育成年代のトレーニングvol.7‐コオーディネーションⅡ‐【トレーナーマニュアルvol.93】

いつもお読みいただき、ありがとうございます。
C-I Baseballの佐藤康です。

前回の私の記事では「コオーディネーショントレーニング」の概論を中心にお話しさせていただきました。

コオーディネーション能力とは、
脳で描いたイメージを自分自身の身体で思い通りに動かす・表現できる能力です。

すなわち、様々な情報を視覚・聴覚や関節・筋腱の固有感覚で入力し、それを脳が素早く認識-処理-判断することで筋へ指令し動く(出力)といった流れを円滑に行える能力といえます。

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▼詳細の記事はコチラ▼

前回の理論ベースの内容を踏まえた上で、今回は実践部分を中心にどのような過程でプログラムを組み込んでいるのか、目的・意図を加えてまとめていきます。

トレーニングに内在するコオーディネーション

育成年代選手にトレーニングを行う上で、運動/認知機能の発達の特徴はおさえておく必要があります。

下図にあるように、コオーディネーション能力は運動能力において、情報系の要素が大きく求められる機能といえます。

すなわち運動能力、パフォーマンスを構成する一要素であり、一概に「コオーディネーション能力の向上=パフォーマンスアップ」となるわけではないことをはじめに整理しておきます。

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文献4より参照

コオーディネーション能力は運動発達過程において育成年代の時期に急速に発達する要素であることはこれまでに挙げた通りであり、トレーニングを組み立てる上でも考慮しておきたい大事な部分です。

”コオーディネーショントレーニング”と題すると、コオーディネーションのみに特化したプログラムの選択が想像されやすいですが、コオーディネーションのみを強化するというよりは、各要素に相互的に補完しあうことで成り立つ運動能力であると捉えています。

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また、状況判断や反応など認知機能・認知課題に対する姿勢/運動の制御は運動能力の形成に重要であり、コオーディネーション要素を含めたプログラム構成が求められることから、その課題の設定をしています。

前回の記事でも以下の図を挙げましたが、コオーディネーション能力には7つが挙げられ、成長期の運動機能の発達において重要な役割を担います。

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各要素の定義については前回の記事にありますので割愛しますが、一要素だけを切り取りその要素だけに特化したトレーニングを処方することがコオーディネーション能力を高めるというわけではなく、相互的に関連した内容が求められます。

ここがトレーニングを組み立てる興味深い点といえます。

また、運動発達過程において基本動作の獲得・成熟は運動能力を向上させる上で基盤となるポイントであり、基本動作評価としても活用しています。

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▼ここからは動画を解説しています▼

Warm-up

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パフォーマンス向上のための足部の評価と使い方 -Step〜Acceleration -【トレーナーマニュアルvol.92】

足部は地面に接している唯一の部位です。足部が安定することで下肢からの良好な運動連鎖が行われます。その足部でも重要なのが『距骨下関節』です。選手の距骨下関節の構造は左右異なります。理想の打撃時の軸足・ステップ足それぞれの距 … 続きを読む

野球パフォーマンスにおける「瞬発系トレーニング」−理論編−【トレーナーマニュアルvol.91】

C-I Baseballの増田稜輔です。
いつもC-I Baseball「トレーナーマニュアル」をご購読頂きありがとうございます。

今回のテーマ「瞬発系トレーニング」

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野球のパフォーマンス発揮において
・瞬発的な力発揮が重要
・爆発的なパワーが球速やスイング速度に関与している
こんな言葉をよく聞くと思います。

瞬発力を向上させるためにジャンプメニューやプライオメトリクス、メディシンボールスローを
取り入れることも多くあると思います。
実際に私も同様のメニューをチームや選手に行っています。
しかし、瞬発系のメニューに取り組んでいるのにも関わらず、球速やスイング速度が向上しないケースはないでしょうか?
そのような場合はなにが原因なのでしょうか?
メニュー自体の問題、頻度、強度なども考えられますが、前提条件が達していないケースもあります。

メニューを考える上で、そもそも瞬発系のメニューを行うだけの前提条件が整っているのか?考えていく必要があります。
方法論でメニューを処方するのではなく、
瞬発的な力発揮とは?爆発的なパワーとは?
などを考えていく必要があると思います。

そこで今回は
野球パフォーマンスに重要とされている
「瞬発系のトレーニング」について考えていきたいと思います。

瞬発力とは?

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瞬発系のトレーニングを考える前に「瞬発力とは?」について考えていきましょう。

瞬発力は「瞬間的に出る強いバネの力」と言われています。

つまり瞬間的に強い力を発揮する能力であると考えられています。
野球パフォーマンスでは
ピッチング・バッティング・走塁・守備など瞬間的な力発揮を求められるため、野球パフォーマンスには「瞬発力が必要」と考えられていると思います。

では、この「瞬発力」がどのように野球パフォーマンスに関係しているのか
を考えていきましょう。

瞬発力と野球パフォーマンス

瞬発力の指標として、立ち幅跳びや垂直跳び、メディシンボール投げを用いて評価し瞬発力と球速やスイング速度が関連しているとも言われています。

・メディシンボールスローと野球パフォーマンス

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・ジャンプと野球パフォーマンス

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なぜ瞬発力は球速やスイング速度に関係するのか?

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野球選手のための肘・前腕のセルフケア【トレーナーマニュアルvol.90】

はじめに

投球動作において肘関節では屈曲-伸展運動、
前腕では回内-回外-回内という運動が生じます。

投球動作を反復する野球選手において、肘関節周囲の日頃のケア・コンディショニングは怪我防止・パフォーマンスの維持のために必要不可欠です。

肩関節に関するセルフケアは過去のnoteをご参照ください。

🔽肩甲骨・腱板のトレーニングはこれらもご参照いただければと思います。

今回は肘関節・前腕に絞って一人でもできるセルフケアをいくつか紹介していきますので最後までお読みいただけると幸いです。

肘・前腕のセルフケアを行う意義

投球動作を繰り返す野球選手では、
投球側の肘伸展制限を呈している選手が臨床上多く見受けられます。

肘伸展制限が生じれば、肘関節屈筋群は短縮位となり投球動作時の肘伸展運動のブレーキングとして作用しにくくなります。
特に上腕二頭筋が短縮することにより、腕橈関節周囲の柔軟性低下を引き起こし、結果として肘関節の疼痛を惹起する可能性があります。

また肘屈曲位で投球動作を行うことにより上腕骨〜ボールのラインが真っ直ぐではなくなるため、リリース時の肘下りを引き起こす可能性が高くなると考えられます。

野球肘群は肘屈曲位での肘伸展筋力を発揮できるが、最終伸展域まで肘伸展筋力を維持しておくことが困難であった。肘最終伸展域での伸展筋力を発揮できないと、ボールリリースでの肘伸展位保持が困難となる。この結果として、ボールリリースで肘屈曲位となり、「肘下がり」の状態となってしまう。

田村 将希,千葉 慎一,他:肩挙上位での肘伸展運動の検討ー投球動作との関連性ー.
日本肘関節学会雑誌.2017; 24(2): 382-384.

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投球障害が発生するリスクも上がるため、肘・前腕のコンディションを日々整え続けることは重要であると考えます。

セルフケアの実際

以下でセルフケアの実際を解説していきます。

上腕二頭筋

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上腕二頭筋は橈骨粗面に付着しています。上腕二頭筋のタイトネスが生じると橈骨頭前方偏位による腕橈関節のアライメント不良や橈骨後方可動性の低下を引き起こします。尺骨は肘関節屈曲90°を境目に伸展時に外旋しますが、橈骨後方可動性低下が生じると尺骨外旋減少を引き起こす要因となります。

|方法
・上腕二頭筋の筋腹を把持して左右に滑走・移動させていきます。
・上腕二頭筋長頭と短頭の間に指を入れて筋間をリリースします。

|ポイント

・肘窩のレベルでは腱成分になっているので腱の裏側に指を挿入するようにして把持して動かします。

外側上腕筋間中隔

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野球選手では三角筋のタイトネスや過緊張をしばしば認めますが、このタイトネスにより外側筋間中隔の緊張が高くなり上腕二頭筋や三頭筋、腕橈骨筋の緊張を引き起こすため、この三角筋粗面周囲および上腕〜肘外側の皮下組織のタイトネスは必ず取り除かなければいけません。

皮膚・皮下脂肪の柔軟性が獲得できたら、さらに深部に指を入れていき外側筋間中隔周囲の柔軟性を引き出していきます。

前腕筋群モビライゼーション

|方法

・前腕屈筋群を束として捉え、外側を走行する伸筋群と分離させるイメージを持って操作します。

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投球障害肩に必要な”上腕三頭筋”のエコー観察【トレーナーマニュアルvol.89】

C-I Baseballの小林弘幸です。
私たちの活動も3シーズン目を迎えました。
これまで多くの方々にいつもマガジンの記事をお読みいただきありがとうございます!

今シーズンの私が担当する配信では、「エコー」を通じて
肩関節の解剖とそれに対する実際のアプローチを学んでいこうという
コンセプトの元、Noteを書かせていただきます。

元NPBチームドクターのスポーツDrと一緒にエコーを用いて、
野球選手の投球障害肩を診てきました。

投球障害肩になってしまうと、
『痛くて投げられない』
『何をしても良くならない』
『自分のプレーに集中できない』
『野球が楽しくない』
と悪循環になってしまいます。

私はそのような投球【障害】肩を持った選手に対し、
エコーを通じて、細かな解剖を理解しアプローチすることで
治療効果が奏功することを経験しました。

もちろんそれだけでは解決しないことも多数ありますが、
ケガからの復帰をするということを考えると、
細かな解剖を学んでいくということは必要なのではないかと考えています。

解剖書で見る肩関節だけではなく、
エコーを通じて、3次元的に捉える肩関節を一緒に学んでいけたらと思います。

投球障害肩に必要な”上腕三頭筋”のエコー観察

投球障害肩における上腕三頭筋

投球時に上腕三頭筋はどのように作用するかというと、
Acceleration ~Ball Release間に作用します。

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Escamilla RF, Andrews JR. Shoulder muscle recruitment patterns and related biomechanics during upper extremity sports. Sports Med. 2009;39(7):569-90. を参考に作図

一般的に上腕三頭筋というと、
”肘”関節に作用すると思いますが、
肩関節にも重要な作用をします。

三頭筋はその名の通り、3つの起始を持ちます。

それぞれ異なる作用を持ち合わせており、
肩肘関節、両方へ作用します。

考え方的には、
長頭は肩関節に付着するので、肩関節に作用します。
長頭のタイトネスが生じると肩関節の挙上や外転可動域が小さくなり、
投球のTopまでの外転が制限されます。

また、
内側頭はより深部で肘関節に付着するので、肘関節に作用します。
投球時に肘関節痛がある症例は内側頭がキーマッスルとなりえます。

解剖学的視点も含め、
下記へ続きます。

上腕三頭筋の解剖

①支配神経:橈骨神経
(長頭:腋窩神経、内側頭:尺骨神経)

上腕三頭筋は一般的に橈骨神経支配だといわれています。

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しかし近年、
長頭に関しては腋窩神経も関与していると報告されています。

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Erhardt AJ, Futterman B. Variations in the Innervation of the Long Head of the Triceps Brachii: A Cadaveric Investigation. Clin Orthop Relat Res. 2017 Jan;475(1):247-250. doi: 10.1007/s11999-016-5146-z. Epub 2016 Nov 9. PMID: 27830483; PMCID: PMC5174069. より引用改変

また、
内側頭に関しては尺骨神経が関与していると報告されています。

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Loukas M, Bellary SS, Yüzbaşioğlu N, Shoja MM, Tubbs RS, Spinner RJ. Ulnar nerve innervation of the medial head of the triceps brachii muscle: a cadaveric study. Clin Anat. 2013 Nov;26(8):1028-30. doi: 10.1002/ca.22270. Epub 2013 May 29. PMID: 23716143. を参考に作図

教科書的な支配神経もありますが、
様々なバリエーションがあることを念頭に置いておく必要があるかと思います。

神経から考えると、
肩関節には腋窩神経を含めた長頭が関与する可能性があり、
肘関節には尺骨神経を含めた内側頭が関与する可能性があることが示唆できます。

②筋の付着部

起始
長頭:関節下結節
外側頭:上腕骨近位後外側面・外側上腕筋間中隔
内側頭:上腕骨後面で橈骨神経溝の下内側・内側上腕筋間中隔・遠位部は外側上腕筋間中隔、内側顆上稜、外側顆上稜

停止
共同腱となり肘頭に付着する

長頭

三頭筋長頭の付着部は、
関節下結節に付着するとされています。

では、軟部組織的なつながりはどのようになっているでしょうか?

以下のように報告されています。

骨からの起始部は組織学的に石灰化されていない線維軟骨が発達していた。また、LHT(長頭)は肩甲上腕関節包と融合しており、
直接、肩甲骨臼蓋に付着していた。

Nasu H, Baramee P, Kampan N, Nimura A, Akita K. An anatomic study on the origin of the long head of the triceps brachii. JSES Open Access. 2019 Mar 15;3(1):5-11. doi: 10.1016/j.jses.2019.01.001. PMID: 30976729; PMCID: PMC6443837.

図でイメージすると下記のようになります。

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変化球の投げ方(スライダー前編)【トレーナーマニュアルvol.88】

C-I Baseballの高橋塁です。

まずは、自己紹介から

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また、同時に、私自身がMetaGate(メタゲート)という『野球技術系サイト』も運営しております。

ご興味あります方は、一度、ご覧ください。

META GATE | 2.5次元をとらえろ

【note】

Meta Gate【メタゲート】|note

【オンラインサロン】

オンラインサロンLP | META GATE

【Youtube】

BaseballスーパースローチャンネルMeta Gate [メタゲート]

今回は育成プログラム第3期、私の担当の第5回になります。

前回は、『変化球の投げ方:カーブ前編』をお伝えしました。

今回は、『変化球の投げ方:スライダー前編』をお伝えいたします。

野球歴や、年齢、ポジション問わず、誰でもがカーブボールを投げるようになれますので、ぜひ、ご一読ください。

いいピッチャーのファーストステップは、ストライクのとれる変化球を1個身に着けることです。

コントロールのつきやすい変化球と言えば『スライダー』です。

スライダーの握りをしたげでボールは変化します。

しかし、変化のキレを出すのが難しいのがスライダーです。

検証していきましょう。

Lesson① スライダーの軌道と特徴

スライダーの軌道は十人十色です。

変化の軌道を自分でアレンジしやすいのもスライダーの特徴。

横スラ・縦スラを代表格として、縦スラでも曲がりの大きさ・スピードを変えたりします。

また、同じ球質のスライダーでもフォーム・コースによっても見え方がかなり変わってきます。


最初の映像は元東京ヤクルトスワローズの岡本秀寛さんのスライダーです。

軌道を見てみましょう。ストレートと比較しています。

スライダーは、最初はストレートと同じ軌道で最後にグッと曲がるのがわかります。

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育成年代のトレーニングvol.6コオーディネーションⅠ【トレーナーマニュアルvol.87】

いつもお読みいただき、ありがとうございます。
C-I Baseballの佐藤康です。

野球のフィールディングにおいて、逆シングルでの捕球やダイビングキャッチ、ジャンピングスローなどパフォーマンスレベルの高い選手が行うプレーとしてみられます。

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このような動作は見様見真似できる人選手もいるかもしれませんが、こういった動作を遂行できるには様々な運動経験による背景があると捉えています。特に育成年代に置き換えると、以前も記事内でまとめた運動基礎などが挙げられます。

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▼詳しくはこちらの記事でまとめています▼

加えて、動作の出力やタイミング、打球との位置関係における空間認識などに動作をコントロールする要素が必要となってきます。これは、成長期にける運動経験が非常に重要となります。

そこで第1回目の記事では、「成長期の運動機能・神経系の発達とコオーディネーション能力」についてまとめていきます。

コオーディネーション能力とは?

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コオーディネーション能力とは、脳で描いたイメージを自分自身の身体で思い通りに動かす・表現できる能力です。すなわち、様々な情報を視覚や聴覚などの固有感覚で入力し、それを脳が素早く認識-処理-判断することで筋へ指令し動く(出力)といった流れを円滑に行える能力といえます。

運動能力を分類すると、筋力などのエネルギー系に対し、情報系のファクターに位置付けられます。

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文献4より参照

コオーディネーション能力には、<定位・変換・連結・反応・識別・リズム・バランス>の7つが挙げられ、成長期の運動機能の発達において、重要な役割を担います。

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これらの要素は個々が独立して成り立つというよりも、相互的に関連して能力が高められます。そのため、上図のような並列的なよりも各要素が複雑に関係し形成されていくという解釈が近いといえます。

まず聞き馴染みの少ない用語もあるため、整理していきます。

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コオーディネーション能力を高める上で、神経系・運動機能の発達学的な観点から、その能力の体系について理解したうえで実践することが望ましいと捉えています。

運動実践における要素の整理

Zimmermannの報告より、各コーディネーション能力がどのように関わっているかを示した図になります。

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打撃動作✖️足部 -Take back〜Step-【トレーナーマニュアルvol.86】

足部は地面に接している唯一の部位です。足部が安定することで下肢からの良好な運動連鎖が行われます。その足部でも重要なのが『距骨下関節』です。選手の距骨下関節の構造は左右異なります。理想の打撃時の軸足・ステップ足それぞれの距骨下関節の動きを把握し、選手の足部評価を行うことで
動作の崩れを予防や変えることができます。

いつも【C-I Baseball トレーナーマニュアル】を購読して頂きありがとうございます!
2023年も野球トレーナーを目指す方、現在野球現場で活動されている方にとって有益となる情報を配信していきたいと思います。
本年もどうぞよろしくお願い致します!!


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・野球にトレーナーになりたい
・トレーナー活動しているけど自信がない
・トレーニングについて勉強したい
・野球選手の怪我を治したい

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私が担当する『打撃動作×足部』の今後の発刊予定です。
打撃におけるそれぞれの相における足部の理想の動きや、足部から起こる不良動作、足部エクササイズをご紹介します。

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距骨下関節の肢位

距骨下関節肢位は中間位・回内位・回外位の3通りあります。
距骨下関節には回内・回外を分ける『中間点』があり、その肢位は左右により中間位は異なります。
私は非荷重位(OKC)で評価を行います。
異なる中間位の評価方法は過去の記事をご参照ください。

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打撃時の距骨下関節・横足根関節

打撃時、軸足と踏み込み足の機能は異なります。

軸足:バランスを取る→蹴り出す
踏み込み足:加速した身体を支え、踏ん張り、力を逃す

軸足の機能はPreparationで両足の支持基底面内にある重心を軸足に移動しバランスをとることや、Take backからStepへ移行する際に重心を移動するために足部を硬め蹴り出す役割があります。
踏み込み足は軸足から移動してきた身体を支えて踏ん張り、上半身の力を逃すようにしなければなりません。

上記の動きが足部で出来れば重心移動や上行性の良好な運動連鎖が遂行可能となります。

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打撃時足部の肢位と動き

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Take back

Take backは投球動作ではEarly cockingと同様の相です。Take backは軸足への重心移動を行う動作です。

【Take back軸足の機能】
・距骨下関節の理想は中間位から回外位
・母趾屈曲

Take backは骨盤は軸足側へ回旋します。
距骨下関節が中間位もしくは回外位だと骨盤はスムーズに軸足側へ回旋します。さらにここで大事なのは回旋時に母趾が機能することです。

立位体幹右回旋時は母趾が屈曲することで良好な運動連鎖を遂行することができます。それと同様にPreparationからTake backにかけて軸足距骨下関節回外、母趾屈曲ができると骨盤回旋がスムーズに行えます。

Take backで足部が機能することで上行性の運動連鎖を発揮することが可能になります。

Take back理想の足部肢位

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・前後にふらつかない
・Stepに向けて中間〜回外位を保持
・ステップ足への重心移動を切り替えられる

Take backでは打撃スタイルにより若干変わりますが、片脚立位状態なのでバランスを保持しながらStepに向けて軸足足部の力を逃さないことが重要です。そのためには距骨下関節は中間〜回外位で保持できることが理想です。

回内位だと足趾が使いにくい状態になり膝が外反し股関節内旋が起こり、骨盤の左回旋(開き)が早期に出現しやすくなります。

骨盤回旋と足趾機能

Take backからStepへは軸足からステップ足への重心移動が起こります。
ここで重要なのは足趾機能です。

Take backからStepに向けて距骨下関節中間から回外を保持できることが望ましいです。一列は挙上し、母趾は屈曲することで前方重心を保持することが可能になります。

母趾が浮いてしまうと、足趾での支持が不安定になり距骨下関節回内になりやすく、後方重心になり股関節・体幹が伸展してしまいます。回旋を出すだけなら母趾が機能するだけでいいのですが、Take backからStepへの動きの切り替えがあるために2趾〜5趾も機能しなければいけません。

PreparationからTake back、Stepの動作は以下の動きになります。
 Preparation➡️右回旋➡️回旋止める➡️左回旋

Take backでは回旋と回旋を止める力が必要になります。

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ステップ 理想の足部肢位 軸足

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Take back➡️ステップ(ステップ足)

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理想は距骨下関節中間位接地です。
回内接地すると下腿は内旋しKnee-inします。 Knee-inすると骨盤左回旋は起こりにくくなります。
回外接地すると下腿は外旋しKnee-outします。 Knee-outすると骨盤は早期に開きやすくなります。

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距骨下関節不良肢位と打撃フォーム

回内パターン

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投球動作に必要な脊柱・胸郭の動きの構築【トレーナーマニュアルvol.85】

いつも【C-I Baseball トレーナーマニュアル】を購読して頂きありがとうございます!
2023年も野球トレーナーを目指す方、現在野球現場で活動されている方にとって有益となる情報を配信していきたいと思います。
本年もどうぞよろしくお願い致します!!

2023年最初のトレーナーマニュアルでは、
2022年のC-I Baseballの活動内容のご報告と
11月に行った「C-I Baseballオフライン勉強」で私が講義した
「投球動作に必要な脊柱・胸郭の動きの構築」について
セミナーの様子を交えながら解説していきたいと思います!

投球動作に必要な脊柱・胸郭の動きの構築

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2022年11月13日にC-I Baseballではオフラインでの勉強会を開催し
私は「投球動作に必要な脊柱・胸郭の動きの構築」についてお話させて頂きました。

今回のトレーナーマニュアルでは特別版としてC-I Baseball-I Baseballオフラインで勉強会で話した内容を紹介させて頂きます!

また、勉強会の様子を一部公開しますので、C-I Baseballのメンバーがどのように学んでいるのかを知ってもらえれば幸いです!

投球動作時の脊柱・胸郭の動き

今回は脊柱・胸郭の運動の中でも「側屈」をテーマに話していきます。

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・投球動作時の脊柱・胸郭の動きのイメージ

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投球動作をイメージすると脊柱と胸郭は「矢状面+水平面」の動きで構築されているように見えます。
実際に私もそのようにイメージし脊柱の屈曲⇔伸展機能の改善や構築、水平面での動きのコントロールなどを中心に選手にトレーニングを指導していました。

SNSなどのトレーニング情報を見ても、屈曲⇔伸展系や回旋系のエクササイズが散見されており、多くの選手がトレーニング取り入れています。

しかし、指導していく中で「矢状面+水平面」の機能が向上したにも関わらずパフォーマンスへ転換していないケースを経験します。

そのような場合、前額面要素である側屈機能の獲得が不十分であると考えています。
つまり、投球動作においては、一見「矢状面+水平面」の動きに見えますが
獲得する機能としては「矢状面+水平面+前額面」の3平面の動きとなります。

なぜ側屈機能が必要なのか?

・脊柱のカップリングモーション
脊柱の3平面における動きは、それぞれの面の動きが独立するわけではなく協調的に動くとされています。
特に「側屈と回旋」の協調的に動きはカップリングモーションとして捉えられています。

胸椎のカップリングモーション

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肩関節のセルフケア【トレーナーマニュアルvol.84】

C-I Baseballトレーナーマニュアル

✅野球現場編
✅臨床編
の2部構成で毎週noteを配信しております!
トレーナーマニュアル
の概要は以下をご覧下さい!

トレーナーマニュアル2022

C-I Baseball育成プログラム
私たちC-I Baseballは「野球トレーナーの輪」を広げるために「仲間」を募集しております!
育成メンバーは随時募集中です!
・野球にトレーナーになりたい
・トレーナー活動しているけど自信がない
・トレーニングについて勉強したい
・野球選手の怪我を治したい

など、野球選手に関わりたい方はこちらをご覧ください!

はじめに

肩関節は投球動作において大きな貢献度を持つ関節であり、それ故に大きな負荷がかかります。
投球動作を反復する野球選手において、肩関節周囲の日頃のケア・コンディショニングは怪我防止、パフォーマンスの維持のために必要不可欠です。

肩関節や肩甲骨を柔らかくするためのストレッチ、
安定化のためのトレーニング・エクササイズなどは過去のnoteをご参照ください!

今回は肩関節に絞って一人でもできるセルフケアをいくつか紹介していければと思います。

肩のセルフケアを行う意義

一般的に野球選手の肩関節では外旋可動域が拡大し、内旋可動域が減少することが報告されています。
2nd外旋可動域と2nd内旋可動域の総和(=TRM: Total Rotational Motion)をシーズンを通して維持していくことが重要になります。

TRMが減少することによる投球障害のリスクが上がる

Wilk KE et al.:Correlation of glenohumeral internal rotation deficit and total rotational motion to shoulder injuries in professional baseball pitchers. Am J Sports Med.2011;39 (2): 329-335

また投球動作において肩関節で十分な出力を発揮できなければ遠位の肘関節や前腕・手指でその機能を代償するようになり、肩関節以外の障害にも繋がる可能性があります。

また、後方タイトネスにより肩関節の求心位がとれていない場合、肩挙上可動域の制限を来す場合があります。

・TRMが5°減少することにより肘障害のリスクが2.6倍になる.
・非投球側に比べ5°以上の肩挙上制限があると肘障害のリスクが2.8倍になる.

Kevin E Wilk et al. Deficits in glenohumeral passive range of motion increase risk of elbow injury in professional baseball pitchers: a prospective study. Am J Sports Med. 2014 Sep;42(9):2075-81.

🔽下記の”投球後のリカバリー”の項目も是非参考にしてみて下さい。

肩甲上腕関節の運動を正常化させることは投球障害のリハビリにおいて非常に重要ですが、選手自身が日々ケア、コンディショニングすることで投球障害を未然に防ぐことに繋がると考えます。

また、肩関節の安定性を司る要素の一つである回旋筋腱板の滑走障害や伸張制限があれば肩関節の筋出力が低下します。

メディカルチェックで痛みのなかった選手をコントロール群と比較した研究では,痛みを有する群で外転筋力や外旋筋力の低下を生じる割合が高かった.

小山太郎, 伊賀崎 央, 河西正寛, 新宮由幸, 福田尚子, 緒 方隆裕, 原 正文:肩関節における投球時痛の有無と理 学所見について, 九州・山口スポーツ医・科研究会誌, 23: 181-185, 2011.

腱板の出力不全により肩関節の外転や外旋の筋出力が低下すれば、投球時の痛みに繋がる可能性があります。

セルフケアの実際

今回はセルフケアがテーマなので選手1人でできるメニューというものに絞って紹介していきます。

肩・上腕の筋の回旋量確保

肩関節が回旋運動を起こす際、骨が関節部で回旋するのは当たり前ですがそれに伴って周囲の軟部組織も追従するように回旋します。
その動きの量を確保するためのセルフケアになります。

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|方法
・上腕骨を回旋させながらそれぞれ上腕二頭筋、上腕三頭筋、三角筋の筋実質部をひねります。

大胸筋

大胸筋のタイトネスは肩外転、水平外転可動域を制限します。
スムーズなテイクバックおよびMERを迎えるためには胸筋群の柔軟性・滑走性が重要となります。

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|方法
・背臥位で大胸筋の筋腹をつかみ、上方に持ち上げながら肩関節の外転、外旋運動を行う。

冬にベンチプレスなどのウエイトトレーニングをやり込む選手は大胸筋が硬くならないように可動域の確保も並行して実施してみてください。

2nd外旋に合わせた肩峰下のモビライゼーション

肩関節外旋制限の原因となる筋としては肩甲下筋、大円筋、広背筋などが挙げられます。
それらのストレッチはもちろん重要ですが、その他に重要な事としては上腕骨頭前面および上方にある組織がしっかりと肩外旋時に肩峰下に潜り込むことです。
具体的には棘上筋肩甲下筋、肩峰下滑液包などになるかと思います。

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