損傷部位を特定して適切に対応することが重要となってきます。

③治癒過程

肉離れ受傷早期には炎症期をむかえ、
回復過程において変性・再生期を経て
患部の治癒・動作レベルが向上し、
競技復帰へとつながっていきます。

④必要な初期対応

損傷後、血腫形成の程度が
肉離れの重症度・治癒期間を決める大きな要因となります。

そのため、
初期対応により出血をいかに抑え、
その後の血腫形成を最小限に抑えられるかが、
肉離れ治療・復帰のポイントとなります。

受傷直後から48時間までは
RICE処置・過用を抑えた免荷歩行などは徹底すべき事項であります。

受傷後48時間以降は、
局所の循環不全の改善・回復を図ることで、
損傷した筋や周囲の組織の修復を促していきます。

さらに詳しい解説と実際は
次週配信する「復帰プログラム」編にて解説いたします。

⑤再受傷の危険因子

ハムストリングス損傷の再受傷率は
1/6~1/3と高い値のデータがあります。

再損傷してしまうと初回受傷と比べて、
スポーツ復帰できるまでの期間がより長くなってしまいます。

再受傷を高める理由として
・不完全な治癒(MRIで治癒が確認できない)
・瘢痕組織の形成
・神経筋コントロール不足の残存
・機能的な代償が挙げられます。

再受傷してしまう例として、
同部位の損傷と他部位の損傷をするケースがあります。

同部位の受傷

不完全に治癒したまま、再受傷してしまう例です。

筋腱移行部型の損傷では、
修復される早期に負荷をかけることによって再発しやすくなります。

そのため、損傷時の重症度を正確に把握して対応することが重要となります。

他部位の受傷

同じ部位の損傷ではなく、一度損傷した部位の近くを損傷する例です。

損傷しやすい動作の改善が図られないために、損傷した動作と同様の負荷が加わることによって起こりやすくなります。

受傷機転を十分に把握した対応と予防が重要となります。

重症度別の対応

先程、お伝えした重症度についてもう少しかみ砕いていきます。

重症度と復帰期間

Ⅰ型:筋腱移行部の血管損傷(筋組織)のみ
Ⅱ型:筋腱移行部(腱膜)の損傷
Ⅲ型:腱性部(付着部)の完全断裂

と分類できる。

復帰に要する期間(目安)は平均で以下になる。

Ⅰ型:1-2週間
Ⅱ型:4-6週間
Ⅲ型:3か月以上

重症度別の対応

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野球選手の肉離れに対する評価・アプローチ【トレーナーマニュアル12】

はじめに

肉離れはプレー時に受傷しやすいものの一つです。

医療機関では画像診断を用いて損傷度合いを判断できますが、現場ではプレーを続行するか、中止させるかをその場で判断しなくてはいけない場合があります。

その際に使える評価を含めて紹介していきます。

今回の肉離れに対しての評価・アプローチのnote内容は、

●評価、アプローチ
 ・腹斜筋
 ・ハムストリングス
●足部構造・機能から考えるハムストリングスの肉離れ

について説明していきます。

肉離れの評価は

●視診
●触診
●ストレッチ痛
●筋力評価

この4項目を中心とした『総合的』な評価が大切です。(病態より)

腹斜筋評価

視診・触診

腹斜筋は、外腹斜筋・内腹斜筋があります。

野球動作では、投球時・打撃時に起こりやすいです。

病態noteより受傷しやすい腹斜筋は、

非投球(打撃)側の内腹斜筋が高頻度で受傷します。

ストレッチ痛

画像判断や、視診・触診に加え、どのような動きで痛みがでるのかを評価します。

基本的には起始・停止を考慮し、伸張を行います。

可能なら、受傷した際の動きから戻るような動きを見ることも必要です。

治癒過程・リハビリ・トレーニングを行う際にどこまでなら伸張すべきなのか、どのような動作を行っていいのかの判断をしなくてはいけません。

ですから、選手の特徴(ポジション・姿勢・日常生活)を把握・評価することが大切になります。

痛みの度合いに応じてストレッチを行います。

動画には載せていませんが、最初は両膝を立てた状態で両膝を倒す評価からでいいと思います。

徐々に伸張を強くして、どの程度で痛みが出るのかを評価してください。

伸張しても痛みが出ない範囲は普段もセルフエクササイズは行いましょう。(画像診断・医師の許可による)

骨盤回旋 左外腹斜筋・右内腹斜筋伸張

体幹回旋➕上肢回旋 右外腹斜筋・左内腹斜筋伸張

骨盤下制➕前方移動 右外腹斜筋・左内腹斜筋伸張

筋力評価

伸張・収縮ができなければ、負荷をかけてのトレーニングができないしプレー復帰した際に再び受傷してします恐れがあります。

ですから、収縮時痛がどのような肢位・動作で起こるのかを評価しないといけません。

受傷筋肉を把握するために視診・触診・ストレッチ・収縮を行い総合的に判断します。

収縮を行うときは自動運動⇨抵抗を加えての運動を行い評価します。

腹斜筋の作用で行うので、体幹屈曲、側屈、回旋を見ていきます。

さらに、受傷動作に合わせて投球動作・打撃動作に近い、骨盤や体幹の動きも評価できるといいでしょう。

骨盤前方下制や回旋運動はアプローチでも使えます。

腹筋 屈曲、回旋

骨盤前方下制 求心性収縮 右内腹斜筋・左外腹斜筋

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野球選手の肉離れの病態と動作【トレーナーマニュアル11】

C-I baseballの病態・動作の発信を担当する小林弘幸です。

スポーツDrと一緒にエコーを用いて、選手の病態を理解し
障害の原因追及を大切にしています。

病態を理解することによって、医療機関と現場との橋渡し的な役割を果たすことができると思います。

基本的な部分ですが、なるべくわかりやすく発信していきたいと思います。

肉離れの概論

肉離れとはスポーツ動作中に起こる代表的な筋損傷です。

自らの拮抗筋の収縮や介達外力により、筋が過伸展されて損傷するものです。

程度は異なりますが、肉離れでよく聞かれる選手の訴えとしては、

・一瞬、筋肉が離れたように感じる
・急激な痛みや脱力感がある

といったものが多くあります。

内的要因としては、

・筋力低下
・柔軟性低下
・拮抗筋との筋力アンバランス
・運動神経単位の破綻

外的要因としては、

・気温
・走路の硬さ
・脱水

などが考えられますが不明な部分が多いのが現状です。

スポーツ全体で観察すると、野球選手に肉離れは多くないですが、
急な走塁時ピッチングバッティングのスイング時に生じることはあります。

まずは、肉離れの基本的な病態の部分を理解して行けたらと思います。

スポーツにおける肉離れ

トップアスリートによる肉離れの疫学調査です。(n=959)

・ハムストリングス(42%)
・下腿三頭筋(15%)
・大腿四頭筋(11%)
・骨盤筋群(10%)


ハムストリングスが一番の好発部位となります。

ハムストリングス内で分類すると、

・大腿二頭筋長頭(56%)
・半膜様筋(32%)

・半腱様筋(5%)
・大腿二頭筋短頭(1%)

となっており、羽状筋である大腿二頭筋長頭と半膜様筋が好発部位となります。

・トップアスリートにおける肉離れの現状。国立科学スポーツメディカルセンターに受診したアスリートの場合。 ※奥脇透:肉離れの現状. 臨床スポーツ医学. vol,34. (8). 2017 図を引用改変

ハムストリングスは
・大腿二頭筋長頭
・大腿二頭筋短頭
・半腱様筋
・半膜様筋

の4筋で構成されています。

大腿二頭筋長頭と半膜様筋は、羽状筋であり、
筋の生理学的特徴から、力の発揮に有利な構造となっています。

その筋発揮が大きいという特徴から、ハムストリングスが急激に
伸張された際に肉離れを生じやすいと考えられます。

走る動作が多いスポーツにおける肉離れは、ハムストリングスが多いことから、
基本的には、『走る』動作で多く生じると考えられます。

普段から、走塁時の癖や、ランニング時のフォームチェックなどをしておくことも野球に携わるトレーナーとしては
必要なことと考えられます。

つまり、普段のウォーミングアップから選手の特徴を捉えることが大切かと思います。

野球はスポーツ全体の中で、肉離れの頻度がどの程度なのかを調べたものがあります。(n=1239、種目数=64種)

・陸上競技(16.7%)
・サッカー(13.1%)
・野球(8.4%)
・アメリカンフットボール(7.3%)

となり、第3位に野球競技を行っている選手に肉離れが発生しています。

・スポーツ選手の種目別肉離れの症例数

※武田寧ほか:スポーツ損傷としての肉離れの疫学調査-スポーツ種目特性、年齢-. MB Orthop 23(12):1-10, 2010

そして、肉離れの発生部位は種目によって傾向が異なります。

各スポーツごとにおける肉離れの好発部位を理解しておくことが
その競技特性を理解することにつながると考えます。

では、野球選手における肉離れの好発部位はどうでしょうか。

野球選手における肉離れ

プロ野球選手における肉離れの特徴は以下の通りです。
(10年間1球団肉離れ72例)

・ハムストリングス(26.4%)
・腹斜筋(25%)

・股関節内転筋(11.1%)
・下腿三頭筋(9.7%)
・大腿四頭筋(8.3%)
・殿筋群(4.2%)
・腱板筋(4.2%)
・広背筋(2.8%)
・大胸筋、大円筋、前腕筋群、腰方形筋、脊柱起立筋、大腿方形筋(1.4%)

となっており、そのほかの種目と比較し腹斜筋が多い傾向となっています。

腹斜筋に関しては、この研究で詳細に調査することができた3年間での5件は全例内腹斜筋でした。
打者4人、投手1人となっており、打者については、非打撃側(右打者なら左側)、投手も非投球側でありました。

※小松秀郎ほか:プロ野球選手における肉離れの特徴. 日本臨床スポーツ医学会誌. Vol25(3). 2017
図を引用改変
・アメリカメジャーリーグでも、試合を欠場する肉離れの原因としてハムストリングスが最多で、次に腹斜筋群となっている。
※Ahmad, CS, et al.: Major and Minor League Baseball Hamstring Injuries: Epidemiologic Findings From the Major League Baseball Injury Surveillance System. The Am J Sports Med, 40:650-656. 2014

しかし、
プロではなく、一般スポーツ整形外科に来院する野球選手(n=104, 22.8±9.4, 11~51歳)では、
腹斜筋の割合が少なく、下肢筋の割合が多くなっています。

・スポーツ整形外科で肉離れと診断された野球選手の損傷部位の割合 ※武田寧ほか:スポーツ損傷としての肉離れの疫学調査-スポーツ種目特性、年齢-. MB Orthop 23(12):1-10, 2010 図を引用改変

これを考えると、
ハイパフォーマンスの野球選手において、
腹斜筋の肉離れが生じやすくなってしまう
と考えることができます。

逆説的に考えると、パフォーマンス向上を目指すには
腹斜筋を含む体幹筋を、投球や打撃にてうまく動員することができたら
良いのかもしれません。

野球選手の筋の非対称性

ここでは、野球選手特有の腹斜筋群の肉離れを理解するために、
野球選手の骨格筋の非対称性を知ることが、肉離れの病態を知ることの一助になるかと思います。

野球のような一側性のスポーツでは、
筋厚に左右差
が生まれてきます。

右利きの選手は、その回転方向(左回転)に働く筋が主に作用します。

先行研究では、野球選手の体幹部の筋肉において、

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投球障害肘から競技復帰後のトレーニング・再発予防の身体作り【トレーナーマニュアル10】

C-I baseballの投球障害肘から競技復帰後のトレーニング・再発予防の身体作りを担当します高橋塁です。


日々、野球を中心にスポーツの現場で、トレーニング、コンディショニング、技術指導を行っています。

私自身が、日々のスポーツ現場での経験をもとに、
障害をいかに防ぎ、かつ再発せず、
パフォーマンスアップできるかをお伝えし、
医療機関とスポーツの現場との連携をいかにスムーズにできるかを
わかりやすく発信していきたいと思います。

投球障害肘とは

投球動作において、主に運動方向が変化するLate-cocking~MER以降にメカニカルストレス(主に外反ストレス)を与えることで投球が困難になることが、投球障害肘ということなります。
投球障害肘になることで回復期では日常生活では困らないことがほとんどですが、練習や試合を休んで痛みがなくなっても、投球を再開するとまた痛みがでる…。

つまり、原因となる要因を排除しなければ、悪循環のループに乗ったままになってしまうのです。


その悪循環を断ち切るために投球障害肘を考える上で、重要なこと。

肘関節は基本的に1軸性の関節。
 →屈伸以外の動きをすることで投球障害肘を惹起する。
肘関節内側解剖の新しい知見。(腱性中隔)
成人期と成長期の肘障害について
肘の障害を内側障害、外側障害、後方障害の3つに分ける。

を理解することが大切かと思います。

肘関節の解剖

肘関節の安定化機構としては

静的安定化機構(靭帯) 

動的安定化機構(筋肉)

静的安定化機構とは?

静的安定化機構の靭帯は、MCLが代表的です。

MCLは、その線維の走行から、3つのパートに分けられることができます。

肘関節屈曲するほどMCL(POL)の後部線維が伸張し、伸展するほどMCL(AOL)の前部線維が伸張すると

考えられます。

MCLの障害されやすい部位は、AOL後部線維が最もストレスがかかりやすい部位だといえます。

動的安定化機構とは?

これら個々の筋肉で、肘関節に与える動的安定化の方向が異なります。

尺側関節裂隙の狭小化には、円回内筋橈側手根屈筋浅指屈筋が関与しています。

尺骨鉤状突起の橈尺側偏位について

MCL不全損傷の肘関節アライメントは、尺骨鉤状突起の橈側偏位が生じているといわれています。

そして、動的安定化筋群の作用をそれぞれ考えていきます。

円回内筋橈側手根屈筋が収縮すると、尺骨鉤状突起を尺側に偏位させます。
浅指屈筋尺側手根屈筋が収縮すると、尺骨鉤状突起を橈側に偏位させます。

肘関節内側解剖の新しい知見(腱性中隔について)

「解剖学的知見から考察していくことも重要」

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