脱臼肩に対する復帰プログラム‐アスリハを考える‐【トレーナーマニュアルvol.50】

C-I Baseballの現場編記事を担当する佐藤康です。

学生野球が試合期に入り、投球障害だけでなく、捻挫や打撲・骨折などの競技中の外傷により受診する選手をみることが多くなっています。その中で、肩関節の脱臼したケースの競技復帰に向けた基準・判断は対応に悩むことも多く感じています。

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https://twitter.com/C_IBaseball2020/status/1516616682168455172?t=i-eM6rNI09BIT1p3D6SnGA&s=19

日常生活レベルの動作の獲得まではクリアできても、グラウンドレベルでの実践の動きの獲得に向けたゴールの設定については、試行錯誤の連続です。

そこで今回は脱臼肩をテーマに病態を整理したうえで、競技復帰プログラムやその条件について、アスリハを中心に考えていきたいと思います。

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野球の場面で起こる脱臼

脱臼とは

まずはじめに、
肩関節の脱臼について整理していきます。

肩関節脱臼の発症は
接触や転倒などによる外傷性
オーバーヘッドスポーツなどの反復動作による非外傷性
に大きく分けられ、発生頻度は外傷性によるものが多くみられます。

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また、外傷性肩関節脱臼の
90%以上は前方への脱臼です。

前方脱臼は肩甲上腕関節において、
上腕骨が上腕遠位後方へ引かれる(外転外旋位での水平伸展強制や過屈曲する)ことによって、骨頭が前方へ移動しようとする力が加わります。

その結果、関節包、関節唇 (Bankart損傷) が損傷し, 同時に関節窩の骨折や上腕骨後外側の骨欠損 (Hill-Sachs 病変) が起こります。

若年層では高い確率で脱臼を繰り返してしまう反復性脱臼に移行するケースが多く、スポーツを継続する場合、Opeが必要となってきます。

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<Opeの必要性と保存療法の判断とは>
Opeが必要か否か、医師の判断により、さまざまな報告がありますが、初回脱臼例では、まず保存療法を行い、再脱臼・再亜脱臼例にはBankart修復術等により対応されます。

一般的には以下のような対応が多いのではと思います。

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※参考文献6

脱臼の誘因動作

野球選手の外傷性脱臼は
どのような場面で発症することが多いのでしょうか。

画像でも前述しているため、
既にイメージできる方もいるかもしれませんが、
走塁時のヘッドスライディング 
▶守備でのダイビングキャッチ
が主な受傷機転となり、最も肩関節脱臼のリスクが高いといえます。

▶走塁時の受傷
下図を参照にしていきます。
ランナーの帰塁動作時では、左に反転し、右手を伸ばしてベースの角に触れるようにスライディングをしていきます。

そこに守備側のタッチや相手の体が乗りかかってしまうことで、肩後方から前方への強い外力により、右肩の脱臼の危険性が高くなります。

つまり、右投げの選手の場合、
投球側の受傷
をきたしてしまいます。

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▶守備時の受傷
ダイビングキャッチによる捕球時は、右投げの場合はグラブ側の左腕を伸ばして捕球をします。

着地時に過度な水平伸展や外転/外旋位・過屈曲位が強いられることで受傷します。
そのため、非利き手側の受傷頻度が高くなります。

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これらの動作は、飛び込んだ際に、受け身が取れず手だけで支えようとすると脱臼につながりやすいといえます。後述しておりますが、復帰に向けたリハビリにおいても上記の動作の獲得・復帰については精査していく必要があると思います。

投球側の受傷・非投球側の受傷、両者においても競技復帰する上で十分な可動域等の機能の回復が求められますが、特に投球側の場合、投球動作を行うことのできる肩の回旋機能が求められるため、投球側の受傷の場合は受傷前のパフォーマンスレベルに戻ることが難しくなることも少なくありません。(例:受傷前:投手→受傷後:野手)

リハビリテーション目標

肩関節脱臼における
リハビリテーションの目標として
競技復帰+再脱臼予防
第一に進めていきます。

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再脱臼の予防

先述しましたが、
関節唇や骨転位が軽度の場合、
保存療法が選択されることが多いと思います。

外来臨床の場面でも保存療法での対応が多いことや文献での報告も少ないため、今回は保存療法での対応を中心にまとめていきます。

保存療法の場合、受傷後の診断後、
一般的に約3週間の固定期間の後に、
リハビリを開始し、3ヵ月程度で復帰する目安で考えられています。

スポーツ選手における再脱臼率の比較として、
保存療法群:47~95%
手術療法群:4~16%

上記により手術療法群で良好な成績が報告されていることから、早期より選手に対して手術療法の選択が勧められている傾向です。

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脱臼しやすい動作や機能回復が不十分のまま競技復帰をしてしまうと、競技中にその動作を繰り返してしまうため、再脱臼する外力がかかる可能性があります。

そのため、初回脱臼時、もしくは習慣的に脱臼がどのようにして起こったのか?について詳細に把握しておく必要があります。

メディカルリハビリテーションの目標

メディカルリハビリテーションにおいては、
可動域の獲得に加え、上腕骨の骨運動を適切に求心位で保持できることがポイントとなります。

特に難渋しやすいのが、外転外旋可動域です。投球側の受傷の場合、この可動性が低下することで投球パフォーマンスの低下に直結してきます。また、肩甲上腕リズムの破綻は、肩関節外転運動時における上腕骨頭の求心性を低下させ、前方偏位を助長する要因となります。

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野球選手に関わる上で必要な “肘関節エコー”【トレーナーマニュアルvol.49】

C-I Baseballの小林弘幸です。

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元NPBチームドクターのスポーツDrと一緒にエコーを用いて、
選手の病態を理解し障害の原因追及、症状改善を大切にしています。

投球障害の原因は多岐にわたり、非常に難しいです。

しかし、皆様に少しでも自分の考えを共有していただき、
ご意見をいただきながら、現場の選手に少しでも還元できたら
うれしく思います!

CIB第2期後半では、
【野球選手に関わる上で必要なエコー】
ということで記事を書かせていただきます。

というのも、
私が運動器エコーと出会って一番良かったなと思うところは、
【筋骨格の断面解剖】と【神経の走行】の理解がしやすいと思ったからです。

ということで、小林が担当する、
野球選手に関わる上で必要なエコー編の記事(予定)です↓↓↓

①野球選手に関わる上で必要な “股関節エコー” (2月7日)
②野球選手に関わる上で必要な “頚部エコー” (3月14日)
③野球選手に関わる上で必要な “肘関節エコー” (4月18日)←今回
④野球選手に関わる上で必要な “肩関節エコー” (5月23日)

これらの記事を通じて、
臨床の基礎になっていただけたらと思っております。

そして、
様々なご意見をいただけたらと思います!

野球選手に関わる上で必要な “肘関節エコー”

はじめに

投球障害肘とは、肘関節の疼痛が原因で投球できないことを指します。

野球選手の肘関節痛は主に、内側の障害が多いです。

外側の障害は、成長期で大きな問題となるので
これは理解が必要です。

投球障害肘に関しての病態は、下記記事を参考にしてください。

肘関節は、基本的には、屈曲・伸展の1軸性の関節です。

しかし、投球動作においては、主に運動方向が変化するLate-cocking~MER以降にメカニカルストレス(主に外反ストレス)を与えることで投球が困難になることが、投球障害肘ということなります。

他部位からの影響も多く受けます。

また、
前腕のROM制限は、代償的に肩(肩甲上腕)関節の過剰な運動を引き起こします。

まずは、しっかりと可動域を確保すること。

そのためには肘関節周囲の解剖を知らなくてはならないと思います。

上腕筋と円回内筋

観察の意義

上腕筋の硬さは肘関節の
・伸展
・回内外
を制限します。

また、
円回内筋の硬さは肘関節の
・伸展
・回外
を制限します。

伸展制限は、肩関節の日常生活から肩関節のあるアライメントを引き起こします。

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肘関節のアライメントは、構造的な問題がないのであれば、
しっかりと全可動域を確保することが大切です。

投球時には、リリース前のアクセレレーションフェイズで、
肘関節屈筋が働きます。

※斎藤 健治 他:野球オーバーハンド投球における上肢・上肢帯筋活動の表面筋電図分析. 体育学研究, 2006 年 51 巻 3 号 p. 351-365

そのため、
投球数の増加や間隔の短縮によって、筋疲労が生じることが考えられます。

安静時

上腕筋と円回内筋は、
肘関節上で、重なり合います。

上腕筋がイメージよりも、肘関節を跨いで、遠位まで来ているのが観察できます。
肘伸展制限により関与してくると考えられます。

そして、その間には、正中神経が観察されます。

両方の筋肉がタイトネスになり、
正中神経の絞扼が生じると、さらに、前腕屈筋群のタイトネスが助長されてしまうと考えています。

では、エコー画像を見ていきます。

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上腕二頭筋と円回内筋の2層構造が観察できる
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正中神経が、上腕筋と円回内筋の間に観察できる
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上腕筋が小さくなる(遠位レベルでもまだ観察できる)

👇動画

解剖書よりも、実際のエコーを見て解剖を学習した方がより理解度が深まると思います。

回内外時

前腕の回内外時にどのような動態を示すのか、
観察していきます。

前腕の屈筋群と上腕筋のタイトネスが原因でも回内外を制限してしまうことがあります。

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前腕回内時に、円回内筋が上腕筋側へ移動する
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安静時と同様の形態になる

👇動画

この上腕筋の柔軟性により、前腕屈筋群の筋出力が保たれていると考えています。

両方の筋が柔軟性をもって、上下左右に動ける範囲を確保しておくということが重要です。

実際の介入

上腕筋と円回内筋間の正中神経周囲がしっかりと動くように、
筋間を動かしていきます。

👇動画

正中神経周囲の疎性結合組織の循環が改善され、
正中神経領域の筋の筋緊張が緩和しやすくなると考えています。

徒手療法の治療の考え方は、下記記事に記載しております。
参考にされてください。
👇👇👇

簡潔に言うと、
脈管系周囲の脱水が改善されれば、神経血管に対する循環が改善し、
筋肉に対する栄養、信号伝達が正常化するのではないかと考えています。

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※疎性結合組織に関する模式図(イメージ)

浅指屈筋

観察の意義

浅指屈筋は、解剖学的に肘関節内側の動的安定化機構に
非常に寄与しているのではないかと報告がされています。

肘関節内側部分の腱性中隔は2つあり、それらが共同して張力を発揮することにより動的安定化機構として作用する。

※Shota Hoshika, et al.: Medial Elbow Anatomy: A Paradigm Shift for UCL Injury Prevention and Management. Clinical Anatomy 32:379–389. 2019

外反ストレス時に、示指と中指の収縮は、環指の収縮よりも関節開大距離を減少させる

※Shota Hoshika, et al.: Valgus stability is enhanced by flexor digitorum superficialis muscle contraction of the index and middle fingers. Journal of Orthopaedic Surgery and Research. 15:121. 2020

病態や、詳しい解剖は下記の記事より抜粋しますので、
こちらもご覧になってみてください!
👇👇👇

浅指屈筋がしっかり機能することで、
内側の動的安定化機構が機能し肘内側障害の予防に
少しでも寄与してくれるのではないかと考えられてます。

では実際にどのようなエコー画像になるか観察してみましょう。

安静時

安静時の前腕屈筋群の位置関係を
浅指屈筋を中心に見てみましょう。

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浅指屈筋中心に観察

肘関節遠位に行くと筋腹が確認でき、
肘関節に近づくほど、腱成分になってきます。

各指収縮時

浅指屈筋でも指を1本ずつ動かして、
どの筋がどこにあるのかを理解しましょう。

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各指の筋腹位置

おおよそこのような配置になっているかと思います。

特に、2指と5指は深層に位置しているので、
内側側副靭帯のサポートに関与しているのでは?と考えられることが多いです。

では、実際に各指で収縮するとどのような動きをするのかを観察していきます。

👇動画

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スプリントトレーニング・その④【トレーナーマニュアルvol.48】

C-IBaseballの高橋塁です。 2022年に入り、スプリントトレーニングをシリーズとしてお伝えしています。 今回はスプリントトレーニング4作目となります。 まずは、私の自己紹介から 前回までに紹介した、スプリントト … 続きを読む

野球金具スパイクの選び方【トレーナーマニュアルvol.47】

いつもトレーナーマニュアルをご購読頂きありがとうございます。C-I Baseballの足部担当の須藤慶士です。

近年の金具スパイクの種類は豊富でどれにしようか迷ってしまいます。
自分の動きの特徴と金具位置を合わせることができると動きの質は向上します。今回の記事をご覧になり購入時の参考にして下さい。

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前回までの記事⬇️こちらもご覧ください!

・・・・・・・・・・以下本文・・・・・・・・・・

皆さんは金具スパイクを初めてグラウンドで使ったときのことを覚えていますか?

私は中学の硬式野球で初めて履きました。そのときは土に刺さり走るときに蹴りやすかったが、サイドステップのときにブレーキがかかりすぎて怖かったことを今でも覚えています。
使用していたスパイクの裏面は皮でできており、前後ともに3本ずつの打ち込み式のものでした。

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道具の選び方の違い

野球をしている方あるあるですが、グローブやバットに対してはこだわりがとてもあると思います。

スパイクはどうでしょうか?

スパイクのカラーを選べるカテゴリーの方はデザインを重視することがあると思います。
高校生までは色の指定があるので履きやすさや値段重視になるのは当然かもしれません。

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スパイクはパフォーマンスを左右する

トレーニングや日々の練習により体力や技術は向上していきます。
練習で培ったものを発揮するためには自分にあった道具選びをしなければなりません。それが『スパイクの金具』だと考えます。

足は地面と接している唯一の部分

金具は動く・止まるといった基本的な動作能力を高めてくれます。野球はポジションごとに動きが異なります。

例えば、前後に向いている金具スパイクを内野手が履いてしまうと、横方向への動きが多い内野手は止まる事ができません。
逆に長い距離を走る外野手が横方向に向いている金具スパイクを履いてしまうと加速力が上がりません。

ですからポジション特性に合った金具を選ぶ事が大切です。

ポジションだけでなくプレースタイルに合わせる事でパフォーマンスはさらに変化します。

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ポジション・プレースタイルをイメージして金具を選びましょう。

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スパイク購入に関するアンケート

金具スパイクを使用している中学生以上の選手84名にアンケートしたところ、金具を意識して購入する選手は84名中8名でした。

最も多かった回答が履きやすさで、次に多かったのが値段で選ぶというものでした。

選手にはアンケートで自分が使用している金具の本数と位置を記載してもらいました。
これはスパイクを見ずに行い、後で使用しているスパイクと照らし合わせてもらいました。

回答例をご覧ください。

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本数や金具の形状を間違えている回答が多く見られました。

金具の特性を使えていないことが考えられます。

スパイクチェック

スパイクは消耗品です。
先にも述べましたが、シューズや金具はパフォーマンスに大きく影響します。

スライドのような金具やスパイクの状態では金具の効果を全くと言っていいほど発揮することはできません。

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スパイクを履いてアスファルトの上を歩くのは厳禁。

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一週間に一度はスパイク・金具をチェック

種類・本数

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形状

同じメーカーでも金具の形状は異なります。

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試合前のW-UPについて−チームアップと個人アップでは何をやればいいの?ー【トレーナーマニュアルvol.46】

C-I Baseballの増田稜輔です。
いつもC-I Baseball「トレーナーマガジン」をご購読頂きありがとうございます。

今回も現場で活躍するトレーナー・これから現場に出たいトレーナーの方に
役に立つ情報をお伝えしていきます。

3月も後半に入り、プロ野球が開幕しアマチュア野球も春季大会が開始され
これからの時期は試合が中心になっていきます。
そんな野球現場から質問を受けました。

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野球現場の指導者の方はW-UPの構成に悩んでいる方が多い印象です。
W-UPの順番や時間配分、どんなメニューを入れればいいのか?
また、最近では選手の自主性を尊重し「個人アップ」を取り入れている
チームも多くあります。
しかし、「個人アップ」では選手が何をしていいのか理解できておらず
時間を持て余しているケースや試合に臨む身体が出来ていないケースが目立ちます。

このようにW-UPの構成については現場指導者も悩みをかかえています。
また、トレーナー側も
最適なW-UPはなにか?
○○はW-UPに入れていいのか?
など悩んでいる声も聞きます。

そこで、今回は「試合前のW-UP」をテーマに
現場から聞かれる疑問について考えていきたいと思います。

W-UPとは

まずはじめに「W-UP」の基礎知識について解説していきます。

W−Upとは
競技やトレーニングに向けて身体的・精神的準備を整えること
パフォーマンス向上や障害を軽減させるために行うものです。

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W-UPを構成するには「目的」を明確にすることが必要になります。
では、「試合前のW-UP」の目的は何になるのでしょうか?

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試合前のW-UPでは
試合中に「最大パフォーマンス」を引き出すために
精神的・身体的な準備運動を行い、パフォーマンス発揮につなげ
そして試合中に起こりうる怪我のリスクを軽減させるために行います。

つまり、野球動作に必要な
精神状態・可動域・筋発揮・連動性・心肺機能を試合に向けて高めていくことが求められます。

①試合に求められる精神状態


試合前の選手の精神状態は
緊張・不安・興奮などの要因により精神的に不安定な状態にあります。
精神的に不安定な状態は自律神経に作用し覚醒状態に変化が生じます。
覚醒状態はパフォーマンスに大きく関わる部分です。

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試合中の選手は適切な覚醒状態にしていくことが必要です。
過度にリラックスしていても覚醒レベルは下がり、過度な緊張状態も覚醒レベルを下げます。
そのため、W-UPをすることで覚醒状態をコントロールし
スムーズに試合に入れるように準備していきます。

②試合に求められる身体的運動

試合では「最大パフォーマンス」の発揮が勝敗に関わる重要な要素になります。

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身体的な準備とは身体に生理学的反応を引き起こすことです。
W-UPを行うことで身体には様々な生理学的反応が起こります、
その主たるものが
身体が温まる=体温・筋温が上昇している状態です。
生理学的反応を引き起こすことで身体は運動に向けて最適な状態を作り出せます。

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W-UPでは筋温を上げるために各運動を行います。
その過程で心拍数の上昇や可動域の拡大も同時に行っていきます。

③怪我のリスクを軽減する

野球の練習中や試合中にに生じる怪我は
肉離れ・捻挫と言った外傷がほとんどです。
肉離れや捻挫は外力に対して身体制御が遅延することで発症します。
これはウォームアップの段階から準備できてないから起こる
可動性や筋の反応速度の問題であると考えられます。

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多くのチームを見ているとW-UPの中で
瞬発系の要素がダッシュのみであるチームが多い印象です。
野球では走るだけでなく、減速するや方向転換、ジャンプなどの
動作も入っています。
W-UPでは試合でのパフォーマンスを想定した
スピードや強度で行うことが必要になっていきます。
ここのギャップが生じていると怪我を引き起こす原因となります。

上記の内容が一般的なW-UPの概要になります。
詳しくはこちらの記事に書いてありますので参考にしてください

ここからは指導者・トレーナーからよく聞かれる内容について
考えていきます。

試合までの時間の流れについて

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練習と試合前のW-UPでの大きな違いは時間の使い方です。
試合前は試合開始時間は決まっており、定刻に合わせて身体を作っていく必要があります。
W-UPを担当するトレーナーは時間配分を考えながら進行していくことが重要です。

ここでは一般的な試合前の流れを解説します。

第1試合の場合

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第1試合の場合は球場到着後、着替えてすぐに「球場内」でW-UPが出来ます。試合開始時刻も明確なためアップ時間もコントロールしやすく
スムーズに試合に入ることが出来ます。
個人アップ・チームアップの時間は選手の状態や疲労度、気温等も
考慮しながら20〜30分の幅でコントロールしていきます。

第2試合以降の場合

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W-UPのコントロールが難しいのが2試合目以降の場合です。
前の試合の進行状況によりW-UPの時間やタイミングが変動します。
トレーナーは流動的に対応し選手の身体の状態を作っていきます。
基本的には5回終了を目安に前後に個人アップの時間を設けながら調整します。
あまりにもアップのタイミングが早いと、筋温や体温が低下する可能があるので注意しましょう。
また、2試合目以降の場合はグラウンドin後も10分間のチームアップ時間があります。
なので、球場の外でやるアップと球場内でのアップで何もすべきなのかを
明確にすることが重要です。
誤っても重複するメニュー構成にならないように注意し、疲労度も考慮していきます。

試合前と練習ではW-UPメニューは違うのか?

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指導者やトレーナーの方から多く質問させるのがこちらのテーマです。
「試合前と練習でのW-UPは変えているのか?」

悩む方も多いと思います。
みなさんはどのようにしていますか?

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私は「変えないメニューと変えているメニュー」があります。
基本的にはメニュー構成は変えません。
試合前だからっといって特別なメニューを追加することはなく
「いつもやっているメニューを継続してやる」がベースになっています。

試合前に新しいメニューを入れるのは
慣れない動きのため選手のコンディションを下げる可能性が高いです。
なので、普段のメニューをそのまま試合前にも行います。

ただ、試合前と練習ではW-UPの捉え方は少し違っていると考えます。

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試合前のW-UPでは、試合で「パフォーマンス発揮」するために行います。
練習前も同様なのですが、プラスしてチームや個人の課題を改善・向上させるためのメニューを組み込んでいることがあります。

なので、「メニュー構成は基本的に同じ」ですが
課題改善のためのメニューは試合前には行いません。
そういった意味でメニューを変える部分があるとお伝えしました。
イメージとしては練習前に行っているW-UPメニューから
いくつかピックアップして試合前W-UPを構成しています。

試合前は疲労度やコンディション状態を考慮しつつ、最大パフォーマンスが発揮できるようにW-UPを構成していきます。
なので、量やテンポ・スピードなどを変化させます。

まとめると
W-UPのメニュー構成は野球でのパフォーマンス発揮ができるための
プログラムを構成し
練習前ではプラスして課題となっている事柄に対してのメニューを入れる
試合では、ベースとなるメニューは変化させずに、量やテンポ・スピードを変化させることを私は行っています。

試合前のチームアップメニュー

試合前のチームアップは約30分間で構成していきます。
そのため練習で行うような有酸素運動(ランニング等)のメニューを省くケースが多いです。
そのため、筋温・体温、心拍数をどう上げていくかがポイントになってきます。

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①可動性メニュー(10分間)

可動性メニューでは野球に必要となる各関節や筋肉に対して行っていきます。
主に動的なメニューを中心に構成し、関節可動域の拡大と筋の伸張性の向上
そして筋の収縮を利用することで筋温・体温を上昇させていきます。

可動性メニューは大きい筋がある下肢から開始していきます。
下肢から開始することで下肢の筋ポンプ作用により
血流の循環を維持し筋温を上昇させます。

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試合期に向けた持久力トレーニングの選択【トレーナーマニュアルvol.45】

C-I Baseballのトレーニング記事を担当する佐藤康です。

学生野球では春休みである大学生はオープン戦を連日行うチームも多く、中高生では週末に練習試合を行い、春季大会に向けた実践練習中心のメニューとなっているところが多いかと思います。

冬季にトレーニング中心のメニューで取り組んできた効果がパフォーマンスに反映されてきますが、試合が続く連戦になると試合間でのパフォーマンスに差が出てきたりします。

持久力と聞くと、サッカーやバスケットボールに比べ、野球にはあまり必要ではないのではないか。と思う方もいらっしゃるかもしれません。結果、過小評価される要素になりがちです。

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持久力を疎かにしてしまうと、疲労の蓄積によりパフォーマンスレベルは低下し、怪我をするリスクも増大するおそれがあります。走り込みは必要か?という論議がさまざまなところでされておりますが、結論から言うと、短距離・中距離・長距離ともに必要な要素であると思います。もちろん目的を無視した過度な走り込みについては問題があると思います。

そこで、今回は持久力をテーマに考えていきたいと思います。

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野球に持久力は必要か?

はじめに野球の競技特性から整理していきましょう。
野球は投球・スイング・守備・走塁の一瞬の高強度な動き(投手では約2秒間・野手では約5秒間)を1試合・練習の中で繰り返される競技です。

一般的に競技種目を持久系と瞬発系の程度に分けて分類してみると、以下のように分類されています。
例えば、ボクシングを例に挙げると、ダッシュのようなハイパワー(無酸素性能力) を維持し続ける持久力が求められるといえます。

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参考書籍:持久系スポーツの特徴(臨床スポーツ医学)

こうしてみると、やはり野球には持久力はそこまで必要ではないのでは?と思われる方も多いかもしれませんが、体力の土台となる持久性を前提に各種要素の能力の向上があります。

持久力を強化する目的として
①パフォーマンスをし続けられる体力の土台をつくる
➁同じ動きをし続けられることでケガのリスクの低下
③リカバリー能力の向上

が挙げられます。

この点につきましては後述していきます。

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上図は運動要素を力・時間・速度の3つの軸で捉えた際に、体力のエネルギーを三次元で示した図になります。

トレーニングを段階的に進め、選手の持久力・リカバリー能力・筋力からなる”スタミナ”を養成していくためには、基盤としてこれらの要素を向上させていく必要があります。

無酸素系と有酸素系では、エネルギーがつくられる仕組みや筋線維の組成などに違いがみられますが、図にもあるように、両者は混在しているため、どちらか一方だけでなく、両者の理解が大事になってきます。

以下にそれをまとめていきます。

持久力で知っておくべき生理学的メカニズム

持久力の生理学的なメカニズムをおさらいしていきましょう。

持久力とは、長くその作業を続けることができる能力を意味しており、あらゆるスポーツにおいても、体力の中核的な要素として位置づけられます。

一般的に持久力は下記の2つに大きく分類されます。

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これらの持久力エネルギーをつくるためには、その代謝のシステムを理解していく必要があります。

エネルギー供給のシステム

エネルギー供給というワードを聞くと難しいイメージを持たれがちですが、十分に運動をし続けるためには、カラダにはエネルギーが必要となります。そのため、エネルギー供給の仕組みを理解し、どのようなトレーニングが必要となるかについて整理していきます。

競技において、求められる運動能力が瞬発系なのか、持久系なのかにより、筋肉へのエネルギー供給機構が違ってきます。

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瞬発系では、酸素を必要としないエネルギー供給機構(無酸素系)が働き、持久系では酸素を必要とするエネルギー供給機構 (有酸素系) が利用されていきます。

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筋収縮にはATP(アデノシン3リン酸)がADP(アデノシン2リン酸)に分解されるときのエネルギーが使われます。つまり、ATPが筋収縮のエネルギー源となります。

ATPは筋内に貯蔵されていますが、量に限りがあるため、運動をし続けるためには消費したATPを再合成して補充していく必要があります。

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①無酸素系(ATP-CP系)
➁無酸素系(解糖系)
③有酸素系

①無酸素系(ATP-CP系)
エネルギー産生の過程において酸素を用いない無酸素系のシステム

筋肉内にあるクレアチンリン酸・ATPが分解されエネルギー生成されていきます。筋肉内にあるため、多くのエネルギーを生むことができますが、その持続時間が5-7秒と短時間であることが特徴です。

つまり、短時間・高強度の運動にてエネルギーを生成しています。

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➁無酸素系(解糖系)
解糖系はその名前の通り、糖(グリコーゲン)を消費して、乳酸に分解するエネルギーを生成するシステム

運動の強度の増大により、糖質の消費(燃焼)がより行われていきますが、酸素のない状態で糖質を代謝するため、強度が上がるにつれて、生成した際に蓄積される乳酸を除去しきれない運動強度となってしまいます。

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100m走などの高強度かつ短時間の運動ではエネルギーのほとんどがATP-CP系から供給され、高強度・1分弱の運動では解糖系が中心となります。

また、最大強度で運動した場合、ATP-CP系と解糖系を合わせても約40秒程度しか続きません。これは無酸素系のエネルギー源であるグリコーゲンの筋肉貯蔵量に限りがあるためです。

つまり、無酸素系のエネルギー生成では限られた時間内でのシステムであるということです。

疲労に関連する「乳酸の蓄積」について整理しておきます。

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野球選手に関わる上で必要な “頚部エコー”【トレーナーマニュアルvol.44】

C-I Baseballの小林弘幸です。

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元NPBチームドクターのスポーツDrと一緒にエコーを用いて、
選手の病態を理解し障害の原因追及、症状改善を大切にしています。

投球障害の原因は多岐にわたり、非常に難しいです。

しかし、皆様に少しでも自分の考えを共有していただき、
ご意見をいただきながら、現場の選手に少しでも還元できたら
うれしく思います!

CIB第2期後半では、
【野球選手に関わる上で必要なエコー】
ということで記事を書かせていただきます。

というのも、
私が運動器エコーと出会って一番良かったなと思うところは、
【筋骨格の断面解剖】と【神経の走行】の理解がしやすいと思ったからです。

ということで、小林が担当する、
野球選手に関わる上で必要なエコー編の記事(予定)です↓↓↓

①野球選手に関わる上で必要な “股関節エコー” (2月7日)
②野球選手に関わる上で必要な “頚部エコー” (3月14日)←今回
③野球選手に関わる上で必要な “肘関節エコー” (4月18日)
④野球選手に関わる上で必要な “肩関節エコー” (5月23日)


これらの記事を通じて、
臨床の基礎になっていただけたらと思っております。

そして、
様々なご意見をいただけたらと思います!

野球選手に関わる上で必要な “頚部エコー”

はじめに

投球動作の中で、あるいは打撃動作の中で、基本的に首は、
【反対方向】を向いています。

右投げであれば、左向き。

右打ちであれば、左向き。

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このような、同じ姿勢を取り続けることは、
身体の動きを考えると、
見直さなくてはなりません。

今回は、私が臨床場面から感じたこと、考えたことを中心に、
なぜ、頚部を観察しなくてはならないのか?
を含めて記載できたらと思います。

そして、エコーを通じて
解剖を理解して、臨床場面で活かしていただきたいと思います!

【肩甲挙筋】と【頚部の神経症状】

今回は、この二点について考えていきたいと思います。

まずは、肩甲挙筋です。

肩甲挙筋概要

エコーと解剖については、下記のYoutubeで小林が配信しております。


少しの時間ですが、ご覧いただきたいと思います。

基本情報をおさらいします。

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注目すべきは、
肩甲骨に対する作用です。

肩甲骨の挙上と、下方回旋作用があります。

投球における肩甲骨の動きは、上方回旋が重要となります。

overhead athletesの
Type2 SLAP病変の後方型に対して
肩甲骨上方回旋を促すことで疼痛軽減が見られるとされています。

※S S Burkhart, C D Morgan, W B Kibler. Et al.: Shoulder injuries in overhead athletes. The “dead arm” revisited. Clin Sports Med. 2000 Jan;19(1):125-58. 

いわゆる、
Scapula assistance test(SAT)での疼痛軽減です。

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※Pluim BM. Scapular dyskinesis: practical applications. Br J Sports Med. 2013 Sep;47(14):875-6.

肩甲骨下方回旋筋の肩甲挙筋がタイトネスになると、
上方回旋不足が生じ、SLAPやインピンジメントを招いてしまう原因になると思います。

この肩甲挙筋について、どのように評価治療すべきかは、後述していきます。

頚部の神経症状の概要

頚部の神経症状を、見逃してはいけません。

理由は、
肩の症状、特に筋力低下などは、頚椎性の症状があるからです。

これは、
投球障害肩を考える上で、非常に重要なことになります。

肩だけ評価して治療すると、まったく良くならないことがあります。

これは、頚椎性の症状があるからです。

まずは、腕神経叢をおさらいします。

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複雑に見えますが、
模式図を利用しながら、しっかりとした理解が必要です。

肩の症状との鑑別にはC5~C7までの神経を理解することが重要です。

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ここが理解できれば、肩と首の病態として判別できると思います。

まずはしっかりと判別することが重要です。

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判別テスト等で鑑別しますが、
これだけでは不十分ですので、この判別方法等も後述していきます。

肩甲挙筋

エコー画像での評価

肩甲挙筋の評価として、
頚部回旋時に肩甲挙筋がどの程度動いているのかという観点は非常に重要です。

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投球障害の肩以外の身体特性 : 肩甲骨と股関節に着目して (特集 投球障害を捉える : 動作,機能解剖,エコーの活用,予防に対する理学療法士の英知)
我妻 浩二 , 小林 弘幸 , 村本 勇貴 , 岩本 航
理学療法ジャーナル 54(5), 519-525, 2020-05
より、図を引用改変

肩甲挙筋をエコーで観察すると、
頚部の回旋に伴い頚最長筋の表層を肩甲挙筋が滑走する様子が観察されます。

頚部右回旋では肩甲挙筋が頚最長筋上を後方へ、
頚部左回旋では頚最長筋上を前方へと滑走します。

投球障害肩では、この肩甲挙筋の滑走が障害されやすく頚部の回旋可動域制限と肩甲骨上方回旋の可動域制限が同時に出現します。

実際に、動画で回旋時の肩甲挙筋の動態をご覧ください。

そして、もう少し、低位での動態です。

肩甲挙筋が横方向に滑走しているのが良くわかると思います。

しかし、
観察する高さによって、動態が異なります。

どのようなことを意味しているでしょうか?

これは、

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スプリントトレーニング・その③【トレーナーマニュアルvol.43】

C-IBaseballの高橋塁です。 2022年に入り、スプリントトレーニングをシリーズとしてお伝えしています。 今回はスプリントトレーニング3作目となります。 まずは、私の自己紹介から 前回までに紹介した、スプリントト … 続きを読む

Late cockingからの踏み込み脚の機能を足部から変える編【トレーナーマニュアルvol.42】

いつもトレーナーマニュアルをご購読頂きありがとうございます。
C-I Baseballの足部担当の須藤慶士です。

前回までの記事はWind-up〜Early cockingまででした。
今回の記事は『Late cockingからの踏み込み脚の機能を足部から変える』です。

投球時踏み込み脚が不安定なためにフォームが崩れるということはありませんか?インソールで動作改善をしてみませんか?

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どの投球相でどのように崩れるのか?
足部評価と姿勢・動作評価ができると投球動作の、どのフェーズで崩れるのか予測できるようになります。
さらには、足部からのアプローチで投球動作の改善が可能にもなります。

今回の記事は投球動作に対しての評価・インソールを記載しております。

今回のポイント

Late cocking
・過回内にならない事
・距骨下関節指標中間位キープ
・足趾屈曲が強くならない事
Acceleration
・母趾が使える事

前回はWind-up〜Early cockingまでの足部について記載しました。
軸足が機能しなければもちろん踏み込み脚は崩れてしまいます。

今回からCIB 記事をご覧になった方は前回記事を参考にしてください。

記事はこちら⬇️

そのほかの記事はこちらから⬇️

野球トレーナーマニュアル|C-I baseball|note【C-I Baseballトレーナーのトレーナーマニュアル】 投球障害肩・肘、腰痛、捻挫、肉離れ、下肢障害など野球におけるnote.com

・・・・・・・・・以下本文・・・・・・・・・

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チェック項目

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どの相で崩れやすい動作が見られるのか?
①姿勢・動作チェック
②足部チェック
③投球動作フェーズチェック

①姿勢・動作チェック
 ・姿勢
 ・回旋
 ・歩行

②足部チェック
 ・距骨下関節評価

③投球動作フェーズチェック
 ・投球動作フェーズでの距骨下関節肢位
 ・過回内、Knee-in
 ・突っ込み

姿勢・動作チェック

姿勢、回旋、歩行動作を評価します。

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チェックポイント

姿勢:投球側肩甲帯位置、骨盤位置

肩甲骨:下制しているとEarly cockingで肩関節外転しにくくなり肘下がりにつながりやすい

骨盤:静止立位時に投球側への回旋・下制がみられるとLate cockingで骨盤回旋量低下しやすい(投球側距骨下関節が関係)

静止立位時に非投球側への回旋・下制がみられるとLate cockingでKnee-inがみられやすい(踏み込み側距骨下関節が関係)

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回旋:投球側回旋量、非投球側回旋量


投球側回旋量が大きい場合:Wind-up〜Early cocking安定しやすい

非投球側回旋量が大きい場合:Late cocking〜安定しやすい


投球側回旋量が大きい場合はLate cockingからの投球動作は不安定になりやすい
と予測できます。

理由
非投球側の距骨下関節が回外しにくいために回旋量が低下していると考えられます。
距骨下関節が回外しにくいという事は、投球で踏み込んだ時点で回内傾向になりやすく運動連鎖でKnee-inすることが考えられるからです。

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歩行動作:歩行時骨盤・肩甲帯の下制量


ICで投球側肩甲帯・骨盤下制が大きい場合
:肘下がりの傾向が予測できる

ICで非投球側肩甲帯・骨盤下制が大きい場合:Accelerationから骨盤の非投球側へのSWAYがおこりやすい

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足部チェック

距骨下関節評価

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踏み込み脚足部の過回内により内側縦アーチの低下や扁平足が起こると、踏み込んだ際に投球動作が崩れやすくなります。

まずは距骨下関節評価を行い、足部形態がどうなっているのかをチェックしましょう。

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距骨下関節評価はこちらの記事をご参照ください⬇️

投球動作フェーズチェック

 

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踏み込み脚は以下のような現象が起こると考えます。

・上体のつっこみ・沈み込み
・Knee-in
・骨盤が回旋しない

小林さんの記事で述べられているものを以下に記載します。
小林さん記事⬇️

●踏み込み脚において、股関節の重要な機能の一つとして、伸展機能が重要
●踏み込み脚機能が低下すると、上体のつっこみ・沈み込みが生じ、肘下がりや、肩関節の過外旋が生じてしまう
●股関節伸展機能は大殿筋が重要
(一部改変)

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これらの事は足部の接地や状態により起こることがあります。
筋力低下や柔軟性も関係しますが、地面に接しているのは足部ですので動作チェックを行う際は足部の接地を確認してみましょう。

フェーズで考えられる事

 ・Early cocking:肘下がり
 ・Late cocking:踏み込み脚足部過回内、Knee-in
 ・Acceleration:突っ込み、踏み込み脚足部過回内or回外(足趾機能低下)

投球動作フェーズ距骨下関節肢位


Late cocking:距骨下関節中間位
Acceleration〜:距骨下関節中間位〜回外位

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プレシーズンのトレーニングプログラム−野手編−【トレーナーマニュアルvol.41】

C-I Baseballの増田稜輔です。
2月に入りいよいよシーズンインに向けて準備の最終段階に入ってきました。

アマチュア野球現場では3月から試合を開始することが多いです。
トレーニングプログラムは身体作りからより実践に必要な機能を高めるものに移行していきます。

今回はオフシーズントレーニングから
プレシーズントレーニングへの移行する際の
プログラムの組み立て方について解説していきます。

トレーニングプログラムを立てる前に行うこと

トレーニングプログラムを考える前にチームからの要望と選手の身体状況を把握していきます。

「チームがトレーナーに何を求めているのか」
「どんな要素を向上させたいのか」
「現在のチーム・選手の状態はどうなっているのか」

このようなことを明確にしていき、要望に対してトレーナーとして
提供できることを考えていきます。

チームからの要望

今回は実際にC-I Baseballに依頼があった事例をもとに解説していきます。

対象チーム
・大学野球部
・部員数80名程度
・1部リーグに所属

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チームからはすでにストレングス分野のトレーナーは在籍しているため
パフォーマンスに繋がる・障害を予防するための
「身体操作性」を向上させるトレーニングを行ってほしいとのことでした。

また、対象人数が約30名と大人数であり、30名が一斉に実施できる
トレーニングを提供してほしいとの要望がありました。

トレーニングの方針を決める

要望を受けて考えたことは下記の3つの要素です。
・身体操作性をどのように向上させるか
・パフォーマンスにどのように転換するか
・大人数の動きをどのように管理していくか

身体操作性やパフォーマンスレベルは約30人が同じレベルではないことが多くあります。
能力別にグループ分けをしトレーニングレベルを変化させて実施していく方法もありますが、チーム全体のパフォーマンスを上げることを考えると
全員が統一して実施し身体操作性やパフォーマンスが向上するトレーニングを提供することが妥当であると考えました。

今回のケースでは
事前にフィジカルテスト等を行っていないため、選手の身体的状況がわからないまま作成する必要がありました。
なので、選手の身体状況を確認しながら
「野手に必要となるパフォーマンス要素」をボトムアップ形式でトレーニングプログラムを作成し実施することにしました。

スクリーンショット 2021-12-05 23.11.13

下記の図に示しているように、パフォーマンスピラミッドを使い
土台となる、ポジションやムーブメントの部分を中心に行い段階的にパワーやスキルに繋げていきます。

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上記の内容を踏まえ今回のトレーニングのプランを考えました。

スクリーンショット 2022-02-20 19.16.51

パフォーマンスを向上したいからと言って
競技特異的なトレーニングを中心に行なうのではなく
競技特性を理解し、パフォーマンスに必要な各関節の機能
連動性、筋機能などを1から構築していくことを行います。

また、オフシーズン〜プレシーズンは急なトレーニング強度の上昇により
障害が発生するリスクがあるため各要素を段階的、計画的にプログラム設定していきます。

トレーニングプログラム作成

トレーニングの方針が決定したら次にトレーニングスケジュールを決めていきます。

具体的には
「どの期間にどのようなトレーニング行うのか」です。
ここを決めるためにはオフシーズンとプレシーズンでの違いを知っておくことが必要になります。

オフシーズンとプレシーズンの違い

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大学野球では秋季リーグ戦終了後の11月から2月までをオフシーズン
2月から春季リーグ戦が始まる4月までをプレシーズンとしています。

オフシーズン
身体の基本的な動作や筋力を強化する時期
プレシーズン
オフシーズンに獲得した能力をパフォーマンスへ転換する時期

オフシーズンのトレーニングプログラム

オフシーズンはパフォーマンスピラミッドの土台となる
BodyPosition(可動性・安定性・姿勢)とBodyMovement(動作コントロール)を構築していきます。

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今回のテーマである「身体操作性・パフォーマンス向上」の土台として、
野球に必要な可動性や安定性、姿勢の獲得と各動作のコントロールを目指していきます。

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トレーニングメニューは、
縦方向・横方向・回旋の3平面の動きに分類し
各要素に必要な上肢ー体幹ー下肢を連動させていくようなメニューを作成しました。4
特に重視した点は、1つの関節や筋に特化してトレーニングするのではなく
多くの関節や筋を活動させ動きを作ることを意識しました。

今回の記事では縦方向のトレーニングプログラムについて解説していきます。

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