ジュニア選手のためのスポーツ栄養学-野球編【トレーナーマニュアルvol.120】

ジュニア選手のためのスポーツ栄養学-野球編【トレーナーマニュアルvol.120】

いつもお読みいただきありがとうございます。
今回は栄養学の専門家である後藤優子さんに記事を執筆いただきました。

後藤さんには先月にC-I baseballの内部開催で、選手やご家族向けに”ジュニア選手の栄養学の基礎”についてオンラインで約2時間お話しいただき、ご参加いただいた方々からも大好評の内容でした!

C-I baseballでは後藤さんを講師にお招きし、この度セミナーを開催することになりました!!
今回は、トレーナーを対象にスポーツ栄養学についてお話しいただきます!

▶開催日時:2023年10月21日(土)20:00-22:00
▶セミナー概要
↓↓以下、詳細はリンクより↓↓
https://peatix.com/event/create2/3711942/edit#/advanced

以下の記事もイラストを交え、大変わかりやすくおまとめいただきましたので、ぜひご覧ください!

はじめまして。スポーツ栄養士×アスレティックトレーナーの後藤優子です。
現在は地元福岡で活動しています。

画像

今回は「ジュニア選手(野球)のためのスポーツ栄養学」をテーマでご依頼をいただきました。
どうぞ最後までお付き合いいただきすと幸いです。

よくこんな質問をいただきます。

・大きくなるにはどうしたらいいですか?
・速く走れるようになるためにはどうしたらいいですか?
・好き嫌いが多い/少食で困っています。
・どれぐらい食べさせたらいいかわかりません。
・プロテインは必要ですか?

基本の栄養学をベースに、多くの方が知りたいであろう疑問にお答えしつつ、家庭でも実践しやすい内容をお伝えしていこうと思います。

はじめに

画像

この記事を読んでいただいている皆さんはすでに「食事が大切だ!」と感じていらっしゃると思いますが、具体的になぜ大切なの?と聞かれると曖昧な答えになるのではないでしょうか。

アスリートが目標を達成するためには、練習ばかりやっていても思い描いているような成果は出ません。
(例えば、市大会で優勝したい(チーム)、捕球の際にもっと深くしゃがめるようになりたい(個人)など)

まずは何に時間と労力を割かなければならないかというと、上図でいう「ケガや病気がない・体調がよい」、いわゆる「コンディショニング」です。
これがベースにあるから思い切りトレーニングができる。
だから体が強く、大きくなっていく。
そこに食事が大きく関わるというわけです。

画像

身体づくりに必要な3つの要素

画像

「背を伸ばすためにはどうしたらいいの?」の答えはこちらです。
身体づくり、いわゆる大きくなるためには「運動・食事(栄養)・休養(睡眠)」の3つが欠かせません。
特にトレーニングや食事(食トレ)を頑張る人は多いのですが、1日の約1/3を占める睡眠(8/24時間)をおろそかにしてしまう人が多くいます。

小学生は9~10時間、中学生以上でも8~9時間は必要と言われている睡眠時間ですが、きちんと確保できているでしょうか。

最近では夜遅くまで練習が行われているスポーツチームをよく見かけます。グラウンドや体育館など練習場所との兼ね合いもあり、どうしても遅い時間にならざるを得ない事情もあるかと思いますが、そのような場合は短時間で練習を切り上げるなど、練習スケジュールを見直すなどの配慮が指導者には求められます。

盲点となるのがクールダウン
競技の観点からすると素早い疲労の回復やケガの予防が目的となりますが、スポーツ栄養の観点からすると、食べるためのウォーミングアップに位置付けられます。

どういうことかというと、運動中は80%以上の血液が骨格筋に分配されるため、胃腸の働きがかなり制限されます。そのため、運動直後は食欲が湧いてこないのです。

運動後に胃腸が食事を受け入れる準備をするためにもクールダウンは重要です。5分でもいいので時間を確保するようにしてほしいところです。

基本の食事のとり方

画像

基本の食事のとり方は「主食:主菜:副菜」を3:1:2でとること。朝・昼・夜すべてで、が理想です。

朝食をとっていない人は、まずはおにぎりでもいいから食べる習慣をつけること。食べているけれどおにぎりだけの人はゆで卵を追加するなどのように、はじめから完璧を目指すのではなく、今の自分(家庭)が継続して実施できるのはコレだな、をご家庭でよく話し合っていただけたらと思います。

選手本人とご家族の熱量のギャップでうまくいかない…という話をよく耳にするので、家族会議は必須です。

画像

もっと質を上げたい場合は、基本のとり方プラス果物と乳製品をつけるとビタミンやミネラルなどの不足しやすい栄養素が摂りやすくなります。

ビタミンやミネラルの働きは多岐に渡りますが、筋収縮や神経系(反射など)においてとても重要なため、反応速度を上げたいとか足が速くなりたい人には必要不可欠です。

とは言っても果物と乳製品は補助的な役割なので、「主食・主菜・副菜」をそろえることを優先しましょう。
ちなみに、果物と乳製品の摂取割合はどちらも0.5です。

どれぐらい食べたらいいの?

画像

ひとは様々な活動によってエネルギーを消費し、食事からエネルギーを補い収支のバランスをとっています。

成長の止まってしまった大人であればこれで問題はないのですが、成長期真っ只中の場合は、新しい組織(骨、筋肉など)をどんどん作っていかないといけないため、プラスαで材料が必要となります。

そのため、「消費した分だけ食べる」では到底追いつかないのです。

画像
引用:日本人の食事摂取基準(2020)

どれぐらい食べたらよいか、を知りたい場合はこちらの表を見ていただくとわかりやすいです(5年に1度改訂される「日本人の食事摂取基準(2020)」から抜粋した、推定エネルギー必要量の早見表です)。

これらの数値はその年齢の平均身長や体重を用いて算出しているため、あくまでも”おおよそ”の数値となりますが、参考にしていただけると幸いです。

もっと詳細に知りたい場合は、以下の計算サイトからどうぞ。

エネルギー必要量目標体重と身体活動レベルから1日に必要なエネルギー量を算出します。keisan.casio.jp

いくら緻密に計算をしたからと言っても推定値に他ならないので、摂取量の過不足は体重を量って判断することをおすすめします。

身長が伸びているのに体重が増えない、夏場は体重が減るなどの場合は明らかに食べる量が不足しているので、感覚(満腹感)に任せて食事量を決めるのではなく、どれぐらいの運動量の日にどれぐらい食べたら体重が変動するのかをチェックする習慣をつけたいですね。

体重は朝起床後に排尿してから測定するのが理想ですが、朝はバタバタしてそれどころではないという方も多いので、寝る前などでも構いません。
測定時間や服装など、条件を統一しておくことが大切です。

補食について

成長期のアスリートは朝・昼・晩の3度の食事では、エネルギーをはじめ様々な栄養素が不足しがちです。そのため「補食」を存分に活用していただきたいのです。

その理由として、小学校中学年の給食650kcal、高学年750kcal、中学生830kcalで設定されているため(すべておおよその数値で学校ごとに異なります)、全部食べても足りない現象に陥ります。

「おかわりは運」だとも耳にするので、だからこそ朝食はしっかり食べてもらいたいのと、練習前後の補食で不足分を補ってほしいのです。

画像

補食はおやつではないため、スナック菓子やチョコレート、ケーキ、クッキー、アイス、菓子パンなどはできるだけ避けましょう。食べても週に1回程度に抑えるのがベストです。

画像

補食用のお金を選手に渡している場合は、渡した金額内で「運動前の補食を買おう」のようにお題に沿って練習しておくとよいかもしれません。

サプリメント/プロテインについて

日本国内ではサプリメントに明確な定義はありませんが、「食事ではとりきれない栄養素を補う目的で開発された栄養補助食品、あるいは健康食品として販売されているもの」をさします。

そのため、必要な栄養素が充足している場合にはサプリメントを摂取する必要はありません。

画像

サプリメントの中でも「摂取した方がいいですか?」と尋ねられることが多いのがプロテイン。

先にも述べたように、必要な栄養素が充足していれば(基本の食事が毎食とれている)飲む必要はありません。

練習後にすぐ食事がとれる環境にない、睡魔に負けて食事をとらずに寝てしまいそう、主菜を用意できなかった(食べる時間がなかった)、好き嫌いが多いなど、時と場合によって上手に活用してもらえたらと思います。

昨今の流行から、身体づくりと言えば「たんぱく質!」と認識されている方も多いですが、①エネルギーが十分にとれている、②主食・主菜・副菜が3:1:2でとれている、③トレーニング、④睡眠(休養)のバランスが大切で、たんぱく質信者になる必要はありません。

たんぱく質の過剰摂取は肝臓や腎臓の機能低下をもたらしたり、脂肪蓄積に繋がったり、カルシウムの吸収を阻害したりとデメリットも多くあります。
サプリメント(プロテイン)の摂取を検討する前に、食事で工夫できる部分はないか食生活を見直してみましょう。

番外編

好き嫌いや少食についての回答ができていなかったので、こちらでお答えします。

まず好き嫌いについてですが、出しても残されるのが悲しいからと作らなくなる方も多くいらっしゃいます。その気持ち、痛いほど理解できます。

ですが、食べる機会を失うと一生口にしない可能性も高くなるため、作る頻度は減らしつつ、一口でもいいから食べるように促してみてください。

給食では全部食べていることも多いので、本当は食べられるはずなんです。
食べたくない気持ち、食べてほしい気持ち、その食材の栄養的な役割、どうすれば食べられるかなど、話し合ってみるのもいいかもしれません。

少食で心配の方、まずはおやつの量が多すぎないか、普段の水分補給でジュースや牛乳などエネルギーの高いものを飲みすぎていないか、食事中に水やお茶の摂取量が多くないかを見直してみてください。

その上で、「いつもより一口多く食べる」を実践してみましょう。

私も小学生時代は少食で、真夏の練習後はところてんしか食べられないような子どもでしたが、高校生になった頃には部活後にハンバーガーショップのセットを食べて帰り、家でも夕食を食べるほどにまで成長しました。
心配にはなると思いますが、長い目で見ていただけると幸いです。

さいご

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
「わかりやすく」を心がけたつもりではありますが、伝わりにくかった部分もあるかもしれません。
私自身もnoteを運営しており、何かヒントになることが書いてあるかもしれないのでこちらにリンクを貼っておきます。

食とトレーニングと身体づくりと|マルゴトキカク | 後藤 優子(スポーツ栄養士×アスレティックトレーナー)|note幼少期~アスリートの身体づくりについて、食事とトレーニングの視点からあれこれ書いたものをまとめています。note.com

食事は、目を見張るような成果は短期間では表れないし、継続し続けないといけません。ですが、続けたことで得られるものがあります。

「食事は未来、身体は歴史」

自分が思い描いた未来像に近づくために、毎日を積み重ねる。
毎回100点満点じゃなくてもいいから、ゼロにならないように頑張ってほしい。

遠くから皆さんのことを応援しています。


ここまでお読みいただいた方には、ぜひセミナーにご参加いただけたらと思います。皆さんのご参加をお待ちしております!!

トレーナーが知っておきたいスポーツ栄養学 ~高校生、大学生、社会人野球~トレーナーが知っておきたいスポーツ栄養学 ~高校生、大学生、社会人野球~ 【セミナー内容】 今回のセミナーでは、peatix.com

この情報へのアクセスはメンバーに限定されています。ログインしてください。メンバー登録は下記リンクをクリックしてください。

既存ユーザのログイン

CAPTCHA