投球障害肩に必要な”大・小胸筋”のエコー観察【トレーナーマニュアルvol.100】

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なんと本日は、記念すべき100回目の投稿です!

記念すべき投稿を、担当することができて大変光栄です!

引き続き、少しでも選手に還元できるように、我々にできることを取り組んでいけたらと思っております。

よろしくお願いいたします。

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今シーズンの私が担当する配信では、「エコー」を通じて
肩関節の解剖とそれに対する実際のアプローチを学んでいこうという
コンセプトの元、Noteを書かせていただきます。

元NPBチームドクターのスポーツDrと一緒にエコーを用いて、
野球選手の投球障害肩を診てきました。

投球障害肩になってしまうと、
『痛くて投げられない』
『何をしても良くならない』
『自分のプレーに集中できない』
『野球が楽しくない』
と悪循環になってしまいます。

私はそのような投球【障害】肩を持った選手に対し、
エコーを通じて、細かな解剖を理解しアプローチすることで
治療効果が奏功することを経験しました。

もちろんそれだけでは解決しないことも多数ありますが、
ケガからの復帰をするということを考えると、
細かな解剖を学んでいくということは必要なのではないかと考えています。

解剖書で見る肩関節だけではなく、
エコーを通じて、3次元的に捉える肩関節を一緒に学んでいけたらと思います。

投球障害肩に必要な”大・小胸筋”のエコー観察

投球障害肩における大・小胸筋

投球動作における、大・小胸筋は非常に重要な役割をすると考えております。

野球選手の筋の非対称性を見てみると、
大・小胸筋部分は投球側の方が筋厚が厚いという結果になっているからです。

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※Shin Hasegawa, et al.: Laterality of muscle thickness in athletes who perform throwing and hitting motions. Jpn J Phys Fitness Sports Med, 62(3): 227-235. 2013 図を引用改変

一般的には、
大・小胸筋を含めた肩関節内旋筋は投球動作の中で、
MER以降で作用します。

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さらにそのPhaseでは、投球障害肩の有病率が大きいPhaseということが言われています。

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MERで大・小胸筋のタイトネスがなく、
しっかりと肩関節複合体で外旋位を作れることが非常に重要であります。

最大外旋後にAccerelationでの肩内旋運動は、
大・小胸筋の筋力が必要であると考えます。

つまり、
筋の柔軟性と筋力ともに必要な要素だと考えます。

また、小胸筋においては、投球に必要な肩甲骨運動の妨げになると考えられます。

投球障害肩になりやすい肩甲骨運動は、
・下方回旋(前傾)
・外転(内旋)
・下制
となっていることが多いです。

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投球に必要な肩甲骨運動は、
・上方回旋(後傾)
・内転(外旋)
・挙上
だと考えています。

いわゆるCokingPhase~MERで必要な動きであると考えています。

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この投球に必要な肩甲骨運動すべてを阻害するのが、
小胸筋です。

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筋の走行から考えると作用としては、
肩甲骨の前傾・内旋(外転)・下方回旋・下制に作用します。

小胸筋はAccerelation期で必要な運動、筋力だと思いますが、
投球を考えるうえで、必ずケアしていかなくてはならない筋肉かと思います。

下記に、簡単に小胸筋と投球障害に関する報告を記載します。

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大・小胸筋の解剖

①筋の起始停止

小胸筋

起始  :第2(あるいは第3)~第5肋骨前面
停止  :肩甲骨の烏口突起
支配神経:内側及び外側胸筋神経(C7~T1)

大胸筋

起始①鎖骨部(上部):鎖骨の内側1/2
起始②胸肋部(中部):胸骨柄、第2~第7肋軟骨前面
起始③腹部(下部) :腹直筋鞘(ふくちょくきんしょう)の前葉(ぜんよう)
停止       :上腕骨の大結節稜(だいけっせつりょう)
支配神経     :内側及び外側胸筋神経(C5~C8、T1)

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教科書的な起始停止は上記のようになりますが、
小胸筋に関しては延長腱の報告が数多くあります。

延長腱とは、停止部分が肩甲骨の烏口突起までではなく、棘上筋の腱性部やその周囲に付着していただとの報告があります。

いわゆる破格例とされておりますが、
視覚的には連続性が保たれていなくても、組織的には上腕骨までの連続性があると考えても良いかと思っています。

下記のような延長腱が、10~40%の割合で小胸筋の延長腱が報告されています。

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・Weinstabl R , Hertz H , Firbas W Zusammenhang des ligamentum coracoglenoidale mit dem musculus pectoralis minor . Acta Anat 125:1986;126-131
・肱岡昭彦ほか:小胸筋の停止異常と鳥口上腕靱帯との関係について肉眼解剖による検索より.肩関節,1991;9:9-12.
・Homsi C ,et al . : Anomalous insertion of the pectoralis minor muscle : ultrasound findings . J Radiology , 84 : 2003 , 1007-1011.
・植木博子,他:小胸筋延長腱についての臨床研究.肩関節 38(2), 369-371, 2014

②支配神経

大・小胸筋の支配神経は、
内側・外側胸筋神経とされています。

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ただ、解剖の報告から観察するとどちらの神経がどちらの筋に多く分布しているのかが少し予測できます。

分岐が支配神経とイコールとはなりませんが、
参考になることがありますので、確認してみましょう。

大胸筋と小胸筋の神経入口部の肉眼的解剖学的構造

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外側胸筋神経の神経入口

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育成年代のトレーニングvol.8-基本動作構築のためのプログラム-【トレーナーマニュアルvol.99】

C-I Baseballの佐藤康です。
トレーナーマニュアルの今週の配信は
育成年代をテーマに私が担当させていただきます。


競技動作の前提となる姿勢づくり

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現在、私は小学生~大学生まで各カテゴリーでのチームのトレーニングに関わらせていただいております。ジャンプ動作やアジリティ種目などのトレーニングに関わる中で、着地姿勢の崩れた動作や適切にストップできない選手などを多く見かけます。これは、実際のプレーにも関連する要素であることから注視しています。

こういった動作の習熟度を軽視したまま、負荷量を上げた種目を進めてしまうと大人同様に腰や膝を中心としたケガのリスクが高くなってしまいます。そのため、私はトレーニングの計画を立てる際に、その前提となる「基本動作を構築」することを大切にしています。

その代表的な動作に「Hip hinge」が挙げられます。
野球では、捕球・打撃・投球・走塁とあらゆる動きでのヒンジの重要性は高いといえます。

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以前の配信記事でCIB代表の増田の記事でHip hingeの形成について2回にわたり詳細にまとめられています。とてもわかりやすくまとめられているため、ぜひこちらもご覧ください!

今回の記事ではジュニア・成長期の選手向けということで、上記記事と重なる点はありますが、少し別の切り口から解説していこうと思います。後述する成長期の身体機能の特徴なども併せて考察していきます。

記事の後半では動画での解説を行っておりますので、ぜひ最後までご覧ください!

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パフォーマンス向上のための打撃動作×足部 Acceleration〜Follow through【トレーナーマニュアルvol.98】

今回のnoteのキーワードは『ステップ足』です。Accelerationからはステップ足へ一気に荷重がかかります。軸足からステップ足に重心移動が起こる際にステップ足で踏み込み踏ん張る事が重要です。AccelerationからFollow throughでステップ足が機能する事でボールインパクトで強くバットを振る事が可能になります。

今回の記事はAcceleration〜Follow throughです。
Accelerationまでの話は軸足が中心でしたが、Accelerationからはステップ足の機能が重要です。

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私の記事は『打撃動作×足部』です。

●打撃時の足部の動き
●足部が崩れによる打撃時の不良動作
●打撃動作相に合った足部エクササイズ

足部は地面に接している唯一の部位です。足部が安定することで下肢からの良好な運動連鎖が行われます。

その足部でも重要なのが『距骨下関節』です。選手の距骨下関節の構造は左右異なります。理想の打撃時の軸足・ステップ足それぞれの距骨下関節の動きを把握し、選手の足部評価を行うことで動作の崩れを予防や変えることができます。

距骨下関節の肢位


距骨下関節肢位は中間位・回内位・回外位の3通りあります。
距骨下関節には回内・回外を分ける『中間点』があり、その肢位は左右により中間位は異なります。
私は非荷重位(OKC)で評価を行います。
異なる中間位の評価方法は過去の記事をご参照ください。

https://note.com/embed/notes/n0e5302dcd531
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注意事項
Step:打撃フォームの相
ステップ足:右打者なら左足部の事
ステップ脚:右打者なら左下肢の事

打撃時の距骨下関節・横足根関節

打撃時、軸足と踏み込み足の機能は異なります。

軸足:バランスを取る→押し出す→蹴り出す
ステップ足:加速した身体を支え、踏ん張り、力を逃す

軸足の機能はPreparationで両足の支持基底面内にある重心を軸足に移動しバランスをとることや、Take backからStep・Accelerationへ移行する際に重心を移動させ足部を硬め一気に押し出す(蹴り出す)役割があります。

Accelerationからステップ足に荷重がかかります。そのため移動してきた身体を支えて踏ん張り、ステップ足からも上行性の良好な運動連鎖を行う機能がステップ足には必要です。

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打撃時足部の肢位と動き

Acceleration軸足

軸足肢位は指標中間位から回外位が理想です。Accelerationまでの軸足はTake backからの力を逃さずに下肢・体幹・上肢・バットと連動させることが必要です。そのため軸足は堅めて押し出しや蹴り出しとして働かなくてはいけません。

Accelerationの軸足
●距骨下関節中間〜回外位を保持
●軸足距骨下関節の蹴り出しで骨盤回旋させる

Accelerationで軸足回内位だと足趾が使いにくい状態になり股関節内旋や膝が外反し、骨盤の左回旋(開き)が早期に出現しやすくなります。ステップした足も力が逃げてしまい踏ん張れなくなります。

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Acceleration➡️Follow through(ステップ足)

Accelerationからはステップ足へ一気に荷重がかかります。軸足からステップ足に重心移動が起こる際にステップ足で踏み込み踏ん張る事が重要です。

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1)打撃動作開始の時点で,左足へ荷重移動がなされている。
2)その後,テイクバックの局面において,右足へ大きく荷重移動され右足荷重の状態がつくられている。
3)右足荷重の状態で,ステップ動作が開始されている。
4)スイング開始の局面から,ステップした足へ荷重移動が開始され,スイングに伴ってステップされた足への,強くて急激な荷重がなされ,ステップ足への荷重のピークが見られる。
5)ステップ足への荷重のピークから,ボールインパクトの時点を経て,スイングフィニッシュにかけて,右足への荷重移動がなされている。

荷重移動の観点から見た野球の打撃におけるステップ動作に関する一考察 
綿田博人.体育研究所紀要.1994より引用

ステップ足接地時の理想は距骨下関節中間位接地
回内接地すると下腿は内旋しKnee-inする事で骨盤左回旋は起こりにくくなります。
回外接地すると下腿は外旋しKnee-outする事で骨盤は早期に開きやすくなります。

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下腿後傾させてステップする打撃フォーム(ステップ足)

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野球パフォーマンスにおける「瞬発系トレーニング」−実践編−【トレーナーマニュアルvol.97】

C-I Baseballの増田稜輔です。
いつもC-I Baseball「トレーナーマニュアル」をご購読頂きありがとうございます。

4月に入り新生活のスタートですね!
C-I Baseballは4年目を迎え、本年度も皆さんと一緒に活動を大きくしていきます!

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今回のテーマ「瞬発系トレーニングの実践編」

前回の記事では
・瞬発力とはなにか?
をテーマに「反動を利用しない瞬発力とSSCを利用する瞬発力」についてお話させて頂きました。

前回の記事をお読みでない方はこちらからお読みください!

野球に必要な瞬発力を構築する

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野球に必要な「瞬発力」をどのように構築すれば良いのでしょうか?
瞬発力上げたい→ジャンプトレーニング・メディシンボールスローを行っていれば良いのでしょうか?

答えは
「前提条件の有無によって変化する」と考えています。

瞬発力を決定する前提条件

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①筋肉量(骨格筋量・除脂肪体重)

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大きな力を発揮しようと思ったらそもそもの筋肉量が必要になってきます。
筋力と筋断面積には正の関係があります。
筋肉の断面積が大きくなると、筋繊維の本数も増え、それによって筋力も大きくなります。そのため筋肉量を増やすことは、筋力を増加させるために重要です。

筋断面積は、筋肉の横断面積を指します。筋繊維の数が多いほど、筋断面積は大きくなります。一方、筋力は筋肉が収縮する能力を指します。筋力は、筋繊維の種類や長さ、数などによって決まります。しかし、同じ条件下で筋断面積が大きい筋肉は、より多くの筋繊維を含むため、より大きな筋力を発揮することができます。

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つまり、瞬間的に大きな力を出すためには「筋肉量」が必要になります。

高校生〜大学生など野球パフォーマンスが著しく向上する時期の選手において、この【筋肉量】が不足している選手がとても多くいます。

筋肉量が不足している状態で瞬発系のトレーニングを行っても
効果は0ではないですが、筋肉量が十分にある選手と比較すると効果が低くなる、もしくは関節部分に大きな負荷をかけてしまう可能性があります。
このようなケースでは障害につながる危険性があるので
「瞬発系のトレーニングを行うための筋肉量があるのか?」は知っておく必要があります。

筋肉量の測定

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投球時の最大外旋位における肘痛を改善するためのアプローチ【トレーナーマニュアルvol.96】

C-I Baseball育成プログラム

私たちC-I Baseballは「野球トレーナーの輪」を広げるために「仲間」を募集しております!
Slackを用いてトレーナー同士で悩みの相談や、ディスカッションできる場を提供しています。
育成メンバーは随時募集中です!
・野球にトレーナーになりたい
・トレーナー活動しているけど自信がない
・トレーニングについて勉強したい
・野球選手の怪我を治したい

など、野球選手に関わりたい方は是非ご連絡ください。

はじめに

投球動作において発生する代表的な症状の一つとして最大外旋位(以下、MER)における肘の内側部痛が挙げられます。

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野球選手に関わるセラピストやトレーナーをされている方であれば一度は対応する機会があったのではないでしょうか?

投球障害肘の病態と動作に関しては以下のnoteで小林先生が解説してくださっていますのでご参照下さい。

CIBのトレーナーマニュアルにおいて私が今まで担当してきた記事では肘関節局所の評価やアプローチを解説させていただきました。

今回はMERにおける肘内側部痛に対するアプローチを主に肘関節以外の部分でお伝えしていければと思います。

MERにおける肘痛

MERにおける肘内側部痛の原因としては成長期の野球肘成人期のUCL損傷尺骨神経障害などが例として挙げられます。

病態は様々ですが、それらを引き起こす大きな要因としては投球動作における外反ストレスがあります。
投球動作中、MERにおいて肘には最大の外反ストレスが加わります。

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そしてそのストレスは静的安定化機構(骨・靭帯など)だけでは受け切ることができません
内側側副靭帯に関しては下記スライドのような報告も挙げられています。

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このように、投球中は肘内側にMCLの破断強度を超えるくらいの牽引ストレスが加わります。

肘は被害者である

✔️肘が硬いから肘が痛くなる…
✔️肘の筋力が弱いから肘が痛くなる…

中にはそのような選手もいると思います。

しかし、多くの肘障害の原因は患部外の要素が大きいと考えています。

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MERにおける各セグメントの角度を見てみると肩甲上腕関節、肩甲骨、胸椎のそれぞれが貢献をし、Totalで約145°の角度を成すことが重要となります。

この動きのどれかが不足することにより肘関節に加わる負荷が増えれば、前腕回内屈筋群に過剰な遠心性のストレスが加わり、前腕の異常なタイトネスが生じるきっかけとなります。

そして患部(肘関節)外の機能で適切なMERを作り出すことができれば投球時の上肢の軌跡がsingle planeとなり肘内側へのストレスを逃すことが可能になります。

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次項からはこのsingle planeを作り出すための具体的なアプローチについていくつか例をご紹介させていただきます。

肩甲胸郭関節へのアプローチ

小胸筋リリース

皆様もご存知の通り、小胸筋は第3〜5肋骨の前方から烏口突起の内側縁・上面に付着しています。
小胸筋のタイトネスにより肩甲骨は前傾方向に牽引され、MERにおける肩甲骨後傾運動の妨げとなるので徒手でリリースを行います。

大胸筋の直下に存在する小胸筋を徒手でリリースしていきます。この際、MERを模したポジションで行うと大胸筋が上内側に移動するため、小胸筋へアクセスしやすくなります。

バーベルを用いた胸郭セルフストレッチ

高校生以降の選手などでバーベルを使用できる環境にある場合は次のようなストレッチもオススメです。
単純に胸椎伸展や前胸部を伸ばすストレッチでは得られない、MERからの切り返しの出力の意識を植え付ける事も可能です。

右前胸部だけでなく左腕をしっかりと引いて左前胸部も伸ばしながら実施することがポイント。

伊藤智央先生のInstagramより引用させていただきました👇

いとう ともひさ@145km/h投げる理学療法士 on Instagram: “#野球 #草野球 #軟式野球 #硬式野球 #ピッチング #ピッチングフォーム #投球 #投球動作#野球好きな人と繋がりたい #野球好きと繋がりたい #野球トレーニング #投手トレーニング #投手 #ピッチャー #ピッチャートレーニング #140キロ #球速アップ #中学野球 #高校野球 #大学野球 #理学療法士 #理学療法学生 #解剖学 #解剖学の勉強 #pitching #pitcher #training #前沢サロン #baseball”7 Likes, 0 Comments – いとう ともひさ@145km/h投げる理学療法士 (@tomohisa.itowww.instagram.com

四つ這い(正座)での胸郭回旋運動 バンドアシスト

胸郭回旋系のエクササイズとして四つ這いで手を頭の後ろに置き、胸を開いていくエクササイズがよく行われるかと思います。
肘が天井に向くかどうかで判断することが多いかと思いますが、そもそも胸椎の回旋可動性が低下している場合肩甲帯や腰椎での代償が生じやすいです。
そのような場合は動画にあるようにバンドを用いてアシストしながら胸椎の回旋可動域を出すエクササイズが有用です。

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投球障害肩に必要な”肩甲挙筋”のエコー観察【トレーナーマニュアルvol.95】

C-I Baseballの小林弘幸です。
私たちの活動も3シーズン目を迎えました。
これまで多くの方々にいつもマガジンの記事をお読みいただきありがとうございます!

今シーズンの私が担当する配信では、「エコー」を通じて
肩関節の解剖とそれに対する実際のアプローチを学んでいこうという
コンセプトの元、Noteを書かせていただきます。

元NPBチームドクターのスポーツDrと一緒にエコーを用いて、
野球選手の投球障害肩を診てきました。

投球障害肩になってしまうと、
『痛くて投げられない』
『何をしても良くならない』
『自分のプレーに集中できない』
『野球が楽しくない』
と悪循環になってしまいます。

私はそのような投球【障害】肩を持った選手に対し、
エコーを通じて、細かな解剖を理解しアプローチすることで
治療効果が奏功することを経験しました。

もちろんそれだけでは解決しないことも多数ありますが、
ケガからの復帰をするということを考えると、
細かな解剖を学んでいくということは必要なのではないかと考えています。

解剖書で見る肩関節だけではなく、
エコーを通じて、3次元的に捉える肩関節を一緒に学んでいけたらと思います。

投球障害肩に必要な”肩甲挙筋”のエコー観察

投球障害肩における肩甲挙筋

投球動作において、肩甲骨の”上方回旋”という動きは非常に重要だと考えています。

しかし肩甲挙筋は、肩甲骨の”下方回旋”筋です。

肩甲骨上方回旋が必要なPhaseは、Late-cocking~BRまでです。

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さらにそのPhaseでは、投球障害肩の有病率が大きいPhaseということが言われています。

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上記のような理由から、
肩甲骨上方回旋は必要な運動であり、
”肩甲挙筋”を含めた”下方回旋筋”は
上方回旋を阻害します。

必要以上の緊張や、タイトネスは
必要ないと考えています。

その原因としては、下記のようなことが考えられます。

・GHの可動域制限で、代償として過剰な肩甲骨挙上が生じてしまうことによる肩甲挙筋のタイトネス。

・肩甲骨上方回旋不足により、代償として過剰な肩甲骨挙上が生じてしまうことによる肩甲挙筋のタイトネス。

どちらも肩甲骨挙上(肩甲挙筋)が代償により生じてしまうと考えています。

オーバーヘッドスポーツでは、上肢挙上に際し、下記の3つの動きが重要であり、関係が深いと考えています。

・肩甲骨上方回旋
・肩甲上腕関節(GH)の挙上(外転)
・肩甲骨挙上

上記3つのトレードオフ関係が成り立つと考えており、
どれかが不足すると、どれかが代償してしまうと考えています。

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特に、
肩甲骨上方回旋とGHの挙上は制限されやすいので
注意が必要だと考えています。

つまるところ、
”肩甲挙筋”は代償的に働きやすい筋肉と考えています。

阻害因子は取り除くことが重要です。

もっと大切なことは、
なぜ代償的に働いてしまっているのかを考えることですが、
本稿では割愛させていただきます。

なぜ代償的に働いてしまっているのか
を念頭に置きながら治療、コンディショニングを行ってほしいと考えています。

肩甲挙筋の解剖

①支配神経:肩甲背神経

肩甲挙筋は肩甲背神経支配です。

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C5から直接分岐し、
背面へ走行、その後、肩甲骨の背面(内側)へ走行します。

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肩甲挙筋と前鋸筋上部は、神経支配などの特徴から近しい機能があるとされています。

※秋田恵一ほか: 運動器臨床解剖学. 全日本病院出版会. 2020

支配神経も肩甲背神経の方から前鋸筋上部へ分岐するものもあり、
同じく下方回旋筋である、前鋸筋上部との関係も深くあると考えられます。

②筋の付着部

起始:頚椎C1~C4の横突起の後結節
停止:肩甲骨の上角、内側縁上部

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肩甲挙筋は肩甲骨から、前方へ走行するのが特徴的で、
僧帽筋は後方へ走行するので
肩甲骨の上方につく筋でも作用が異なります。

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この筋の走行の違いはイメージしておかないと、
同様なアプローチになってしまいます。

③筋の層構造

肩甲挙筋は4束に分かれて、
頸椎横突起へ付着します。

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※佐藤達夫他:リハビリテーション解剖アトラス. 2006

筋腹部分をエコーで観察すると、以下のように観察できます。

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肩甲挙筋単一の筋でも
4足に分かれるということも、エコー観察で理解できます。

身体評価

あくまで私の中では、
肩甲挙筋は代償的に働きやすいと解釈しているので、
身体評価が非常に重要であります。

順番としては、以下のような順番で評価していきます。

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変化球の投げ方(スライダー後編)【トレーナーマニュアルvol.94】

C-I Baseballの高橋塁です。

まずは、自己紹介から

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また、同時に、私自身がMetaGate(メタゲート)という『野球技術系サイト』も運営しております。

ご興味あります方は、一度、ご覧ください。

META GATE | 2.5次元をとらえろ

【note】
Meta Gate【メタゲート】|note

【オンラインサロン】
オンラインサロンLP | META GATE2.5次元をとらえろmetagate2020.com

【Youtube】
BaseballスーパースローチャンネルMeta Gate [メタゲート]

今回は育成プログラム第3期、私の担当の第6回になります。

前回は、『変化球の投げ方:スライダー前編』をお伝えしました。

今回は、『変化球の投げ方:スライダー後編』をお伝えいたします。

野球歴や、年齢、ポジション問わず、誰でもがカーブボールを投げるようになれますので、ぜひ、ご一読ください。

いいピッチャーのファーストステップは、ストライクのとれる変化球を1個身に着けることです。

コントロールのつきやすい変化球と言えば『スライダー』です。

スライダーの握りをしただけでボールは変化します。

しかし、変化のキレを出すのが難しいのがスライダーです。

検証していきましょう。

後編では、前編の最後に「押す・切る」スライダーについてお話をしましたが、そこをより一層掘り下げていきたいと思います。

Lesson⑦ スライダーからストレート

「押す・切る」スライダーを投げるにはどうしたらいいか?

スライダーの握りでスライダーからストレートを投げてみてください。

握りはどんな握りでもOKです。

指に引っかかり「押す」「切る」感覚がわかります。

文章では伝わりづらいので解説動画をみてください。

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育成年代のトレーニングvol.7‐コオーディネーションⅡ‐【トレーナーマニュアルvol.93】

いつもお読みいただき、ありがとうございます。
C-I Baseballの佐藤康です。

前回の私の記事では「コオーディネーショントレーニング」の概論を中心にお話しさせていただきました。

コオーディネーション能力とは、
脳で描いたイメージを自分自身の身体で思い通りに動かす・表現できる能力です。

すなわち、様々な情報を視覚・聴覚や関節・筋腱の固有感覚で入力し、それを脳が素早く認識-処理-判断することで筋へ指令し動く(出力)といった流れを円滑に行える能力といえます。

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▼詳細の記事はコチラ▼

前回の理論ベースの内容を踏まえた上で、今回は実践部分を中心にどのような過程でプログラムを組み込んでいるのか、目的・意図を加えてまとめていきます。

トレーニングに内在するコオーディネーション

育成年代選手にトレーニングを行う上で、運動/認知機能の発達の特徴はおさえておく必要があります。

下図にあるように、コオーディネーション能力は運動能力において、情報系の要素が大きく求められる機能といえます。

すなわち運動能力、パフォーマンスを構成する一要素であり、一概に「コオーディネーション能力の向上=パフォーマンスアップ」となるわけではないことをはじめに整理しておきます。

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文献4より参照

コオーディネーション能力は運動発達過程において育成年代の時期に急速に発達する要素であることはこれまでに挙げた通りであり、トレーニングを組み立てる上でも考慮しておきたい大事な部分です。

”コオーディネーショントレーニング”と題すると、コオーディネーションのみに特化したプログラムの選択が想像されやすいですが、コオーディネーションのみを強化するというよりは、各要素に相互的に補完しあうことで成り立つ運動能力であると捉えています。

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また、状況判断や反応など認知機能・認知課題に対する姿勢/運動の制御は運動能力の形成に重要であり、コオーディネーション要素を含めたプログラム構成が求められることから、その課題の設定をしています。

前回の記事でも以下の図を挙げましたが、コオーディネーション能力には7つが挙げられ、成長期の運動機能の発達において重要な役割を担います。

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各要素の定義については前回の記事にありますので割愛しますが、一要素だけを切り取りその要素だけに特化したトレーニングを処方することがコオーディネーション能力を高めるというわけではなく、相互的に関連した内容が求められます。

ここがトレーニングを組み立てる興味深い点といえます。

また、運動発達過程において基本動作の獲得・成熟は運動能力を向上させる上で基盤となるポイントであり、基本動作評価としても活用しています。

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▼ここからは動画を解説しています▼

Warm-up

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パフォーマンス向上のための足部の評価と使い方 -Step〜Acceleration -【トレーナーマニュアルvol.92】

足部は地面に接している唯一の部位です。足部が安定することで下肢からの良好な運動連鎖が行われます。その足部でも重要なのが『距骨下関節』です。選手の距骨下関節の構造は左右異なります。理想の打撃時の軸足・ステップ足それぞれの距 … 続きを読む

野球パフォーマンスにおける「瞬発系トレーニング」−理論編−【トレーナーマニュアルvol.91】

C-I Baseballの増田稜輔です。
いつもC-I Baseball「トレーナーマニュアル」をご購読頂きありがとうございます。

今回のテーマ「瞬発系トレーニング」

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野球のパフォーマンス発揮において
・瞬発的な力発揮が重要
・爆発的なパワーが球速やスイング速度に関与している
こんな言葉をよく聞くと思います。

瞬発力を向上させるためにジャンプメニューやプライオメトリクス、メディシンボールスローを
取り入れることも多くあると思います。
実際に私も同様のメニューをチームや選手に行っています。
しかし、瞬発系のメニューに取り組んでいるのにも関わらず、球速やスイング速度が向上しないケースはないでしょうか?
そのような場合はなにが原因なのでしょうか?
メニュー自体の問題、頻度、強度なども考えられますが、前提条件が達していないケースもあります。

メニューを考える上で、そもそも瞬発系のメニューを行うだけの前提条件が整っているのか?考えていく必要があります。
方法論でメニューを処方するのではなく、
瞬発的な力発揮とは?爆発的なパワーとは?
などを考えていく必要があると思います。

そこで今回は
野球パフォーマンスに重要とされている
「瞬発系のトレーニング」について考えていきたいと思います。

瞬発力とは?

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瞬発系のトレーニングを考える前に「瞬発力とは?」について考えていきましょう。

瞬発力は「瞬間的に出る強いバネの力」と言われています。

つまり瞬間的に強い力を発揮する能力であると考えられています。
野球パフォーマンスでは
ピッチング・バッティング・走塁・守備など瞬間的な力発揮を求められるため、野球パフォーマンスには「瞬発力が必要」と考えられていると思います。

では、この「瞬発力」がどのように野球パフォーマンスに関係しているのか
を考えていきましょう。

瞬発力と野球パフォーマンス

瞬発力の指標として、立ち幅跳びや垂直跳び、メディシンボール投げを用いて評価し瞬発力と球速やスイング速度が関連しているとも言われています。

・メディシンボールスローと野球パフォーマンス

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・ジャンプと野球パフォーマンス

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なぜ瞬発力は球速やスイング速度に関係するのか?

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