腱板機能を全身から捉える~評価編~【トレーナーマニュアルvol.169】

こんにちは。
C-I Baseballの1期生の北山達也です。
今回はサポートメンバーからの投稿となります。

はじめに

私は日頃は整形外科病院に勤務しており外来診療において投球障害の選手を治療しています。
その中で腱板機能が低下している選手を多く経験します。
その低下している腱板機能を改善するにあたり、局所だけでなく全身から捉えることで改善することも経験します。

そこで今回は「腱板機能を全身から捉える」という内容を紹介していきたいと思います。

腱板の局所機能を改善する方法はこちらのnoteをご覧ください。

まずは日常行っている腱板機能評価について紹介します。

腱板機能評価

Full can test

選手を立位または座位とし、母指を上に向けた状態の肩甲骨面外転30~90度※とする。
検査者は選手にこの肢位を保つように指示して抵抗を加える。
※肩甲骨面30度は関節包が最も緩む肢位のため、腱板の安定性が最も必要となる。

Empty can test

選手を立位または座位とし、母指を下に向けた状態の肩甲骨面外転30~90度※とする。
検査者は選手にこの肢位を保つように指示して抵抗を加える。
※肩甲骨面30度は関節包が最も緩む肢位のため、腱板の安定性が最も必要となる。

Belly press test

選手を立位または座位とし、肘関節屈曲90度させ手部を腹部に置いてもらう。
肩関節内旋位、手関節掌背屈0度で保持するように指示して抵抗を加える。

Bear Hug test

選手を立位または座位とし、検査側の手掌を対側の肩に置く。上肢挙上90度、最大内旋位を保持するように指示して抵抗を加える。

infraspinatus test

選手を立位または座位とし、上肢下垂位、肘関節屈曲90度とする。
肩関節は中間位~最大外旋位とし、検査者は選手にこの肢位を保つように指示して抵抗を加える。

上肢挙上テスト

選手を立位または座位とし、検査者は後ろから検査側の上肢を他動で外転させる。
この際検査者が選手の上肢を強く感じた場合や、他動運動に対して上肢全体がついてこず、肘関節屈曲などがみられた場合を陽性とする。
必ずしも腱板機能のみを反映したテストではないが、腱板機能が低下している選手の多くはこのテストが陽性となる。

腱板機能を全身から診る

目の前の選手の腱板機能が低下していて腱板トレーニングを処方しても変化がないことを経験しないでしょうか。
この場合、腱板自体には問題がなく、腱板が収縮しづらい身体環境になっていると考えています。

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投球障害肩で見逃しては行けない棘上筋評価【トレーナーマニュアルvol.168】

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CIBのトレーナーマニュアルについて
①野球現場でのトレーナー活動
 チームトレーナー、育成年代への関わり、パフォーマンスについて
②臨床現場での選手への対応

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③ゲストライターによる投稿
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野球トレーナーマニュアル|C-I baseball|note

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はじめに

今回は、第一回CIBFORUMでもお話した棘上筋にフォーカスを当てて
お話します。

棘上筋は、肩関節の回旋筋腱板、いわゆる”インナーマッスル”のうちの一つです。

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棘上筋は、組織学的に非常に脆弱性がある組織です。

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※Sano, H. et al. : Stress distribution in the supraュ spinatus tendon with partial -t hickness tears An analysis using two-dimensional finite eleュ ment mode l. J. Shoulder Elbow Surg. 15 : 100105, 2006
※Nakajima T, et al.: Histological and biomechanical characteristics of the supraspinatus tendon. J Shoulder Elbow Surg., 3 : 79-87, 1994.

腱板損傷では、棘上筋の損傷が多く観察されます。

投球では、肩関節に大きいストレスが生じるため、
棘上筋の損傷(特に微細な)は数多く生じてしまうと考えられます。

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Fleisig GS, et al. Am J Sports Med. 1995

特に、リリースではより大きい負荷が肩関節にかかります。

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Fleisig GS, et al. Am J Sports Med. 1995
DeFroda SF, et al. Caff Sports Med Rep. 2016

なので、肩関節、肩甲上腕関節の評価は詳細にしなくてはなりません。

棘上筋の評価は、非常に見逃されやすい評価と考えられます。

なぜなら、評価するのが非常に難しいからです。

なので、
こちらで少し解説していきたいと思います。

棘上筋の解剖

肩甲骨の棘上窩から上腕骨の大結節上部や肩関節包に付着するといわれています。

しかし、
正確な解剖としては、やや前方へ付着するとされています。

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※Mochizuki T, Sugaya H, Uomizu M, Maeda K, Matsuki K, Sekiya I, Muneta T, Akita K. Humeral insertion of the supraspinatus and infraspinatus. New anatomical findings regarding the footprint of the rotator cuff. J Bone Joint Surg Am. 2008 May;90(5):962-9. 上記文献を参考にし、図を作成した

この解剖から、棘上筋の伸張肢位は、肩関節の内転となることがわかります(後述)が、伸展でも伸張肢位になることが考えられます。

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また、
筋線維を詳細に観察すると、前部線維と後部線維で分けられます。

前部線維:腱性部が多い
後部線維:筋性部が多い

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※Mochizuki T, Sugaya H, Uomizu M, Maeda K, Matsuki K, Sekiya I, Muneta T, Akita K. Humeral insertion of the supraspinatus and infraspinatus. New anatomical findings regarding the footprint of the rotator cuff. J Bone Joint Surg Am. 2008 May;90(5):962-9. 上記文献を参考にし、図を作成した
※M Vahlensieck, M Pollack, P Lang, S Grampp, HK. Genant Two segments of the supraspinous muscle: cause of high signal intensity at MR imaging? Radiology, 186 (1993), pp. 449-454

上記を鑑みると、外旋での方がより棘上筋の柔軟性を反映することができるのではないかと考えています。

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棘上筋の評価

ROM

棘上筋が伸張する肢位は、肩甲上腕関節の内転です。

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内転制限が生じることで様々な問題が生じてしまうといわれています。

腱板断裂を有する症例においてGHJの内転制限を呈する

Yano Yuichiro, et al. JSES international 2020.

夜間痛群ではGHA(肩甲上腕関節角度)が有意に増大(内転)し、
肩甲骨下方回旋位が強くなる傾向がみられた。

赤羽根良和ほか:夜間痛を合併した肩関節周囲炎の臨床的特徴.理学療法学(2017):44(2);109-114

わかりにくい評価だからこそ、
正確に、逃すことなく評価する必要があると考えています。

ただ、
普通に内転の可動域を確認すると、体幹が邪魔でROM測定ができません。

工夫をする必要があります。

肩関節内転制限がある場合、上腕骨が体側から離れてしまします。

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その上腕骨を体側につけると、
肩甲骨の下方回旋が生じてしまいます。

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上記のような適応が生じてしまい、正確にROMを診ることができません。

そこで、しっかりと、肩甲骨の上方回旋をしたうえで、
肩甲上腕関節の内転ROMを観察する必要があります。

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肩甲骨の上方回旋を伴うことで、
真の肩甲上腕関節の内転ROMがわかると思います。

以下の動画で確認ください。

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投球動作における鼠径部痛の病態とアプローチ -Groin pain syndrome編-【トレーナーマニュアルvol.167】

今回から、トレーナーマニュアルにて定期的にnoteを投稿させていただくことになりました。C-I Baseball サポートメンバーの 久我 友也 と申します。私は整形外科クリニックで勤務しており、メディカルな視点でお話し … 続きを読む

シンスプリント に対する後足部からのアプローチ【トレーナーマニュアルvol.166】

シンスプリントの選手はどのように対応していますか?安静にするだけでは再発する可能性があります。痛みを軽減するためには後足部(距骨・踵骨)からのアプローチが有効だと考えます。今回は早期復帰&再発予防を行うためのnoteにしました。距骨踵骨だけでなく、舟状骨、立方骨の動きや足部アプローチをご紹介させていただきます。


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公開セミナー情報

9/29(日)10-14時ごろ

須藤によるセミナーが開催されます。 野球選手をはじめとする各種アスリートの動作を変化させ続けてきた須藤の技術を、オフラインで是非体感してみてください。 オンライン参加もあるので、遠方の方もぜひお申し込みください

https://peatix.com/event/4090527

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シンスプリント とは

ジャンプやランニング等の動作の繰り返しにより脛骨内側後面の痛みを訴える疾患
過労性脛部痛、脛骨疲労性骨膜炎、脛骨過労性骨膜炎 (Medial Tibial Stress Syndrome)とも言う

<原因>
膝関節外反、下腿内旋、距骨下関節回内位、足部過回内などにより後脛骨筋、長母趾屈筋、長趾屈筋、ヒラメ筋もしくはその筋膜の伸長刺激による骨膜の炎症であるとする説が多い

<部位>
脛骨の前面もしくは内側


<POINT>
シンスプリント は
 ●安静にしていても改善はしない
 ●足部を回外に誘導すればいいとは限らない
 ●足部・全体の評価が必要になる

歩行(距骨下関節の肢位と動き)

IC:回外位接地、LRに向けて回内へ動く
LR:中間位から回内接地、ここで距骨下関節最大回内位になり回外へ切り替わる
MSt:回内位から中間接地、蹴り出しにむけて徐々に距骨下関節回外位になる
TSt:中間位から回外接地、蹴り出しにむけて足趾機能を高めるために距骨下関節回外位
PSw:回外位、蹴り出すために距骨下関節回外位

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メカニカルストレス

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内側型特徴

発生機序はICからLRにかけて足部全体(横足根関節)が回内することで後脛骨筋・長母趾屈筋が急激に伸張され下腿内側にストレスがかかり発症します。
本来ならば、LRからMStにかけて距骨下関節は回内、横足根関節縦軸は回外することで足圧中心は外側に移動し4趾5趾が機能しなければいけません。

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前方型特徴

発生機序はICからLRにかけて距腿関節の底屈速度が加速することで前脛骨筋・長母趾伸筋・長趾伸筋が急激に伸張され下腿前方にストレスがかかり発症します。
底屈速度が加速してしまう原因は距骨下関節回内可動域低下や反対側の蹴り出しの低下が考えられます。

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距骨下関節

距骨は下腿からと足部からの連結部位になり上からの大きな力を分散する役割がある。
後足部は距骨と踵骨からなる。
荷重位では踵骨の位置により距骨の位置が変わるので踵骨のアライメントを意識することが大事になる。

距骨下関節は関節面が複数あるため複雑な動きをする。距骨下関節の動きは前額面で見ることが多いと思う。
この後紹介する、回内・回外の動きで舟状骨・立方骨を含めて説明する。

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回内・回外の動き(舟状骨・立方骨・踵骨)

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野球選手に意外と多いTFCC損傷【トレーナーマニュアルvol.165】

今回から配信メンバーとして活動させていただきます、三輪智輝と申します。
最初の投稿ということで自己紹介させていただきます。

<経歴>
-2021 広島大学医学部保健学科理学療法学専攻卒業
2021- 整形メディカルプラザ
2021- メディカルベース新小岩
2023- 北砂リトルトレーナー
2023- 共栄大学硬式野球部トレーナー
2023- 若手セラピストの学校 代表

<活動歴>
理学療法に関する講師:20件以上
学会発表:5回
所属学会:日本肩関節学会 日本肘関節学会 日本整形超音波学会 日本臨床スポーツ医学会
論文:
❶ボールの握り方の違いによる投球時の肘外反トルクと投球動作,Jounal of athletic rehabilitation,No.18(1) ,P17-24,2021
❷超音波画像診断装置による浅指屈筋筋腹の収縮動態の検討,日本肘関節学会雑誌,30(2),P293-297,2023

自分自身、幼稚園から大学まで野球をし肘関節内側側副靱帯損傷を経験しました。怪我による痛みを少しでも和らげられるように、そして全野球選手が笑顔で野球ができるように尽力していきたいという思いの元に活動しております。
長くなりましたが、今後もライターとして携わらせていただきますので、何卒よろしくお願いいたします。

▼ここから本題です。

本日は意外と現場で多く経験するTFCC損傷について、概要をまとめていきたいと思います。

1. TFCCとは

TFCCとは、三角線維軟骨複合体(Traiangular Fibro Cartilage Complex)のことを指し、複雑な構造をこのようなひとまとまりの組織のように表現しています。

そのため牽制されることが多いが、この記事ではできるだけわかりやすく構造・病態・病態把握について説明していきます。

TFCCは、手関節尺側に位置する構造物のことを指します。

🔻TFCCの前額面イメージ

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🔻TFCCの冠状断イメージ

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主に三角線維軟骨円板(TFC)を中心に、橈尺靱帯(RUL)、TFC周囲の靱帯組織(尺側側副靱帯:UCL、尺骨月状骨靱帯:ULL、尺骨三角骨靱帯:UTL、尺側手根伸筋:ECUなど)が隣接しています。
これらをまとめてTFC complex➡︎TFCCと呼ばれています。

2. TFCC損傷のメカニズム

解剖のおさらいができたところで実際に現場で対峙するTFCC損傷はどのようなメカニズムで起きるのでしょうか?

TFCCの損傷メカニズムには、これまでに様々な報告がなされています。
まとめると以下のようになっています。

❶尺側手根関節にかかる圧縮応力の増加(尺屈)
❷遠位橈尺関節(DRUJ)の不安定性による回内・外ストレス
❸橈骨遠位端骨折・体操競技のようなDRUJへの外傷性引張負荷
❹ラケット・バットスイングのような尺屈・回内応力の増加 など

このようにTFCCの損傷メカニズムは多岐にわたることが考えられます。
これら一つ一つのストレスを画像を用いて整理していきます。

❶尺側手根関節にかかる圧縮応力の増加(尺屈)

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❷遠位橈尺関節(DRUJ)の不安定性による回内・外ストレス

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TFCC損傷によってDRUJが不安定になることがわかっており、前腕の回内・外に伴って尺骨が背側・外側に移動してしまうことがわかっています。

❸橈骨遠位端骨折のようなDRUJへの外傷性引張負荷

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❹ラケット・バットスイングのような尺屈・回内応力の増加

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先行研究では、前腕の回内運動で背側橈尺靱帯は緊張し、掌側橈尺靱帯は弛緩することがわかっています。そのため、バッティング動作時には尺側への圧縮応力に加え、背側組織が緊張することが考えられます。

また野球に特化したTFCC損傷に言及します。
特に野球で起きる急性損傷は、
バットスイング(特に内角球スイング時)やヘッドスライディング時に見られるとされています。

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3. TFCC損傷 病態

今まで述べてきたようにTFCCは、
尺側手根関節・遠位橈尺関節で起きる運動により損傷することがわかりました。
それではそのメカニカルストレスによってどこに病変が起きるのでしょうか?

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最大外旋時の肩前上方部痛に対するアプローチ例【トレーナーマニュアルvol.164】

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はじめに

今回は投球動作における最大外旋位での肩関節前上方部の痛み、特に上腕二頭筋腱(以下、LHB)の痛みの対処法の一つをご紹介できればと思います。

基本的に肩関節後方タイトネスや下方タイトネスが強い場合、その対側である前方や上方に骨頭が偏位することによりストレスが生じ、痛みが出るケースが多いです。
そのため、介入の初期は優先的にそれらの問題を解決することが望ましいです。

後下方の柔軟性が出ても痛みが解決しない場合や、肩甲骨の運動に問題があるケースは今回のnoteが参考になるかもしれません。

評価

圧痛
上腕二頭筋長頭腱を触診し、圧痛を評価します。
※三角筋前部筋内腱の痛みと混同しないよう注意が必要
前腕の回内外をしながら二頭筋腱をしっかりと触知してください。

MER再現痛

最大外旋位を再現してもらい、肩前上方に疼痛が出現するか確認します。

外旋の作り方がポイントになります。
肩前上方部痛を訴える選手に多いパターンは肩甲骨挙上・前傾、肩関節より肘関節が下に来る(肘下がり)、骨頭前上方突き上げストレスです。

参考動画⏬
良い外旋と悪い外旋

しっかりと肩甲骨下制・外転・上方回旋が作れているかを必ず確認します。
この肩甲骨の動きができていれば肩関節外旋に伴って肘は上がってくるはずです。

|肩屈曲90°出力

LHBの炎症があったり、三角筋前部線維と上腕二頭筋の滑走不全があったりする場合、肩関節屈曲90°でのMMTを実施した際に肩前上方に疼痛を訴える場合が多いので評価していきます。

もちろん体幹や肩甲帯のstability不良や腱板の筋力低下でも左右差が生じることがあるのでそれらの評価も併せて行い、複合的に判断するのが良いと思います。

|背臥位肩関節伸展ROM

三角筋前部線維と上腕二頭筋の滑走不全が生じて肩関節伸展制限を生じているケースがありますので伸展可動域も確認しておきましょう。
投手であれば理想は他動伸展80-90°を目標値としています。

徒手治療

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投球動作とコレクティブエクササイズ【トレーナーマニュアルvol.163】

こんにちは!
C-I Baseball サポートメンバーの野坂光陽と言います。

現在は理学療法士として整形外科のクリニックで勤務しながら
野球選手のために日々情報発信をしたり、CIBでサポートしている
大学野球部のトレーニング指導をしています!

NoteやXでは理学療法士向けの記事を書いていたり
instagramでは実際のトレーニング動画を日々更新中です!

もしよろしければそちらのチェック、フォローもよろしくお願いいたします!

今回の記事の内容

今回の記事の内容として、投球動作における
「コレクティブエクササイズ」についてテキストと画像、動画にて
記事にしていきます!

昨今SNSではトレーニング、エクササイズについての情報が
たくさん出回っており、情報過多であるのが現状です
その中で、我々理学療法士やトレーナー、指導者には
「選手に適切なエクササイズの指導」が出来るかどうかという
スキルが非常に重要になってきていると考えています

私もSNSで発信する中で、万人ウケするようなエクササイズではなく
必要な人に対して届いてほしいという願いを込めて
日々情報を発信していますし、不利益にならないように
自分で吟味し、実際に自分が行った上で
情報を鵜呑みにしない姿勢が重要かと考えています。


なので、今回ご紹介するエクササイズについても
この記事内で学んだことは、実際に読者の方が
自分でやってみる」ことを強くお勧めします

その中で、
目の前の選手に対してためになるか、
有効になるかどうかを

初めて吟味できると思います。

この記事を読んで、一人でも多くの選手が救われ
一人でも多くの指導者のお役に立てるようであれば幸いです!

それでは内容に移っていきます!!

コレクティブエクササイズとは?

コレクティブ:Correctiveとは

コレクティブエクササイズとはなんなのかという説明と定義を
先にお話しする必要があります。

コレクティブとは
corrective:(形式))[形]
1 矯正(きょうせい)する,正しくする
2 中和する

といったような意味合いを持ちます

つまり、エクササイズにて動きをコレクティブする
つまり動作を正しくする、是正するといったものを
コレクティブエクササイズと言います

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通常のエクササイズとは何が異なるのか?

どんなスポーツ選手にとっても共通なのが
競技に対して能力を向上させるときには
トレーニング、エクササイズというものはスキルの土台となる
とても重要な要素であることは間違いないかと思います。

その中で、トレーニングやエクササイズの位置付けとして

✅ストレングストレーニング
・・・神経的要素や筋肉量、筋断面積を向上させることにより
パフォーマンスを向上させる目的で実施する

✅ストレッチ
・・・スタティックストレッチやダイナミックストレッチなど
筋肉の柔軟性や関節の可動域を改善させ、パフォーマンスを改善させる
目的で実施する

✅スキルトレーニング
・・・競技特異的(競技特有の体の使い方や意識の仕方など)スキルの
向上を目的に実施されるもの

✅ヨガ、ピラティス
・・・自分の身体の感覚を研ぎ澄まし、感覚閾値を上げ
動作におけるパフォーマンスの向上を図るもの

トレーニングやエクササイズはその目的や方法によって
多義に渡ります。

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その中の一つに、コレクティブエクササイズというものが存在しますし
どちらかというと、フィジカル(身体的要素)を加味した中で
選手のスキルをどうやって上げていくかという部分の
橋渡しという位置付けでイメージしていただいた方が良いかも
しれません。

これらを実施する目的の最終地点は
選手のパフォーマンスアップに他なりません。

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パフォーマンスアップとは何かと一言で言い表すことは
なかなか難しいですが、最終的には選手が試合で
結果を残せるように、下準備をしていく必要があるということです。

個別性とコレクティブエクササイズ

さて、コレクティブエクササイズとはどんなものなのか
どういった位置付けで行なっていくかという概要がお伝えできたところで
さらに深掘りをしていきたいと思います。

結論、選手個々でコレクティブエクササイズの内容は変化していきます。

というのも、コレクティブエクササイズというのは
パフォーマンススキルで問題、異常があった場合に
フィジカル面に何か問題、是正する必要がある場合の
橋渡しとなるものであると前述しました。

例えば、投球動作内で「リリースの力強さ」
具体的に言えば、
・上肢の振りをもっと加速させたい
・リリースの瞬間の力発揮を強くしたい
・0 position(肩関節が安定し、最も力発揮しやすい角度)でリリースしたい
など、要望であったり達成したいものがあった場合に
コレクティブエクササイズでそれらを修正、是正していくことを
イメージしていただくといいかと思います。


また、投球動作時の並進運動についても
・股関節の可動域を上げたい
・並進速度を速くしたい
・並進運動から回転運動の速度を高めたい

あげればキリがないくらい、動作の修正って出てくるものであり
その動きを修正、是正することが「コレクティブエクササイズ」
になります。

しかも、これは選手個々で伸ばすべきポイントとその優先順位が
変動することがあります。

可動域に問題があるのか
筋出力に問題があるのか
動作の感覚に問題があるのか
怪我による影響でそのパフォーマンスが発揮できない状態なのか

選手によって、問題点や是正する点はオーバーラップしていることは
十分にありますが、動作を見て、問診をして
優先順位をつけてアプローチをするということが
非常に重要であると考えています。

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そして、上記した問題点の列挙でお気づきかもしれませんが
コレクティブエクササイズというのは概念であり
選手によっては筋力トレーニングがコレクティブエクササイズに
なり得るし、ストレッチがコレクティブになり得るし
もちろん感覚値の向上がコレクティブになるといったもので
どんなトレーニングでも選手にとっては「コレクティブ」な
トレーニングになり得るということです。

そういったものを念頭に置いて
この先も読み進めていっていただけると幸いです。

投球動作における「修正点」

アトラクターを考える

フラン・ボッシュ著 コンテクスチュアルトレーニングに
記されているように、スポーツ動作には
アトラクターとフラクチュエーターという概念が存在します。

アトラクターとは、
ある動作において、どの選手にも共通して
出現する動きのことを言います。

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なぜアトラクターを重視するのか?

アトラクターというのは、いわゆる動作における
パフォーマンスの高い選手の共通項という意味合いがあります。

野球選手、特に投手においては
「打者を打ち取り、得点されることなく勝利に導く」
ことが最優先事項となります。

球速アップもそうですし、コントロールも良くならないといけない。
効率よく投球することで疲労軽減につながり、自身が重ねられる
投球回数や投球数も多くないといけない。
さらには、怪我を防ぐという側面も考慮される必要があるので
投手に求められることって非常に多い現実があります。

そこで、理学療法士やトレーナーの役割としては
上記した達成すべき目標や課題に対して選手を誘導できるだけの
能力や知識が必要になるのと同時に
選手自身がその能力を高めていく必要があります。

トレーナーや指導者、理学療法士が出来るのは
効率の良さ、身体機能の向上の手助けである。
ということで、向上するためには、アトラクターという概念を知り
その共通項を知る必要があるということです。

アトラクターには、参考書籍から引用できるものとして
9つの分類がなされています。

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定位能力を高める‐成長期のトレーニング-【トレーナーマニュアルvol.162】

いつもお読みいただき、ありがとうございます。C-I Baseballの佐藤です。 C-I Baseballでは2024.1月より東京都内で小学生を対象にしたアカデミー事業を運営しております。2022年からは東京都内のリト … 続きを読む

野球選手に多い姿勢の特徴と改善エクササイズ【トレーナーマニュアルvol.161】

C−I Baseball2期生の戸高です。
今回の配信はサポートメンバーシリーズとなります。

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私が配信する内容としては「ピラティス【pilates】」というメソッドが1つのツールとして投球障害の治療、予防、パフォーマンスの向上にどう活かしていくかに焦点をあてて、配信させていただいております!

今回は「野球選手の姿勢」について解説していきます。
姿勢の重要性からエクササイズという流れになっていますので、エクササイズから読みたいって方は飛んでいただければと思います。

姿勢の重要性

野球に限らず、あらゆるスポーツにおいて体幹の重要性が広く認識されています。体幹の強化は、姿勢の改善だけでなく、パフォーマンス向上や怪我の予防にも繋がります。

姿勢と怪我との関連

姿勢が重要な理由の一つは怪我との関連があります。
姿勢と腰痛に関しては多くの方がご存知かと思います。
しかし、姿勢と肩・肘痛となるとあまりトピックとならないので結びつかない可能性もあります。

松井らの報告によると、中学生では上肢下垂位での腰椎前弯角度の増大高校生では上肢下垂位から上肢挙上位の胸椎伸展の変化減少を認めたと報告され、肘関節痛との関連性を報告しています。

肘:理学初見陽性を陽性群としたときの姿勢変化
・中学生は下垂時での腰椎前弯角において健常群21.9±8.8度、陽性群28.5±10.8度であり、陽性群が高値を示した。
・高校生は胸椎後弯角において、下垂時と挙上時の変化量が健常群11.6±7.8度、陽性群8.1±7.1度であり、陽性群が有意に低値を示した。

中・高校生野球選手における姿勢と肘関節痛との関係.日本肘関節学会.2018

この報告からも後ほど姿勢の特徴でお伝えしますが、胸椎後弯姿勢、腰椎前弯の増加姿勢を取る選手は肘痛のリスクがあることがわかるかと思います。

この理由としては、以前もお伝えしたように投球動作には胸椎の伸展が必要です。
腰椎前弯が増大すると胸椎はバランスを取るために後弯しますので胸椎の伸展は出づらくなります。この胸椎伸展につきまして今後のnoteで獲得するステップやエクササイズ方法などをお伝えできればと思います。

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チェンジアップの投げ方(後編)【トレーナーマニュアルvol.160】

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さて、前回の私の記事は『チェンジアップの投げ方(前編)』でした。

今回はその続きで後編をお伝えいたします。

さて、今回は『チェンジアップ』の投げ方の【後編】となります。

前回は、『チェンジアップ』の投げ方の【前編】として、チェンジアップの軌道に始まり、基本的な投げ方のレクチャー、そして、岡本秀寛さん(元東京ヤクルトスワローズ)の動画解説も入れながら説明して参りました。

そして、前編ではチェンジアップは、シュートの方向にスピンすることをお伝えしました。

また、チェンジアップを投げるポイントとして、少し内旋(うちネジリ)をピュッとする感覚で投げる事を挙げさせていただきました。

※【後編】では動画が合計8本あります。これらの動画でも説明をさせていただいております。充分、満足していただける内容となっております。

握り方のコツ

チェンジアップの握り方には、サークルチェンジと人差し指と薬指でボールを挟む握り方が大きく分けてあります。

人差し指と薬指で挟むタイプの方が、抜ける感じはわかりやすい傾向があります。

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