育成年代のトレーニングvol.4敏捷性【トレーナーマニュアルvol.75】

いつもお読みいただきありがとうございます。
C-I Baseballの佐藤康です。

前回までは2回にわたって「ジャンプ動作や腱機能」についてまとめてきました。まとめる中で敏捷性の要素である”方向転換能力”の向上には、Stretch-shortening cycle(SSC)の運動要素が一要因となっていることが挙げられておりました。

大学バレーボール選手の下肢筋群のSSCの能力を示すリバウンドジャンプ指数(RJ 指数)の測定にて、RJ 指数と方向転換能力との間に有意な相関がみられた。

有賀らの報告.2013

バスケットボール選手にリバウンドドロップジャンプを用いたプライオメトリックストレーニングを行った結果、方向転換走の記録が有意に短縮した。

図子の報告.2006

育成年代のトレーニング現場でも、敏捷性向上を目的としたラダーやミニハードルなどを利用したSAQトレーニング(SAQ:Speed/Agility/Quickness)が実践されている場面が多くみられます。

そのため、今回は「敏捷性」をテーマに、なぜ育成年代の時期にトレーニングを行うべきか?何をすべきか?を中心にまとめていきたいと思います。

敏捷性とは

まず、はじめに「敏捷性」についてまとめていきます。
スポーツ科学の分野では以下のように示されています。

敏捷性は、すばやく制御された方法で全身や体の一部を止めたり、始動したり、向きを変えたりする能力であり、動きの速度や状態を急に変化させるのに必要な技術と能力である。

Baechle,Earle&Wathen.2008

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敏捷性の構成要素は
「視覚・認知スピード」(上図左側)と
「方向転換スピード」(上図右側)の要素に大別されます。
言い換えれば、認知・感覚系の機能+フィジカル系機能といえます。

つまり刺激に対して素早く認知・入力し、
その情報を統合・処理して、
すばやく動くことができる能力が求められます。

そのため、
アジリティ能力を向上するためには、
両側面のアプローチが必要であるといえます。

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野球における敏捷性とは、走塁での方向転換やダッシュ・守備では打球のチャージでの加速→減速などといった要素が該当してきます。加えて、方向転換により起こる足底からの地面の反力を強く受ける場面は、投球やスイング動作にも反映できる要素であると捉えています。

直接的な野球の技術の面を踏まえた、
要素へのアプローチを考察していきます。


成長期に敏捷性を向上するメリット

つぎに、成長期に敏捷性を向上する点についてまとめていきます。成長期の選手に関わる上で、身体の成長・発達の観点を無視した指導はできません。

育成年代シリーズの記事では
何度か出させていただきましたが、
”スキャモンの発達曲線”を挙げます。

ここで着目しておきたいのが、
「神経型」の発達の軌跡です。
(20歳の値を100%として曲線で示したもの)

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「神経型」とは
”脳や神経系の働き”を表しており、図でも10歳頃までに大人とほぼ同じくらいまで発達していることが分かります。つまり、神経系の機能がもとになる敏捷性の能力の基礎の向上が10歳頃までにピークを迎えるということを意味しています。

そのため、敏捷性のトレーニングを実施するには成長期が最適な時期であり、刺激を加えれば加えるほど、その伸びも大きくなることが見込めます。「ゴールデンエイジ」と称される所以の一つです。

敏捷性の構成要素としての反応時間やステッピングの発達過程を知っておくことは、選手の敏捷性能力を向上させる上で重要であると考えられます。

▶反応時間に対する考察

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上記のスライドより、反応時間の短縮には情報処理に関するPMTが大きく関与しています。PMTは幼児期から成長期に、反応課題に対するステッピング能力も思春期前までがトレーニングの至適時期であることが報告されており、この時期に反応を速めるトレーニング(反応課題)を行うことが効果的であるとされています。

他の研究でも下記のような報告がされています。

反応時間は14歳位まで直線的に短縮し、その後成人値に達することが報告 されている。特に12歳頃までに顕著に短縮するため、この時期までが反応 時間のトレーナビリティーの高い時期であると考えられる。

広 瀬 統 一ら:体 力 科 学(2002)

成長期には速筋線維が発達し, パワーが大きくなり, またクイックネスも高まり敏捷性も向上するために, さまざまなスポーツ活動がアクティブにできるようになる。

小沢治夫:ステッピングテスト・スコアーの成長・加齡による変化.1997より

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パフォーマンス向上のための投球動作✖️足部【トレーナーマニュアルvol.74】

投球時の距骨下関節・横足根関節

投球時、軸足と踏み込み足の機能は異なります。
軸足:バランスを取る→蹴り出す
踏み込み足:加速した身体を支え、踏ん張り、力を逃す

軸足の機能はセットポジションで両足の支持基底面内にある重心を軸足に移動しバランスをとることや、Wind-upから捕手方向へ重心を移動するために足部を硬め蹴り出す役割があります。
踏み込み足は軸足から移動してきた身体を支えて踏ん張り、上半身の力を逃すようにしなければなりません。(イメージは車の回生ブレーキ)

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https://evdays.tepco.co.jp/entry/202205/31/000031より抜粋


足部で下記の動きが出来れば重心移動や上行性の良好な運動連鎖が遂行可能となります。

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AccelerationからFollow throughにかけてのポイントはステップ足の肢位と安定性です。加速してきた身体を急ブレーキや力が抜けないように踏み込み、止めなければいけません。

Acceleration時、接地が回内位になると下腿は内側に傾き股関節に力が入りにくくなります。そうなると骨盤の回旋量は低下、もしくは捕手方向に突っ込んでしまいます。

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●なぜステップ足の下腿が安定しないのか
●ステップ足を安定するためのエクササイズ

理想の足部の動き・距骨下関節不良肢位と投球フォーム・足部エクササイズを今回もお話しさせていただきます。

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トレーナーマニュアル2022

C-I Baseballでは
 ○野球現場編
 ○臨床編
2部構成で毎週記事を配信しております!
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野球トレーナーマニュアル|C-I baseball|note【C-I Baseballトレーナーのトレーナーマニュアル】 投球障害肩・肘、腰痛、捻挫、肉離れ、下肢障害など野球におけるnote.com

育成プログラム

C-I Baseballでは「野球トレーナーの輪」を広げるために「仲間」を募集しております!育成メンバーは随時募集中です!
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・・・・・・・・・・以下本文・・・・・・・・・・

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距骨下関節の肢位

距骨下関節肢位は中間位・回内位・回外位の3通りあります。
距骨下関節には回内・回外を分ける『中間点』があり、その肢位は左右により中間位は異なります。
私は非荷重位(OKC)で評価を行います。
異なる中間位の評価方法は過去の記事をご参照ください。

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投球時足部の肢位と動き

Accelerationからの足部機能はブレーキをかけてその力を下肢→骨盤→体幹→上肢といったように上行性へのエネルギーが伝わります。

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投球障害肩の病態と動作|小林弘幸noteから抜粋
※松久孝行 他:投球動作解析の検討. 肩関節. 26巻第2号. 401-405. 2002
引用改変


Late cockingでの足部の機能がAcceleration、Follow throughと影響します。Accelerationでは距骨下関節は中間位になることでステップ脚は安定します。

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回内位で接地するとステップ脚の膝は内側(Knee-in)に入ります。

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Acceleration 理想のステップ足肢位

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Accelerationでは距骨下関節肢位は中間位が理想です。

Follow through  理想のステップ足肢位

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距骨下関節不良肢位と投球フォーム

ステップ足不良肢位

ステップ足距骨下関節が回内しているために下腿の傾きが大きくなるのと下腿内旋がみられます。

回内接地はBall releaseからFollow throughの肩関節まで影響が及びます。
回内接地は足趾が使いにくい状態になり膝がKnee-in、股関節内転内旋、骨盤左回旋低下、体幹前傾低下、Follow throughで肩関節後面のストレス増大します。

●回内接地➡️足趾機能低下➡️足底後方重心
●回内接地➡️下腿内旋、内側傾斜➡️ Knee-in➡️股関節内転・内旋➡️骨盤左回旋・前傾低下➡️体幹前傾・回旋低下➡️肩関節内転・内旋増大

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パフォーマンスを上げるための体幹トレーニング−実践編①−【トレーナーマニュアルvol.73】

C-I Baseballの増田稜輔です。
今回も野球現場で活動するために必要な知識をお伝えしていきます。

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今回のテーマは
「パフォーマンスを上げるための体幹トレーニング〜実践編①〜」
ついてお話していきます。
体幹トレーニングの実践編は全2回のシリーズでトレーニング方法と目的などを中心に解説していきます。
実践編①では
・体幹トレーニングに必要な可動性の獲得
・腹腔内圧
について解説していきます。

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はじめに

体幹トレーニングは数多くのチームで取り入れられていますが
ただやるだけや時間調整に使われるなど優先順位として低くなっている印象です。

体幹は各パフォーマンス動作やウエイトトレーニングにおいても
必要になる部分であり、動作の土台になります。
この土台部分を疎かにしてしまうと、パフォーマンスが向上しなかったり、障害を起こしてしまうリスクがあります。
そのため、野球の練習の前やウエイトトレーニングの前にと入りれてもらえると非常に有効なメニューです。

今回は体幹トレーニングを行う上で、必要になる
・可動性の獲得
・腹腔内圧
について解説していきます。

体幹トレーニングの位置付けとタイミング

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体幹トレーニングは野球パフォーマンスの土台になる部分です。
可動性を獲得し、各動作に対応した姿勢を取れるようになり
その姿勢をコントロールする。
姿勢をコントロールしたら各動作をコントロールしていきます。
野球パフォーマンスを向上させるには必要不可欠な要素であると私は考えています。

なので、トレーニングを効果を高めるために適切は方法やタイミングで行う必要があります。

体幹トレーニングを行うタイミングとは?

みなさんは体幹トレーニングを「いつ」行っていますか?
・練習の合間
・練習の後(暗くなりグラウンドが使えないから体幹やるか・・・)
・雨の日
チームによって様々であると思います。

私が考えている体幹トレーニングのタイミングは
・競技スキル練習の前
・ウエイトやプライオメトリクストレーニングの前
など、パフォーマンスピラミッドの上層に位置する者を行う前に体幹トレーニングを取り入れています。

前述しているように、体幹トレーニングは土台になる物です。
パフォーマンスを向上させたり、障害を予防するために行います。
なので、雨の日だけ・・・練習の後・・・ではその効果を最大限に活かすことが出来ません。

W-UP→腹腔内圧向上メニュー→姿勢制御→動的安定性・動作コントロール→競技練習orトレーニング
上記なような順番で行えると良いと思います。
つまり、その日の練習メニューによって求められる体幹機能も変化します。
なので、毎日目的に応じてメニューを変更しながら体幹トレーニングを取り入れることが良いと思います。
ぜひ参考にしてみてください!!

体幹トレーニングの前提条件

トレーニングに入る前には前提条件を整えておく必要があります。
前提とは
ある物事をなす土台となるものです。
つまり体幹トレーニングの土台となるものの条件を整えることが求められます。

体幹のトレーニングのゴールは
「動的安定性と四肢の運動時に連動する体幹機能」です。
このゴールへ向かうための前提条件を考える必要があります。

動的安定性では全身の筋肉を使用し四肢の運動を行いながら身体を安定させます。
この時に
・筋の柔軟性が低下していて可動域が制限されている
・姿勢を制御するための腹腔内圧が低下している
このような状態では、ゴールを達成することは出来ないです。

なので、体幹トレーニング目的である動的安定性を高める前に
「前提条件」である
可動性と腹腔内圧のコントロールを行う必要があります。

可動性の獲得

可動性の改善・柔軟性の改善の方法では
静的なストレッチや動的ストレッチなど様々な方法はありますが
体幹トレーニングのゴールを動的安定性にするのであれば
各関節運動・他関節の運動を伴う可動性を獲得する必要があります。
つまり、単純な可動性ではなく「機能する可動性」を獲得するようにします。

胸郭可動性メニュー

胸郭の可動性は体幹トレーニングを開始する前に必ず必要な要素になります。
特に下部胸椎の可動性は重要になり、野球選手の多くは屈曲性の低下を呈しています。
下部胸椎が伸展位の状態では、肋骨が外旋し呼気時の内旋運動を低下させ
腹腔内圧も低下します。また、下部肋骨を起始にする腹斜筋筋の機能低下も引き起こします。

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野球選手のための前鋸筋トレーニング【トレーナーマニュアルvol.72】

C-I Baseball 記事【臨床編】で投球障害についての記事を担当しております新海 貴史です。

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普段は整形外科クリニックで投球障害の選手のリハビリテーションを行い、競技復帰をサポートしております。私の記事では臨床目線でお話させていただければと思います。

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今回の記事では野球選手のための前鋸筋トレーニングについて私なりの意見も交えながらご説明できればと思います。
最後までお読みいただけると幸いです。

初めに

今回の記事では野球選手のための前鋸筋トレーニングについて、投球動作との関連やパフォーマンスアップという観点で解説していきたいと思います。

前鋸筋の解剖学

まずは前鋸筋の解剖学について簡単に説明していきます。
前鋸筋の筋束は大きく3つに分類されています。

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前鋸筋の3つの筋束

上部筋束:第1, 2肋骨→肩甲骨上角 【肩甲骨下方回旋・前傾】
中部筋束:第2, 3肋骨→肩甲骨内側縁
肩甲骨外転】
下部筋束:第4肋骨以下→肩甲骨下角【肩甲骨外転・上方回旋】

またそれぞれの筋束は他の隣接した筋群と連結しています。

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上部筋束の筋連結
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中部筋束の筋連結
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下部筋束の筋連結

上部筋束:肩甲挙筋と連結
中部筋束:大・小菱形筋と連結
下部筋束:大菱形筋、外腹斜筋と連結

トレーナーやセラピストの方で徒手的に介入をする場合は、これらの筋連結を考慮したアプローチをすると効果的かと思います。具体的なアプローチはここでは割愛します。

投球障害と前鋸筋

前鋸筋は投球障害やパフォーマンスの観点からさまざまな報告がされています。

アライメントに関してですが、
前鋸筋の機能不全があると肩甲骨内側縁の突出(winging)が生じることは有名かと思います。
またそのような状態では肩甲骨は胸郭に対して不安定な状態になりますので腱板機能も発揮しにくい環境となります。

・腱板機能を十分に発揮するためには肩甲骨を胸郭に固定する必要がある.
 肩甲骨が胸郭上に固定されなければ二次的に腱板機能も阻害されてしまう.
・肩甲骨の固定性が低下すると、肩関節挙上時の上方回旋が減少し肩甲上腕リズムを乱す要因となる.

高村隆:投球障害の運動療法.臨床スポーツ医学臨時増刊号 野球の医学,2015

肩甲骨のwinging➡︎内旋角度増加はインターナルインピンジメントを引き起こす可能性も高くなります。

野球選手の肩甲骨内方回旋角度が増加している場合、あるいは上方回旋角度が減少している場合には、インターナルインピンジメントによる腱板損傷や関節唇損傷の危険性が高くなるため注意が必要である.

三幡輝久:屍体肩バイオメカニクス研究からみた投球障害肩:
インターナルインピンジメントに影響を及ぼす肩関節コンディション.
Orthopaedics投球障害肩の診療-予防・治療・復帰-,2017

投球時の肩関節痛を有する選手では肩甲骨の安定性低下を認める場合が有意に多かったという報告もあります。

大学野球部の新入生を対象としたメディカルチェックにおいて、投球障害肩・肘を有する選手の身体機能を比較検討したところ、肩痛あり群は肩痛なし群と比較して、EPT(Elbow Push Test)の陽性者が有意に多かった.

安本慎也, 他.:大学野球選手に対するメディカルチェック―身体機能と肩肘の痛みとの関連―
日本整形外科スポーツ医学会雑誌, 2022

EPTは肩関節の安定性を評価するテストになりますが方法については次項で説明します。

このように前鋸筋の機能低下が生じている選手は肩関節痛を引き起こしやすい可能性があることが分かります。

投球動作と前鋸筋

投球動作の中ではレイトコッキング(ステップ足の着地から最大外旋まで)で高い筋活動を認めることが報告されています。

前鋸筋はレイトコッキング期において高い遠心性筋活動を認める.

橘内基純,他:投球動作における肩甲骨周囲筋群の筋活動特性.スポーツ科学研究,2011

またレイトコッキングにおけるテイクバックで肩甲骨が内転した状態から腕を振り出す際に肩甲骨は上方回旋&外転の動きが生じますがそのフェーズで前鋸筋が強く働きます。
ここで前鋸筋がしっかりと働いてくれることによって、リリースまで十分な加速距離を生み出すことができます。

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前鋸筋機能の評価

ここからは選手に実際に行う評価になります。
誰でも実施可能で簡易なテストをご紹介しますのでぜひやってみて下さい。

◉上肢挙上位での出力テスト
臨床で投球障害の野球選手を評価してみるとこのテストが陽性になる場合がほとんどです。
肩関節の状態把握や復帰の際の基準として重要視しています。

・肩関節屈曲約120°とし、肩甲骨が上方回旋・後傾したポジションをとります。
・前腕もしくは上腕に抵抗をかけてこの姿勢を保持してもらいます。
・肩甲骨のwingingや肩挙上位が保てなければ陽性と判断します。

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ピッチングスタイルについて考える②【トレーナーマニュアルvol.71】

C-I Baseballの高橋塁です。

C-IBaseballの育成プログラムも第3期になっています。

C-I Baseballのホームページも完成しました。

C-IBaseball−野球に関わる全ての人の学びの輪

まずは、自己紹介から

高橋塁プロフ写真①


また、同時に、私自身がMetaGate(メタゲート)という『野球技術系サイト』も運営しております。

ご興味あります方は、一度、ご覧ください。

META GATE | 2.5次元をとらえろ


【note】

Meta Gate【メタゲート】|note

【オンラインサロン】

オンラインサロンLP | META GATE


【Youtube】

BaseballスーパースローチャンネルMeta Gate [メタゲート]


今回は育成プログラム第3期、私の担当の第3回になります。

前回から『ピッチングスタイルについて考える』について掲載させていただいています。

前回は上記の記事を参考にしていただきたいのですが、まずは、日本人と外国人の投球の違いついてお話させていただきました。

その後、ピッチングには、体幹、股関節、腕、ステップ脚、グラブの5つのポイントで、組合せがあるという話で、体幹、股関節までのお話を前回までしました。

組み合わせ


今回は、腕の組み合わせから引き続きお話をしていきたいと思います。

腕の組み合わせ

まずは、腕の動かし方は「回旋投げ」と「側屈投げ」の2つで、大きく2つに分けることができます。

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投球障害肩に必要な”小円筋”のエコー【トレーナーマニュアルvol.70】

C-I Baseballの小林弘幸です。
今月で私たちの活動も3シーズン目を迎えました。
これまで多くの方々にいつもマガジンの記事をお読みいただきありがとうございます!

C-I Baseball3シーズン目は
「実践力」をテーマにライター一同noteを配信していきます!

今シーズンの私が担当する配信では、「エコー」を通じて
肩関節の解剖とそれに対する実際のアプローチを学んでいこうという
コンセプトの元、Noteを書かせていただきます。

元NPBチームドクターのスポーツDrと一緒にエコーを用いて、
野球選手の投球障害肩を診てきました。

投球障害肩になってしまうと、
『痛くて投げられない』
『何をしても良くならない』
『自分のプレーに集中できない』
『野球が楽しくない』
と悪循環になってしまいます。

私はそのような投球【障害】肩を持った選手に対し、
エコーを通じて、細かな解剖を理解しアプローチすることで
治療効果が奏功することを経験しました。

もちろんそれだけでは解決しないことも多数ありますが、
ケガからの復帰をするということを考えると、
細かな解剖を学んでいくということは必要なのではないかと考えています。

解剖書で見る肩関節だけではなく、
エコーを通じて、3次元的に捉える肩関節を一緒に学んでいけたらと思います。

投球障害肩における小円筋

投球障害に対する小円筋は、
前回の許可金同様に非常に関係が深いと感じています。

いわゆる『肩関節後方タイトネス』に対しては、
小円筋が関与していると感じています。

投球時の肩関節にかかるストレスは、
外旋トルク :最大肩外旋直前、17.7±3.5N.m 
肩関節牽引力:ボールリリース時(BR)またはその直後に、214.7 +/- 47.2 N
となっています。

・上腕骨の長軸を中心とした外旋トルクは、最大肩外旋直前に17.7±3.5N.m(2.7%±0.3%体重×身長)のピーク値に達した。214.7 +/- 47.2 N (49.8% +/- 8.3% 体重)の肩関節牽引力は、ボールリリース時、またはその直後に発生した。
※Sabick MB, Kim YK, Torry MR, Keirns MA, Hawkins RJ. Biomechanics of the shoulder in youth baseball pitchers: implications for the development of proximal humeral epiphysiolysis and humeral retrotorsion. Am J Sports Med. 2005 Nov;33(11):1716-22.

BRやその直後は、
内旋運動に対抗する外旋筋が遠心性収縮し、伴って肩関節牽引力も加わるため、
小円筋(棘下筋)にかかる負担が非常に大きくなると感じています。

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図示するとわかりやすいので
下記の図を参考にイメージしてください。

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1球投げるごとに、
小円筋の遠心性収縮が働くことがわかります。

さらに
小円筋を含めた、肩甲上腕関節の後方軟部組織のタイトネスは
投球障害に直接関与します。

・内旋と水平内転の健患差が投球障害側では低下している
※Myers JB, Laudner KG, Pasquale MR, Bradley JP, Lephart SM. Glenohumeral range of motion deficits and posterior shoulder tightness in throwers with pathologic internal impingement. Am J Sports Med. 2006 Mar;34(3):385-91.

なので、
小円筋のタイトネスは、投球障害では
改善しなくてはならない問題と考えております。

投球後の小円筋のタイトネスに関しては、一種の外傷だと考えています。

小円筋の解剖

①支配神経:腋窩神経

支配神経はC5~6になります。

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後神経束へ入り込んだ神経は、
その後分岐し、上腕骨頭の下を通り後方へ走行します。

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オーバーヘッドスポーツでは、
上肢挙上位での神経の走行が重要ですので、
挙上位の模式図もお示しします。

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上腕骨頭の真下を通って
腋窩神経が走行するのがわかります。

関節包に対する神経支配として、
腋窩神経は関節包の
下方に位置します。

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また、腋窩神経からの分岐としては、多数の組織へ分岐していきます。

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・腋窩神経からの分枝は、下記へ分岐する。
SAB(肩峰下滑液包):12/20
LHB(上腕二頭筋長頭腱):8/20
下方関節包:16/20
後方関節包:3/20
LHT(上腕三頭筋長頭腱):3/20
※Nasu H, Nimura A, Yamaguchi K, Akita K. Distribution of the axillary nerve to the subacromial bursa and the area around the long head of the biceps tendon. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2015 Sep;23(9):2651-7.

肩の後方以外に疼痛を訴える選手は、
腋窩神経の絞扼等が考えられるかもしれません。

腋窩神経の絞扼があり、
肩関節上・前・下方の疼痛がある症例は、
小円筋の機能障害が隠れているかもしれません。

②筋の付着部

起始:肩甲骨後面の外側縁
停止:上腕骨の大結節、肩関節包

小円筋は、肩の後下方に位置します。

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小円筋は、肩関節のいわゆる
3rdポジションでの内旋位で一番伸長します。

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また、後方の関節包に付着するため、
長期間に渡り軽微な拘縮が生じていると、
後方関節包の肥厚が生じてしまいます。

身体評価

可動域:肩関節屈曲位内旋(3rd内旋)
筋力:Horn blower Test

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育成年代のトレーニングvol.3-プライオメトリクス-【トレーナーマニュアルvol.69】

C-I Baseballの佐藤康です。
前回の記事では、
スプリント能力を上げるために求める
「ジャンプ動作と腱の機能」に着目し、
お伝えさせていただきました。

ジャンプ動作は筋力やパワーの向上が期待できる反面、強い運動強度により障害を招くリスクも生じます。そのためには、運動時の適した姿勢や機能、頻度などの負荷設定に注意しなくてはいけません。

ジャンプ動作を行うにあたっては、賛否両論ありますが、今回の記事では、前回の内容に加え、ジャンプトレーニングを行う目的から実践まで動画も交えながら、野球現場で導入する方法をまとめていきます。

https://twitter.com/C_IBaseball2020/status/1569816576886722561?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1569816576886722561%7Ctwgr%5Eb6cdce5863af41b2536cb6f3260e74f8cae79a7e%7Ctwcon%5Es1_c10&ref_url=https%3A%2F%2Fnote.com%2Fko_bmk%2Fn%2Fn44dd86a33b12

なぜプライオメトリクスに着目したのか?
育成年代に必要か?

はじめに、私がなぜプライオメトリクスに着目したのかに触れていきます。

➊野球の競技特性
➋成長期の基礎運動能力・神経系の発達過程

野球の競技特性より、競技中の攻守場面において、ワンプレーは数秒から十数秒で行われます。また、プレーの場面場面において、瞬間的に爆発的な力の発揮が求められ、それが繰り返される競技といえます。

すなわち、1試合を通してパフォーマンスを発揮し続けるためには、プライオメトリクスの概念が重要な位置を占めると捉えています。

瞬発的な動作が常に要求される運動では、特に筋・腱の瞬間的に引き伸ばされて縮むときに大きな力が発揮される「Stretch-shortening cycle(SSC)
により、瞬発的な力発揮能力(素早い切り返しや爆発的なパワーの発揮など)の強化が見込めます。

すなわち、SSCを効果的に使うための
トレーニングが「プライオメトリクス」です。

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プライオメトリクスに代表されるジャンプトレーニングでは、直接的なジャンプ能力に限らず、さまざまな体力要素を向上させられるとのエビデンスが示されています。

走る・跳ぶ・投げる動作に関連付けられるスポーツ活動は、動作スキルと神経筋系の発達の観点からも重視されている。子供にとって1~5秒程度の爆発的、高速の運動が理想的である。子供は神経筋系に関与するプライオメトリクスと高速の運動によって、運動能力の向上が促進されることが明らかになっている。

書籍:アスレティック・ムーブメントスキルより引用

その他、「ジャンプトレーニングにより、下肢の筋力やパワーを向上させる手段としても有効」とされており、「スプリント能力をはじめ、方向転換能力やアジリティにも良い影響を与える」と、さまざまな文献でも多く報告されています。

育成年代に導入するメリット

そのような専門的な動きは
「カラダの形態的な成長が落ち着いてきてからではないか?」と問われることもありますが、大人に求める効果とはやや相違があり、成長期の時期から求める重要な要素をまとめていきます。

➊身体形態的側面
➋神経系の発達

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パフォーマンス向上のための投球動作×足部【トレーナーマニュアルvol.68】

Early cockingからAccelerationにかけてのポイントは『ステップ足の肢位と下腿の傾き』です。

接地が回内位になると下腿は内側に傾きKnee-inになります。そうなると骨盤の回旋量は低下し上半身や肩・肘に負担がかかり、コントロールも悪くなります。

●なぜステップ足の下腿が安定しないのか
●ステップ足を安定するためのエクササイズ

【今回の内容】
①理想の足部の動き
②距骨下関節不良肢位と投球フォーム
③足部エクササイズを今回はお話しさせていただきます。

投球動作や送球が乱れる選手はEarly cockingの軸足Late cockingのステップ足に注意してみましょう!

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距骨下関節の肢位

距骨下関節肢位は中間位・回内位・回外位の3通りあります。距骨下関節には回内・回外を分ける『中間点』があり、その肢位は左右により中間位は異なります。私は非荷重位(OKC)で評価を行います。

⬇️⬇️⬇️異なる中間位の評価方法は過去の記事をご参照ください⬇️⬇️⬇️

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投球時の距骨下関節・横足根関節

投球時、軸足と踏み込み足の機能は異なります。
 軸足:バランスを取る→蹴り出す
 踏み込み足:加速した身体を支え、踏ん張り、力を逃す

軸足の機能はセットポジションで両足の支持基底面内にある重心を軸足に移動しバランスをとることや、Wind-upから捕手方向へ重心を移動するために足部を硬め蹴り出す役割があります。

踏み込み足は軸足から移動してきた身体を支えて踏ん張り、上半身の力を逃すようにしなければなりません。

上記の動きが足部で出来れば重心移動や上行性の良好な運動連鎖が遂行可能となります。

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投球時足部の肢位と動き

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Early cocking(前回の復習)

Early cockingで軸足距骨下関節の力を支持から蹴り出しへ使うことができると、骨盤の早期回旋抑制やステップ足のKnee-in抑制ができます。

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Late cocking 軸足とステップ足の機能

Early cockingから軸足距骨下関節は回外方向へ動くことで足部を剛体にしながら母趾で蹴り出しを行います。

Late cockingはステップ足距骨下関節は中間位で接地し支持しながら骨盤が回旋する相です。

《Late cocking軸足の機能》
 ●距骨下関節の理想は回外位
 ●蹴り出し

《Late cockingステップ足の機能》
 ●距骨下関節の理想は中間位

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ステップ足距骨下関節はEarly cockingからの力を逃さずに、身体を支え骨盤を回旋させて肩甲骨・上肢へ力を伝達できる機能が必要です。

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ステップ足の足部機能と下腿

理想は接地したときから距骨下関節は中間位で下腿は地面に対して垂直です。この時の大腿(膝)は捕手方向に向いていないとボールリリースにかけて下肢が動いてしまうため安定しません。

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Early cocking〜Late cocking

ステップ足は中間位接地することでステップ足下腿の崩れがなくなります。

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Late cocking〜Acceleration

Late cockingからステップ足距骨下関節は中間位接地で下腿が正面を向くことで骨盤の左回旋が行いやすくなり体幹の回旋もスムースになります。

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回内接地すると足底は地面に対して内側部分しか接地していないため下腿は内側に傾きます。Accelerationに向けて距骨下関節は中間位になることで下腿の軸は地面に対して垂直に近づいていきます。

Early cockingで回内接地し下腿が傾いてしまうとAccelerationにかけてステップ脚は不安定になり上行性の運動連鎖がスムースに行われなくなります。

プロ野球の投手を見ているとステップ脚は接地から下腿・大腿はほとんど動かずに骨盤の回旋が行われています。(YouTubeなどで見ることができます)

距骨下関節不良肢位と投球フォーム

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軸足不良肢位

《軸足距骨下関節肢位がステップ足に影響を及ぼすパターン》
軸足距骨下関節が回内
しているために下腿の傾きが大きくなるのと下腿内旋がみられます。この状態では重心が身体の前方(写真だとつま先側)に移動してしまうため、ステップ足股関節は内転内旋傾向になり、外転外旋が行いにくくなります。その結果ステップ足足部は回内しながら接地します。

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ステップ足不良肢位

ステップ足が回内位で接地すると下腿は内側に傾きます。
回内位だと足趾が使いにくい状態になり膝が外反し股関節内旋、骨盤の左回旋量低下、体幹投球側傾斜、肩甲骨下制が起こりやすくなります。

不安定例①

足底内側接地すると床反力で一気に回外位になります。
下のスライドの写真真ん中では距骨下関節回内位で下腿は内側に傾いています。下腿の傾きによるknee-inにより骨盤の回旋がスムースに行われません。

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不安定例②

Early cockingでステップ足踵内側接地し回内位で全面接地します。
ステップ足が全面接地する時の底屈速度が速いく、回内接地することで足底からの床反力が外後方に向かうため骨盤のswayが見られます。

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パフォーマンスを上げるための体幹トレーニング−理論編−【トレーナーマニュアルvol.67】

C-I Baseballの増田稜輔です。
今回も野球現場で活動して方・こらから野球現場に出たい方へ
トレーニングに関する情報をお伝えしていきます。

今回のテーマは
「パフォーマンスを上げるための体幹トレーニング〜理論編〜」
ついてお話していきます。

はじめに

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数年前から球速や飛距離など野球パフォーマンスを上げるために
「体幹トレーニング」に取り組む選手やチームが多くなりました。
また、障害予防の観点からも「体幹の安定性」が重要と
されてきています。

近年のSNSの発達により「体幹トレーニング」を検索すれば多くの方法を知ることが出来ます。
その中で「体幹トレーニング」という言葉が先行し
体幹トレーニングの意図や目的を見落としてしまっているケースがあります。

野球現場に行くと
・プランク1分
・下級生はとりあえず体幹トレーニングから
・時間が余ったから体幹トレーニング

このように「体幹トレーニング」が安易に行われているケースがあります。

限られた時間の中で取り組むメニューなので
とりあえず体幹トレーニングではなく
・体幹トレーニングを行う理由
・体幹トレーニングの効果
・体幹トレーニングの選択
この辺りをしっかり考え、効果を最大限活かすトレーニングにしていきましょう!

今回のnoteがそのきっかけになれば幸いです

体幹とは

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皆さんもご承知かと思いますが基本的なところから解説していきます。

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体幹とは
体幹とは筋肉を表す言葉ではなく
身体における四肢・頭部を除いた「部位」を示す言葉です
ここには肋骨・脊柱・骨盤・中枢神経や内臓系が存在します。
体幹筋とは
体幹筋は脊柱の安定性に関与する筋群を表します。
機能的な役割から2つの分類されます

・ローカルシステム
体幹深層で脊柱に起始停止を持つ筋が属し腰椎の弯曲や椎体間の機械的安定性などの局所 の調節に関与しています。
[腹横筋・多裂筋・骨盤底筋群・横隔膜など]

・グローバルシステム
胸郭と骨盤に起始停止を持つ大きな筋が属し脊柱全体の運動を調節しながら、体幹に加わる外的負荷と均衡を保っています。
[腹直筋・外腹斜筋・内腹斜筋・脊柱起立筋など]
※内腹斜筋はローカル・グローバルシステムの両方に含まれる場合もあります

イメージとしては
ローカルシステムが「体幹筋」と言われることが多いですが
2つのシステムが協調的に働くことで、体幹の機能を果たします。

体幹トレーニング=プランク??

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体幹トレーニングの王道といえば「プランクトレーニング」だと思います。
私自身も選手時代に経験しましたし、皆さんも同様のご経験があると思います。

では、このプランクトレーニングは目的や得られる効果はなんでしょうか?効果としては下記のようなことが考えられると思います。

・体幹筋の強化
・腹圧を上げる
・脊柱を安定させる
・姿勢を保持する

皆さん、体幹筋を強化を目的にプランクトレーニングしていましたか?
皆さんは体幹筋を強化した先に球速アップや飛距離アップを目的にして
プランクに取り組んでいたと思います。

私の個人的な考えでは
球速や飛距離など野球パフォーマンスに繋げるためにトレーニングとしては
「プランクトレーニング」は選択すべきではないと思います。

「プランクトレーニング」を否定するのではなく
「目的としている効果」に対する「トレーニングの選択」に相違があると考えているからです。

パフォーマンスアップに体幹筋の活動や体幹の機能は非常に重要な要素です。
そのため、「体幹トレーニング」に対してもう少し深く考える必要があります。

体幹に求められる機能

ここからは体幹に求められる機能を考えていきましょう。
体幹の機能にも種類があります。つまり目的によってトレーニング選択するにはそれぞれの機能を理解する必要があります。

野球パフォーマンスに繋げる「体幹トレーニング」として
腹横筋や腹斜筋が注目されています。
腹横筋の機能を高めることで、下部体幹を安定させる
回旋スポーツである野球では腹斜筋の出力が重要
など効果は様々です。

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Gray cookのMovementにこんな表現がありました。
体幹の1つの筋群のみを選択的にトレーニングしても
Aの動作では正常に働いても
Bの動作では筋の働きが不十分になる可能性がある
と表現されています。

私もこの考えに共感でき
野球のように四肢の運動をダイナミックに行うスポーツでは
特定のパターンだけでなく様々な動作パターンで体幹が機能することが求められます。

体幹に求められる機能分類

体幹トレーニングにも種類があり、どの機能に対して行うのかを選択していきます。

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・腹腔内圧の上昇(体幹の剛体化)
・先行的筋活動(姿勢制御)
・動的安定性(運動制御)

腹腔内圧の上昇(体幹の剛体化)

腹腔内圧は、腹腔構成筋群の同時収縮で増加し、安定性や脊柱の伸展モーメントを産生します。腹腔内圧の上昇には、横隔膜、腹横筋、骨盤底筋などが重要となります。

この腹腔内圧には姿勢と呼吸が深く関係してきます。

胸腔内圧と姿勢

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野球選手のための腱板トレーニング【トレーナーマニュアルvol.66】

C-I Baseballで投球障害についての記事を担当しております新海 貴史と申します。

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普段は整形外科クリニックで投球障害の選手のリハビリテーションを行い、競技復帰をサポートしております。私の記事では臨床目線でお話させていただければと思います。

今回の記事では野球選手のための腱板トレーニングについて私なりの意見も交えながらご説明できればと思います。
最後までお読みいただけると幸いです。

初めに

今回の記事では野球選手のための腱板トレーニングについて、投球障害からの復帰という観点で解説していきたいと思います。

セルフエクササイズというよりはセラピストやトレーナーがいる場合に行う方法メインで解説して行きたいと思います。

回旋筋腱板(Rotator Cuff)とは?

回旋筋腱板(以下、腱板)とは皆様もご存知の通り、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋のことを指します。
三角筋、大胸筋、広背筋などは表層に存在する筋群であるため通称”アウターマッスル”と呼ばれますが、腱板はより関節に近い場所に存在するため肩関節における”インナーマッスル”ということになります。

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回旋筋腱板(rotator cuff)


腱板の役割は、

✔︎ stabilizer
 上腕骨頭の動的な安定化
✔︎ depressor
 骨頭の下制、インピンジメント防止
✔︎ rotator
 回旋筋

✔︎ accessory ligament 
 靭帯の補助

などがあり、構造的に不安定である肩関節を安定させるために重要な役割を担っています。

腱板機能に影響を与える因子

ここからは腱板機能に影響を与える因子を8つに分けて説明していきます。

1.腹圧機能(胸骨下角)

静的な胸骨下角は70~90度と言われています。
胸骨下角のアライメント不良は腹部の筋の「長さ-張力曲線」の関係より、
腹圧機能の低下を招き、土台となる体幹部分が不安定な状態になってしまいます。
土台の安定性を欠く事で肩甲骨の安定性も失われ、腱板の出力は低下します。

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胸骨下角の徒手誘導によっても腱板の出力は変化するため、静的な位置取りも重要となります。

さらに、その位置を保とうとする安静時の筋緊張により、動的に胸骨下角のコントロールが出来ていれば、腹斜筋―前鋸筋などの筋連結により肩甲骨の安定性が向上して、腱板が働きやすくなります。

また胸骨下角が拡大して、肋骨が外旋傾向の場合、肩関節外旋などの際に本来主に働くべき肩関節の動く割合が低下します。
代償的に肩甲骨の内転や外旋の動作の比率が高まる傾向
となり、肩関節の使用率が低下することで機能低下が加速すると考えています。

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2.肩甲骨位置

肩甲骨の位置についてはしっかり”基準点に基づいて評価すべき”かと思います。
ただ右側が下がっているから右肩下がりではなく、基準点に位置していれば右が正常で左肩が上がっていると評価すべきです。
基準点に対する肩甲骨のズレ幅が腱板の働きに大きく影響しており、しっかり捉えることが重要となります。

①肩甲骨の高さ

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肩甲骨上角は一般的にTh1とTh2の間に存在すると言われていますが、そこに位置しているかを評価する事が非常に重要です。
今回着目している腱板もその位置に大きく影響を受けており、その位置に誘導して出力を確認すると出力が高くなることを確かめる事が出来るかと思います。

そのため、腱板の強化を行う時はしっかり肩甲骨の高さを整えた上でエクササイズを実施することが重要と考えております。
その位置でエクササイズする事により、腱板の強化に加え肩甲骨をその位置で保持するための肩甲骨保持筋の賦活にも繋がります。

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肩甲骨の位置を修正すると最初は自分の今までの位置に対して違和感を感じる事があるかと思いますが、それは認知面の問題であり、運動を繰り返し行い学習することによって修正されていくかと思います。
ぜひ継続して取り組んでみてください。

②肩甲骨の回旋角度・棘鎖角

肩甲骨の高さに加え、肩甲骨の回旋具合も腱板の機能に大きな影響を与えます。鎖骨と肩甲棘が成す角を「棘鎖角」と言いますが、それぞれ前額面に対して30度ずつ角度を成しており、合計60度で棘鎖角を成しています。腱板の機能はその棘鎖角に影響を受けます。
肩の1stポジションにおいて棘鎖角が60度の場合、筋出力は高くなるかと思います。

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チューブなどで腱板のエクササイズを実施する時に肩甲骨の回旋の位置を正して行う事が非常に重要となります。

肩甲骨が前方突出しているような選手に対しては肩甲骨の位置を修正させた状態でエクササイズを指導する事があるかと思いますが、過剰に内転・外旋させている状態ではアウターと腱板の出力の不均衡が起きるため注意が必要です。程度の問題があるため、その時は肩甲棘が30度の角度の位置になる程度に留めておくようにすると良いかと思います。
『案外、寄せない方がいいんだな…。』と感じる事でしょう。

3.上腕骨頭の位置

これは基本的な事になりますが、関節窩に対して上腕骨頭がどの位置にいるのかによって腱板の出力は大きく異なります。

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元々定位置でありながら筋や関節包の伸張性低下によりobligate translationするようなケースでは、初期は出力は良いが最終域に近付くと出力が低下するのが特徴かと思います。
一方、定位置の時点でその位置が不良な場合は中間位の時点で出力が低下しています。そのため、出力を評価する場合は中間位での出力と最終域近くでの出力と少なくとも2つは見るべきかと思います。

定位置がずれているかどうかの確認は骨頭を前方に偏位させた場合の出力と後方に偏位させた場合の出力の両方をチェックしてみると評価しやすいかと思います。
臨床的には多くの選手は骨頭が前方に偏位しているため、骨頭を押し込んだ状態で出力をチェックすると向上することが確認出来るかと思います。
またその押し込み具合に関しても、どの程度まで押し込むとより良い出力になるのかを確認する事で治療するべき移動の幅も確認出来るため、方向に加えその移動量も意識して介入する事をお勧めします。

4.筋腱の滑走性

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過剰使用などにより筋・腱の滑走制限が生じているケースの場合は滑走不全が生じている部位に対して、関節運動の時に筋・腱の動きを促す方向に誘導する事で出力の向上を認めます
また出力低下のみならず、滑走不全が起きている場合は滑走不良部位に集約するようなストレスをかけると、そこで圧縮ストレスが生じて痛みが生じる場合があります。
棘下筋が棘下窩外側で脂肪体と滑走不良になって、肩外旋動作時に後方でインピンジメントするようなケースがそれにあたるかと思います。

5.筋硬結

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今度は先程と異なり、逆方向に誘導すべきケースです。代表的なケースは腱板損傷などにより筋硬結が生じている場合です。
そのようなケースでは筋全長の中で過度に短縮している部位と過度に伸張されている部分が混在しており、過度な伸張が加わっている部分には大きなストレスが生じます。この場合、短縮している部分を引っぱり出す事によって筋の伸張の割合を均一にする事により局所のストレスが減り、出力が向上します。
現状では症状もなく問題がないと自覚する選手の中にも筋硬結は多く存在しており、この硬結に伴い腱損傷に移行する場合もあるかと思います。
これを見極められる能力を身につけるためにも日頃の評価で意識するべき着眼点かと思います。

6.手根骨のアーチ

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遠位の関節機能によっても腱板の出力は変化します。

手根骨のアーチがしっかり保たれている状態の場合、橈骨手根関節への適切な軸圧が保たれた状態となり、腱板の出力は安定します
一方、手根骨のアーチが低下した状態では、肩甲上腕関節への圧が低下し、肩関節が不安定となります。その代償として抵抗運動に対して過剰な努力が必要な状態となってしまいます。

手関節背屈時に手首を突き出すような動作が習慣化している場合、さらに上腕骨頭の前方偏位を助長してしまうため、安定性が失われてさらなる過剰努力を強いる事となります。

7.グリップの選択(ベンチプレス編)

高校生以上であればトレーニングとしてベンチプレスを行っている選手も多いかと思います。
その際、グリップの選択も腱板の出力に大きく影響すると思います。トレーニング時の代表的なグリップとしてサムアラウンドグリップサムレスグリップがありますが、それぞれのグリップによって腱板の働きは異なります。
トレーニング初心者はサムアラウンドグリップ、熟練者はサムレスグリップなどと指導する場合もありますが、機能的にはサムアラウンドグリップ一択かと思います。

サムレスグリップの問題点について👇

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さらにベンチプレスなどの時には

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一方、サムアラウンドグリップでは上記メカニズムの影響は少ない状態でエクササイズが可能になります。サムレスグリップでは三角筋前部の出力が挙がってしまい、サムアラウンドグリップでは大胸筋の出力が向上するかと思います。
両グリップで比較して、その主動作筋の違いについて感じてもらえばと思います。

8.握り方(ベンチプレス編)

最後に握り方についてですが、サムアラウンドグリップの時の握り具合も腱板の機能向上のため重要となります。
一般的に正しい握り方は指先が舟状骨(母指の付け根にある骨)に向かうのが正常と言われています。
そのためベンチプレスなどを行う際にもそのような意識で握ることが重要かと思います。

懸垂やローイング系のエクササイズの時にもしっかり握れているか握れていないかによって背中への効き方が異なりますので、ぜひ確かめてみてもらえればと思います。

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腱板が上手く機能していない場合、握る時に指先を巻きつける形ではなく、手関節の付け根を突き出すようにして握る込んでいる場合が多いです。
これにより腱板の機能低下を招き、肩の怪我を引き起こすトリガーになるため、実施する際には特に注意すべきと考えています。

腱板トレーニングの実際

腱板機能評価方法としては一般的な整形外科テストで良いかと思います。
具体的なやり方に関しては以下のnoteをご参照下さい。動画付きで解説しています。

投球障害予防チェックポイント ー肩関節ー
https://note.com/embed/notes/n9205989d6166

どのトレーニングにも言えることは、

✔︎重だるさが出るまで追い込む
 ➡︎最終的には50回くらい連続で実施できることが望ましい
✔︎軌道を意識する(毎回同じ軌道になるように)
✔︎肩甲骨の代償に注意する

これらを意識して実施すると良いかと思います。

外転エクササイズ

外転初期のsetting phaseを意識して、収縮が入る瞬間である外転初期に肩甲帯が挙上してしまわないように注意します。
*三角筋などのアウターも含めたトレーニングになります。

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