野球選手に必要なストレングストレーニング -その5-

初めに

みなさんこんにちは!

今回はC-I Baseballのメンバーが交代で記事を書いております
「トレーナーマニュアル」にて、サポートメンバーである私が
記事を書いていきますので、よろしくお願いいたします!

現在は、BCリーグ 栃木ゴールデンブレーブス
S&Cとして野球選手に携わっております、野坂と申します。

今回は、S&Cとして野球選手並びに野球現場に立つ者として
これから野球現場のトレーナーとして活動していきたい方や
現在活動中の方々に有益な情報をお届けできるように
記事を書いていきますので、どうぞ最後までよろしくお願いたします!

このトレーナーマニュアルで何度か記事を書かせていただいております!
ご興味があればこちらもぜひ読んでいただくと嬉しいです!

トレーナーマニュアルは、私以外にもCIBの錚々たるメンバーが
野球選手に携わる上で必要な知識を
臨床的視点
トレーナー的視点
ピラティス
靴やインソール
アナライザー
AIや分析

多方面の知識を学べる記事が満載です!

この機会にぜひ購読していただければと思います!

野球選手に必要なストレングストレーニング その5 片側への負荷

ストレングストレーニングと人間の動きにおける「面」の基礎

人の動きには「面」という概念で考え、動きをみていく必要があります。
その面というのは
1.矢状面
2.前額面
3.水平面
この3つに分類されます。

矢状面というのは、身体を側方から見た状態のことを指します。
動きとしては「屈曲」や「伸展」の動きが見える面のことを言います。

前額面というのは、身体を前方から見た状態のことを指します。
動きとしては「外転」や「内転」の動きが見える面のことを言います。

水平面というのは、身体の水平方向の状態のことを指します。
動きとしては「回旋」の動きが見える面のことを言います。

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平面の関係性

冠状面 – Wikipediaja.wikipedia.org

ストレングストレーニングと人間の動きにおける「方向」の基礎

動作の「方向」についても言及させていただく必要があるので、
ご存知かと思いますので簡単に説明させていただきます。

ここでいう「方向」というのは
押す「Push」
引く「Pull」
回旋「Rotation」

という3つの動きを特にストレングストレーニングでは重要視しています。

※屈曲伸展、内転や外転、側屈などについてもトレーニングしますが、
記事内容の都合上、重要度の高い3つを上記に列挙させていただいております。

Pushについては、
ベンチプレス
スクワット
プッシュアップ(腕立て)
ランドマイン
これらがPush系の例になります。

Pullについては、
ベントオーバーローイング
ラットプル
チンニング
ワンハンドローイング
これらがPull系の例になります。

Rotationに関しては強い負荷というよりも「片側」への負荷をかけることで
回旋方向に負荷をかけていくという考えのもと、トレーニングしていきます。
上記と重複してしまいますが
ランドマイン
ワンハンドローイング
メディシンボールを使ったラテラルスロー
これらが当てはまります。


野球の基本的な動き

野球動作というものを大きく分けるとすると
投球(送球)
打撃
という二つに分類できます。

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投球動作のフェーズ
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打撃動作のフェーズ 投球動作よりも明確な並進運動は少ない

競技特性的に、これらは身体の
並進運動
回転(回旋)運動
が伴うという部分は一致しています。

※細かく見ていくと投球及び打撃動作において
「側屈」要素も非常に重要になるのですがここでは割愛しています

すなわち、野球動作においてはこの並進運動と回旋運動が主となり
ボールやバットに力を伝えていく力源になります。

基本的動作から考える野球動作におけるストレングストレーニング

キーワードは「片側」と「回旋」

今回は、S&Cという目線から野球の基本的動作とストレングストレーニングをどういった形で繋げていくのか?というところをお伝えできればと思います。

今回のキーワードは「片側」「回旋」について内容を絞り、
深掘りをしていきたいと思います。

従来のストレングストレーニングは両手でバーベルを持ったり
両側同じ重量のプレートで重量設定をしたりと
基本的には両上肢、両下肢に同等の負荷がかかるような設定で
行うことがほとんどの種目になります。

一方で、先ほど申し上げた野球動作は、並進と回旋でした。
回旋の方に重きを置くと、結論から言うと片側ずつで
異なる動きが発生すると回旋動作になりえます。

立位で体を左に回旋するとなると、
左側は引く(pull)
右側は押す(push)
という相反する動きが発生すると「回旋」という動きになります。

片側性のトレーニングに関しては、まず「回旋」方向への負荷を
考えて処方することが大事だと言えます。

片側性の負荷と神経系負荷への思考

これは私の持論になる部分になりますので、片手間で見ていただけたらと
思うのですが、、、(調べ不足な部分もありますのでご容赦ください、、、)

ストレングストレーニングにおける高負荷トレーニングにおいては
筋力、筋量を向上させるということはもちろんのこと
神経系への負荷についても非常に重要視しています。

高重量を扱うということはすなわち全身の筋線維を総動員する必要があります。
もし仮に100の筋があった場合でも、トレーニングしなければ
100すべての筋肉が使えるわけではありません。
100の筋肉を総動員させるには、繰り返しトレーニングして
神経系をアクティベート(活性化)する必要があると言われています。

筋出力と神経系のアクティベーションに関しては
スキル練習だけでは賄うことはできないと考えています。

スキル、出力を上げたいなら、神経系も考慮し神経系に負荷をかける
トレーニングを行わないといけないと考えています。

よってストレングストレーニングに関しては、神経系負荷を通し
筋肉のアクティベーションを図るということも考慮すると
動作での最適な出力を出し、パフォーマンスを発揮するために
トレーニングは非常に重要である!ということを考えています。

前置きが長くなってしまいましたが、、、
片側で行うということはそれなりに脳神経系に負荷がかかります。
なぜかというと、両側は比較的安定しているのに対し
(支持基底面や支える点の数)片側性の負荷は、両側よりも
支持基底面が狭く、制御及び動作を完結するために
より脳の処理に負荷がかかるからです。

例えば、片足でのスクワットを例に挙げると
・重量のコントロール
・両手or片手に持つというタスクでもバランスの変動がある
・コンセントリック-アイソメトリック-エキセントリックという
 収縮様式のコントロールを片側で行う
・回旋方向への負荷=ローテーション及びアンチローテーション
・神経系への負荷

単純なエクササイズでも上記のような効果効能があるということを
実施する中で考慮するだけでも効果の違いが出ると思います。

特異性の原則と片側性トレーニングを動作に繋げるには?

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コーディネーショントレーニング-実践-

いつもお読みいただき、ありがとうございます。
C-I Baseballの佐藤です。

今回はコーディネーショントレーニングについてまとめていきます。

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1.技術練習と何が違うのか

コーディネーショントレーニングと聞くと、遊びやリズム運動などを連想される方が多いかもしれません。しかし、運動時には常にさまざまなコーディネーション能力が関与しており、コーディネーション能力は潜在的な運動能力を上げるのにかかせない運動基礎能力といえます。

コーディネーションに秀でた選手ほど、新しく学ぼうとする動きや専門種目におけるさまざまな技術をより短期間のうちに、効率よく習得されやすい傾向があるといわれています。

専門的にはこれを前提条件機能といいます。

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Hartmann,2003

技術トレーニングとは、その競技の技術を習得するためのトレーニング(スキルトレーニング)であり、競技専門でかかせない技術を獲得し、その技術のレベルを上げることが目的です。

野球で例えると、捕球やバッティング動作を繰り返して行う反復練習やその技術を伸ばす指導が必要となります。

それに対し、コーディネーションを高めるトレーニングでは、同じ動きをパターン化して繰り返すのではなく、動きの内容や設定を変え、難易度に変化を加えながら、さまざまなコーディネーション刺激を与えていきます。動きの複雑さや状況変化といった多様な刺激によりその能力を高めていきます。

そのため、専門技術を高めることとコーディネーションの指導には違いがあります。


2.コーディネーション能力を高めるSTEP

運動時には常にさまざまなコーディネーション能力が関与しています。
前項でお伝えしたコーディネーション能力を含む「基礎運動能力」と競技専門の「技術トレーニング」は、初めから混在して指導するのではなく、段階的に進めていくことで、スキルの最適化を図ります。

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Neumeier,1999より参考

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肩甲帯に対するピラティスアプローチ③

C−I Baseball2期生の戸高です。
今回の配信はサポートメンバーシリーズとなります。

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私が配信する内容としては「ピラティス【pilates】」というメソッドが1つのツールとして投球障害の治療、予防、パフォーマンスの向上にどう活かしていくかに焦点をあてて、配信させていただいております!

■はじめに

前回までの記事では、肩甲帯に対するピラティスアプローチとして小胸筋と前鋸筋の関係、現代人多い不良姿勢からくる肩甲帯のトラブルを解説し改善の状態にもっていくためのエクササイズを紹介してきました。

今回は臨床や現場で肩甲帯のエクササイズ提供する際に起こる代償動作である翼状肩甲やより前鋸筋を賦活させるための効果的なエクササイズを紹介していきたいと思います。

■肩甲帯の安定に関わる筋群

・Inter scapula thoracis muscle[ISTM]

肩甲胸郭関節の運動に関する筋の総称になります。
僧帽筋、前鋸筋、菱形筋は肩甲胸郭関節の運動に関する筋の総称で肩関節運動時の基盤となる肩甲骨の安定性を提供している筋になります。

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その中でもやはり前鋸筋は野球のパフォーマンスにおいても重要な筋ということが知られているかと思います。

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カーブ・スライダーのリリースについて①

いつもC-I Baseball「トレーナーマガジン」をご購読いただきありがとうございます。

私の野球関係のその他の記事はこちらのnoteをご参考ください。

Meta Gate【メタゲート】|note元プロ野球選手はじめとしたプロ集団。野球の投球、打撃、走塁等の動きをいろんな側面から捉え、あなたの野球技術、指導力を各段にnote.com

 

■前回の記事より

前回、前々回は『ストレート』の質を高めよう になります。

『ストレート』の質を高めようの記事では回転効率を中心に、回転効率が低よいもの、わるいもの、ストレートの質がうよいケース、わるいケースの2パターンをおこなしさせていただきました。

また、それらの基礎知識になる記事は以下のものになります。

『回転効率』についてはこちらの記事になります。

『球速』については

『回転数』については

『変化量』については

これらの記事を一読していただくとより、今回の記事はより理解しやすくなると思います。

今回、測定、撮影に使用しているのはラプソード社のラプソード2.0とインサイトになります。

ラプソード社HPはこちらから

野球 – Rapsodo Japan (ラプソード)ラプソードの野球向け商品は、MLB全30球団、NPB10球団を始めとし、​国内でも社会人、大学、高校、中学硬式とアマチュアrapsodo.co.jp

今回はスライダーのリリースを中心にお話させていただきます。

スライダーの投げ方についてはこちらの記事をご参照ください。

https://note.com/embed/notes/n27fde16f351c

https://note.com/embed/notes/n11f68cd94dc1

今回はこちらの記事では触れていない内容をお話したいと思います。

下記、スライダーのリリースを中心にお話させていただきます。

■変化量が少ないスライダー

① 右投げ 中学生投手 89.3㎞/h 回転効率9.7% 回転数1446 
  横変化14.7㎝

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投球障害を見る上で知っておきたい〜頚椎神経根症〜

今回から配信メンバーとして活動させていただきます、小野寺将大と申します。
最初の投稿なので自己紹介させていただきます。

<経歴>
2021-東北保健医療専門学校卒業
2021-にしざわ整形外科クリニック(神奈川県)
2024-芦屋整形外科クリニック(兵庫県)

私は小学校から高校まで野球を経験し、肘を痛め一時的に野球ができずに苦しい思いを味わい理学療法士の方にお世話になりました。今度は自分が野球やスポーツで怪我をして苦しい思いをする方の力になれればと今も励んでいる次第であります。
今後ともよろしくお願いいたします。

⬇️本題

今回私は、肩の疼痛を見る上では知っておきたい、頚椎神経根症について書かせていただきたいと思います。
必ず臨床で生きる知識にできるよう、そして面白くできるよう頑張りましたのでぜひ最後まで見ていってください。

本日のラインナップです。

【肩痛で首を見る理由】

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まずはなぜ首も見なければいけないのかについてです。

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それを知るために、ダブルクラッシュシンドロームの概念をお話しします。
神経は1箇所で強い圧迫を受けたら神経症状を出します。

しかし、弱い圧迫でも複数箇所で絞扼を受けることで神経症状が出現する、これがダブルクラッシュシンドロームの概念です。

図がその説明ですが、
aは正常。
bは単一の軽度圧迫流入量は減るが、安全余裕があるため脱神経は起こらない。
cは ダブル・クラッシュ: 2箇所で軽微な圧迫がある状態。累積的な減少により、部位Yより末梢で脱神経。
dは部位Yでの重度の圧迫: 単一箇所でも、圧迫が極めて強ければ自ら脱神経を引き起こす。
め、1箇所の軽微な圧迫だけで容易に脱神経に至る。

以上が、ダブルクラッシュ症候群の概要です。

最終的に圧迫を受けた場所から遠位に症状が出るというのが非常に重要なポイントです。

最近のレビュー論文も添付しておきますので、よかったらご閲覧ください。Ghali M, Ehlen QT, Kholodovsky E, et al. Double Crush Syndrome: A Review of the Literature. HAND. 2025.

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AI動作解析の患者フィードバックを考える

こんにちは!
C-I Baseball 3期生メンバーの三好航平です.

いつもC-I Baseballトレーナーマガジンをご購読いただきありがとうございます.

本日は「AI動作解析の患者フィードバックを考える」をテーマに,AI動作解析で算出されたデータをどのようにフィードバックしているかについて,ご紹介いたします.

私が所属する整形外科クリニックでは,SPLYZA MotionというAI動作解析を導入しており現在1年ちょっと経っていますが,「AI動作解析ではここまでできる」,「これ以上は難しい」,「こういう伝え方をした方がいいかもしれない」といった試行錯誤をしている毎日です.そうした日々の中で,「これはフィードバックをする上で大切かもしれない」という私の考えについて共有させていただければと思っています.

今回のお話は,SPLYZA Motionに限らず他のAI動作解析,また簡便に取得できるようになったからこそ直面する「データをいかに選手や患者さんにフィードバックするか」という一般論的なお話をしていこうかと思っていますので,ぜひ最後まで読んでいただければと思っています.

AI動作解析の現状

フィードバックの部分に入る前に,AI動作解析の現状できることについて知っていただく必要があります.

AIと聞くと皆さんは何ができると想像するでしょうか.ひと昔前に放送された人気ドラマ「ドクターX」でもAIが扱われていましたが,もしかすると以下の画像のようなイメージをする方も多いかもしれません.

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新入生に行うフィジカルチェックについて

C-I Baseball代表の増田です。
いつもC-I Baseball トレーナーマニュアルをご購読頂きありがとうございます!

■C-I Baseballのご紹介

C-I Baseballは、単なる理学療法士の集まりではありません。
野球に関わる選手、指導者、保護者、そして理学療法士が、それぞれの立場を超えて協力しながら、野球界の未来をより良くしていくための団体です。

私たちが大切にしているのは、ケガをしてから対応するのではなく、ケガをする前に守ること。
そして、選手が安心して成長できる環境と、理学療法士が現場で力を発揮できる環境を整えることです。
さらに、選手のパフォーマンス向上に理学療法士が関わることが当たり前になる環境づくりも、重要な目的のひとつです。

C-I Baseballでは、主に2つの事業を展開しています。
1つ目は、理学療法士向けの育成プログラムです。臨床コース・トレーナーコースを通して、1年間かけて現場で使える知識と実践力を学びます。
2つ目は、BAXISで行うアカデミー事業です。小学生から中学生を対象にトレーニング指導を行い、成長期の選手たちをサポートしています。

さらに、この2つの事業はつながっています。
育成プログラムで学んだメンバーが、コース修了後に実際にトレーナーとして活動できる環境があることも、C-I Baseballの大きな特徴です。
学んで終わりではなく、現場で実践し、選手に還元していく。
その循環をつくることで、野球界の未来をみんなで鍛えていきます。

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■今回のテーマ

今回は4月から入部してくる新入生、選手向けに行うフィジカルチェックについてご紹介していきたいと思います。

新入生が入ってくるこの時期は、チームにとってもトレーナーにとっても非常に重要なタイミングです。入学してくる選手がどのような身体状況なのか、どのような怪我のリスクがあるのかを、トレーナーとして把握する必要があります。パフォーマンスを上げるためのトレーニングも重要ですが、怪我を未然に防ぐこともチームトレーナーとしては重要項目の一つになります。

特に中学、高校のカテゴリーでは、同じ学年であっても身体の発達状況、これまでの運動歴、投球数や練習量、既往歴などが大きく異なります。
見た目は同じようにプレーしていても、身体の中ではかなり差があります。その差を把握せずに一律でトレーニングを進めていくと、かえって怪我のリスクを高めてしまうこともあります。そういった意味でも、入部時にフィジカルチェックを行い、その選手の現在地を知ることには大きな価値があります。

■フィジカルチェックを行う理由

野球現場での障害予防は、一般的に3階層で考えることができます。私は野球現場でもこの考え方を用いて対応しています。

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・一次予防

一次予防は、障害の発生を未然に防ぐことを目的とします。方法としては、フィジカルチェック、エクササイズ、トレーニングによって身体機能を整えていくことになります。

・二次予防

二次予防は、障害を早期に発見し、重症化を防ぐことを目的とします。方法としては、メディカルチェックから機能評価、必要に応じてメディカルリハビリテーションへつなげていきます。

・三次予防

三次予防は、競技復帰できる機能を回復させることを目的とします。方法としては、メディカルリハビリテーションからアスレティックリハビリテーション、そしてトレーニングへとつなげていきます。

野球現場では、一次予防から二次予防での介入が非常に重要になります。「障害を起こさない身体作り」と「障害の早期発見・対応」が、チームトレーナーとして求められる役割です。そしてこの一次予防から二次予防を行う時に必要なのが、視点のスイッチです。この視点のスイッチは、予防の階層と対象、この2つの要素から切り替えていく必要があります。

■今回行うフィジカルチェックの考え方

ここから、実際に新入生へ行うフィジカルチェックについてご紹介していきます。

今回のフィジカルチェックで大切にしたいのは、複雑化しないことです。
野球現場では、評価項目を増やそうと思えばいくらでも増やせます。
しかしチーム現場では、時間にも人手にも限りがあります。
評価が複雑になればなるほど、実施するハードルは高くなり、結局は続かなくなってしまいます。
特に中学、高校の現場では、トレーナーが毎日チームにいることができない場合が多いです。
そのため、トレーナーがいないとできない仕組みではなく、選手自身ができる仕組みにしていくことが重要になります。

私はフィジカルチェックを行う時、できるだけシンプルで、見て分かりやすく、選手自身でも再現しやすいものにすることを意識しています。
そしてもう一つ大切なのが、習慣化できるような運用にすることです。

入部時に一度だけ測定して終わるのではなく、毎週1回など定期的にチェックすることで、その選手の基準値と変化が見えてきます。
基準値があるからこそ、少しの違和感や機能低下に早く気づくことができますし、選手自身も「今日は動きが悪い」「先週よりスムーズに動く」と体感できるようになります。動
きの変化を可視化し、選手が自分の身体の状態を体感することは、予防において非常に大切です。

今回はセルフチェックシートの内容に沿って、肩・肘、体幹・胸郭、下肢の順で説明していきます。セルフチェックシートの内容はこちらです。

■肩・肘のチェック

まず肩・肘のチェックです。野球では投球、送球、打撃、さらには捕球動作においても、肩や肘の状態はパフォーマンスと障害リスクの両方に大きく関わります。ただし、ここでも局所だけを見すぎないことが重要です。肩や肘のチェックであっても、胸郭や肩甲帯、体幹の動きが影響していることが多いため、単純に肩だけ、肘だけの問題と決めつけないことが大切です。

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並進運動中期~後期における軸足に必要な機能

こんにちは。
C-I Baseballの1期生の北山達也です。
今回はサポートメンバーからの投稿となります。

これまでにもさまざまな内容を執筆させていただいているので、ぜひ興味がある方はお読みください。

はじめに

みなさんもご存知の通り、投球動作における並進運動は投球動作の助走動作であり、重心移動の速度は球速と関連していると言われています。
また並進運動が適切に行えないと軸足が早期に投球方向へ回旋し、肘下がりや体幹の早期回旋などとなり投球障害に繋がる可能性もあります。

このように並進運動はパフォーマンスの視点からも投球障害予防の視点からも重要であることがわかります。

ではその並進運動を作り出すためにはどのような機能が必要でしょうか。

よく言われているのが「トリプルフレクション→エクステンション」や「開脚の柔軟性」などです。
しかしそれだけで十分なのでしょうか。

今回は並進運動についてフェーズ分けをして、それぞれ必要な機能を整理していきたいと思います。

前回は並進運動の初期についてまとめさせていただきました。
まだ読まれていない方はまずこちらをお読みください。

並進運動のフェーズ分け

私は並進運動を大まかに初期・中期・後期の3相で考えています。
あくまでも必要な機能を整理するために分けています。

初期:片脚立位から骨盤が投球方向へ動き始めたあたり
中期:踏み出し足が外転運動を始めたあたりから
後期:踏み出し足が外転位となり始めたあたりからSFC直前まで

今回は中期~後期に対して必要な軸足機能を紹介していきたいと思います。

並進中期~後期に必要な機能

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見落とされやすい肩甲下筋機能 ―エコーから考える投球障害肩の評価―

はじめに

野球選手の投球障害肩を評価していると、棘上筋や棘下筋、あるいは後方タイトネスなどに注目が集まることが多いと思います。
一方で、回旋筋腱板の中でも最大の筋である肩甲下筋については、臨床で十分に評価されていないケースも少なくない印象があります。

肩甲下筋は体表から触診しにくく、筋の走行や機能がイメージしづらい筋でもあります。

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しかし、投球動作を考えると、肩甲下筋は単なる内旋筋ではなく、肩関節前方安定性や投球時のトルク生成に関わる重要な筋である可能性があります。

私自身、投球障害肩を呈する選手において、肩甲下筋の機能に着目することが臨床上有益と感じる場面が多いです。

本記事では、

  • 投球障害肩における肩甲下筋の機能
  • 解剖学的特徴
  • 臨床評価
  • エコーでの観察方法
  • エクササイズアプローチ

について整理しながら、肩甲下筋の臨床的意義を考えていきたいと思います。

投球障害肩における肩甲下筋の重要性

肩甲下筋は回旋筋腱板を構成する筋の中で最も大きい筋であり、腱板筋力の中でも大きな割合を占めると報告されています。Keatingらの報告では、肩甲下筋は回旋筋腱板全体の筋力の50%以上を担う可能性が示されています。

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このことからも、肩甲下筋が肩関節機能において大きな役割を担っていることが推察されます。

また、野球選手では投球動作の特性から、内旋筋群の筋力が外旋筋群より強い傾向があることが報告されています(Wilk et al., 1993)。

野球選手おいて、外旋筋力より内旋筋力の方が強い傾向がある。

※Wilk KE, Andrews JR, Arrigo CA, Keirns MA, Erber DJ. The strength characteristics of internal and external rotator muscles in professional baseball pitchers. Am J Sports Med. 1993 Jan-Feb;21(1):61-6.

投球動作においては、最大外旋位(MER)からボールリリースにかけて、肩関節に非常に大きな内旋トルクが発生します。このとき肩甲下筋は、

  • 内旋トルクの発揮
  • 上腕骨頭の前方安定化
  • 肩関節中心化

といった役割を担っています。

臨床では、投球障害肩を呈する選手の中に、肩甲下筋の筋出力が低下している印象を受けるケースも少なくありません。
ただし、必ずしも筋力が低下しているわけではなく、シーズン中の選手では内旋筋力が低下していても無症候である場合もあります。
そのため、単純な筋力低下だけではなく、筋機能や運動制御の観点から評価する必要があると考えています。

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CIB調べ:計測期間2022年

肩甲下筋と前方安定性

肩甲下筋は単純な内旋筋として理解されることが多いですが、近年では肩関節前方安定性への関与が注目されています。

肩甲下筋は上腕骨小結節に停止し、前方から上腕骨頭を支持する位置にあります。このため、肩甲下筋が適切に機能することで、上腕骨頭の前方移動を制御する役割があると考えられています。

Late-cockingからMERにかけて強い前方剪断力が生じます。
つまり、骨頭が前方へ動く力です。

MER期に肩関節前方剪断力が310N(約32kg)、上方 250±80N、 関節窩 480±130Nまで上昇する。
前方剪断力はMER~Accelerationも高く維持されるが、Late cockingのピーク値が引き継がれる。

Fleisig GS, Andrews JR, Dillman CJ, Escamilla RF. Kinetics of baseball pitching with implications about injury mechanisms. Am J Sports Med. 1995 Mar-Apr;23(2):233-9.
Ueda A, Matsumura A, Shinkuma T, Oki T, Nakamura Y. Shoulder kinetic during pitching in baseball players with scapular dyskinesis. J Bodyw Mov Ther. 2024 Jan;37:57-62.

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これに対抗するためには、前方の筋肉で”壁”を作らなくてはなりません。

さらに肩甲下筋は、いわゆるbiceps pulley systemの構成要素としても重要です。具体的には

  • 肩甲下筋腱
  • 棘上筋腱
  • 上肩甲上腕靭帯(SGHL)
  • 烏口上腕靭帯(CHL)

などが複合的に関与し、上腕二頭筋長頭腱を安定化させています。

詳細な解剖を見ていると、
肩甲下筋腱”舌部”付着部というのは、
上腕二頭筋長頭腱の深層に裏打ちするように付着するのが観察することができます。

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野球選手の腰痛治療を徹底解剖! 【Vol.3 椎間関節性編】

こんにちは!
C-I Baseball サポートメンバーの理学療法士・久我友也です。

整形外科クリニックでの臨床経験を活かし、医療的視点から野球選手に対する評価・治療のエッセンスを、実践的かつ分かりやすくお伝えしてまいります。

科学的根拠と臨床での経験や工夫を重視し、その中で現場での実践に役立つ情報をお届けいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

ライタープロフィール
Writer|久我 友也
理学療法士
X:https://x.com/tomokiyo0903

前回まで投球動作における鼠径部痛へのアプローチをシリーズでお届けしておりました。未読の方はぜひご参照ください。

今回は「野球選手の腰痛」がテーマです。

連載シリーズ

Vol.1:総論・腰椎椎間板ヘルニア

  • Vol.2:腰椎椎間板症、椎体終板変性(Modic change)編
  • 今回は☞ Vol.3:椎間関節編
  • Vol.4:腰椎分離症
  • Vol.5:筋性腰痛編

さっそくはじめていきます!
少しでもためになったと思った方は
ぜひ ”スキ” ボタンお願いします!

やる気につながります!

はじめに

本稿のテーマは、椎間関節由来の腰痛(facet joint–related low back pain)です。臨床で想起しやすいのは、いわゆる「反って痛い」タイプで、立位で腰椎伸展や回旋ストレスが加わる場面で症状が出やすい印象があります。

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具体的には、立ち上がり後、立位保持、走行中などで誘発されることが多く、野球動作ではバッティングやピッチング時に遭遇しやすいと感じます。

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また、投げる・打つ以外でも、ランニングや伸展・回旋系エクササイズ、ウェイトトレーニング(バックスクワット、ルーマニアンデッドリフトなど)で症状が出ることがあり、野球選手に関与が深い腰痛のひとつです。

そこでまず、解剖と病態を簡潔に整理したうえで、他疾患との鑑別、局所治療、患部外アプローチまで一連の流れとして提示します。

椎間関節の解剖

椎間関節は、
上位椎体の下関節突起
下位椎体の上関節突起
から構成される、脊柱後方要素の関節です。

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脊椎は一般に、椎間板と左右の椎間関節の3要素で機能単位を形成し、相互に連携して椎間可動性と安定性を生み出します。

荷重伝達については、椎間板が約70%、左右の椎間関節が約30%とされます

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Kushchayev SV, Glushko T, Jarraya M, et al. ABCs of the degenerative spine. Insights Imaging. 2018;9(2):253-274.を元に作成

このため、椎間板変性が進むと椎間関節への荷重が相対的に増え、椎間板変性と椎間関節変性が相互に影響する可能性が示されています

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Kushchayev SV, Glushko T, Jarraya M, et al. ABCs of the degenerative spine. Insights Imaging. 2018;9(2):253-274.を元に作成

椎間板変性は20歳代と比較して30歳代で増加し、3〜4倍に増えるという報告もあり、大学以降の野球選手では椎間板変性を背景に椎間関節症状が出やすい可能性を考えます。
変性の好発はL4/5、L5/Sに多く、臨床で伸展時痛が出やすい部位とも一致します。

Morimoto M, Okada R, Sugiura K, et al. Low Back Pain and Lumbar Degeneration in Japanese Professional Baseball Players. Orthop J Sports Med. 2022.

椎間関節は、他関節と同様に
関節軟骨・滑膜・関節包から構成されます。

加えて、椎間関節内にはmeniscoid(滑膜・脂肪組織)が存在し、関節運動の円滑化や負荷軽減に寄与する一方、疼痛源になり得るとされています。

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BOGDUK N, ENGEL R. The Menisci of the Lumbar Zygapophyseal Joints. Spine. 1984;9(5):454-460.を元に作図

具体的には、
椎間関節に圧縮ストレスが加わるとインピンジメントが生じ
逆に関節が離開する状況では関節包に牽引されて表層へ移動する
とされます。したがって、椎間関節への過度な圧縮ストレスは疼痛に結びつく重要な要素になります。

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BOGDUK N, ENGEL R. The Menisci of the Lumbar Zygapophyseal Joints. Spine. 1984;9(5):454-460.を元に作図

では、どの運動で圧縮ストレスが増えるか?と考えます。

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