試合期に向けた持久力トレーニングの選択【トレーナーマニュアルvol.45】

試合期に向けた持久力トレーニングの選択【トレーナーマニュアルvol.45】

C-I Baseballのトレーニング記事を担当する佐藤康です。

学生野球では春休みである大学生はオープン戦を連日行うチームも多く、中高生では週末に練習試合を行い、春季大会に向けた実践練習中心のメニューとなっているところが多いかと思います。

冬季にトレーニング中心のメニューで取り組んできた効果がパフォーマンスに反映されてきますが、試合が続く連戦になると試合間でのパフォーマンスに差が出てきたりします。

持久力と聞くと、サッカーやバスケットボールに比べ、野球にはあまり必要ではないのではないか。と思う方もいらっしゃるかもしれません。結果、過小評価される要素になりがちです。

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持久力を疎かにしてしまうと、疲労の蓄積によりパフォーマンスレベルは低下し、怪我をするリスクも増大するおそれがあります。走り込みは必要か?という論議がさまざまなところでされておりますが、結論から言うと、短距離・中距離・長距離ともに必要な要素であると思います。もちろん目的を無視した過度な走り込みについては問題があると思います。

そこで、今回は持久力をテーマに考えていきたいと思います。

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野球に持久力は必要か?

はじめに野球の競技特性から整理していきましょう。
野球は投球・スイング・守備・走塁の一瞬の高強度な動き(投手では約2秒間・野手では約5秒間)を1試合・練習の中で繰り返される競技です。

一般的に競技種目を持久系と瞬発系の程度に分けて分類してみると、以下のように分類されています。
例えば、ボクシングを例に挙げると、ダッシュのようなハイパワー(無酸素性能力) を維持し続ける持久力が求められるといえます。

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参考書籍:持久系スポーツの特徴(臨床スポーツ医学)

こうしてみると、やはり野球には持久力はそこまで必要ではないのでは?と思われる方も多いかもしれませんが、体力の土台となる持久性を前提に各種要素の能力の向上があります。

持久力を強化する目的として
①パフォーマンスをし続けられる体力の土台をつくる
➁同じ動きをし続けられることでケガのリスクの低下
③リカバリー能力の向上

が挙げられます。

この点につきましては後述していきます。

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上図は運動要素を力・時間・速度の3つの軸で捉えた際に、体力のエネルギーを三次元で示した図になります。

トレーニングを段階的に進め、選手の持久力・リカバリー能力・筋力からなる”スタミナ”を養成していくためには、基盤としてこれらの要素を向上させていく必要があります。

無酸素系と有酸素系では、エネルギーがつくられる仕組みや筋線維の組成などに違いがみられますが、図にもあるように、両者は混在しているため、どちらか一方だけでなく、両者の理解が大事になってきます。

以下にそれをまとめていきます。

持久力で知っておくべき生理学的メカニズム

持久力の生理学的なメカニズムをおさらいしていきましょう。

持久力とは、長くその作業を続けることができる能力を意味しており、あらゆるスポーツにおいても、体力の中核的な要素として位置づけられます。

一般的に持久力は下記の2つに大きく分類されます。

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これらの持久力エネルギーをつくるためには、その代謝のシステムを理解していく必要があります。

エネルギー供給のシステム

エネルギー供給というワードを聞くと難しいイメージを持たれがちですが、十分に運動をし続けるためには、カラダにはエネルギーが必要となります。そのため、エネルギー供給の仕組みを理解し、どのようなトレーニングが必要となるかについて整理していきます。

競技において、求められる運動能力が瞬発系なのか、持久系なのかにより、筋肉へのエネルギー供給機構が違ってきます。

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瞬発系では、酸素を必要としないエネルギー供給機構(無酸素系)が働き、持久系では酸素を必要とするエネルギー供給機構 (有酸素系) が利用されていきます。

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筋収縮にはATP(アデノシン3リン酸)がADP(アデノシン2リン酸)に分解されるときのエネルギーが使われます。つまり、ATPが筋収縮のエネルギー源となります。

ATPは筋内に貯蔵されていますが、量に限りがあるため、運動をし続けるためには消費したATPを再合成して補充していく必要があります。

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①無酸素系(ATP-CP系)
➁無酸素系(解糖系)
③有酸素系

①無酸素系(ATP-CP系)
エネルギー産生の過程において酸素を用いない無酸素系のシステム

筋肉内にあるクレアチンリン酸・ATPが分解されエネルギー生成されていきます。筋肉内にあるため、多くのエネルギーを生むことができますが、その持続時間が5-7秒と短時間であることが特徴です。

つまり、短時間・高強度の運動にてエネルギーを生成しています。

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➁無酸素系(解糖系)
解糖系はその名前の通り、糖(グリコーゲン)を消費して、乳酸に分解するエネルギーを生成するシステム

運動の強度の増大により、糖質の消費(燃焼)がより行われていきますが、酸素のない状態で糖質を代謝するため、強度が上がるにつれて、生成した際に蓄積される乳酸を除去しきれない運動強度となってしまいます。

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100m走などの高強度かつ短時間の運動ではエネルギーのほとんどがATP-CP系から供給され、高強度・1分弱の運動では解糖系が中心となります。

また、最大強度で運動した場合、ATP-CP系と解糖系を合わせても約40秒程度しか続きません。これは無酸素系のエネルギー源であるグリコーゲンの筋肉貯蔵量に限りがあるためです。

つまり、無酸素系のエネルギー生成では限られた時間内でのシステムであるということです。

疲労に関連する「乳酸の蓄積」について整理しておきます。

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