変化球の投げ方(カーブ後編)【トレーナーマニュアルvol.83】

C-I Baseballの高橋塁です。
まずは、自己紹介から

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今回は育成プログラム第3期、私の担当の第5回になります。

前回は、『変化球の投げ方:カーブ前編』をお伝えしました。

今回は、『変化球の投げ方:カーブ後編』をお伝えいたします。

野球歴や、年齢、ポジション問わず、誰でもがカーブボールを投げるようになれますので、ぜひ、ご一読ください。

前回までの内容は、前編をお読みください。

腕を振るコツ

腕を振れと言われても、なかなか振れません。

振るコツがあります。

前編で、解説したカーブの握りで

セカンドベースに向かって投げてみてください。

例えば、ストレートの握りでセカンドベースに投げるとセカンドベースにボールが行きます。

カーブの握りで同じことをやるとボールはホームに向かっていきます。

セカンドベールに向かって投げるので当然腕が振れます。

コツは「セカンドベースに投げる意識」です。

この意識で投げるとトップスピンの回転数が一挙に上がります。

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投球障害肩に必要な”大円筋・広背筋”のエコー観察【トレーナーマニュアルvol.82】

C-I Baseballの小林弘幸です。
今月で私たちの活動も3シーズン目を迎えました。
これまで多くの方々にいつもマガジンの記事をお読みいただきありがとうございます!

C-I Baseball3シーズン目は
「実践力」をテーマにライター一同noteを配信していきます!
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トレーナーマニュアル2022

現在C-I Baseballでは
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今シーズンの私が担当する配信では、「エコー」を通じて
肩関節の解剖とそれに対する実際のアプローチを学んでいこうという
コンセプトの元、Noteを書かせていただきます。

元NPBチームドクターのスポーツDrと一緒にエコーを用いて、
野球選手の投球障害肩を診てきました。

投球障害肩になってしまうと、
『痛くて投げられない』
『何をしても良くならない』
『自分のプレーに集中できない』
『野球が楽しくない』
と悪循環になってしまいます。

私はそのような投球【障害】肩を持った選手に対し、
エコーを通じて、細かな解剖を理解しアプローチすることで
治療効果が奏功することを経験しました。

もちろんそれだけでは解決しないことも多数ありますが、
ケガからの復帰をするということを考えると、
細かな解剖を学んでいくということは必要なのではないかと考えています。

解剖書で見る肩関節だけではなく、
エコーを通じて、3次元的に捉える肩関節を一緒に学んでいけたらと思います。

投球障害肩における大円筋・広背筋

大円筋と広背筋は、比較的イメージの付きやすい、わかりやすい筋かと思います。

大円筋は回旋筋腱板には属さず、
筋腹の大きい筋です。

また、広背筋との共同腱を持ち、
お互いに同様な作用を持っていると考えられます。

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投球動作の中で考えるのであれば、
Acceleration期以降で作用します。

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Acceleration~BRで肩関節内旋の際には求心性収縮、
BRからFollow-throughの際は遠心性収縮で作用すると考えられます。

特に、筋の表面積が大きいく広背筋は、
遠心性収縮で重要な役割を果たしていると考えています。

理由は、野球選手の筋の非対称性を見てみると、
広背筋部分は投球側の方が筋厚が厚いという結果になっているからです。

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※Shin Hasegawa, et al.: Laterality of muscle thickness in athletes who perform throwing and hitting motions. Jpn J Phys Fitness Sports Med, 62(3): 227-235. 2013 図を引用改変

さらに、
広背筋と大殿筋は、筋連結でお互いに共同して作用すると考えられます。

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この連結の作用によって、BR~Follow-throughの
遠心性収縮が作用すると考えています。

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広背筋の重要な理由は解剖学的視点からもあります。

その話は付着部の章で後述していきたいと思います。

大円筋・広背筋の解剖

①支配神経:肩甲下神経(中・下肩甲下神経)

大円筋:下肩甲下神経(C6~C7)
広背筋:(中肩甲下神経→)胸背神経(C6~C8)

肩甲下神経は、上、中、下に分かれます。

上肩甲下神経は、肩甲下筋上部に
中肩甲下神経は、胸背神経から広背筋に
下肩甲下神経は、肩甲下筋下部と大円筋を支配します。

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後神経束から3本分岐します。

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後神経束は、腕神経叢の中では最深層(最背側)にあるので、
前胸部や腋窩の軟部組織が硬いことで圧迫ストレスが受けやすい部分とも考えられます。

周囲にある軟部組織のコンディショニングは非常に重要であると考えます。

また、関節包に対する神経支配として、
(下)肩甲下神経は関節包の
前方に位置します。

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肩の前方痛と外旋制限があるときは
大円筋や肩甲下筋がタイトネスになっていることが多くあると思います。

②神経の走行と分岐

神経の走行を知ることで、アプローチすべき部位が変わってきます。

まず、
胸背神経は中肩甲下神経が末梢へ走行するにつれて名称が変更します。

胸背神経は、その分岐を2つもしくは、3つに分岐させて、
広背筋の筋内へと侵入していきます。

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髙橋長弘ほか: 胸背神経に関する臨床解剖学的研究. 第15回臨床解剖研究会記録. 2011

さらに重要なことは、近位の分岐部です。

広背筋を9分割し、分岐部を調べると、
近位中央部から分岐していることがわかります。

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髙橋長弘ほか: 胸背神経に関する臨床解剖学的研究. 第15回臨床解剖研究会記録. 2011

このA2にあたる部分へアプローチすることで、
広背筋へより効率的に作用させることができると考えています。

より背中側の、Bの位置になると、
筋内へ神経が侵入してしまうので、エコーでの観察も難しくなり、
徒手療法のアプローチも効果が薄れてしまうと考えています。

非常に重要な神経の分岐に関する解剖かと思います。

③筋の付着部

大円筋と広背筋は、共同腱となり同部位に付着する。

上記のように思われていますが、
正確には異なります。

この少しの差が、大円筋と広背筋のもつ作用の意味合いが異なってくると感じています。

詳細な解剖を見てみると、
大円筋よりも広背筋の方がより近位外側へ付着します。

(以下、解剖の模式図と作用の意味)

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育成年代のトレーニングvol.5敏捷性Ⅱ【トレーナーマニュアルvol.81】

いつもお読みいただきありがとうございます。C-I Baseballの佐藤康です。 私の前回の記事では”敏捷性”をテーマに概論を踏まえた内容をお伝えしてきました。 敏捷性を構成する要素は大きく分けて、「認知・感覚系の機能+ … 続きを読む

打撃動作×足部機能 Preparation〜Take back【トレーナーマニュアルvol.80】

地面と接している足部が機能することで安定した打撃動作を行うことができます。Take backでグリップの位置を安定させるためには軸足の機能が重要です。今回の記事ではPreparation(構え)からTake backまでについてご紹介いたします。

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私の記事は『打撃動作×足部』です。

●打撃時の足部の動き
●足部崩れによる打撃時の不良動作
●打撃動作相に合わせた足部エクササイズ

足部は地面に接している唯一の部位です。足部が安定することで下肢からの良好な運動連鎖が行われます。

その足部でも重要なのが『距骨下関節』です。選手の距骨下関節の構造は左右異なります。理想の打撃時の軸足・ステップ足それぞれの距骨下関節の動きを把握し、選手の足部評価を行うことで動作の崩れを予防や変えることができます。

私が担当する『打撃動作×足部』の今後の発刊予定です。
打撃におけるそれぞれの相における足部の理想の動きや、足部から起こる不良動作、足部エクササイズをご紹介します。

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第5回:Preparation〜Take back

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距骨下関節の肢位

距骨下関節肢位は中間位・回内位・回外位の3通りあります。
距骨下関節には回内・回外を分ける『中間点』があり、その肢位は左右により中間位は異なります。

非荷重位(OKC)で評価を行います。
異なる中間位の評価方法は過去の記事をご参照ください。

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打撃時の距骨下関節・横足根関節

打撃時、軸足と踏み込み足の機能は異なります。

軸足:バランスを取る→蹴り出す
踏み込み足:加速した身体を支え、踏ん張り、力を逃す

軸足の機能はPreparationで両足の支持基底面内にある重心を軸足に移動しバランスをとることや、Take backからStepへ移行する際に重心を移動するために足部を硬め蹴り出す役割があります。
踏み込み足は軸足から移動してきた身体を支えて踏ん張り、上半身の力を逃すようにしなければなりません。

上記の動きが足部で出来れば重心移動や上行性の良好な運動連鎖が遂行可能となります。

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打撃時足部の肢位と動き

Preparation(構え)

Preparationは静止立位です。この状態から動作が始まります。
Preparationが安定していないとTake back(もしくはTake back以降)では片脚立位になるためにバランスが崩れ不安定になり余計な動作が起こります。
この相で両足とも動きやすく安定した肢位になっていることが大事です。

打撃を行う上でPreparation〜Take backで安定することはとても重要です。なぜなら、この相が崩れると次のStep以降はその動きをリカバリーすることができないからです。

Preparation 理想の足部肢位

Preparationの軸足の機能

●前後にふらつかない
●Take backに向けて両足の支持基底面内にある重心を軸足に移動しバランスがとれるような状態にしておく

この時の距骨下関節は指標中間位では中間位が理想です。

回内位だと足趾が使いにくい状態になり前後バランスが低下します。
回外位だと足部を硬めてしまうため、Take backに向けて重心移動しにくい状態になります。Take backに向けて重心移動した瞬間に回外に動くと運動連鎖によりバランスが安定します。

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打撃時足部の肢位と動き

Preparationでの左右の重心位置により軸足の距骨下関節肢位は異なります。

①軸足:ステップ足=5:5
 軸足距骨下関節➡️中間位
②軸足:ステップ足=軸足>ステップ足(軸足重心)
 軸足距骨下関節➡️回外位
③軸足:ステップ足=ステップ足>軸足(ステップ足重心)
 軸足距骨下関節➡️回外位

*今回は①軸足:ステップ足=5:5をご紹介します。

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Take back

Take back理想の足部肢位


Take backの軸足の機能

●前後にふらつかない
●Stepに向けて中間〜回外位を保持
●ステップ足への重心移動を切り替えられる

Take backでは打撃スタイルにより若干変わりますが、片脚立位状態なのでバランスを保持しながらStepに向けて軸足足部の力を逃さないことが重要です。そのためには距骨下関節は中間〜回外位で保持できることが理想です。

回内位だと足趾が使いにくい状態になり股関節内旋や膝が外反し、骨盤の左回旋(開き)が早期に出現しやすくなります。

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骨盤回旋と足趾機能

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PreparationからTake backへは回旋と軸足側への重心移動が起こります。
ここで重要なのは足趾機能です。
PreparationからTake backに向けて距骨下関節回外方向へ動いた際に、一列は挙上し母趾は屈曲することで前方重心を保持することが可能になります。
母趾が浮いてしまうと、距骨下関節回内になりやすく、後方重心になり股関節・体幹が伸展してしまいます。

PreparationからTake back、Stepの骨盤動作は以下の動きになります。

Preparation➡️右回旋➡️回旋止める➡️左回旋

Take backでは回旋と回旋を止める力が必要になります。

回旋を出すだけなら母趾が機能するだけでいいのですが、Take backからStepへの動きの切り替えがあるために2趾〜5趾も機能しなければいけません。

2趾〜5趾を機能させるには長母趾屈筋、短母趾屈筋が機能しなければなりません。これは評価にもエクササイズにも使用できます。
(動画は足部エクササイズでご覧ください)

長母趾屈筋・短母趾屈筋が機能することで足底外側での支持が安定します。その結果体幹は側屈せずに安定します。
逆に機能低下を起こすと足部は回内します。回内すると運動連鎖により骨盤の左側へのswayが起こり体幹はバランスを取るために右側屈します。

打撃動作に当てはめると、長母趾屈筋・短母趾屈筋の機能低下は体幹側屈しグリップの位置が下がりやすくなります。

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パフォーマンスを上げるための体幹トレーニング−実践編②−【トレーナーマニュアルvol.79】

C-I Baseballの増田稜輔です。
今回も野球現場で活動するために必要な知識をお伝えしていきます。

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今回のテーマは
「パフォーマンスを上げるための体幹トレーニング〜実践編②〜」
ついてお話していきます。
体幹トレーニングの実践編は全2回のシリーズでトレーニング方法と目的などを中心に解説していきます。
実践編②では
・先行的筋活動
・姿勢制御
・動的安定性

について解説していきます。

はじめに

体幹トレーニングは腹圧を高め「剛体化」するイメージを持つ方は多いです。腹圧を高めることもとても重要ですが、パフォーマンスに繋げるにはその先を考えていく必要があります。
「前提条件」として構築した○可動性○腹圧上昇に加えて「四肢の動きに協調した体幹機能」が必要になります。

体幹における重要な機能

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体幹機能には身体支える(静的安定性)だけでなく、四肢の動きをコントロールする(動的安定性)も必要となります。

静的安定性では前回の記事でお伝えした「腹圧」が重要になります。
今回お伝えする動的安定性では四肢を動かした際に生じる「動揺」を制御(コントロール)することが重要になります。

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投球動作で考えてみましょう。
投球動作時に体幹は伸展・回旋・側屈の複合運動が起きます。
この時に「体幹が伸展しすぎてしまう」と力をボールに伝えることはできません。ボールに力を伝えるには「伸展する動き」に対して「伸展しないようにする力」が働くことでブレーキがかかりボールに力を伝えます。
つまり「伸展しないようにする力」=体幹の動揺を制御する機能となります。

なので、体幹トレーニングでは「腹圧を高める」だけではなく
「四肢の動きによって体幹が動きすぎない」ようにする動作制御を構築することが求められます。

先行的筋活動

野球パフォーマンスのために体幹トレーニングを行うのであれば「動き」を加えていく必要があります。
「動き」を加えて行く際に必要になるのが「先行的な体幹の筋活動」です。

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上肢・下肢を動かす際には必ず重心の変化が起こります。
この重心の変化を事前に察知して姿勢制御するために「体幹筋は先行的に活動」
しています。なので、体幹トレーニングでは、姿勢の変化に伴う、予測的姿勢制御を活性化させるメニューも必要になってきます。

トレーニングの注意点

先行的な体幹の筋活動を活性化するためには、各ポジションでの上肢・下肢の運動を行います。この際の運動速度が重要になってきます。

下記にような研究結果があります。
運動速度を変えて歩行開始動作を行わせた結果、運動速度が速 い場合は、遅い場合よりもヒラメ筋抑制開始と前脛骨筋の放電開始の時間差が有意に短縮する こと、つまり早期から前脛骨筋が活動していることを示しており、運動速度が遅い場合には、 前脛骨筋の放電が消失したと報告した

Crenna and Frigo[1991]

つまり、運動速度を速くすることで、動作が不安定になり重心の動揺が大きくなります。そのため姿勢調節の必要量が大きくなると考えられます。
今回の紹介した研究結果は歩行中の前脛骨筋の話ですが、同様のことが体幹筋でも生じると考えられます。
つまり、体幹筋のトレーニングをする際も、動作速度に注意して行う必要があります。

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野球選手のための僧帽筋トレーニング【トレーナーマニュアルvol.78】

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はじめに

野球選手の身体を診る際に肩甲骨の機能評価やアプローチが重要となることは言うまでもありません。

肩甲骨の運動に関わる重要な筋の一つである前鋸筋の評価・アプローチについては以下の記事で説明させていただきましたので宜しければご覧ください。

投球動作では高速で上腕骨が回旋します。
肩関節を安定させるため腱板(肩関節のインナーマッスル)のトレーニングを行う選手は多いかと思いますが、腱板が十分機能を発揮するためには肩甲骨の十分な可動性・安定性が重要です。

肩甲骨を機能的に安定させるための筋はいくつか存在しますが、今回は僧帽筋について解説していきます。

僧帽筋の解剖学

まず初めに僧帽筋の解剖学についてです。
ご存知の通り、僧帽筋は上部、中部、下部と線維が分かれています。

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僧帽筋の解剖

それぞれの線維の付着部や作用に関してはスライドをご参照ください。

投球動作と僧帽筋

投球動作中に僧帽筋はどのような役割を果たしているのかについて解説します。

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投球動作のフェーズ

僧帽筋は上部、中部、下部の全てでEarly-cocking〜Follow throwにおいて活動します。

その中でも最も筋活動が大きくなるフェーズはDeceleration phase(減速期)になります。

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減速期

正常な投球時の肩甲骨の動きとしては、内転、下方回旋、後傾から急激に外転、上方回旋、前傾へとシフトしていきます。

この際の肩甲骨運動のコントロールには小円筋や広背筋のような後方筋群が遠心性に寄与しています。
つまり、振り抜かれる上肢にブレーキをかけるように肩甲骨周囲の筋が働きます。

今回のテーマである僧帽筋もDeceleration phaseにおける肩甲骨の過剰な外転を制御するためにブレーキングの役割を担っています。

また投球動作において腕を振り切る際に上肢は体幹から離れようとしますが、上腕骨の動きに肩甲骨が追従することによって肩甲上腕関節への過剰な水平内転負荷を軽減することができます。

投球障害と僧帽筋

先ほどは投球動作において僧帽筋がどのように活動しているのかを述べさせていただきましたが、続いては投球障害との関係についてです。

多くの文献で野球選手の肩や肘の障害と僧帽筋の機能低下が関与していることが報告されています。

肩肘障害の要因の一つとして、僧帽筋下部の筋力低下が関与している。

浜田純一郎,他:高校野球選手にみられる肩肘障害とコンディショニング,
臨床スポーツ医学 ,25 (6) : 657-663,2008.

プロ野球選手の投球障害肩においても僧帽筋下部の機能が落ちている。

内藤重人:野球選手のコンディショニングと障害予防  プロ野球選手における取り組み,
臨床スポーツ医学 ,29(12):1209-1214, 2012.

・加速期以降における肩関節および肘関節機能の指標であるゼロポジション近似肢位での肘伸展筋力と僧帽筋下部筋力はOCD (離断性骨軟骨炎)症例で低下していた。
・これらはOCD症例の上肢筋機能の特徴である可能性が示唆される。

阿蘇卓也,他:上腕骨小頭離断性骨軟骨炎症例および内側型投球肘障害症例の上肢筋力の比較,
日本臨床スポーツ医学会誌:30(2), 2022.

このように障害予防的な視点からも、僧帽筋、特に下部線維の筋出力が重要であることが分かるかと思います。

僧帽筋の機能評価

ここからは実際に選手を見る際の評価・アプローチになります。

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変化球の投げ方(カーブ前編)【トレーナーマニュアルvol.77】

C-I Baseballの高橋塁です。

C-IBaseballの育成プログラムも第3期になっています。

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今回は、『変化球の投げ方:カーブ編①』をお伝えしていきます。

野球歴や、年齢、ポジション問わず、誰でもがカーブボールを投げるようになれますので、ぜひ、ご一読ください。

カーブボールとは

最初に覚える変化球「カーブ」。

多くの選手がカーブにチャレンジします。

カーブというネーミング上「曲がる」イメージが強く、曲がりを意識したネジる指や手首の使い方になる選手が多くいます。

プロの感覚・スーパースロー・球質のデータからカーブを解明していきましょう。

カーブの軌道

変化球を習得するには、どのような軌道の球を投げたいかが重要です。

まずは、カーブの軌道をチェックしてください。

曲がるというより鋭く落ちるという表現が適切かもしれません。

小杉陽太(現横浜DeNAベイスターズ投手コーチ)のカーブを見てみましょう。

カーブの回転

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投球障害肩に必要な”肩甲下筋”のエコー観察【トレーナーマニュアルvol.76】

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野球選手の投球障害肩を診てきました。

投球障害肩になってしまうと、
『痛くて投げられない』
『何をしても良くならない』
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私はそのような投球【障害】肩を持った選手に対し、
エコーを通じて、細かな解剖を理解しアプローチすることで
治療効果が奏功することを経験しました。

もちろんそれだけでは解決しないことも多数ありますが、
ケガからの復帰をするということを考えると、
細かな解剖を学んでいくということは必要なのではないかと考えています。

解剖書で見る肩関節だけではなく、
エコーを通じて、3次元的に捉える肩関節を一緒に学んでいけたらと思います。

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投球障害肩に必要な肩甲下筋のエコー観察


投球障害肩における肩甲下筋

肩甲下筋は、体表には観察されにくいため、非常にイメージがつきにくいと思います。

実は、回旋筋腱板の中で一番大きい筋肉であり、
生成する力は、腱板の中で半分以上の力を持っています。

図2
※ Keating JF, Waterworth P, Shaw-Dunn J, Crossan J. The relative strengths of the rotator cuff muscles: a cadaver study. J Bone Joint Surg Br 1993;75:137–140.​

つまり、
投球のアクセレレーションフェイズにおいて
非常に重要な役割を担っていることが考えられます。

図3

また、

野球選手の筋の非対称性として、
内旋筋(肩甲下筋)の筋力が強いことが報告されています。

※Wilk KE, Andrews JR, Arrigo CA, Keirns MA, Erber DJ. The strength characteristics of internal and external rotator muscles in professional baseball pitchers. Am J Sports Med. 1993 Jan-Feb;21(1):61-6. 

よって
野球選手における肩甲下筋は、
非常に重要な筋力といわれています。

私見ではありますが、
通院される症状のある選手は、
肩甲下筋群の筋出力が低下している選手が多いです。

上記より、肩甲下筋の機能は
非常に重要かと感じています。

ただし、CIB独自のデータでは、
シーズン中の内旋筋力は低下していることもあります。

その選手たちは無症候であるため、
常に筋出力は問題なく出力する必要があります。

図6

肩甲下筋は
他の回旋筋腱板との繋がりも非常に密接であり、
肩甲下筋の断裂があると、棘上筋・棘下筋の断裂の所見がみられることがあります。

肩甲下筋断裂の他の所見との関係
・上腕二頭筋長頭が溝からずれた場合(88%)
・棘上筋/棘下筋複合断裂がある場合(71%)
・上腕二頭筋腱長頭が断裂している場合(69%)
・棘上筋断裂がある場合(54%)

※Adams CR, Brady PC, Koo SS, Narbona P, Arrigoni P, Karnes GJ, Burkhart SS. A systematic approach for diagnosing subscapularis tendon tears with preoperative magnetic resonance imaging scans. Arthroscopy. 2012 Nov;28(11):1592-600.

肩甲下筋の解剖

①支配神経:肩甲下神経(上・下肩甲下神経)

肩甲下神経(C5~C6)となります。

肩甲下神経は、上、中、下に分かれます。

上肩甲下神経は、肩甲下筋上部に
中肩甲下神経は、胸背神経から広背筋に
下肩甲下神経は、肩甲下筋下部と大円筋を支配します。

図7

後神経束から、肩甲下筋表層に走行します。

図8

関節包に対する神経支配として、
(下)肩甲下神経は関節包の
前方に位置します。

図9

肩の前方痛と外旋制限があるときの肩甲下筋はタイトネスになっていることが多くあると思っています。

②筋の付着部

起始:肩甲骨の前面、肩甲下窩
停止:上腕骨の小結節、小結節稜の上部

起始停止は上記のように言われており、外旋可動域を制限します。

図10

しかし、肩甲下筋を含む組織を考えるときは、
総合的に考える必要があります。

理由は、

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育成年代のトレーニングvol.4敏捷性【トレーナーマニュアルvol.75】

いつもお読みいただきありがとうございます。
C-I Baseballの佐藤康です。

前回までは2回にわたって「ジャンプ動作や腱機能」についてまとめてきました。まとめる中で敏捷性の要素である”方向転換能力”の向上には、Stretch-shortening cycle(SSC)の運動要素が一要因となっていることが挙げられておりました。

大学バレーボール選手の下肢筋群のSSCの能力を示すリバウンドジャンプ指数(RJ 指数)の測定にて、RJ 指数と方向転換能力との間に有意な相関がみられた。

有賀らの報告.2013

バスケットボール選手にリバウンドドロップジャンプを用いたプライオメトリックストレーニングを行った結果、方向転換走の記録が有意に短縮した。

図子の報告.2006

育成年代のトレーニング現場でも、敏捷性向上を目的としたラダーやミニハードルなどを利用したSAQトレーニング(SAQ:Speed/Agility/Quickness)が実践されている場面が多くみられます。

そのため、今回は「敏捷性」をテーマに、なぜ育成年代の時期にトレーニングを行うべきか?何をすべきか?を中心にまとめていきたいと思います。

敏捷性とは

まず、はじめに「敏捷性」についてまとめていきます。
スポーツ科学の分野では以下のように示されています。

敏捷性は、すばやく制御された方法で全身や体の一部を止めたり、始動したり、向きを変えたりする能力であり、動きの速度や状態を急に変化させるのに必要な技術と能力である。

Baechle,Earle&Wathen.2008

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敏捷性の構成要素は
「視覚・認知スピード」(上図左側)と
「方向転換スピード」(上図右側)の要素に大別されます。
言い換えれば、認知・感覚系の機能+フィジカル系機能といえます。

つまり刺激に対して素早く認知・入力し、
その情報を統合・処理して、
すばやく動くことができる能力が求められます。

そのため、
アジリティ能力を向上するためには、
両側面のアプローチが必要であるといえます。

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野球における敏捷性とは、走塁での方向転換やダッシュ・守備では打球のチャージでの加速→減速などといった要素が該当してきます。加えて、方向転換により起こる足底からの地面の反力を強く受ける場面は、投球やスイング動作にも反映できる要素であると捉えています。

直接的な野球の技術の面を踏まえた、
要素へのアプローチを考察していきます。


成長期に敏捷性を向上するメリット

つぎに、成長期に敏捷性を向上する点についてまとめていきます。成長期の選手に関わる上で、身体の成長・発達の観点を無視した指導はできません。

育成年代シリーズの記事では
何度か出させていただきましたが、
”スキャモンの発達曲線”を挙げます。

ここで着目しておきたいのが、
「神経型」の発達の軌跡です。
(20歳の値を100%として曲線で示したもの)

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「神経型」とは
”脳や神経系の働き”を表しており、図でも10歳頃までに大人とほぼ同じくらいまで発達していることが分かります。つまり、神経系の機能がもとになる敏捷性の能力の基礎の向上が10歳頃までにピークを迎えるということを意味しています。

そのため、敏捷性のトレーニングを実施するには成長期が最適な時期であり、刺激を加えれば加えるほど、その伸びも大きくなることが見込めます。「ゴールデンエイジ」と称される所以の一つです。

敏捷性の構成要素としての反応時間やステッピングの発達過程を知っておくことは、選手の敏捷性能力を向上させる上で重要であると考えられます。

▶反応時間に対する考察

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上記のスライドより、反応時間の短縮には情報処理に関するPMTが大きく関与しています。PMTは幼児期から成長期に、反応課題に対するステッピング能力も思春期前までがトレーニングの至適時期であることが報告されており、この時期に反応を速めるトレーニング(反応課題)を行うことが効果的であるとされています。

他の研究でも下記のような報告がされています。

反応時間は14歳位まで直線的に短縮し、その後成人値に達することが報告 されている。特に12歳頃までに顕著に短縮するため、この時期までが反応 時間のトレーナビリティーの高い時期であると考えられる。

広 瀬 統 一ら:体 力 科 学(2002)

成長期には速筋線維が発達し, パワーが大きくなり, またクイックネスも高まり敏捷性も向上するために, さまざまなスポーツ活動がアクティブにできるようになる。

小沢治夫:ステッピングテスト・スコアーの成長・加齡による変化.1997より

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パフォーマンス向上のための投球動作✖️足部【トレーナーマニュアルvol.74】

投球時の距骨下関節・横足根関節

投球時、軸足と踏み込み足の機能は異なります。
軸足:バランスを取る→蹴り出す
踏み込み足:加速した身体を支え、踏ん張り、力を逃す

軸足の機能はセットポジションで両足の支持基底面内にある重心を軸足に移動しバランスをとることや、Wind-upから捕手方向へ重心を移動するために足部を硬め蹴り出す役割があります。
踏み込み足は軸足から移動してきた身体を支えて踏ん張り、上半身の力を逃すようにしなければなりません。(イメージは車の回生ブレーキ)

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https://evdays.tepco.co.jp/entry/202205/31/000031より抜粋


足部で下記の動きが出来れば重心移動や上行性の良好な運動連鎖が遂行可能となります。

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AccelerationからFollow throughにかけてのポイントはステップ足の肢位と安定性です。加速してきた身体を急ブレーキや力が抜けないように踏み込み、止めなければいけません。

Acceleration時、接地が回内位になると下腿は内側に傾き股関節に力が入りにくくなります。そうなると骨盤の回旋量は低下、もしくは捕手方向に突っ込んでしまいます。

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●なぜステップ足の下腿が安定しないのか
●ステップ足を安定するためのエクササイズ

理想の足部の動き・距骨下関節不良肢位と投球フォーム・足部エクササイズを今回もお話しさせていただきます。

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トレーナーマニュアル2022

C-I Baseballでは
 ○野球現場編
 ○臨床編
2部構成で毎週記事を配信しております!
トレーナーマニュアルの概要は以下をご覧下さい!

野球トレーナーマニュアル|C-I baseball|note【C-I Baseballトレーナーのトレーナーマニュアル】 投球障害肩・肘、腰痛、捻挫、肉離れ、下肢障害など野球におけるnote.com

育成プログラム

C-I Baseballでは「野球トレーナーの輪」を広げるために「仲間」を募集しております!育成メンバーは随時募集中です!
 ・野球にトレーナーになりたい
 ・トレーナー活動しているけど自信がない
 ・トレーニングについて勉強したい
 ・野球選手の怪我を治したい
など、野球選手に関わりたい方はこちらをご覧ください!!

https://note.com/embed/notes/nfdddb2de0424


・・・・・・・・・・以下本文・・・・・・・・・・

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距骨下関節の肢位

距骨下関節肢位は中間位・回内位・回外位の3通りあります。
距骨下関節には回内・回外を分ける『中間点』があり、その肢位は左右により中間位は異なります。
私は非荷重位(OKC)で評価を行います。
異なる中間位の評価方法は過去の記事をご参照ください。

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投球時足部の肢位と動き

Accelerationからの足部機能はブレーキをかけてその力を下肢→骨盤→体幹→上肢といったように上行性へのエネルギーが伝わります。

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投球障害肩の病態と動作|小林弘幸noteから抜粋
※松久孝行 他:投球動作解析の検討. 肩関節. 26巻第2号. 401-405. 2002
引用改変


Late cockingでの足部の機能がAcceleration、Follow throughと影響します。Accelerationでは距骨下関節は中間位になることでステップ脚は安定します。

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回内位で接地するとステップ脚の膝は内側(Knee-in)に入ります。

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Acceleration 理想のステップ足肢位

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Accelerationでは距骨下関節肢位は中間位が理想です。

Follow through  理想のステップ足肢位

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距骨下関節不良肢位と投球フォーム

ステップ足不良肢位

ステップ足距骨下関節が回内しているために下腿の傾きが大きくなるのと下腿内旋がみられます。

回内接地はBall releaseからFollow throughの肩関節まで影響が及びます。
回内接地は足趾が使いにくい状態になり膝がKnee-in、股関節内転内旋、骨盤左回旋低下、体幹前傾低下、Follow throughで肩関節後面のストレス増大します。

●回内接地➡️足趾機能低下➡️足底後方重心
●回内接地➡️下腿内旋、内側傾斜➡️ Knee-in➡️股関節内転・内旋➡️骨盤左回旋・前傾低下➡️体幹前傾・回旋低下➡️肩関節内転・内旋増大

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