C-I baseballの病態・動作の発信を担当する小林弘幸です。
スポーツDrと一緒にエコーを用いて、選手の病態を理解し
障害の原因追及を大切にしています。
病態を理解することによって、医療機関と現場との橋渡し的な役割を果たすことができると思います。
基本的な部分ですが、なるべくわかりやすく発信していきたいと思います。
腰痛の概論
腰痛を有している人は、現代の全国民においても
男性の第一位、女性の第二位となっています。
したがって、腰痛はスポーツ選手におけるという認識ではなく、
一般的な病態であると考えられます。
しかし、スポーツ選手にとって腰痛の発生頻度は一般の方よりも
多いとされています。
腰痛の一般的な病態を理解したうえで、
そのスポーツにおける競技特性と腰痛の病態とを結びつけることで
スポーツにおける腰痛が理解出来るかと思います。
野球選手のスポーツ障害では、
肩・肘障害がメインとなりますが
その次に腰部障害が多いという報告が数多くあります。
プロ野球選手のメディカルチェックでは、27%もの選手に腰椎分離症を確認しています。
※延谷壽夫 他:2地区中学生の野球障害に関する調査:整形外科と災害外科43: (4) 1554~1556, 1994.
※松本 學:腰部障害の保存療法.臨スポーツ医 11:1301-1309, 2006
など多数
また体育学部の学生を調査したものでは、バレーボールに次いで野球で腰痛が多いとの報告もされています。
※Hangai M, et al: Relationship between low back pain and competitive sports activities during youth. Am J Sports Med 38:791-796, 2010
図は引用改変
スポーツ競技で腰痛の原因となりやすい動作は、
ジャンプやスローイング、回旋動作が多いものです。
理由としては、軸圧が加わる動作や、伸展・回旋動作が多い動作が腰痛の原因となりやすいと考えられます。
野球のダッシュや守備練習、バッティング・ピッチング動作が
腰痛に関与すると考えられます。
ただし、
腰痛の85%は非特異的腰痛といい、原因がはっきりしないものが
多いのも事実です。
この画像所見ではわからない非特異的腰痛に対して、
セラピスト・トレーナーがしっかりと機能的評価をして、
対応していくことが重要かと考えられます。
腰部の解剖
腰椎周囲の解剖で重要な組織を列挙します
・腰椎椎体
・椎弓
・椎間板
・椎間関節
・靭帯(後縦靭帯)
・多裂筋
・脊柱起立筋
上記組織は、
屈曲でストレスがかかる部位、
伸展でストレスがかかる部位
に分かれます。
屈曲では、
・腰椎椎体(圧迫)
・椎間板(圧迫)
・後縦靭帯(伸張)
伸展では
・椎弓(圧迫)
・椎間関節(圧迫)
・多裂筋(収縮)
・脊柱起立筋(収縮)
にストレスが加わります。
※赤が圧迫ストレスが加わる部分
椎体の骨構造を理解すれば、
屈伸時にどのようなストレスが加わるかが明確になるかと思います。
また、各組織の感覚受容器の閾値が異なるため、
各組織間で、役割が異なります。
下記に閾値を示します。
・椎間関節 : 6.0g
※山下敏彦 編:スポーツと腰痛 メカニズム&マネジメント. 金原出版株式会社. 2011
・傍脊柱筋(深層) : 2.2g
・仙腸関節(後方部):69.5g
・後縦靭帯 :80.3g
・椎間板(前側方部):241g
上記の受容器機械的閾値の差を見ると、
椎間関節と脊柱筋は、その他組織と比して、
弱い侵害刺激にも反応するということが言えます。
※1~5は閾値の低値順
特にスポーツにおける腰痛は、
主として椎間関節やその周囲筋が関与しているということが多いと
考えられます。
椎間関節包内には、自由神経終末も観察できます。
そして椎間関節周囲には多数の受容器が分布されています。
※Yamashita T, et al: Somatosensory innervation of the lumbar spine and
adjacent tissues. A review of the electrophysiological studies. Trends Comprat Biochem Physiol 1:219-227, 1993
図を引用改変
椎間関節周囲の症状は、
回旋動作の多い野球という競技特性を踏まえても
非常に重要なのではないかと考えられます。
腰部スポーツ障害のバイオメカニクス
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