投球障害を足部から改善するための現場でできる横足根関節インソールパッド編【トレーナーマニュアルvol.25】

C-I Baseballの須藤慶士です。足部を担当しております。

足部×投球のテーマで第5回になります。今回のテーマは『横足根関節のインソールパッド』です。

インソールは痛みを取ることも可能ですし、動作改善も可能です。

インソールを作製した事がない方でも評価ができれば後は貼付位置はnoteを参考にしていただければ実際に使えるように記載しております。

前回までの距骨下関節のインソールパッドからお読みいただけると繋がってくるので臨床でも現場でも使えると思います。

↓↓↓距骨下関節インソールパッド編↓↓↓

以下本文

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なぜ横足根関節を評価するのか?

横足根関節は距舟関節と踵立方関節から構成されています。
横足根関節は『縦軸』『斜軸』の二つの軸が存在します。

縦軸:回内  回外
斜軸:底屈−内転       背屈−外転

それぞれの軸が距骨下関節の動きと連動することで足趾へ力が伝わっていきます。
この『縦軸・斜軸』でどのくらいの可動性があるのか?どのような動きをするのか?
これらを徒手(非荷重位)で評価することで動作時における横足根関節の動きを把握することができます。

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距骨下関節と横足根関節の関係

OKCでは以下の連鎖が見られます。

距骨下関節回外位→横足根関節強固→一列可動性減少
距骨下関節回内位→横足根関節柔軟→一列可動性増大

CKCでは距骨下関節の肢位により横足根関節・足趾機能は変化します。

横足根関節が柔軟な場合(横足根関節回内位)
距骨下関節が回内→横足根関節の可動域で補償可能

横足根関節が強固な場合(横足根関節回外位)
距骨下関節が回内→横足根関節回内可動域では補償不可→下腿の内捻や膝外反で代償

 *骨盤の内方移動や体幹の側屈で代償することもある

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距骨下関節の肢位・動き(歩行時)

Loading Responseで最大回内位になります。

回内になることで横足根関節を柔軟な状態にして地面の形状を把握し対応しやすいようにしています。

Mid stance以降は距骨下関節回外方向への動きが起こります。回外にすることで足部全体を剛体にして蹴り出しを行いやすいようにします。

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横足根関節の肢位・動き(歩行時)

距骨下関節回内位では、横足根関節は柔らかくなるので可動性が向上します。
歩行時ではLoading ResponceからMid stance前半までの相です。
足圧中心は第5趾に向けて移動します。

この時、横足根関節斜軸は背屈・外転、縦軸回外します。この動きにより足圧中心は外側に移動しやすくなります。

距骨下関節はMid stance〜回外位になります。
それに伴い横足根関節も斜軸は底屈・内転、縦軸回内します。

この肢位になることで全体を剛体として蹴り出しがしやすい状態になっていきます。

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荷重位では足部は崩れやすい

上記に記載したものは正常な動きです。

しかしほとんどの足部は正常な状態ではありません。

距骨下関節や横足根関節の機能が崩れるために足部や下肢などに疼痛が出現します。

機能を正常に動かすにはインソール が有効な手段です。

その正常とは、

それぞれの足に存在する『中間位』の事です。

そしてインソールをするにも中間位評価をそのまま使います。

投球時のKnee-in

トレーニングしてもなかなかKnee-inが改善しない選手を経験した事があると思います。

そのような場合は考えられることはステップ足が距骨下関節・横足根関節ともに回外位である事が予測できます。


接地とともに距骨下関節・横足根関節で回内の動きがあればいいのですが、それぞれで補償できずに下腿が内側に傾いてしまいます。

投球時のKnee-inがある選手は足部評価をしてみましょう。

スライドの選手は投球時Knee-inがみられました。そこでフォワードランジからのKnee-in、Knee-out評価をしました。

スパイクにはインソールを作製しました。足部が機能すると足底全面接地しながらKnee-outができます。

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距骨下関節・横足根関節・足趾が機能したために足部からの回外、下腿外旋がしやすくなり、股関節外転・外旋可動域が向上しました。

この動きができると、リリースからフォロースルーにかけて骨盤の回旋可動域が向上し肩関節にかかるストレスも軽減します。

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横足根関節評価 判定基準

横足根関節判定基準

距骨下関節指標中間位評価に対してMP関節のラインで判断します。

距骨下関節指標中間位よりも
●MP関節が回内するなら『横足根関節回内位』
MP関節が回外するなら『横足根関節回外位』
並行なら『横足根関節中間位』

と判断します。

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評価手順

https://note.com/embed/notes/naf3c7b57608c →Blog リンク貼る

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横足根関節 評価方法

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距骨下関節指標中間位の評価方法は過去の記事をご参照ください。

https://note.com/embed/notes/nb4b48916c110→Blog リンク貼る

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横足根関節 縦軸回内時 注意点

距骨下関節指標中間位でのホールドができないと横足根関節縦軸回内した際に、横足根関節は柔らかい状態になります。

色々な足部評価をした際に評価が『横足根関節回内位』になってしまう場合は、距骨下関節指標中間位でのホールドが不十分の可能性が考えられます。

間違った評価になるのとアプローチの方向性が変わってしまうので、パフォーマンス低下もしくは痛みが強くなる可能性があります。

ですから、横足根関節評価の際は距骨下関節指標中間位のホールドを意識してください。

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この後に評価からの横足根関節インソールパッドをご紹介いたします。

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オフシーズントレーニングーウエイトトレーニングを組み立てるー【トレーナーマニュアルvol.24】

C-I Baseballの増田稜輔です。
今回のテーマは「オフシーズン」ということで、CIB副代表・佐藤康氏と2回にわたって配信していきます。

先週配信の記事ではランニングプログラムについて佐藤康氏より解説がありました。
まだお読みでない方はこちらのリンクからどうぞ!
オフシーズントレーニング−ラントレーニングの選択ー

皆さんはオフシーズンのトレーニングはどんなイメージがありますか?

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・体力強化
・ウエイトトレーニング
・走り込み
・振り込み

上記のような感じでしょうか?
オフシーズンのトレーニングとしてよく言われるのは【強化】だと思います。

【オフシーズントレーニング=強化】
多くの方がこのようなイメージを持っていると予測出来ます。
シーズン中には行えないような強度の高いトレーニングをして
身体を強くしよう!体力をつけよう!筋力アップだ!
こんな言葉が聞こえそうですね・・・

オフシーズンに身体機能を強化することは間違えでないですが
ただ闇雲に行っていることも多いと思っています。
【強化】という言葉ばかりが先行し、オーバートレーニングになり
オフシーズン中に怪我をする選手、パフォーマンスが低下する選手を多く目にしています。

また、目的が明確になってない状態で、
一般的に言われているトレーニングやYouTubeで見たトレーニング
最近流行りにトレーニングなどに偏った結果、【強化】出来ていない場合も多くあります。

オフシーズンのトレーニングは
目的を明確にし、目的に沿った方法でプログラムを組むことが重要であると考えています。
【何を強化するのか?】
【どんな方法で強化するのか?】
【正しいプログラムを設定しているのか?】
今回は上記のような悩みを解決できるように解説していきます。

前回記事のおさらい
「新チームで構成するトレーニングー野手のトレーニングを考える方法ー」

前回の記事では、新チームのトレーニングプログラムを考える上で重要となる4つの項目について解説していきました。
・チーム目標、方向性の設定
・選手の状態把握
・怪我の発生状況
・スケジュール

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その中でこんな問題提起をしました。
「パワーを上げたい」=パワートレーニングを行うでいいのか?

例えば、スイングスピードを上げたいからと言って
MBスローを繰り返す、重いバットで振り込みをする
果たしてこのプログラムでパワーはあがりますか?

私は上がらないもしくは効率が悪いと考えています。
※あくまでも個人的な意見なので否定するつもりはありません。

ここで考えるべきなのは【時期】だと思っています。
MBスロー距離とスイング速度が相関があると言われているように
バッティングのパワー要素として、MBスローは重要だと考えていますが
【オフシーズンという”時期”】を考えると、優先的に選択するプログラムではないと思っています。

では【オフシーズン】に何をするのか?
ここから解説していきたいと思います。

オフシーズンとは

先程、トレーニングには”時期”が大切ということをお伝えしました。
では、【オフシーズンとはいつなのか?】
ここから話していきます。

アマチュア野球を例に考えていきます。
多くのチームが10月、11月で大会を終了し、
大会は終了しているが練習試合がある11月は準備期として扱い、
オフシーズンに行うトレーニングの準備やシーズン中の疲労を回復させる期間としています。
12月頃から試合がない時期に入り、試合開始時期が3月上旬なので
12月〜3月までの間が【オフシーズン】と呼ばれる時期です。

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オフシーズンに強化すべき要素

皆さんはオフシーズンにどんな要素を強化していきますか?
おおよそ下記に図にある要素が挙がってくると思います。

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ここで挙がった要素に対してどんなトレーニングをしていくのが
良いのでしょうか?

・球速を上げたい、肩を強くしたい
→重いボールを投げる? 投球動作に似た動きでトレーニングする?
・スイングスピードを上げたい、飛距離を伸ばしたい
→振り込み? MBスローをする?
・足を速くしたい ベースランニングを速くしたい
→短ダッシュ? Tドリル? ベースランニング?

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冒頭でも説明したように
強化したい要素に対して、直接的なトレーニング(競技特異的トレーニング)してもパフォーマンスにつながらない可能性があります。
これは時期尚早なわけです。

理由は
ボールを速く投げるため、スイングを速くするための
【可動性】【絶対筋力】【動作速度】が備わっていないからです。

強化する順序

オフシーズンに競技特異的なトレーニングは時期尚早と言いました。
パフォーマンスをアップするためのトレーニングには順序があります。
この順序を誤ると
強化したい要素が向上しなかったり、怪我のリスクが高くなります。
なので、順を追ってプログラムを作成していくことが重要になります。

野球動作を考えると、プレーで起こる多くの動作は
瞬発的なパワー発揮が求められます。
これは野球の競技特性として捉えて良いと思います。
このことを考えると、トレーニングのゴール(最終目標)は
【瞬発的なパワー発揮】です。

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この瞬発的なパワーを起こすためには筋の伸張反射を起こす必要があります。

伸張反射とは
筋の伸張が起こると反射的に筋活動増加させて短縮性収縮が起こること

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伸張反射を起こすには
筋が伸張する弾性力つまり可動性と筋の収縮力が必要になります。

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ここを強化することで、
最短時間で筋の動員を最大限に引き上げることができ
瞬発的なパワー発揮に繋がる

そのためトレーニングは
筋の伸張性を向上するような可動性エクササイズ
筋の張力を高めるトレーニング
最後に収縮速度を高めるトレーニング
を行いパフォーマンスへと繋げていきます

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ウエイトトレーニングについて

オフシーズンのトレーニングは
①可動性②筋力③動作速度の順で行うと説明しました。

①可動性は
ストレッチやモビリティエクササイズなど比較的イメージがつきやすいと思います。
③動作速度についても
スプリントやジャンプ、MBスローがイメージできると思います。

②筋力についてはどうでしょうか?

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どうやったら筋力がつくのか?重さは?メニューは?回数は?
など比較的不明瞭な部分が多いと思います。

それに加え、高校生など成長過程の選手にウエイトトレーニングは
負荷が強くて怪我の原因になるから不要だ
こんな声もあると思います。

しかし、皆さんが目指すゴールにあるパフォーマンスを上げるには
【最大筋力】の向上が必要不可欠です。

ここからはなぜオフシーズンにウエイトトレーニングが必要なのかを
解説していきます。

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オフシーズンのトレーニングーラントレーニングの選択ー【トレーナーマニュアルvol.23】

C-I Baseballの佐藤康です。
今回のテーマは「オフシーズン」ということで、CIB代表・増田稜輔氏と2回にわたって配信していきます。

野球選手のオフシーズンは各世代のカテゴリーによってさまざまですが、12月~2月までの冬季期間はトレーニングに占める時間が多く、実践練習よりもトレーニングに割く割合の多い期間になると思います。

オフシーズンのトレーニングと聞くと、ランニングメニューを中心とした「走り込み」をイメージされる方も多いのではないでしょうか。

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走り込みの是非は昨今その効果についてさまざまな意見が挙がっておりますが、どのようなラントレーニングが野球で求められるのか?その目的が重要であると思います。

今回はオフトレーニングで実践する現場も多い「ラントレーニングの選択」についてまとめていきたいと思います。

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オフシーズンのカラダづくり!なにを強化すべきか?

そもそもオフシーズンとは
どれくらいの期間を指すのでしょうか?

中学・高校生の野球を例に考えていきます。

高校野球は高野連(高校野球連盟)より、
対外試合をできる期間が定められています。

およそ、12月~3月初旬までの約3か月間、
他校との試合が禁止されています。

そのため、特に12月・1月は体力強化を図るチームも多いと思います。チームによっては11月を移行期として徐々に強化メニューに移行していくチームもあると思います。

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野球選手として個人・チームの目標を
明確にした体力づくりを行うことが大切です。

野球に求められる体力強化

トレーニングプログラムを構成していく上で、やみくもに重い重量を挙げたり、長い距離を長時間走り込む、というのは野球に求められるのかというとそうではありません。

昔の練習では試合ができない期間はとにかく走れ、走り込みは精神力の強化などとして、長時間のラン中心のメニューをこなす、といった背景がありました。

きつい練習を乗り切ることで、体力が強化され、疲労がある中奮い立たせることで強くなることはあるかもしれませんが、冬季練習でのオーバーワークによる選手のケガが生まれてしまうことは否めません。

先述しましたが、ラントレーニングを全て否定するのではなく、目的に応じたプログラミングが必要であると思います。

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そのため、
野球の競技特性に合ったアプローチ(トレーニング)が求められます。

野球の競技特性は、
投手が投げて打者が打たなければそれで終了、
長くても10-20秒程度でワンプレーが終わる競技です。

実際に投手では2秒・野手では5秒程度での一瞬での強い力が求められます。

すなわち、高強度の瞬発的な動きを
投球数の分だけ動ける能力が必要となります。

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1試合の中で、後半に体力の問題によりパフォーマンスが低下するのであれば、それに対したアプローチが必要となります。連戦が続く大会期(試合期)では尚更求められる部分です。

ここで大事なことは瞬発的な動きの繰り返しです。

▶高強度な瞬発的なパワー
▶試合で発揮できるパフォーマンスの持久力
▶強度の高い動きに対し壊れない体の柔軟性

などが挙げられると思います。

反対に、少ない力で多い回数の運動やローペースな動きを淡々と繰り返す運動は野球に特化した動きとは言えないないことです。そのため、一定のペースで長く運動を続けることが、野球に優先されるトレーニングというとそうではないことがわかります。

鍛え方(トレーニング方法)で筋肉の発達の仕方も変わるため、適したトレーニングの選択が求められます。

なぜラントレーニングをするのか?

ここで今回の本題となるラントレーニングについてまとめていきます。ラントレーニングにはさまざまあり、その目的効果もさまざまです。

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投球障害肩の評価-その他の部位編-【トレーナーマニュアルvol.22】

C-I Baseballの小林弘幸です。

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元NPBチームドクターのスポーツDrと一緒にエコーを用いて、
選手の病態を理解し障害の原因追及、症状改善を大切にしています。

投球障害肩の原因は多岐にわたり、非常に難しいです。

しかし、皆様に少しでも自分の考えを共有していただき、
ご意見をいただきながら、現場の選手に少しでも還元できたら
うれしく思います!

CIB第2期で小林が担当する、臨床編の記事(予定)です↓↓↓

①投球障害肩の問診と動作観察
②投球障害肩の評価 -肩甲胸郭関節-
③投球障害肩の評価 -肩甲上腕関節-
④投球障害肩の評価 -その他の部位-(今回)
⑤投球障害肩の治療 -徒手療法-
⑥投球障害肩の治療 -運動療法-


これらの記事を通じて、
私の臨床での考え方、思考過程を共有させていただき、
様々なご意見をいただけたらと思います!

投球障害肩の評価-その他の部位-

はじめに

投球障害肩において、評価は非常に重要です。

しかし、
その他の部位を評価するのは非常に難しく感じます。

単純に、
股関節が硬いから股関節を動かしましょう。

胸郭が硬いから動かしましょう。

それだけでは、
理学療法士、トレーナーとしては不十分だと思います。

その動きが改善されることで、
投球に対してどのような作用があるのかを考えて、
選手に自覚してもらう必要があると思います。

今回は、野球に必要な動作と結びつきやすい
・脊柱
・股関節
・足部

といったところの評価を紹介していきたいと思います。

まずは、肩関節の評価として、3方向SATをします。
そこで肩甲胸郭関節に問題がある場合は、そこから全身へと評価治療を広げていきます。

逆に、肩甲上腕関節に問題がある場合は、
そちらを先に評価治療していっています。

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基本的に、評価としては、

疼痛誘発テスト(病理解剖学的診断)を用いるのではなく、
疼痛緩和テスト(病理運動学的診断)を用いる必要があると考えています。

※Ludewig PM, et al.: Changing our diagnostic paradigm: movement system diagnostic classification. Int J Sports Phys Ther, 12(6): 884–893, 2017

どうなれば、痛みや動きが改善するのか、それを誘導してあげてから
治療に進むとスムーズに介入できることが多いかと思います。

図2

脊柱に対する知識と評価

肩関節の屈曲と外転の脊柱運動

まず、投球動作を考える前に、肩関節運動と脊柱運動の関係を復習します。

肩関節屈曲時の脊柱では、
屈曲初期~中期に
・腰椎伸展
(・胸椎屈曲)
となります。

図3

※千葉慎一他:上肢挙上運動への胸椎、腰椎および骨盤運動の関与. 昭和学士会誌. 第79巻. 第1号. 58-67. 2019

それに伴い、肩甲骨下角が前方へと動く。

つまり、前鋸筋が優先的に働くと考えられます。

図5
※森原徹 他:肩関節屈曲・外転における肩甲骨周囲筋の筋活動パターン~鎖骨肩甲上腕リズムに着目して~. 肩関節2011;35巻

肩関節外転時の脊柱では、
外転初期~中期に
(・腰椎屈曲)
・胸椎伸展
となります。

図4
※千葉慎一他:上肢挙上運動への胸椎、腰椎および骨盤運動の関与. 昭和学士会誌. 第79巻. 第1号. 58-67. 2019

それに伴い、肩甲骨上角が内側へ動く。

つまり、僧帽筋(上部中部)が優先的に働くと考えられます。

図6
※森原徹 他:肩関節屈曲・外転における肩甲骨周囲筋の筋活動パターン~鎖骨肩甲上腕リズムに着目して~. 肩関節2011;35巻

この脊柱と肩甲骨の動きを理解することで、
全身からの動きで肩関節の動きを評価することができます。

以下に、まとめの図を提示します。

このあたりも意識して評価、介入していくことで
引き出しが広がっていくかと思います。

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投球動作と脊柱の関係

では、上記のことを踏まえて、
脊柱の動きと投球動作の関係はどのように考えた方が良いでしょうか??

胸椎・腰椎の動きがどの投球Phaseに影響するのかを述べていきます。

①腰椎伸展と投球動作

腰椎伸展が求められるPhaseは、

Late cocking~Acceralationにかけてです。

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腰椎伸展は、
肩鎖関節を軸に、下角が前外側へ移動(後傾)し、前鋸筋が作用しやすい肢位となります。

Late cocking~Acceralationの肩甲骨や脊柱の肢位は
近似した肢位と考えられます。

この肢位が不足した場合に、
肩甲骨後傾を代償するように、過度なGHの水平外転などが生じ、
インターナルインピンジメントなどのリスクが考えられます。

①腰椎伸展の評価

腰椎だけの伸展可動域の評価は難しいですが、
一つの方法として、下記の動画の様に行っています。

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投球障害肘改善のための手関節・手指の評価とアプローチ【トレーナーマニュアルvol.21】

C-I Baseballで投球障害肘についての記事を担当させていただいている新海 貴史です。

プロフィール画像

普段は整形外科病院で投球障害の選手のリハビリテーションを行い、競技復帰をサポートしております。私の記事では臨床目線でお話させていただければと思います。

Twitterでも臨床目線で発信をしていますのでフォローしていただけると嬉しいです!🔽

2021年度のC-I Baseballが発信する「トレーナーマニュアル」では、
野球のケガに関わる専門家向けの臨床編
選手のパフォーマンスに関わる現場編について配信しています。

野球トレーナーマニュアル|C-I baseball|note【C-I Baseballトレーナーのトレーナーマニュアル】 投球障害肩・肘、腰痛、捻挫、肉離れ、下肢障害など野球におけるnote.com

今回は臨床編として”投球障害肘改善のための手関節・手指の評価・アプローチ”について私なりの意見も含めながら説明させていただきます。

最後までお読みいただけると幸いです。

はじめに

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肘の病態の捉え方➡︎肘伸展機能の評価とアプローチ➡︎前腕回旋機能の評価とアプローチと来ましたが、今回は手関節・手指編になります。

投球障害を呈する選手の多くは肩や肘に疼痛を抱えているため、まずは優先的に患部である肩や肘にアプローチすることが多いと思いますし、私自身それが重要であると考えています。

今回は手関節・手指について書かせていただきますが、肩や肘、前腕をしっかりと評価した上で手関節や手指に着目すると良いと思います。

手関節・手指と投球動作

投球動作において、下肢から生み出されたパワーをリリース時に最終的にボールに伝達するのは言うまでもなく手関節〜手指になります。

先行研究においても以下のように述べられています。

ボールに伝えられるエネルギーの大部分は手関節の関節力パワーに起因し、そのほとんどは体幹や肩関節の運動によって生み出されたエネルギーが関節や筋・腱を介して転移することによってもたらされることから、手関節や手指がボールリリースにおけるエネルギー伝達に重要な役割を果たしている。

宮西 智久,藤井 範久,他:野球の投球動作における体幹および投球腕の力学的エネルギーフローに関する3次元解析.体力科学.1997; 46(1):55-68.
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リリースにおいてパワーロスなくボールに力を伝えるために、手関節や手指は重要な役割を担っています。

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野球選手において、手指の機能障害を引き起こしているケースを多く経験します。その要因としては変化球の投げ過ぎ、新球の取得、過去の突き指・骨折、トレーニング時の使い方の不良などが言われています。手指の自覚症状は気付きにくく、指先に過剰な力が入る、第4・5指の握り込み(尺側グリップ)不良、手関節尺側偏位などがしばしば見受けられます。

第一に、スクリーニングとして手指の基礎的な運動が問題なく遂行できるかはチェックしておくと良いと思います。問題がある選手は日々のコンディショニングの中に手指の運動も取り入れていく必要があると考えます。

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投球動作において、ボールに加わる手指の力はMER直前では全ての指で、ボールリリース直前では示指と中指で増大することが報告されています。

Kinoshita H, et al:Finger forces in fast baseball pitching. Hum Mov Sci, 54:172-181, 2017.

ボールリリースにおいて最大に負荷がかかる指はもちろん示指と中指ですが、MER直前では全ての指で手指のへの力が増大しますので、母指〜小指までトータルの機能をチェックしていく必要があるかと思います。

ボールを”握る””放つ”。この2つの動作を遂行するにあたり、手関節と手指は重要な役割を担うと考えます。

実際の評価やアプローチについては次項で述べていきます。

手のアーチについて

手のアーチ機能が良好であることは対立機能を正常に働かせるために必要不可欠な要素です。ボールを把持する際は母指と小指が対立する形に近づき、手根部ではアーチが形成されます。アーチ機能が向上することにより前腕〜手指の筋出力が向上し、gripのしやすさが改善する症例を多く経験します。

評価

静的アライメント評価

視診、触診にて舟状骨と豆状骨間の距離の左右差を評価します。

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🔴POINT🔴

横アーチが低下している場合、この距離が広くなります。

手のアーチ:内側列、外側列の可動性評価

✅横アーチの要石(key stone)▶︎有頭骨、第2,3中手骨

key stoneを中心に内側列、外側列がそれぞれどの程度落ち込むのか可動性を確認する

手背、手掌それぞれから左右差を確認する

対立運動におけるアーチの見方

母指と小指の対立運動を確認します。

🔴POINT🔴

アーチ機能が良好な場合▶︎手根骨の遠位列(近位横アーチ)から対立運動が動員

アーチ機能が不良な場合▶︎末端で対立を作ろうとする動きが確認できる

上の動画において、左手は対立運動に伴い手根骨のアーチを作るようにアシストしても近位の動きが乏しいことが見て分かるかと思います。

荷重位でのアーチ機能

四つ這いで荷重した時の両手のアーチ機能を視診で確認します。

🔴POINT🔴

手のアーチ機能が良好な場合▶︎荷重位においても横アーチが保たれる

手のアーチ機能が不良な場合▶︎手背が潰れるような形状をとる

次に評価したい方の手に荷重をかけ、手の真上に肩関節がくるようにセッティングします。

🔴POINT🔴

肩甲帯に前後左右から抵抗をかけ、できるだけ動かない様に指示する

外乱を与えた際の安定性や反応を観察

手のアーチ機能が不良な場合▶︎抵抗に対して上肢・体幹の動揺が大きくなる

このように末梢(手)の機能が落ちると中枢(肩甲帯)に影響与えることがこの評価から確認できるかと思います。

アプローチ

横アーチ形成モビライゼーション

横アーチ機能改善方法としては、いきなり対立のエクササイズを行うのではなく、まずは優先的にアーチ形成のための手根骨および中手骨の可動性を獲得します。

🔴POINT🔴

アーチを両サイドから押し込みkey stoneの浮き上がりを確認

可動性が悪い箇所をモビライズし、再評価

可動性が獲得でき、他動で横アーチが形成できるようになった後に対立運動のエクササイズを実施することでエクササイズの効果が最大限発揮されると考えます。対立エクササイズに関してはこの次の項目でご紹介致します。

対立機能

対立機能においては手根骨の良好なアライメント母指球小指球の機能が必要です。野球選手においては小指外転筋に機能低下を呈するケースが臨床上多く認められます。小指外転筋の機能が投球になぜ重要なのか、以下に記します。

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投球障害を足部から改善するための現場でできる距骨下関節インソールパッド編【トレーナーマニュアルvol.20】

インソールでできることは、疼痛軽減、消失、バランス能力向上、投球フォーム改善、動作改善など選手や患者さんが意識しないで変化させる事が可能なアプローチです。距骨下関節インソールのみなら、現場でも臨床でも短時間で行う事が可能 … 続きを読む

新チームで構成するトレーニングー野手のトレーニングを考える方法ー【トレーナーマニュアルvol.19】

C-I Baseballの増田稜輔です。
いつもトレーナーマニュアルをご購読頂きありがとうございます!

今月は「新チームでのトレーニング」をテーマに
CIB副代表・佐藤康氏とのともに【投手編】【野手編】の
2部編成でお伝えしていきます。

この記事では
【新チームで構成するトレーニングー野手編ー】について解説していきます。

投手のトレーニング内容については
こちらをご覧ください!!

みなさんは「新チーム発足」がいつの時期かご存知でしょうか?
野球の年間スケジュールを考えると4月に発足ではない場合がほとんどです。
「新チーム発足」はカテゴリーによって異なります。
学生野球であれば学年が上がる4月にはチームとして成熟している必要があります。

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どのカテゴリーにおいても4月が「新チーム発足」ではなく
主要としている大会後に発足します。
すなわち4月から年間スケジュールを立てるのではなく
「新チーム発足」後に年間スケジュール・トレーニングプログラムを作成する必要があります。

今回は年間スケジュールがイメージしやすい
【高校野球の新チームトレーニング】をテーマに話を進めていきます。

スクリーンショット 2021-09-27 1.09.10

高校野球では、夏の選手権大会後の7月〜8月に【新チーム発足】します。
この時期は年間スケジュールで考えると【試合期】に相当し
実践機会が多い時期となります。
新チーム発足後すぐに秋季大会や新人戦があり、トレーニングよりも
実践練習に重きが置かれる時期になります。


高校生の場合では、【新チーム発足】後すぐにトレーニングプログラムを
作成し、内容を切り替えるよりも
7〜9月の試合期の場合は、前チームから行っているプログラムを引き続き継続しパフォーマンスを維持していくことになります。

そのため、
【新チームのトレーニングプログラム】は
秋季大会終了後の10月から開始することが多いです。

今回は新チームに対する
野手のトレーニングプログラムの構成方法をお伝えしていきます。

新チームのトレーニングプログラムを考える

新チーム発足後、トレーニングプログラムの構成する前に
確認しておくべきことが何点かあります。

スクリーンショット 2021-09-27 1.52.22

チーム目標 方向性の確認

第一に考えるのが【チームの目標】がどこに設定されているかです。

チーム目標
・1回戦突破
・ベスト8
・全国大会出場
・全国優勝

それぞれのチームで目指す目標は異なると思いますが
目標がない状態ではトレーニングプログラムを構成することは出来ないです。

次に考えるのは【チームの方向性】です。
どんな野球のスタイルで目標に向かうのか?
これによっても、トレーニングプログラムを変更する必要があります。

例えば
【打ち勝つ野球】を目指すチームなら
打撃を中心にチーム作りをおこなっていくと思います。
なので、トレーニングの比率もアジリティなどのメニューよりも
短時間で筋発揮するためのパワーメニューが重き置く。

このように、目指すチーム像によっても
何を中心としてトレーニングを行っていくが変わります。

チームの目標や方向性が決定したら
【いつまでに達成するか】を考えていきます。


・チーム目標
全国大会出場
・チームの方向性
打ち勝つ野球
目標達成時期が
春の全国大会なのか?夏の全国大会なのか?
目標達成時期を明確にしていきます。

ここまでの、目標や方向性はトレーナーが決めるのでなく
チーム指導者、選手を意見交換し決定していきます。
そのため、チームとのコミュニケーションが非常に重要になってきます。

選手の能力の把握


対象となる選手・チームの現状どのくらいの能力があるかを把握していきます。今回は【野手】に特化して考えていきます。

野手のパフォーマンス要素

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野手のパフォーマンス要素は
バッティング、走塁、守備の3つです。
この3つのパフォーマンスは
筋力、パワー、スピード、アジリティ、可動性の5つの要素から構成されます。

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選手の状態を把握する方法

選手の状態を把握するには前述した5つの要素を数値化して判断していきます。
そのためには【フィジカルチェック】を行っていきます。

フィジカルチェックとは?
選手一人ひとりの各関節の可動域・柔軟性や全身の各部位の筋力を計測・評価し、それをもとにケガの予防・パフォーマンスの向上を目指すためのプログラムを構成するための方法論となるものです。

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筋力の測定

筋力の測定では主にBIG3での最大筋力を測定していきます。

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新チームで構成するトレーニング‐投手編‐【トレーナーマニュアルvol.18】

C-I Baseballの現場編を担当する佐藤康です。
今月のトレーナーマニュアル現場編では
「新チームでのトレーニング」
CIB代表・増田稜輔氏との2部編成でお伝えしていきます。

私の前回のnote(8月配信)では「夏休み時期のトレーニングプログラム」と題し、大会期間までの限られた時間でどのような関りをしていくのかについてお伝えしてきました。

9月のこの時期は中学・高校生では
新人戦が開催されることが多いのではないでしょうか。

また、新人戦敗退後は
・来年春まで大きな大会がない
・週末に練習試合がある
⇒大会出場メンバー以外の選手も試合に出る機会が増える

など、多くの選手が実践機会が増えていく時期であると思います。

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そのため、実践機会が増える
+来年春・夏までのカラダをつくることが求められてきます。

今回、私は投手編として内容をまとめていきます。

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新チームで考えるピリオダイゼーション

はじめに、トレーニングの実際の方法を解説していく前に、トレーニングを構成する計画についてまとめていきます。

|ピリオダイゼーション
スポーツ選手が、1年のうちで最も重要な試合に、コンディションをピークの状態で望むために、トレーニングの内容を変化させること

上記にあるように、ピリオダイゼーションとは最も重要となる試合(ピーク)に対して競技の日程を見据えたトレーニングのプログラム方法をいいます。

つまり、年間を一つの周期として、サイクルの中で期分けをしていきます。
主に学生野球では、図のように4~10月が大会期・試合期であり、12月~2月はトレーニングを強化していく期間、その他間の期間は移行期となります。

画像2

これらをもとに現在の期間と目標設定をしていきます。

まず、年間のゴールを
最後の夏季大会(中学であれば総体、高校であれば選手権大会)とします。

その中で、
「現在がどの期間にあたるのか。」
「年間の目指す目標に対して現在の位置に何を目指していくのか」
について考えていきます。

詳細はコチラ

https://note.com/embed/notes/nb0338ee05cf5

では9月はどのような期間でしょうか。
9月は7,8月から新チームが開始し、大会までの短期間のため、実践練習が中心となり、トレーニングに割ける時間は多くなく、コンディションメニューが中心であるところが多いかと思います。

画像3

そのため、教科書的には1年間を1周期としてサイクルを構成していきますが、実際の関わりでは年間にある3大会をそれぞれピークとして考えています。

これらは大会前の状況がすべて異なり、
その時期・状況に応じた対応が求められます。

<中・高生の学生野球の例>
夏季大会で最上級生が卒業し、下級生のチームとなる初の大会
→秋季・新人大会
冬の準備期を経て、カラダの大きさにも変化のある
→春季の大会
年間の集大成である
→夏季大会・総体

中学野球のためのピーキング

▶高校野球のためのピーキング

▶大学野球のためのピーキング

トレーニングを組み立てる前に

先述したピリオダイゼーションやトレーニングの具体的なメニューを考えていく上で、「目標設定」がポイントになります。

なにを目標にするか?
目指す投手像とは?

これを新チームのテーマとすることで
具体的なメニューの指針となります。

チームの大会での勝利を目指す上で、
勝てる投手にするためには、何が必要でしょうか?

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上記の他、スタミナや球速、コントロール(制球力)などの
要素が挙がってくると思います。

では、これらのパフォーマンスに
必要な要素はなにが挙げられるでしょうか?

トレーニングを構成する体力特性

トレーニングを計画する前に、
その選手・チームが
「どんな要素が弱いのか」
「トレーニングにはどんな要素があるのか」

を整理しておく必要があります。

ここが抜けてしまうと、感覚的なメニュー計画・構成になってしまい、自分に合ったトレーニングかどうかの判定がわからなくなってしまいます。

また、ありふれたトレーニング内容の中からなにをピックアップすべきか?トレーニングの本質を理解せずに、「プロ選手が最近やっているから、取り入れている」などということも生まれてしまい、実際その選手にとって過負荷となり、ケガをきたす可能性があるかもしれません。

そのため、まず基礎的なところから整理します。

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投球障害肩の評価-肩甲上腕関節編-【トレーナーマニュアルvol.17】

C-I Baseballの小林弘幸です。

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元NPBチームドクターのスポーツDrと一緒にエコーを用いて、
選手の病態を理解し障害の原因追及、症状改善を大切にしています。

投球障害肩の原因は多岐にわたり、非常に難しいです。

しかし、皆様に少しでも自分の考えを共有していただき、
ご意見をいただきながら、現場の選手に少しでも還元できたら
うれしく思います!

CIB第2期で小林が担当する、臨床編の記事(予定)です↓↓↓

①投球障害肩の問診と動作観察
②投球障害肩の評価 -肩甲胸郭関節-
③投球障害肩の評価 -肩甲上腕関節-(今回)
④投球障害肩の評価 -その他の部位-
⑤投球障害肩の治療 -徒手療法-
⑥投球障害肩の治療 -運動療法-

これらの記事を通じて、
私の臨床での考え方、思考過程を共有させていただき、
様々なご意見をいただけたらと思います!

投球障害肩の評価 -肩甲上腕関節-

はじめに

投球障害肩において、評価は非常に重要です。

投球障害肩に向き合うときの考え方や概論については前回のnoteにて記載しました。

また、治療ターゲットにするのを
肩甲胸郭関節にするのか、肩甲上腕関節にするのかの
判別についてと、
肩甲胸郭関節の評価について記載しました。

今回は、
前回の3方向SATで肩甲胸郭関節の問題点が少ないと考えられた選手に対して、どのような評価をしていくのかを
記載していきたいと思います。

図3

3方向SATを簡単に述べると、
3方向SATを用いて、痛みが軽減すれば、
肩甲胸郭関節の動きが問題。

痛みが変化なかったり、増加したら
肩甲上腕関節の動きが問題と考えています。

図2

野球選手は、普通の肩関節痛や肩関節周囲炎の患者とは異なり、
はっきりとした可動域制限や筋力低下が見受けられることが少ないです。

その制限を見逃さずに評価していくことが大切だと思います。

評価の手順

肩甲上腕関節(GH)の評価の手順は、
・ROM-t
・MMT
を評価していきます。

もちろん、
GHの可動域制限には過負荷となる問題もありますが、
まずは今のGHの状態を確認することが大切です。

GH評価の手順は下記に示します。

【座位ROM-t】
・肩関節自動屈曲(全体像把握)
・肩関節自動外転(全体像把握)
・肩関節他動屈曲(全体像把握)
・肩関節他動外転(全体像把握)
・LHT-test(肘屈曲位で外転。三頭筋長頭腱の制限あるか)
・結滞(棘下筋)

【座位MMT】
・Full can test(棘上筋)
・Empty can test(棘上・棘下筋)
・ISP test(棘下筋)
・Belly press test(肩甲下筋上部)
・Bear hug test(肩甲下筋下部)
・Hornblower test(小円筋)
※出力低下や疼痛があるような症例に関しては、肩甲骨固定下でのMMTを再評価
・Zero外旋、Zeroリリース(統合評価)

【背臥位ROM-t】
・1/2内旋(GH後方筋全体)
・1/2外旋(GH前方筋全体)
・1st 外旋(GH前上方:CHL)
・GH 内転(棘上筋)
・2nd 内旋(GH後下方:棘下筋)
・2nd 外旋(GH前下方:肩甲下筋)
・3rd 内旋(小円筋)
・3rd 外旋(大円筋)
・CAT(GH下方)
・HFT(GH後方)

ほぼルーティンで上記の評価を一通り行い、
GH機能の精査をしていきます。

比較対象は、左右の肩で行います。

毎回同じ評価を行うことで、選手同士の比較もできますし、
選手の経過も把握しやすくなると思います。

図4

それでは、これから
上記評価の一つずつを実際の評価動画とともに解説していこうと思います。

評価の解説

まずは、座位での評価をします。

座位ROM-t

立位で行うと、下肢の影響が含まれてしまうので、
まずは座位で下肢の影響を除いた状態で評価します。

・肩関節自動屈曲(全体像把握)
・肩関節自動外転(全体像把握)
・肩関節他動屈曲(全体像把握)
・肩関節他動外転(全体像把握)
・LHT-test(肘屈曲位で外転。三頭筋長頭腱の制限あるか)
・結滞(棘下筋)

全体像把握

まず、肩関節全体での屈曲や外転動作を見ていきます。

Early Cockingでの疼痛、主に上方の疼痛に関しては、
外転制限があることをよく経験します。

図5

Activeでの動きは自分で動かせる能力、
Passiveでの動きは関節の機能。

Activeでは動かせるが、Passiveでは制限があるという選手も
多くいます。そのような症例は肩甲帯や他の部位で代償していると考えられます。

また、
その際の肩甲骨の動きを評価します。

肩甲骨運動評価

肩甲骨の動きの左右差は特に最終域で見られることが多いです。

最後まで、手で触りながら確認します。

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チームトレーナーの活動(中学野球)【トレーナーマニュアルvol.16】

C-I Baseballスタッフの高橋塁です。

前回は『チームトレーナー活動:学童野球』についてお話しましたが、今回は、私が実際に現在活動している『チームトレーナー活動:中学野球』についてお伝えしていきます。

まずは、私の自己紹介から。

高橋塁プロフ写真①

過去、私は香川オリーブガイナーズ(独立リーグ)、横浜DeNAベイスターズ(NPB)の専属トレーナーの経験もあり、現在は、学童野球にはじまり、中学硬式、高校野球、大学野球のチームトレーナーを務めています。

このような経験から各年代ごとのトレーナーとしての関わり方について、シリーズとして紹介していきたいと思います。

 私がどの年代の選手に対して、プロ野球選手と接してきたように、各年代のアマチュア選手にも同じように接しているわけでもありませんし、各年代でいろいろとアプローチを変えていっています。

 今回は中学生を対象としたトレーナーとしての関わり方を紹介していきたいと思います。

前回は、学童野球(小学生)を対象としてトレーナー活動についてお話しました。

中学野球に対してアプローチしていく前に、年間の『ピリオダイゼーション』については、トレーナーの立場として監督、コーチと常に協議していく必要性があります。

中学生の『ピリオダイゼーション』については、こちらをご参照ください。

前回もお伝えしましたが、未成年世代へのアプローチとして、まず、理解しておくべきことは

『スキャンモンの発達曲線』

です。

スキャンモン

『スキャンモンの発達曲線』を念頭に、未成年世代には、その年代に適したトレーニングデザインを行っていくことが重要となります。

ゴールデンエイジ理論

それぞれの期間に伸ばすべき身体能力を示したものです。

『ゴールデンエイジ』は小学5~6年(10~12歳)と言われていますが、中学生年代は『ポストゴールデンエイジ』と言われています。

ゴールデンエイジ理論

ポストゴールデンエイジ(12~14歳)

技術のレベルを維持し、さらに磨きをかける時期になります。

神経系がほぼ完成し、技術習得の速度が鈍るので、これまで習得した技術のレベル維持と質的向上を図ります。

思考力や精神力、集中力を高め、考えた動作を促す。

復習にはなりますが、『プレゴールデンエイジ』と『ゴールデンエイジ』については下記を参照ください。

プレゴールデンエイジ(5~8歳)

動作の基本と感覚を身につける時期。

脳や神経の発達が著しい時期。バランスや調整力、動体視力なども養われる。

多種多様な遊びやスポーツによって、さまざまな動作を経験させることがよい。

ゴールデンエイジ(9~11歳)


運動の技術とセンスを習得する時期。

運動能力が最も大きく伸びる時期。

基本動作の習得や基礎体力の向上に適している。神経系が発達しているので動作の習得が早い。

ウォームアップ等の中に『アジリティトレーニング』等を積極的に導入してみてください。

中学生にトレーニングで求めるフィジカル要素

『スキャンモンの曲線』はじめ諸々の理論を理解しながら、成長期の選手にはカラダの成長の特徴に応じたトレーニングデザインが求められます。

コーディネーション理論

12歳ころまで(小学校6年生)に神経系の発達が完了するといわれています。

12歳以降は「筋の発達」・「心肺持久力」の能力向上にターゲットを当てたフィジカルメニューが必要となってきます。

12歳までに『神経系の発達』にターゲットを置いてトレーニングが行われてきたと仮定して、『筋の発達』・『心肺持久力』のアプローチについて考えていきます。

ただ、強い負荷を与えた筋力トレーニングをしてしまうと骨成長の発達の著しい成長期に骨格の成長を妨げてしまう恐れがありますので、注意が必要です。


学童期、中学生の時期は、生理学的にも筋力トレーニングが効果を表さない傾向があり、成長を促すホルモンが筋力を増やすよりも身長を伸ばす方向に使われやすい傾向があると言われています。

つまり、小中学生には必要以上に筋肉をつけさせることなく、高校生になって骨格が出来上がった体に筋肉をつけさせることが望ましいといえます。

ただ、成長の度合いもありますが、高校生に向けて、中学3年生程度になれば、自重トレーニング程度は検討していきます。

特に、中学生世代は

・骨成長を阻害しないための筋の柔軟性
・動きを調整するコーディネーション能力
・体力の基盤となる心肺持久力


上記、3点についてアプローチしていきます。

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