パワーハウス構成筋のエクササイズ‐Part2【トレーナーマニュアルvol.212】

C−I Baseball2期生の戸高です。
今回の配信はサポートメンバーシリーズとなります。

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私が配信する内容としては「ピラティス【pilates】」というメソッドが1つのツールとして投球障害の治療、予防、パフォーマンスの向上にどう活かしていくかに焦点をあてて、配信させていただいております!

はじめに

前回の記事ではパワーハウス構成筋の横隔膜と腹横筋についてエクササイズを紹介しました。
今回は多裂筋と骨盤底筋群について紹介したいと思います。

(前回の復習)腹腔内圧とは

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腹腔内圧とは、横隔膜の下で主に消化器などの内臓が集まる空間でその内部にかかる圧力のことをいいます。
姿勢をキープするためにはこの腹腔内圧を意識することは重要だと考えられます。

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このラインより上のエリアが無料で表示されます。

よく、腹圧といいますが、それはなにか、どこのことを指すのかというと、
横隔膜の下で主に消化器などの内臓が集まる空間でその内部にかかる圧力のことを腹腔内圧といいます。よくお腹の中の圧力と言われていますが、正確にはこのようになります。

腹腔内圧を構成している筋肉には
・横隔膜【diaphragm】
・骨盤底筋群【pelvic floor muscles】
・腹横筋【transversus abdominis】
・多裂筋【multifidus muscle】

今回はこれらの筋肉の解剖とエクササイズを紹介したいと思います。

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腹圧が高まる流れとしては、吸気により横隔膜が下降することで腹横筋、骨盤底筋群の遠心性収縮が起こり、腹圧が上昇し、上昇することで腰椎に伸展トルクがかかり脊柱の剛性が高まります。
よって脊柱の安定性が獲得されるということです。

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投球の『変化量』について【トレーナーマニュアルvol.211】

さて、私の直近の担当記事は
投手の『球速』、投球の『回転数』、投球の『回転軸・回転効率』についてでした。

※過去の記事は下記を参照してください。

https://c-ibaseball.com/trainer-manual-vol199

今回は、投球の『変化量』についてお話します。

現在、野球の現場では通常のスピードガンだけではなく、ラプソードやトラックマン等のトラッキングシステムが浸透してきています。

まだ、トラッキングシステムがどのようなものか知りたい方は下記HPをご参考ください。

ラプソードHP

野球 – Rapsodo Japan (ラプソード)ラプソードの野球向け商品は、MLB全30球団、NPB10球団を始めとし、​国内でも社会人、大学、高校、中学硬式とアマチュアrapsodo.co.jp

トラックマンHP

トラックマン野球 – 練習用即座に得られるフィードバックと、業界をリードする精度の高いデータを活用することで、日々の練習をより効率的かつ効果的に最適化www.trackman.com

私自身も2022年からラプソードを所有し、500人以上のピッチングデータを測定しています。

そこで、球速以外にも測定可能な項目があり、今回は、『変化量』についてより掘り下げていきます。

野球の現場に関わる方々に投球の『変化量』についての理解をより深めていただきたいと思います。

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【2025年7月版】 AIを活用した投球動作解析の現在地【トレーナーマニュアルvol.210】

C-I Baseball 3期生メンバーの三好航平です.

いつもC-I Baseball「トレーナーマガジン」をご購読いただきありがとうございます.

さて,本日の私の担当記事ですが,タイトルにもある通り「AIを活用した投球動作解析の現在地」について2025年7月現在の情報を整理してお伝えできればと思っています.

1.はじめに

1.1 野球×AI革命の流れ

従来,投球動作を詳細に可視化するには数千万円弱のマーカー式モーションキャプチャーやハイスピードカメラが必要でした.ところが近年はAIの進化により,スマートフォンやクラウドAIさえあれば,実験室並みの3D解析が臨床やグラウンドでできる時代に突入しています.また,テレビ中継の映像から動作解析が可能になる技術が生まれるなど,「映像・動画から3次元動作解析」という流れは加速しているように感じます.

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医療機関から野球現場へ向かう理学療法士が知っておくべきこと-臨床と現場のギャップ‐【トレーナーマニュアルvol.209】

いつもC-I Baseball「トレーナーマガジン」をご購読いただき、誠にありがとうございます。

C-I Baseballは選手も、理学療法士も安心して活躍できるグラウンドを整備する。ことをMissionに掲げています。
野球界と理学療法士を繋ぐ円陣になるために理学療法士の輪を広げ活動するコミュニティです。

C-I Baseball -野球の未来を現場から変えていく-c-ibaseball.com


今回のnoteでは、私が医療機関から野球現場に出たときに感じたギャップや苦労した経験を中心にお伝えしていきます。
これから野球現場に関わっていきたいと考えている理学療法士の方、またはすでに医療機関で選手を診ているものの、現場での経験が少ない方へぜひ読んで頂き内容です。

■はじめに


私は、専門学校卒業後、都内の整形外科クリニックに就職しました。 当時、都内では有名なクリニックであり、1日の来院数も非常に多く、技術力の高さでも理学療法士界隈で注目されていました。私も「臨床力・技術力を磨きたい」と思い、入職を決めました。

日々の臨床の中では、スポーツ選手を担当することも多く、特に野球選手の怪我に触れる機会がありました。しかし、私が関わる選手たちは、すでに状態が悪化していたり、翌日の試合に出るのは難しいような状態であることがほとんどでした。

「ここまで悪くなる前に、もっとできることがあったのではないか?」そんな思いが出てきました。
私には野球をしている弟たちがいて、彼らも同様に怪我をする可能性があります。彼らが怪我をせずに野球を思う存分やってほしいと思い、4年間勤めた整形外科を辞めて野球現場に出ることを決意しました。縁あって理学療法士5年目からは「大学野球部のトレーナー」として勤務することになりました。

■野球現場に出た感じたギャップ


整形外科クリニック時代の4年間では、小学生から大学生までの野球選手の投球障害や腰痛、膝・股関節の痛み、捻挫など、さまざまな症状に対応してきました。
特に投球障害肩、肘については症例も多く経験し様々な勉強会へ参加、著名な先生の臨床見学に研修を自分のできる限りの勉強を積んでいました。
投球障害なら診れる、治せると自信満々で出た、大学野球現場でしたが、その自信は早々に崩れ落ちました。
いざ大学野球の現場に出てみると、そこには医療機関とは全く異なる”文化”や”スピード感”が存在していました。グラウンド内で評価、外傷への対応すぐに状態を見極め、プレーを継続できるかどうかを即座に判断しなければならない。何十人もの選手を一度にトレーニング。医療機関では経験しなかったことがたくさんありました。
そして、
経験が少ないトレーナーは指導者の方や選手からの信頼も薄いです。なにも期待されず、頼られずの1年は苦しかった記憶が強いです。
念願の野球現場での仕事を素直に楽しめず、ただ1日が終わっていく感覚がありました。

ここからは、私が1年間苦しんだ理由をお伝えしていきます。

■選手や指導者とのコミュニケーション

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現場に出て、最初につまずいたのが「選手や指導者とのコミュニケーション」でした。

クリニックでは基本的に1対1のやり取りで、選手は治療を受けに来ている患者さんで信頼関係も比較的築きやすい環境でした。

しかし、野球現場では状況が大きく異なります。

チームに入ってすぐのころは、”知らないトレーナー”がいる。という目で見られていました。選手も私になにを伝えるべきなのか、どんなことができるトレーナーなのかわからなかったと思います。
選手からも話かけられず、自分から話にいっても反応が薄い状況でした。
今考えれば、知らないトレーナーに急に「今の肩の状況どう?どのあたりが痛い?」と聞かれても急になんだ・・・と思いますよね。


指導者の方とのコミュニケーションも苦労しました。
監督やコーチはチーム全体を見ながら「試合でどの選手を起用するか」という視点で動いていて、医学的な理屈だけでは納得してもらえない場面も多々あります。

私が現場に入って間もない頃、ある選手の肩の状態を見て「今日はスローイングを控えた方がいい」と判断し、そのままコーチに伝えました。しかし、選手は試合に出たく無理ありキャッチボールやノックに入っていました。
当然コーチからは「使えないのか?今日投げないって聞いてたけど?、でもノックできているよね?」と不信感を与えてしまったのです。

その時に痛感したのは、医学的な判断と現場の判断にはギャップがあるということ。そして、それを埋めるのが“コミュニケーション力”だということです。

指導者の目線(練習計画、チーム事情)
選手の目線(試合への想い、プレーを続けたい気持ち)
トレーナーの目線(安全性、再発予防)

この3者の視点を整理したうえで、「どう伝えるか」「誰とどのタイミングで共有するか」が非常に重要になります。

報連相をこまめに行うこと。 現場の空気を読むこと。 指導者の意図を理解する努力をすること。 そして、選手の声をしっかり聞き取ること。

これらを一つずつ積み重ねることで、ようやく信頼を得られるようになり、「あいつの言うことなら聞こう」と思ってもらえるようになりました。

コミュニケーションは技術です。現場では、医学知識と同じくらい、もしかするとそれ以上に「信頼される話し方・立ち振る舞い」が重要になるのだと、強く実感しています。


■タイムスケジュール

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現場に出てまず感じたのは、1日の流れや“時間の使い方”が、病院勤務時代とまったく違うということでした。

整形外科クリニックに勤めていた頃の1日は、以下のようなタイムスケジュールでした。

〈整形外科クリニック〉

8:00 出勤
9:30〜13:30 午前リハビリ業務
13:30〜15:30 休憩
15:30〜19:30 午後リハビリ業務
19:30以降 カルテ記入、勉強会、技術練習など
22:00前後 帰宅

1日に20〜40分のリハビリをじっくりと1人の患者さんに提供できる環境で、業務後は自分の技術力を高める時間にも充てていました。

一方、野球現場では時間の流れがまるで違いました。

〈大学野球部〉

5:00前 起床(自宅からグラウンドまで1時間以上)
6:30 現場入り
7:00〜9:30 朝練対応
9:30〜11:00 上級生の自主トレーニングサポート
11:00〜14:00 上級生のケア対応
14:00〜15:00 休憩
15:00〜18:00 下級生トレーニング、練習対応
18:00〜20:00 下級生ケア
20:00頃 帰宅

勤務時間だけを見れば、整形外科時代と大きく変わったわけではありません。
ただ、“生活リズムが大きく変化した”ということが身体的にかなりキツかった。正直、最初の数ヶ月は身体が全然ついていきませんでした。

さらに、1日を通して選手対応が何回転もあるため、同じトレーニングメニューを1日3回繰り返すこともありました。コロナ禍では少人数制だったため、同じ内容を午前・午後・夕方に分けて3回行うことが通例で、その度に同じ熱量を保ちながら指導する必要がありました。

こうした“繰り返し”もまた、医療機関時代にはなかった負荷のひとつです。

そしてもう一つ大きかったのが、“1人にかけられる時間の違い”です。

クリニックでは、1人の患者さんに20〜40分、しっかり時間をかけて対応することができました。しかし野球現場ではそうはいきません。
練習前後のわずかな時間に、選手が立て続けに来る。
ベッドでは20分以内、それも待たせてしまえば次の選手に対応できなくなる。
グラウンド上での状態確認や判断は、数分以内に決断しなければいけないこともあります。

つまり、野球現場では「瞬時に状態を見抜き、適切な対応を取る」ことが求められる環境です。

私自身、肩や肘の障害に関しては、クリニック時代からそれなりの自信を持っていました。
でも、現場ではその技術をフルに活かす「時間」すらない場面が多い。
そんなときに試されるのは、対応の引き出しの多さです。

徒手だけに頼るのではなく、エクササイズ、テーピング、物理療法
時間が限られていても、今この瞬間に選手のために“何をすべきか”を選び抜く判断力と準備力が必要だと痛感しました。

特にエクササイズや物理療法の知識は野球現場では”必ず必要”になります!

■リハビリ・トレーニングの強度差

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熱中症予防について【トレーナーマニュアルvol.208】

はじめに

すでに梅雨入りもかなり湿度が高くなってきた今日この頃ですが、間もなく高校野球では夏の甲子園に向けた各都道府県での県予選が始まろうとしています(一部の地域を除いて)。

毎年この時期に必ず話題となっているのが「熱中症」です。
せっかく3年間頑張ってきたのに最後の大会で熱中症となり、満足いかないプレーしかできず引退してしまうのは本人もそうですが、サポートしている側としても悲しいですよね。

今年の6月より熱中症対策の強化について法律が改訂されました。

1 熱中症を生ずるおそれのある作業()を行う際に、
 ①「熱中症の自覚症状がある作業者」
 ②「熱中症のおそれがある作業者を見つけた者」
がその旨を報告するための体制(連絡先や担当者)を事業場ごとにあらかじめ定め、関係作業者に対して周知すること

2 熱中症を生ずるおそれのある作業()を行う際に、
 ①作業からの離脱
 ②身体の冷却
 ③必要に応じて医師の診察又は処置を受けさせること
 ④事業場における緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先及び所在地等
など、熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置に関する内容や実施手順を事業場ごとにあらかじめ定め、関係作業者に対して周知すること

※ WBGT(湿球黒球温度)28度又は気温31度以上の作業場において行われる作業で、継続して1時間以上又は1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれるもの

厚生労働省富山労働局HPより引用

このように今回の改訂にあたり対象となるのは、屋外での作業が見込まれるものです。
野球現場についても同程度であると考えられ、対策をしていく必要があります。
熱中症については年々関心が高くなり、熱中症に関する事柄についてはもうすでに社会通念であるという時代に突入し始めていると考えた方がいいと思います。
そのため「知らなかった」は通用しなくなってくると思います。

今回はその熱中症について紹介していきたいと思います。

熱中症とは?

「熱中症」は、高温多湿な環境下において、体内の水分及び塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、循環調節や体温調節などの体内の重要な調整機能が破綻するなどして発症する障害の総称である。

厚生労働省 職場のあんぜんサイト

熱中症には以下の4種類があると言われています。

①熱失神
皮膚血管の拡張と下肢への血液貯留のために血圧が低下、脳血流が減少して起こるもので、めまいや失神(一過性の意識消失)などの症状がみられます。

②熱けいれん
大量に汗をかき、水だけ(あるいは塩分の少ない水)を補給して血液中の塩分濃度が低下したときに起こるもので、痛みをともなう筋けいれん(こむら返りのような状態)がみられます。

③熱疲労
発汗による脱水と皮膚血管の拡張による循環不全の状態であり、脱力感、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気などの症状がみられます。

④熱射病
過度に体温が上昇(40°C以上)して脳機能に異常をきたした状態です。体温調節も働かなくなります。種々の程度の意識障害がみられ、応答が鈍い、言動がおかしいといった状態から進行すると昏睡状態になります。高体温が持続すると脳だけでなく、肝臓、腎臓、肺、心臓などの多臓器障害を併発し、死亡率が高くなります。

JSPO スポーツ活動中の熱中症ガイドブック

①が最も軽症で④が最も重症とされています。
①②は現場で対応し、③④は医療機関への受診が望ましいとされています。

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日本救急医学会熱中症分類2015(大塚製薬HPより)

熱中症の選手が目の前にいる場合、まずは意識障害を認めるか否かがわかりやすい判断基準になるのではないでしょうか。
少なくとも意識障害を認めない(JCS=0)場合はⅠ度に留まるため、現場での応急処置となります。

しかしよくよく選手や指導者に話を聞いてみると、

選手or指導者「熱中症にはなったことありません!でも夏場に立ちくらみを感じたことはあります。」
トレーナー「それ熱中症だから!!!」

みたいな会話はよくあります。
つまり熱中症についてこれだけ話題となり気をかけて対策を練るようにはなってきているものの、まだまだ熱中症についての理解は不十分であると言わざるを得ません。

熱中症のメカニズム

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投球障害肩に潜む「不安定性」を見抜く— 評価とリハビリテーションの視点から【トレーナーマニュアルvol.207】

はじめに

投球動作は、肩関節にとって非常に高い可動域と爆発的なスピード、そして再現性が求められる特殊な運動です。

肩の痛みを訴える野球選手の多くが、「腱板炎」「関節唇損傷」「インピンジメント」といった明確な構造的病変がなくとも、違和感や痛みを訴えるケースがあります。

こうした背景には、
“肩の機能的な不安定性”が隠れている場合が少なくありません。

再現性がはっきりしないような症状。このような症状には不安定性が隠れていることが多いと考えています。

病態と症状が同じにならないということは以前から報告されています。

病態がある方といって、症状があるとは限らないのです。

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明らかな既往障害のない14名の投手の非投球側含めた28肩中、79%に関節唇の異常所見が認められた。

※Miniaci A, et al.: Magnetic Resonance Imaging of the Shoulder in Asymptomatic Professional Baseball Pitchers. Am J Sports Med, 30(1): 66-73, 2002

本稿では、投球障害肩の「不安定性」に着目し、その評価と治療アプローチをエビデンスベースで記載、整理していきます。

「肩の不安定性」とは何か?

肩関節の不安定性とは、肩甲骨の関節窩に対して上腕骨頭の位置保持がうまくいかず、動作中に「ズレる」「抜けそうになる」といった感覚が生じる状態を指します。

もしくは自覚症状が全くないものの、肩関節の不安定性があることから、肩関節内で骨や軟部組織がぶつかりメカニカルストレスが生じてしまうことで肩関節内の症状を誘発してしまうことがあります。

いわゆる、肩甲上腕関節の求心位が逸脱してしまうということです。

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外傷による明確な脱臼や関節唇損傷を伴うケースとは異なり、投球動作の繰り返しで徐々に関節包や靱帯が伸び、“マイクロインスタビリティ(micro instability)”という軽度な不安定性が生じるパターンが多く見られます。これは、特にコッキング期〜加速期にかけての最大外旋位において、肩関節前方に過剰な剪断力が加わることによって誘発されます。

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マイクロインスタビリティを起因とした病態として、関節内インピンジメントである、”後上方インピンジメント(PSI)”が挙げられます。

PSIの病態として、上腕骨頭が前方へ変位してしまい、後方の関節部分で衝突してしまい、後方の軟部組織を痛めてしまうという病態に繋がります。

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※ Walch G.,et al.: Impingement of the deep surface of the supraspinatus tendon on the posterosuperior glenoid rim: An arthroscopic study. J Shoulder Elbow Surg, 1992; 1: 238-245. 参考に引用作図

一見、肩の可動域は広く、筋力も保たれているように見えるものの、「投げると痛い」「肩が抜けそう」といった訴えが出るのが
肩の不安定を起因として病態の特徴です。

野球選手特有の肩の”緩さ”とは?

オーバーヘッド選手、特に野球選手における肩の緩さは数多く報告されています。

投球動作における肩関節のmicro instability(微細不安定性)は、主に外転・外旋の反復ストレスにより前関節包や靭帯が伸張されることで生じる後天的な現象です。

この理論はJobeらによって提唱され、特に野球選手のようなオーバーヘッドアスリートで顕著に観察されます。

以下では、このメカニズムを解剖学的・生物力学的観点から整理し、関連研究を基に補足します。

投球アスリートにおける前方型肩関節不安定性は、治療上の大きな課題である。

※Jobe FW, et al.: Am J Sports Med. 1991

前方の亜脱臼は、前方の弛緩性が多く報告されていますが、
そのほとんどが、2nd肢位での”外旋”の可動域増大のことを指しています。
緩さ=外旋ROMということです。
緩さ≠関節の前後移動量ではないということです。

外旋可動域増加と前方の関節包の伸張が関与。

※Grossman MG, et al.: J Bone Joint Surg Am. 2005
※Warner JJ, et al.: Am J Sports Med. 1990
※Mihata T, et al.: Am J Sports Med. 2004

野球選手における外旋可動域の増加( 5~12°増加)

※Crockett HC, et al.: Am J Sports Med. 2002
※Borsa PA, et al.: Am J Sports Med. 2005
※Borsa PA, et al.: Med Sci Sports Exerc. 2006
※Brown LP, et al.: Am J Sports Med 1988

これは外旋ROMの増大は後捻角の問題もあります。
野球選手は上腕骨頭の後捻角が大きく、外旋可動域の相対的に肩関節外旋角度が大きくなります。

野球選手において上腕骨頭後捻角は右投手左投手関係なく、右側の方が後捻角が大きい

※Takenaga T, et al.: J Shoulder Elbow Surg. 2017 Dec;26(12):2187-2192.

では、野球選手における外旋可動域の増大は、何が原因で生じているのでしょうか?

野球選手における外旋可動域拡大の要因

野球選手における肩関節の外旋可動域拡大の要因は、主に骨性の適応(上腕骨の後捻増加)と軟部組織の変化に分類され、これらが相互に影響し合うとされています。

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投球動作における鼠径部痛へのアプローチ -Groin pain syndrome  インピンジメント編-【トレーナーマニュアルvol.206】

こんにちは!C-I Baseball サポートメンバーの理学療法士・久我友也です。
このたびより、トレーナーマニュアルとしてnoteに定期投稿をさせていただくことになりました。

私は整形外科クリニックに勤務しており、医療的な視点から、野球選手の身体の悩みに対する評価や治療のヒントをわかりやすくお伝えしていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

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本記事はGroin Pain Syndromeシリーズの最終章です!

これまで以下の3本の記事で、Groin Pain Syndrome(鼠径部痛症候群)について解説してきました。

①「Groin pain syndrome 総論」
https://c-ibaseball.com/trainer-manual-vol167/
②「Groin pain syndrom 内転筋編」
https://c-ibaseball.com/trainer-manual-vol180/
③「Groin pain syndrome 鼠径靭帯周囲・腹筋編」
https://c-ibaseball.com/trainer-manual-vol194/

そして今回はシリーズ最終章、④「インピンジメント編」です。

はじめに

本シリーズでは、投球動作中に発生する鼠径部痛をテーマに、臨床で再現しやすい評価法と実践的アプローチを紹介してきました。

今回のテーマは「股関節屈曲時の前方インピンジメント」。
投球動作で言えば、フォロースルー期に出現しやすく、特に踏み込み脚側に起こる前方痛がその特徴です。

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股関節前方インピンジメントの病態

股関節の前方に痛みを訴える場合、以下のような3つの病態が主に想定されます。

  • FAI(Femoroacetabular Impingement)/大腿骨寛骨臼インピンジメント
  • AIIS Impingement/下前腸骨棘インピンジメント
  • Iliopsoas Impingement/腸腰筋インピンジメント

これらはいずれも、股関節の屈曲+内転+内旋によって、大腿骨頚部と臼蓋の間で周囲組織がインピンジメントされることで生じます。

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評価の基本:Anterior impingement test

典型的な誘発テストとして、以下のような検査が有用です

  • Anterior Impingement Test
    *FADIRテスト(股関節屈曲・内転・内旋)とも呼ばれる
    股関節を屈曲に加えて、内転・内旋方向に動かすことにより、インピンジメント症状を誘発するテストです。
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逆に屈曲時に外転・外旋方向へ逃す(頚部軸回旋)ことで疼痛が大きく生じずに股関節屈曲が行えることも特徴です。

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なぜ、屈曲時に前方が痛いのか?

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金具スパイクについて 〜野球に関わる方に知ってもらいたいこと〜【トレーナーマニュアルvol.205】

■はじめに


今回のnoteは選手だけでなく野球に関わる方々にも読んでいただきたいと思い作成しました。

私が言いたいことは、

スパイクでパフォーマンスは確実に変わります。

中学生以上から使用可能となる金具スパイクの特徴はもちろん金具です。
スパイクに限らず、履き物はサイズやメーカー、デザインなどで購入する機会が多いと思います。
そして購入するのはスポーツ用品店に陳列されているものから選んでいる方がほとんどだと思います。

先にお伝えしたいことは、スパイク購入を決めたら、メーカーカタログもしくはインターネットで検索してください。

私の過去の記事にも金具の種類を記載してありますのでそちらもご覧ください↓↓↓

内容

①足元からパフォーマンスを変える
②値段と履き心地で購入しやすい
③試合と練習でスパイクを分ける
④足・動きに合わないスパイク
⑤金具で選ぶと動きが変わる

足元からパフォーマンスを変える

●足部は地面に接している唯一の部位
●足部の構造・機能でパフォーマンスは変わる

私たちが立位姿勢をとっている時に地面に接しているのは『足』です。
足の構造が扁平足のようにアーチが崩れてしまうと運動連鎖により膝、股関節など全身に波及し不良姿勢、歩行の崩れが生じてしまいます。

足の機能を高めるには、足部トレーニングはもちろん必要です。
シューズの履き方でも足部機能は変わります。

値段と履き心地で購入しやすい

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履き物はサイズやメーカー、デザインなどで購入する機会が多いと思います。そして購入するのはスポーツ用品店に陳列されているものから選んでいる方がほとんどだと思います。

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購入する際に何を重視するのか?

購入方法

サイズは店頭に置いてあるものを試し履きさせてもらい、その金具が自分の動きに合うものならその場で購入した方がいいと思います。
しかし、動きに合わないものならサイズだけ確かめてお店にあるカタログで注文可能か店員さんに確認する必要があります。

スポーツ用品店に置いてあるものはほんの一部です。ですから購入前にインターネットで金具スパイクを調べてみることをお勧めします。

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試合と練習でスパイクを分ける

●練習頻度が多いとスパイクは傷みやすい(たわみやすくなる)
●軽量化スパイクはアウトソールがたわみやすい
●金具が削れる(低くなる)

使用頻度

高校生の練習は週に6回で休みは1日。中学生の場合は部活もクラブチームもだいたい一週間に3〜4回ほどだと思います。
平日練習は4時間、土日は1日でウォーミングアップの時以外はスパイクを履いている時間がほとんどです。一足のスパイクを週6回履いている選手がほとんどではないでしょうか。
スパイクに限らず履き物は湿気を取り除くためにも休ませることが必要です。

2足履きにする

足元が崩れてしまっては試合でパフォーマンスを発揮することはできません。ですから、試合用スパイクと練習用スパイクを用意することをお勧めします。

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練習用スパイク

●練習用スパイクや雨の日の練習試合は安いスパイク
●試合用は自分の動きにあったスパイク
●試合用スパイクがたわんだり、金具が短くなってきたら練習用にする

足・動きに合わないスパイク

●サイズ
●履き方
●中敷が破けている
●スパイクのたわみ
●金具の削れ

サイズ

スパイクに対して足が大きければ足を締め付けることになるのでスパイクの中で足の遊びがなくなり足趾が使えないため機能は低下します。

履き方

靴の脱ぎ履きでは『紐をほどく』『踵を踏まない』この二点が大事です。
紐をほどかず、踵を踏んだり、無理やり履こうとすると靴の形が崩れてしまいます。

中敷が破けている

中敷に穴が開くとそれだけで足の構造が崩れ痛みが出現したり、パフォーマンスが低下します。

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スパイクのたわみ

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野球現場で対峙する肉離れの基礎基本【トレーナーマニュアルvol.204】

本記事では、筋損傷とは?というところから、実際に現場で経験した肉離れについてご紹介いたします。
今回は、総論になります。

1.筋損傷とは

筋損傷は大きく3つに分かれます。

・筋挫傷
    
筋への直接打撃や圧迫ストレスが生じた時に起こるもの
(通常は骨に隣接した組織の損傷)
 
例:デッドボールや自打球などの外的損傷、走者とのコンタクトでの損傷

・肉離れ
 急激な筋収縮・伸長ストレスによる損傷
 スプリントタイプ・ストレッチタイプ

・微細損傷の繰り返し
 投球や筋力トレーニングによる筋の微細損傷(筋肉痛・張り)

2.肉離れの基礎基本

 ここでは肉離れについての総論をお話しします。

⚫️疫学
 ・性差 男性>女性
 ・年代別 20代前半が最も多い
 (20代:ハムストリングス 20代より高齢:腓腹筋)

⚫️重症度
 ・JISS分類(MRI)

 Ⅰ度 わずかな損傷(腱膜の輪郭が保たれる)
 Ⅱ度 部分断裂 (腱膜が部分的に断裂している)
 Ⅲ度 完全断裂(腱膜がすべて断裂している)

(仁賀定雄. “ハムストリング肉離れ.” The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 56.10 (2019): 778-783.)

 ・奥脇分類(MRI)

 Ⅰ型 筋腱移行部の血管損傷のみ
 Ⅱ型 筋腱移行部損傷,特に腱膜の損傷
 Ⅲ型 腱性部(付着部)の完全断裂

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(奥脇 透:ハムストリング肉離れ.臨床スポーツ医学をもとに作成)

MRIの横断像で診断されます。以下はⅢ度と診断された症例。

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・エコー所見
  ”エコーはあくまで補助的な役割として活用し、臨床症状や他の画像所見と併
  せて判断することが重要である”
 
(超音波診療のピットフォール、笹原潤、臨床スポーツ医学第42巻5号、 
  2025、p460-463)
  
  我々はセラピストであり、診断ではなくあくまで患部評価の一つの指標として
  使用していきたいです。そのため画像を見ることができる力はX-p・MRI同様
  に重要と感じています。
  基礎として、健側と患側の比較で評価することが重要であるとされています。

   ❶筋線維部の損傷
   低エコー像を呈する筋内に高エコー域

   ❷血腫
   
筋線維損傷部位周囲に低エコー域

  📝血腫の理解
   外傷から最初の数時間以内
   血腫が拡散していてまとまっておらず、筋肉の高エコー像や、
   筋線維束の異常な間隔の拡大が散見
 
   腱膜の断裂
   血腫が筋の境界を越えて拡散し、画像上で確認できない可能性
   筋線維の牽引、皮膚上の皮下出血を注意深く観察

 (Roger B, Brasseur JL, Blum A (1998) Exploration des muscles du sportifs.   In: Blum A (ed) Imagerie en traumat- ologie du sportif. Masson, Paris,pp   31–42)

  ❸腱膜部の損傷
   
長軸像で線状高エコー像を呈する腱膜が不整 その周囲に低エコー像

  ❹付着部の損傷
  
 腱の肥厚所見

  ❺筋挫傷
   高エコー像を呈して腫脹し、内部にまだらな低エコー像

 (超音波診療のピットフォール、笹原潤、臨床スポーツ医学第42巻5号、 
  2025、p470-473)

・エコー所見による分類

    grade0 問題なし
    grade1 筋横断面積の5%未満
    grade2 筋の部分断裂、筋横断面積の5〜50%
    grade3 筋の完全断裂、血腫の貯留あり

  ☑️ Bell clapper sign  
 
プローブで軽く圧迫を加えると、血腫内に浮遊する断裂した筋片の確認

 ※エコーで判断したい所見
  ❶筋線維束の断裂を伴わない損傷 
   1~2週間の短期で回復

  ❷断裂と血腫を伴う損傷
   最低でも4週間以上を要する

 (Rodineau J (1997) Evaluation des lés- ions musculaires récentes et essai   de classification. Sport Med 90:28–30)

 ・現場感について
  Ⅰ型 運動の継続が可能(練習や試合後の訴え)
    Ⅱ型 運動継続困難(動作の変化あり)
      Ⅲ型 明らかなエピソードあり(自重+慣性or外力)

 (肉離れ-今,求められているもの-鎌田浩史、臨床スポーツ医学、第42巻第2号、2025、p118-121)

⚫️復帰時期の目安(時間)

 Ⅰ度 2.0±1.0週(1~6週)
 Ⅱ度 6.4±2.2週(3~12週)
 Ⅲ度 9.8±3.2週(4~16週)

(仁賀定雄. “ハムストリング肉離れ.” The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 56.10 (2019): 778-783.)

画像
(臨床スポーツ医学, 2025(2),p130を参考に作成)

⚫️復帰時期の目安(MRI所見)

 50~60%ジョギング   高信号残存
 70%以内ランニング   僅かな残存
 80~100%スプリント    低信号像 

(仁賀定雄. “ハムストリング肉離れ.” The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 56.10 (2019): 778-783.)

⚫️身体所見
 ・視診
  陥凹、腫脹、皮下出血

画像
(側副部の腫脹と皮下出血に対してマイクロカレント)

 ・触診 
  熱感、圧痛、硬結

画像
熱感は手背部で確認
画像
圧痛の確認と硬結部の確認

 ・Stretch痛
  他動

画像

  自動

画像

 ・運動時痛
  
求心性収縮

画像

  遠心性収縮

画像

 ・動作時痛
  収縮速度+持久性

  40cm台でのHip liftはハムストリングの寄与が90%と報告されており、最大速
  度でのHip liftを行うことができるかが重要な所見です。
  これに持久性の要素も加えスプリントがどの程度可能かも確認するようしてい
  ます。
 (Yuto Sano, Masashi Kawabata, Yuki Sumiya, Yuto Watanabe, Yuto
       Uchida, Tomoaki Inada, Masaki Murase, Tomonori Kenmoku, Hiroyuki
      Watanabe, Naonobu Takahira. Evaluating optimal height for hamstring
      activity in maximum-speed single-leg bridge test,Int J Sports Med. 2025
      Feb 11. )
 (Sano Y, Kawabata M, Kenmoku T, Watanabe H, Takahira N. Maximum-
  Speed Single-Leg Bridge Test for Concentric Functional Assessment and
  Exercise in an Athlete with Recurrent Hamstring Strain Injuries: A Case
  Report. IJSPT. 2025;20(5):716-726.)


  競技特性

画像

 ・主観的評価
  ❶HaOS(hamstring outcome score)
  ハムストリングの機能評価尺度(19項目)
  スコアが低いほどハムストリングの肉離れの既往が多く、新たなハムストリン
  グの肉離れが多いことが報告されている。
 
 (Engebretsen AH, Myklebust G, Holme I, Engebretsen L, Bahr R.
  Prevention of injuries among male soccer players: a prospective,
  randomized intervention study targeting players with previous injuries or
  reduced function. Am J Sports Med. 2008 Jun;36(6):1052-60.)
  (van de Hoef PA, Brink MS, van der Horst N, van Smeden M, Backx FJG.  
       The prognostic value of the hamstring outcome score to predict the risk
       of hamstring injuries. J Sci Med Sport. 2021 Jul;24(7):641-646.)

  ❷FASH(functional assessment scale for acute hamstring injuries)
  自覚的重症度と症状の程度を評価(10項目)
  
 (Malliaropoulos N, Korakakis V, Christodoulou D, Padhiar N, Pyne D,
  Giakas G, Nauck T, Malliaras P, Lohrer H. Development and validation of a
  questionnaire (FASH–Functional Assessment Scale for Acute Hamstring
  Injuries): to measure the severity and impact of symptoms on function
  and sports ability in patients with acute hamstring injuries. Br J Sports
  Med. 2014 Dec;48(22):1607-12.)

3.具体的な肉離れ部位

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スクワット動作獲得のためのMobility Drill【トレーナーマニュアルvol.203】

はじめに

野球に関わらずほぼ全てのアスリートにおいて、トレーニングでスクワットを行うと思います。
正しくスクワット動作が遂行できない場合、腰や膝を痛めたり重量が伸びにくかったりします。

今回はスクワット動作が正しく行えるようになるためのモビリティドリルやそのチェック方法をいくつかご紹介できればと思います。

スクワットの深さと筋活動

スクワットは深さによって名称が異なります。
1.クォータースクワット(Quarter Squat)
 ●膝の角度:おおよそ 45度程度
 膝が少し曲がる程度。しゃがみが浅い。

2.ハーフスクワット(Half Squat)
 ●膝の角度:おおよそ 90度

3.パラレルスクワット(Parallel Squat)
 ●特徴股関節(大腿骨上部)と膝が同じ高さになる程度

4.フルスクワット(Full Squat)/ディープスクワット(Deep Squat)

 ●膝の角度:90度以下、股関節が膝より下にくる
 しゃがみきる動作に近い。可動域が最大。
 ●用途:可動域の改善、柔軟性向上、筋力・筋肥大向上に効果的。

ストレングストレーニングとして行う場合、基本的には4のフルスクワットを推奨しています。(競技特性上、体幹の剛性を一時的に高めたい場合などは別)

フルスクワットで可動域を求めた方が浅いスクワットよりも臀筋群、大腿部への筋肥大効果が高いことは先行研究でも報告がなされています。

スクワットの深さ(浅い、パラレル、深い)と足幅(標準、広い、最も広い)が大腿四頭筋の筋活動に与える影響を調査。結果、スクワットの深さが増すほど大腿四頭筋の筋活動が増加し、足幅の違いによる有意な差は見られなかった。

Matt Denning, Brad Gardiner, Tyler Standifird, Lauren Williams. Does Squat Depth and Width Influence Quadriceps Activation?. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2019

異なるスクワットの深さ(最大膝屈曲と90°膝屈曲)および負荷(体重、50% 1RM、80% 1RM)が下肢筋の筋活動に与える影響を調査。結果、深いスクワットと高負荷条件で大腿四頭筋、ハムストリングス、臀筋の筋活動が有意に増加した。

Zachary Sievert, Joshua T. Weinhandl, Stacie I. Ringleb, Laura C. Hill​. The Effects of Squat Depth on Electromyography of Lower Extremity Muscles. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2016

深いスクワット動作と股関節、膝関節、足関節の可動域および筋力との関係を調査。結果、深いスクワットを行うことで、これらの関節の可動域と筋力が向上することが示された。

The Relationship Between the Deep Squat Movement and the Hip, Knee and Ankle Range of Motion and Muscle Strength. Journal of Physical Therapy Science. 2020

今回はフルスクワットに焦点を当てて、深いスクワットを獲得するためのドリルを紹介していきます。

Mobility Check&Drill

World Greatest Stretch

股関節屈曲開排位における体幹前傾機能を獲得するために行います。
✅Check Point
・肘が床に付くか
・脊柱は屈曲しすぎていないか
・足関節の真上に膝関節がきている(もしくはやや膝が外に位置)状態でできているか

回旋動作を省き、モビリティを見てみましょう。
横から評価すると分かりやすいと思います。脊柱が過度に丸まっていない状態で、膝よりも体幹を低くすることができれば十分な可動性があるといえます。そのままストレッチとしても実施可能です。

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