投球障害肩に必要な”肩甲挙筋”のエコー観察【トレーナーマニュアルvol.95】

C-I Baseballの小林弘幸です。
私たちの活動も3シーズン目を迎えました。
これまで多くの方々にいつもマガジンの記事をお読みいただきありがとうございます!

今シーズンの私が担当する配信では、「エコー」を通じて
肩関節の解剖とそれに対する実際のアプローチを学んでいこうという
コンセプトの元、Noteを書かせていただきます。

元NPBチームドクターのスポーツDrと一緒にエコーを用いて、
野球選手の投球障害肩を診てきました。

投球障害肩になってしまうと、
『痛くて投げられない』
『何をしても良くならない』
『自分のプレーに集中できない』
『野球が楽しくない』
と悪循環になってしまいます。

私はそのような投球【障害】肩を持った選手に対し、
エコーを通じて、細かな解剖を理解しアプローチすることで
治療効果が奏功することを経験しました。

もちろんそれだけでは解決しないことも多数ありますが、
ケガからの復帰をするということを考えると、
細かな解剖を学んでいくということは必要なのではないかと考えています。

解剖書で見る肩関節だけではなく、
エコーを通じて、3次元的に捉える肩関節を一緒に学んでいけたらと思います。

投球障害肩に必要な”肩甲挙筋”のエコー観察

投球障害肩における肩甲挙筋

投球動作において、肩甲骨の”上方回旋”という動きは非常に重要だと考えています。

しかし肩甲挙筋は、肩甲骨の”下方回旋”筋です。

肩甲骨上方回旋が必要なPhaseは、Late-cocking~BRまでです。

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さらにそのPhaseでは、投球障害肩の有病率が大きいPhaseということが言われています。

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上記のような理由から、
肩甲骨上方回旋は必要な運動であり、
”肩甲挙筋”を含めた”下方回旋筋”は
上方回旋を阻害します。

必要以上の緊張や、タイトネスは
必要ないと考えています。

その原因としては、下記のようなことが考えられます。

・GHの可動域制限で、代償として過剰な肩甲骨挙上が生じてしまうことによる肩甲挙筋のタイトネス。

・肩甲骨上方回旋不足により、代償として過剰な肩甲骨挙上が生じてしまうことによる肩甲挙筋のタイトネス。

どちらも肩甲骨挙上(肩甲挙筋)が代償により生じてしまうと考えています。

オーバーヘッドスポーツでは、上肢挙上に際し、下記の3つの動きが重要であり、関係が深いと考えています。

・肩甲骨上方回旋
・肩甲上腕関節(GH)の挙上(外転)
・肩甲骨挙上

上記3つのトレードオフ関係が成り立つと考えており、
どれかが不足すると、どれかが代償してしまうと考えています。

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特に、
肩甲骨上方回旋とGHの挙上は制限されやすいので
注意が必要だと考えています。

つまるところ、
”肩甲挙筋”は代償的に働きやすい筋肉と考えています。

阻害因子は取り除くことが重要です。

もっと大切なことは、
なぜ代償的に働いてしまっているのかを考えることですが、
本稿では割愛させていただきます。

なぜ代償的に働いてしまっているのか
を念頭に置きながら治療、コンディショニングを行ってほしいと考えています。

肩甲挙筋の解剖

①支配神経:肩甲背神経

肩甲挙筋は肩甲背神経支配です。

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C5から直接分岐し、
背面へ走行、その後、肩甲骨の背面(内側)へ走行します。

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肩甲挙筋と前鋸筋上部は、神経支配などの特徴から近しい機能があるとされています。

※秋田恵一ほか: 運動器臨床解剖学. 全日本病院出版会. 2020

支配神経も肩甲背神経の方から前鋸筋上部へ分岐するものもあり、
同じく下方回旋筋である、前鋸筋上部との関係も深くあると考えられます。

②筋の付着部

起始:頚椎C1~C4の横突起の後結節
停止:肩甲骨の上角、内側縁上部

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肩甲挙筋は肩甲骨から、前方へ走行するのが特徴的で、
僧帽筋は後方へ走行するので
肩甲骨の上方につく筋でも作用が異なります。

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この筋の走行の違いはイメージしておかないと、
同様なアプローチになってしまいます。

③筋の層構造

肩甲挙筋は4束に分かれて、
頸椎横突起へ付着します。

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※佐藤達夫他:リハビリテーション解剖アトラス. 2006

筋腹部分をエコーで観察すると、以下のように観察できます。

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肩甲挙筋単一の筋でも
4足に分かれるということも、エコー観察で理解できます。

身体評価

あくまで私の中では、
肩甲挙筋は代償的に働きやすいと解釈しているので、
身体評価が非常に重要であります。

順番としては、以下のような順番で評価していきます。

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変化球の投げ方(スライダー後編)【トレーナーマニュアルvol.94】

C-I Baseballの高橋塁です。

まずは、自己紹介から

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また、同時に、私自身がMetaGate(メタゲート)という『野球技術系サイト』も運営しております。

ご興味あります方は、一度、ご覧ください。

META GATE | 2.5次元をとらえろ

【note】
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今回は育成プログラム第3期、私の担当の第6回になります。

前回は、『変化球の投げ方:スライダー前編』をお伝えしました。

今回は、『変化球の投げ方:スライダー後編』をお伝えいたします。

野球歴や、年齢、ポジション問わず、誰でもがカーブボールを投げるようになれますので、ぜひ、ご一読ください。

いいピッチャーのファーストステップは、ストライクのとれる変化球を1個身に着けることです。

コントロールのつきやすい変化球と言えば『スライダー』です。

スライダーの握りをしただけでボールは変化します。

しかし、変化のキレを出すのが難しいのがスライダーです。

検証していきましょう。

後編では、前編の最後に「押す・切る」スライダーについてお話をしましたが、そこをより一層掘り下げていきたいと思います。

Lesson⑦ スライダーからストレート

「押す・切る」スライダーを投げるにはどうしたらいいか?

スライダーの握りでスライダーからストレートを投げてみてください。

握りはどんな握りでもOKです。

指に引っかかり「押す」「切る」感覚がわかります。

文章では伝わりづらいので解説動画をみてください。

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育成年代のトレーニングvol.7‐コオーディネーションⅡ‐【トレーナーマニュアルvol.93】

いつもお読みいただき、ありがとうございます。
C-I Baseballの佐藤康です。

前回の私の記事では「コオーディネーショントレーニング」の概論を中心にお話しさせていただきました。

コオーディネーション能力とは、
脳で描いたイメージを自分自身の身体で思い通りに動かす・表現できる能力です。

すなわち、様々な情報を視覚・聴覚や関節・筋腱の固有感覚で入力し、それを脳が素早く認識-処理-判断することで筋へ指令し動く(出力)といった流れを円滑に行える能力といえます。

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▼詳細の記事はコチラ▼

前回の理論ベースの内容を踏まえた上で、今回は実践部分を中心にどのような過程でプログラムを組み込んでいるのか、目的・意図を加えてまとめていきます。

トレーニングに内在するコオーディネーション

育成年代選手にトレーニングを行う上で、運動/認知機能の発達の特徴はおさえておく必要があります。

下図にあるように、コオーディネーション能力は運動能力において、情報系の要素が大きく求められる機能といえます。

すなわち運動能力、パフォーマンスを構成する一要素であり、一概に「コオーディネーション能力の向上=パフォーマンスアップ」となるわけではないことをはじめに整理しておきます。

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文献4より参照

コオーディネーション能力は運動発達過程において育成年代の時期に急速に発達する要素であることはこれまでに挙げた通りであり、トレーニングを組み立てる上でも考慮しておきたい大事な部分です。

”コオーディネーショントレーニング”と題すると、コオーディネーションのみに特化したプログラムの選択が想像されやすいですが、コオーディネーションのみを強化するというよりは、各要素に相互的に補完しあうことで成り立つ運動能力であると捉えています。

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また、状況判断や反応など認知機能・認知課題に対する姿勢/運動の制御は運動能力の形成に重要であり、コオーディネーション要素を含めたプログラム構成が求められることから、その課題の設定をしています。

前回の記事でも以下の図を挙げましたが、コオーディネーション能力には7つが挙げられ、成長期の運動機能の発達において重要な役割を担います。

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各要素の定義については前回の記事にありますので割愛しますが、一要素だけを切り取りその要素だけに特化したトレーニングを処方することがコオーディネーション能力を高めるというわけではなく、相互的に関連した内容が求められます。

ここがトレーニングを組み立てる興味深い点といえます。

また、運動発達過程において基本動作の獲得・成熟は運動能力を向上させる上で基盤となるポイントであり、基本動作評価としても活用しています。

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▼ここからは動画を解説しています▼

Warm-up

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パフォーマンス向上のための足部の評価と使い方 -Step〜Acceleration -【トレーナーマニュアルvol.92】

足部は地面に接している唯一の部位です。足部が安定することで下肢からの良好な運動連鎖が行われます。その足部でも重要なのが『距骨下関節』です。選手の距骨下関節の構造は左右異なります。理想の打撃時の軸足・ステップ足それぞれの距 … 続きを読む

野球パフォーマンスにおける「瞬発系トレーニング」−理論編−【トレーナーマニュアルvol.91】

C-I Baseballの増田稜輔です。
いつもC-I Baseball「トレーナーマニュアル」をご購読頂きありがとうございます。

今回のテーマ「瞬発系トレーニング」

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野球のパフォーマンス発揮において
・瞬発的な力発揮が重要
・爆発的なパワーが球速やスイング速度に関与している
こんな言葉をよく聞くと思います。

瞬発力を向上させるためにジャンプメニューやプライオメトリクス、メディシンボールスローを
取り入れることも多くあると思います。
実際に私も同様のメニューをチームや選手に行っています。
しかし、瞬発系のメニューに取り組んでいるのにも関わらず、球速やスイング速度が向上しないケースはないでしょうか?
そのような場合はなにが原因なのでしょうか?
メニュー自体の問題、頻度、強度なども考えられますが、前提条件が達していないケースもあります。

メニューを考える上で、そもそも瞬発系のメニューを行うだけの前提条件が整っているのか?考えていく必要があります。
方法論でメニューを処方するのではなく、
瞬発的な力発揮とは?爆発的なパワーとは?
などを考えていく必要があると思います。

そこで今回は
野球パフォーマンスに重要とされている
「瞬発系のトレーニング」について考えていきたいと思います。

瞬発力とは?

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瞬発系のトレーニングを考える前に「瞬発力とは?」について考えていきましょう。

瞬発力は「瞬間的に出る強いバネの力」と言われています。

つまり瞬間的に強い力を発揮する能力であると考えられています。
野球パフォーマンスでは
ピッチング・バッティング・走塁・守備など瞬間的な力発揮を求められるため、野球パフォーマンスには「瞬発力が必要」と考えられていると思います。

では、この「瞬発力」がどのように野球パフォーマンスに関係しているのか
を考えていきましょう。

瞬発力と野球パフォーマンス

瞬発力の指標として、立ち幅跳びや垂直跳び、メディシンボール投げを用いて評価し瞬発力と球速やスイング速度が関連しているとも言われています。

・メディシンボールスローと野球パフォーマンス

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・ジャンプと野球パフォーマンス

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なぜ瞬発力は球速やスイング速度に関係するのか?

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野球選手のための肘・前腕のセルフケア【トレーナーマニュアルvol.90】

はじめに

投球動作において肘関節では屈曲-伸展運動、
前腕では回内-回外-回内という運動が生じます。

投球動作を反復する野球選手において、肘関節周囲の日頃のケア・コンディショニングは怪我防止・パフォーマンスの維持のために必要不可欠です。

肩関節に関するセルフケアは過去のnoteをご参照ください。

🔽肩甲骨・腱板のトレーニングはこれらもご参照いただければと思います。

今回は肘関節・前腕に絞って一人でもできるセルフケアをいくつか紹介していきますので最後までお読みいただけると幸いです。

肘・前腕のセルフケアを行う意義

投球動作を繰り返す野球選手では、
投球側の肘伸展制限を呈している選手が臨床上多く見受けられます。

肘伸展制限が生じれば、肘関節屈筋群は短縮位となり投球動作時の肘伸展運動のブレーキングとして作用しにくくなります。
特に上腕二頭筋が短縮することにより、腕橈関節周囲の柔軟性低下を引き起こし、結果として肘関節の疼痛を惹起する可能性があります。

また肘屈曲位で投球動作を行うことにより上腕骨〜ボールのラインが真っ直ぐではなくなるため、リリース時の肘下りを引き起こす可能性が高くなると考えられます。

野球肘群は肘屈曲位での肘伸展筋力を発揮できるが、最終伸展域まで肘伸展筋力を維持しておくことが困難であった。肘最終伸展域での伸展筋力を発揮できないと、ボールリリースでの肘伸展位保持が困難となる。この結果として、ボールリリースで肘屈曲位となり、「肘下がり」の状態となってしまう。

田村 将希,千葉 慎一,他:肩挙上位での肘伸展運動の検討ー投球動作との関連性ー.
日本肘関節学会雑誌.2017; 24(2): 382-384.

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投球障害が発生するリスクも上がるため、肘・前腕のコンディションを日々整え続けることは重要であると考えます。

セルフケアの実際

以下でセルフケアの実際を解説していきます。

上腕二頭筋

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上腕二頭筋は橈骨粗面に付着しています。上腕二頭筋のタイトネスが生じると橈骨頭前方偏位による腕橈関節のアライメント不良や橈骨後方可動性の低下を引き起こします。尺骨は肘関節屈曲90°を境目に伸展時に外旋しますが、橈骨後方可動性低下が生じると尺骨外旋減少を引き起こす要因となります。

|方法
・上腕二頭筋の筋腹を把持して左右に滑走・移動させていきます。
・上腕二頭筋長頭と短頭の間に指を入れて筋間をリリースします。

|ポイント

・肘窩のレベルでは腱成分になっているので腱の裏側に指を挿入するようにして把持して動かします。

外側上腕筋間中隔

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野球選手では三角筋のタイトネスや過緊張をしばしば認めますが、このタイトネスにより外側筋間中隔の緊張が高くなり上腕二頭筋や三頭筋、腕橈骨筋の緊張を引き起こすため、この三角筋粗面周囲および上腕〜肘外側の皮下組織のタイトネスは必ず取り除かなければいけません。

皮膚・皮下脂肪の柔軟性が獲得できたら、さらに深部に指を入れていき外側筋間中隔周囲の柔軟性を引き出していきます。

前腕筋群モビライゼーション

|方法

・前腕屈筋群を束として捉え、外側を走行する伸筋群と分離させるイメージを持って操作します。

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投球障害肩に必要な”上腕三頭筋”のエコー観察【トレーナーマニュアルvol.89】

C-I Baseballの小林弘幸です。
私たちの活動も3シーズン目を迎えました。
これまで多くの方々にいつもマガジンの記事をお読みいただきありがとうございます!

今シーズンの私が担当する配信では、「エコー」を通じて
肩関節の解剖とそれに対する実際のアプローチを学んでいこうという
コンセプトの元、Noteを書かせていただきます。

元NPBチームドクターのスポーツDrと一緒にエコーを用いて、
野球選手の投球障害肩を診てきました。

投球障害肩になってしまうと、
『痛くて投げられない』
『何をしても良くならない』
『自分のプレーに集中できない』
『野球が楽しくない』
と悪循環になってしまいます。

私はそのような投球【障害】肩を持った選手に対し、
エコーを通じて、細かな解剖を理解しアプローチすることで
治療効果が奏功することを経験しました。

もちろんそれだけでは解決しないことも多数ありますが、
ケガからの復帰をするということを考えると、
細かな解剖を学んでいくということは必要なのではないかと考えています。

解剖書で見る肩関節だけではなく、
エコーを通じて、3次元的に捉える肩関節を一緒に学んでいけたらと思います。

投球障害肩に必要な”上腕三頭筋”のエコー観察

投球障害肩における上腕三頭筋

投球時に上腕三頭筋はどのように作用するかというと、
Acceleration ~Ball Release間に作用します。

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Escamilla RF, Andrews JR. Shoulder muscle recruitment patterns and related biomechanics during upper extremity sports. Sports Med. 2009;39(7):569-90. を参考に作図

一般的に上腕三頭筋というと、
”肘”関節に作用すると思いますが、
肩関節にも重要な作用をします。

三頭筋はその名の通り、3つの起始を持ちます。

それぞれ異なる作用を持ち合わせており、
肩肘関節、両方へ作用します。

考え方的には、
長頭は肩関節に付着するので、肩関節に作用します。
長頭のタイトネスが生じると肩関節の挙上や外転可動域が小さくなり、
投球のTopまでの外転が制限されます。

また、
内側頭はより深部で肘関節に付着するので、肘関節に作用します。
投球時に肘関節痛がある症例は内側頭がキーマッスルとなりえます。

解剖学的視点も含め、
下記へ続きます。

上腕三頭筋の解剖

①支配神経:橈骨神経
(長頭:腋窩神経、内側頭:尺骨神経)

上腕三頭筋は一般的に橈骨神経支配だといわれています。

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しかし近年、
長頭に関しては腋窩神経も関与していると報告されています。

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Erhardt AJ, Futterman B. Variations in the Innervation of the Long Head of the Triceps Brachii: A Cadaveric Investigation. Clin Orthop Relat Res. 2017 Jan;475(1):247-250. doi: 10.1007/s11999-016-5146-z. Epub 2016 Nov 9. PMID: 27830483; PMCID: PMC5174069. より引用改変

また、
内側頭に関しては尺骨神経が関与していると報告されています。

画像
Loukas M, Bellary SS, Yüzbaşioğlu N, Shoja MM, Tubbs RS, Spinner RJ. Ulnar nerve innervation of the medial head of the triceps brachii muscle: a cadaveric study. Clin Anat. 2013 Nov;26(8):1028-30. doi: 10.1002/ca.22270. Epub 2013 May 29. PMID: 23716143. を参考に作図

教科書的な支配神経もありますが、
様々なバリエーションがあることを念頭に置いておく必要があるかと思います。

神経から考えると、
肩関節には腋窩神経を含めた長頭が関与する可能性があり、
肘関節には尺骨神経を含めた内側頭が関与する可能性があることが示唆できます。

②筋の付着部

起始
長頭:関節下結節
外側頭:上腕骨近位後外側面・外側上腕筋間中隔
内側頭:上腕骨後面で橈骨神経溝の下内側・内側上腕筋間中隔・遠位部は外側上腕筋間中隔、内側顆上稜、外側顆上稜

停止
共同腱となり肘頭に付着する

長頭

三頭筋長頭の付着部は、
関節下結節に付着するとされています。

では、軟部組織的なつながりはどのようになっているでしょうか?

以下のように報告されています。

骨からの起始部は組織学的に石灰化されていない線維軟骨が発達していた。また、LHT(長頭)は肩甲上腕関節包と融合しており、
直接、肩甲骨臼蓋に付着していた。

Nasu H, Baramee P, Kampan N, Nimura A, Akita K. An anatomic study on the origin of the long head of the triceps brachii. JSES Open Access. 2019 Mar 15;3(1):5-11. doi: 10.1016/j.jses.2019.01.001. PMID: 30976729; PMCID: PMC6443837.

図でイメージすると下記のようになります。

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変化球の投げ方(スライダー前編)【トレーナーマニュアルvol.88】

C-I Baseballの高橋塁です。

まずは、自己紹介から

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また、同時に、私自身がMetaGate(メタゲート)という『野球技術系サイト』も運営しております。

ご興味あります方は、一度、ご覧ください。

META GATE | 2.5次元をとらえろ

【note】

Meta Gate【メタゲート】|note

【オンラインサロン】

オンラインサロンLP | META GATE

【Youtube】

BaseballスーパースローチャンネルMeta Gate [メタゲート]

今回は育成プログラム第3期、私の担当の第5回になります。

前回は、『変化球の投げ方:カーブ前編』をお伝えしました。

今回は、『変化球の投げ方:スライダー前編』をお伝えいたします。

野球歴や、年齢、ポジション問わず、誰でもがカーブボールを投げるようになれますので、ぜひ、ご一読ください。

いいピッチャーのファーストステップは、ストライクのとれる変化球を1個身に着けることです。

コントロールのつきやすい変化球と言えば『スライダー』です。

スライダーの握りをしたげでボールは変化します。

しかし、変化のキレを出すのが難しいのがスライダーです。

検証していきましょう。

Lesson① スライダーの軌道と特徴

スライダーの軌道は十人十色です。

変化の軌道を自分でアレンジしやすいのもスライダーの特徴。

横スラ・縦スラを代表格として、縦スラでも曲がりの大きさ・スピードを変えたりします。

また、同じ球質のスライダーでもフォーム・コースによっても見え方がかなり変わってきます。


最初の映像は元東京ヤクルトスワローズの岡本秀寛さんのスライダーです。

軌道を見てみましょう。ストレートと比較しています。

スライダーは、最初はストレートと同じ軌道で最後にグッと曲がるのがわかります。

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育成年代のトレーニングvol.6コオーディネーションⅠ【トレーナーマニュアルvol.87】

いつもお読みいただき、ありがとうございます。
C-I Baseballの佐藤康です。

野球のフィールディングにおいて、逆シングルでの捕球やダイビングキャッチ、ジャンピングスローなどパフォーマンスレベルの高い選手が行うプレーとしてみられます。

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このような動作は見様見真似できる人選手もいるかもしれませんが、こういった動作を遂行できるには様々な運動経験による背景があると捉えています。特に育成年代に置き換えると、以前も記事内でまとめた運動基礎などが挙げられます。

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▼詳しくはこちらの記事でまとめています▼

加えて、動作の出力やタイミング、打球との位置関係における空間認識などに動作をコントロールする要素が必要となってきます。これは、成長期にける運動経験が非常に重要となります。

そこで第1回目の記事では、「成長期の運動機能・神経系の発達とコオーディネーション能力」についてまとめていきます。

コオーディネーション能力とは?

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コオーディネーション能力とは、脳で描いたイメージを自分自身の身体で思い通りに動かす・表現できる能力です。すなわち、様々な情報を視覚や聴覚などの固有感覚で入力し、それを脳が素早く認識-処理-判断することで筋へ指令し動く(出力)といった流れを円滑に行える能力といえます。

運動能力を分類すると、筋力などのエネルギー系に対し、情報系のファクターに位置付けられます。

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文献4より参照

コオーディネーション能力には、<定位・変換・連結・反応・識別・リズム・バランス>の7つが挙げられ、成長期の運動機能の発達において、重要な役割を担います。

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これらの要素は個々が独立して成り立つというよりも、相互的に関連して能力が高められます。そのため、上図のような並列的なよりも各要素が複雑に関係し形成されていくという解釈が近いといえます。

まず聞き馴染みの少ない用語もあるため、整理していきます。

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コオーディネーション能力を高める上で、神経系・運動機能の発達学的な観点から、その能力の体系について理解したうえで実践することが望ましいと捉えています。

運動実践における要素の整理

Zimmermannの報告より、各コーディネーション能力がどのように関わっているかを示した図になります。

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打撃動作✖️足部 -Take back〜Step-【トレーナーマニュアルvol.86】

足部は地面に接している唯一の部位です。足部が安定することで下肢からの良好な運動連鎖が行われます。その足部でも重要なのが『距骨下関節』です。選手の距骨下関節の構造は左右異なります。理想の打撃時の軸足・ステップ足それぞれの距骨下関節の動きを把握し、選手の足部評価を行うことで
動作の崩れを予防や変えることができます。

いつも【C-I Baseball トレーナーマニュアル】を購読して頂きありがとうございます!
2023年も野球トレーナーを目指す方、現在野球現場で活動されている方にとって有益となる情報を配信していきたいと思います。
本年もどうぞよろしくお願い致します!!


C-I Baseballでは「野球トレーナーの輪」を広げるために「仲間」を募集しております!
・野球にトレーナーになりたい
・トレーナー活動しているけど自信がない
・トレーニングについて勉強したい
・野球選手の怪我を治したい

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私が担当する『打撃動作×足部』の今後の発刊予定です。
打撃におけるそれぞれの相における足部の理想の動きや、足部から起こる不良動作、足部エクササイズをご紹介します。

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距骨下関節の肢位

距骨下関節肢位は中間位・回内位・回外位の3通りあります。
距骨下関節には回内・回外を分ける『中間点』があり、その肢位は左右により中間位は異なります。
私は非荷重位(OKC)で評価を行います。
異なる中間位の評価方法は過去の記事をご参照ください。

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打撃時の距骨下関節・横足根関節

打撃時、軸足と踏み込み足の機能は異なります。

軸足:バランスを取る→蹴り出す
踏み込み足:加速した身体を支え、踏ん張り、力を逃す

軸足の機能はPreparationで両足の支持基底面内にある重心を軸足に移動しバランスをとることや、Take backからStepへ移行する際に重心を移動するために足部を硬め蹴り出す役割があります。
踏み込み足は軸足から移動してきた身体を支えて踏ん張り、上半身の力を逃すようにしなければなりません。

上記の動きが足部で出来れば重心移動や上行性の良好な運動連鎖が遂行可能となります。

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打撃時足部の肢位と動き

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Take back

Take backは投球動作ではEarly cockingと同様の相です。Take backは軸足への重心移動を行う動作です。

【Take back軸足の機能】
・距骨下関節の理想は中間位から回外位
・母趾屈曲

Take backは骨盤は軸足側へ回旋します。
距骨下関節が中間位もしくは回外位だと骨盤はスムーズに軸足側へ回旋します。さらにここで大事なのは回旋時に母趾が機能することです。

立位体幹右回旋時は母趾が屈曲することで良好な運動連鎖を遂行することができます。それと同様にPreparationからTake backにかけて軸足距骨下関節回外、母趾屈曲ができると骨盤回旋がスムーズに行えます。

Take backで足部が機能することで上行性の運動連鎖を発揮することが可能になります。

Take back理想の足部肢位

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・前後にふらつかない
・Stepに向けて中間〜回外位を保持
・ステップ足への重心移動を切り替えられる

Take backでは打撃スタイルにより若干変わりますが、片脚立位状態なのでバランスを保持しながらStepに向けて軸足足部の力を逃さないことが重要です。そのためには距骨下関節は中間〜回外位で保持できることが理想です。

回内位だと足趾が使いにくい状態になり膝が外反し股関節内旋が起こり、骨盤の左回旋(開き)が早期に出現しやすくなります。

骨盤回旋と足趾機能

Take backからStepへは軸足からステップ足への重心移動が起こります。
ここで重要なのは足趾機能です。

Take backからStepに向けて距骨下関節中間から回外を保持できることが望ましいです。一列は挙上し、母趾は屈曲することで前方重心を保持することが可能になります。

母趾が浮いてしまうと、足趾での支持が不安定になり距骨下関節回内になりやすく、後方重心になり股関節・体幹が伸展してしまいます。回旋を出すだけなら母趾が機能するだけでいいのですが、Take backからStepへの動きの切り替えがあるために2趾〜5趾も機能しなければいけません。

PreparationからTake back、Stepの動作は以下の動きになります。
 Preparation➡️右回旋➡️回旋止める➡️左回旋

Take backでは回旋と回旋を止める力が必要になります。

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ステップ 理想の足部肢位 軸足

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Take back➡️ステップ(ステップ足)

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理想は距骨下関節中間位接地です。
回内接地すると下腿は内旋しKnee-inします。 Knee-inすると骨盤左回旋は起こりにくくなります。
回外接地すると下腿は外旋しKnee-outします。 Knee-outすると骨盤は早期に開きやすくなります。

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距骨下関節不良肢位と打撃フォーム

回内パターン

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