AIをフル活用して論文を読む【トレーナーマニュアルvol.198】

C-I Baseball 3期生メンバーの三好航平と申します.
今回は2023年から開始したサポートメンバーによるnoteシリーズです.

note本編に入る前に2点告知をさせていただきます.
4/26(土)20:00からencounter × C-I Baseballのコラボセミナーを開催いたします!

AI×理学療法 投球障害肩の動作解析と治療アプローチ”ESO会員”とは月額制のサービスです。・過去のセミナーがアーカイブで視聴可能・セミナーが無料(一部有料)※注意事項:1週peatix.com

セミナーの前半部分では,私の方でAI技術を活用した投球動作解析に関してお話をさせていただきます.大学院時代そして現在とAIを活用した投球動作解析に関する研究を行っている経験を生かしたお話をさせていただければと思っております.後半のC-I Baseballの小林先生,新海先生のパートと合わせてお時間ある方はぜひご参加ください!

②大学院時代に取り組んでいた研究がスポーツ理学療法学にacceptされ,先日公開されました!

OpenCapを用いた投球動作中の体幹回旋運動評価の妥当性J-STAGEwww.jstage.jst.go.jp

Xの方でも大変多くの反応をいただきありがとうございました!
無料で読むことができるので,ぜひチェックしてみてください!


前置きが長くなりましたが,note本編に入らせていただきます.

前回のnoteでは「AIを活用して論文を探す」ということにフォーカスを当てたnoteを執筆させていただきました.お読みいただきありがとうございました.

https://c-ibaseball.com/trainer-manual-vol185

AIの進化はとてつもないスピードであり,前回の記事公開からたった3ヶ月でさらに便利なツールが登場しています.

今回のnoteは,前回の続きでAIを活用した論文検索方法,そしてAIを活用した論文の読み方というところにフォーカスしてnoteを書かせていただきます.

エビデンスに基づいた理学療法,トレーニングを提供する上で英語論文を読むことは重要です.しかし,英語が苦手で英語論文を読むことへのハードルは高く感じるセラピストは多いのではないでしょうか.

私自身も英語が得意ではなく,英語論文を読むことに苦手意識を持っていました.しかし,読むポイントを掴むことで短時間でその論文に書いてあることを理解できるようになってきました.また,AIの目覚ましい進化により「AIとともに論文を読む」ということが可能になってきています.

本noteでは私が実際に行なっている論文の探し方や読み方,読む時に使っているツールなどをご紹介できればと思っています.

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アカデミートレーナーの1年を振り返る―成長と課題から学ぶことー【トレーナーマニュアルvol.197】

いつもマガジンをお読みいただき、ありがとうございます。C-I Baseballの増田稜輔です。 目次 今回のnoteトレーナー紹介アカデミートレーナーインタビュー黒石涼太トレーナーインタビューQ: アカデミーのトレーナー … 続きを読む

投球障害に対するスクリーニングテスト【トレーナーマニュアルvol.196】

こんにちは。
C-I Baseballの1期生の北山達也です。
今回はサポートメンバーからの投稿となります。

はじめに

投球動作は全身運動であり、全身の身体機能の影響を受けます。

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例えばこの図のように、下肢の機能低下を認めるにも関わらず表出されるパフォーマンスが変わらない場合、その代償として上肢がオーバーユースになっていることがあります。
このようなケースでは下肢機能低下によって投球障害が引き起こされていると考えられます。

つまり投球障害は患部の機能のみならず、全身の身体機能を評価していくことが求められます。
全身の身体機能を1つ1つ評価し機能低下を見つけようとした場合、膨大な時間がかかってしまいます。
選手は評価されるために我々の目の前にいるわけではないため、コストパフォーマンスが悪くなってしまいます。

そこで有益であると考えるのが今回のテーマにしたスクリーニングテストです。

スクリーニングテストは局所の細かい評価ではなく、おおまかに全身のどの辺に機能低下がありそうか抽出するようなイメージで考えています。
そのため勘違いして欲しくないのは、スクリーニングテストで陽性になったから即介入するというわけではないということです。

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投球動作に必要な機能

まずは患部(肩・肘関節)にかかるメカニカルストレスから考え、そこからどのような機能が必要か考えていきましょう。

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投球障害肩肘の評価、”頚部”のチェック抜けてませんか?【トレーナーマニュアルvol.195】

C-I Baseball「トレーナーマニュアル」をご購読頂きありがとうございます。

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はじめに

投球障害肩肘の症例を診ている中で、
” 頚部 ” について考えたことはありますか?

私は、特に改善が乏しいような症例には、
必ず”頚部の評価をする!”というような思考になります。

なぜかというと、
頚部由来の症状ははっきりしないことが多く、
また症状が多岐にわたることが多いからです。

投球障害の“盲点”としての頸部

肩や肘の違和感、痛み、しびれ。これらを訴える選手を評価する際、患部周辺の可動域や筋出力、動作分析などを丁寧に行うと思います。

しかし、それでもなかなか症状が改善しない。あるいは、症状と動作や評価結果がうまく結びつかない――そんな経験はありませんか?

そういったとき、私は必ず“頚部”の評価をルーティンに入れるようにしています。

なぜ頚部を評価するのか?

頚部は、神経の出発点でもあり、そこに機能的な障害があると、遠隔部位に多様な症状を引き起こすことがあります。

特に、ダブルクラッシュシンドロームは、上肢の症状に密接に関係しています。

つまり、頚椎からでる末梢神経の明確な圧迫部位があると上肢の症状を増加させる可能性があるということです。

ダブルクラッシュ症候群(Double Crush Syndrome)は、末梢神経の走行に沿って2か所以上で明確な圧迫が生じている状態であり、それらが共存することで症状の強度を相乗的に増加させる可能性があります。

Kane PM, Daniels AH, Akelman E. Double Crush Syndrome. J Am Acad Orthop Surg. 2015 Sep;23(9):558-62. doi: 10.5435/JAAOS-D-14-00176. PMID: 26306807.

よって以下のようなケースでは、頚部由来の問題が隠れている可能性が高いと感じています。

  • 明確な外傷がないにも関わらず、肩や上腕にしびれや脱力感を訴える
  • 夜間痛があるが、患部を押しても再現痛が得られない
  • 投球動作の「リリース〜フォロースルー」で肩や肘の症状が誘発される
  • 症状の波が大きく、日によって訴えが異なる

明確な症状がある、明確な理学所見が取れるというよりも、
はっきりしないけど、症状が長引いてしまう。
パフォーマンスが上げきることができない、などの症状があることが多いと考えています。

実際の頚部評価

チェックすべき“頚部”のポイント

頚部由来の投球障害を見逃さないために、以下の評価を行います。

  1. 頚椎の可動性チェック
    • 特にC5~C7の伸展・回旋で症状の誘発がないか確認
  2. 神経根テスト(Spurlingテストなど)
    • 上肢の放散痛や違和感の有無を観察
  3. 上肢神経テンションテスト(ULNT)
    • 正常な神経滑走が行えているか
  4. 姿勢評価
    • 頚部前方位姿勢、胸郭の硬さ、肩甲骨の位置関係
  5. 頚部周囲筋の過緊張
    • 斜角筋・胸鎖乳突筋・肩甲挙筋などの筋緊張を確認

上記のポイントについて、図を用いて確認します。

頚椎の可動域

頚部もROM-tは必要だと考えています。
他の肩関節や股関節などと同じようにROM-tを確認することはとても大切だと考えています。

様々な方向の参考可動域を元に、
過小な部分や過剰な部分をみます。

まずは、屈伸の参考可動域です。

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Augustus A. et al.: Clinical biomechanics of the spine second edition.Lippincott Williams & Wilkins, 1990 . 図を引用改変

C0-1の屈伸の可動域が一番大きいです。

次に側屈の可動域です。

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Augustus A. et al.: Clinical biomechanics of the spine second edition.Lippincott Williams & Wilkins, 1990 . 図を引用改変

側屈は、おおよそ平均的に動くことがわかります。

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Augustus A. et al.: Clinical biomechanics of the spine second edition.Lippincott Williams & Wilkins, 1990 . 図を引用改変

回旋に関しては、
環椎後頭関節が屈曲伸展の貢献度が一番高いとされています。

上記の可動域を参考にし、
正常よりも過小な部分や過大な部分を判断して
ROMを診てもらいたいと思います。

頚椎神経根テスト

神経根が原因で上肢の出力が入らないということがあります。

頚椎神経根の症状があるかないかの評価は、
Jackson compression testや、Spurling’s testで頚部から上肢にかけての症状があるかないかで評価します。

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投球動作における鼠径部痛へのアプローチ -Groin pain syndrome 鼠径靭帯周囲・腹筋編-【トレーナーマニュアルvol.194】

トレーナーマニュアルにて定期的にnoteを投稿させていただくことになりました。
C-I Baseball サポートメンバーの 久我 友也 と申します。
私は整形外科クリニックで勤務しており、メディカルな視点でお話しさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

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今回の記事は
以前に投稿させていただきました
投球動作における鼠径部痛の病態とアプローチ
①「Groin pain syndrome編」
②「Groin pain syndrome 内転筋編」の続編となります。
Groin pain syndromeや内転筋由来の症状について、病態と病理解剖学的な評価方法を解説しておりますので、まだご覧になっていない方はぜひ下記のリンクからどうぞ!


本シリーズの記事では
野球選手の投球動作中に発生する鼠径部痛について、
現場で実践しやすい評価・実用的なアプローチ方法を解説していきます。

細かい病態や画像所見などは成書をご覧ください。
可能な限りのエビデンスや解剖に基づいた話をメインにさせて頂きます。

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はじめに

野球の動作においては
投球動作:コッキング期の軸足側
守備・走塁動作:側方への切り返し
走行動作:全力疾走
に関与してくるところかと思います。

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本記事では、Groin pain syndrome(鼠径部痛症候群)のなかでも、特に「鼠径靭帯周囲の鼠径部関連痛」に着目し、解剖学的特徴から臨床的評価・治療アプローチまでを整理して解説します。

Groin pain syndromeは疼痛範囲が広く、
以前紹介したDoha agreement meetingによる分類では

今回扱う「鼠径靭帯周囲の痛み」は
「鼠径部関連の鼠径部痛(Inguinal-related groin pain)」に分類されます。

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1. 秋田 功・仁賀 誠・大和 勇・宗田 剛・佐藤 毅. 慢性鼠径部痛の解剖学的基礎―特にスポーツヘルニアを中心に―. Surg Radiol Anat. 1999;21(1):1-5.

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鼠径部関連の鼠径部痛の病態

内転筋由来の場合は、主に内転筋の筋損傷・付着部症などが原因となります。

鼠径部由来の場合は以下のような病態が考えられます。

  • 鼠径管の損傷(後壁である横筋筋膜の伸展・膨隆、前壁である外腹斜筋腱膜の断裂など)
  • 周囲を走行する腸骨鼠径神経・腸骨下腹神経の障害

臨床現場では聞きなれない用語も出てくるため、まず解剖学的な整理から行います。

鼠径管とは

鼠径管は腹腔内と外部生殖器を連絡する構造物で、生殖器関連の神経・血管が走行しています。ただし、「管」と言っても明確な管腔構造があるのではなく、筋膜・腱膜で囲まれた空間構造となっています。

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図の緑で示している部分が鼠径管

1. Hopkins JN, Brown W, Lee CA. スポーツヘルニア. JBJS Rev. 2017;5(9):e6.

鼠径管
上壁:内腹斜筋・腹横筋の共同腱
下壁:鼠径靭帯
前壁:外腹斜筋の腱膜
後壁:横筋筋膜

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これは発生過程で精索が腹壁を貫通した際に形成されます。

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1. Zhou Z, Yan L, Li Y, Zhou J, Ma Y, Tong C. 胎児発生過程と腹膜前筋膜の臨床解剖およびその臨床的意義. Surg Radiol Anat. 2022;44(12):1531-1543.

腸骨鼠径神経、腸骨下腹神経とは

右の鼡径部を示しています。
黄色で示している
①が腸骨下腹神経
②が腸骨鼠径神経

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コーハン L、マッケンナ C、アーウィン A. 腸骨鼠径神経障害。 Curr Pain Headache Rep. 2020;24(1):2

両方の神経ともに鼠径靭帯の上方を通過しており
以下が重要なポイントです。

  • 支配筋:腹横筋、内腹斜筋の下方部
  • 腸骨鼠径神経:鼠径管内を通過する
  • 腸骨下腹神経:鼠径管内を通過しない

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中学・高校生に気をつけてもらいたい!軽さ重視の金具スパイク【トレーナーマニュアルvol.193】

今回は軽さ重視のスパイクを選ぶ際の注意点をお話しいたします。金具スパイクを購入する際、軽さで選ぶ選手が多く見られます。軽さだけで選ぶことはパフォーマンスアップもしますが、故障リスクが高まることも考えられます。中学生・高校生に関わるトレーナー・セラピスト・指導者・保護者の方々に見ていただきたいです。もちろん学生の方も参考にしていただきたいのでぜひご一読ください。

はじめに

足にあったスパイクを選ぶことはとても重要なことです。
私は以前から金具を重視して選ぶことをお話ししております。
理想は履き心地、金具の位置・本数で自分に合ったベストなスパイクを履いてプレーしてもらいたいと考えます。

過去のnoteに金具スパイクの本数や種類など記載しました。
noteはこちらを参照ください↓

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軽さ重視のスパイクとは?

メーカーが軽さ重視と宣伝しているものはよく見かけます。

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ソールの軽量化によるものや、金具の本数を減らしているもの、金具とスタッドのハイブリッドのものなどあります。
ソールが軽く、薄いためにスパイクの軽量化ができていると考えます。


ソール部位↓

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注:写真スパイクは軽量化スパイクではありません

軽量化の金具本数

軽量化を宣伝しているスパイクの金具本数は7〜8本で、内訳は前足部に5〜6本、踵に2本です。
一般的なスパイクと比較すると踵の本数に違いが見られます。一般的なものは踵に3もしくは4本の金具が多く見られます。
金具の本数が少ないだけでも軽量化になります。

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使用頻度

高校生の練習は週に6回で休みは1日。
中学生の場合は部活もクラブチームもだいたい一週間に3〜4回ほどだと思います。

平日練習は4時間、土日は1日でウォーミングアップの時以外はスパイクを履いている時間がほとんどです。
一足のスパイクを週6回履いている選手がほとんどではないでしょうか。

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スパイクを休ませる

靴を履くと熱が逃げずに湿気がこもりやすくなります。スパイクは特に通気性が悪いため、雑菌が増えやすく、皮膚トラブルにもつながります。足の皮がむけやすい方は特に注意してください。

スパイクを乾燥させることでスパイク内部にカビの抑制もできます。

靴の休め方
 ●靴紐を緩める
 ●中敷を抜いておく
 ●乾燥剤を入れる
 ●新聞紙を入れる

スパイクの中を通気性を良くし乾燥させることが大事です。シューズケースに入れっぱなしはよくありません。

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市販の乾燥剤を使用すると風通しの悪い場所でも翌日には蒸れを軽減することができます。

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乾燥剤がなければ新聞紙を入れましょう。
新聞紙もなければ靴紐を緩め入り口を広げることでスパイクの中をより乾かすことができます。

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<靴紐のポイント>
パフォーマンスアップのためにも靴紐を緩めること、靴紐を遠位からしっかり締めることで足とスパイクがより一体感を増します。

普段履くシューズも紐をほどき通気性を良くすることが大切↓

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軽量化の長所・短所

|軽量化の長所

長所は言うまでもなく、履いている際の軽さです。重量がなければ足も軽く動かせる感覚になると思います。

|軽量化の短所

ソールの軽量化は耐久性の低下につながります。高校生のように使用頻度が多いとソールが弱くなり『たわみ』ます。

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たわむことで足部アーチが崩れて扁平足・シンスプリント ・外反母趾・膝周囲の痛み・パフォーマンスダウンにつながります。

体重がある選手は軽量化スパイクはおすすめできません。足にかかる衝撃が強いためソールがたわみやすくなります。

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注:メーカーが悪いのではなく使用頻度が多いためにソールが弱くなる

『たわむ』理由

先ほども述べたようにたわむ理由の一つはソールの厚みです。
プロ野球選手が使用しているスパイクと比較するとソールの厚みは一目瞭然です。

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投手のための”体幹と腕を繋げる”トレーニング【トレーナーマニュアルvol.192】

CIBトレーナーマニュアルについて ①野球現場でのトレーナー活動 チームトレーナー、育成年代への関わり、パフォーマンスについて②臨床現場での選手への対応 投球障害への対応、インソールからの介入 ③ゲストライターによる投稿 … 続きを読む

TFCCに対する理学療法実践編-実技動画-【トレーナーマニュアルvol.191】

前回までTFCCの病態とその解釈、アプローチをお伝えさせていただきました。
今回は実技動画をメインに私が実際にTFCC損傷に対峙した時に行なっている理学療法をご紹介させていただきます。

1.関節外症状(神経障害性疼痛)のおさらい

 前回のnoteに詳しく記載させていただいておりますが、TFCC損傷の慢性症状で来院された場合にチェックを確実に行なっているのは、対象神経の状態把握です。
 痛みに関与する神経の状態をまず把握する必要があるため、対象の神経がどのような状態で痛みというアウトプットを出しているのかの確認と神経の状態を簡便にチェックすることができる筋力の確認(MMT)を行うようにしております。

 まず末梢神経障害の代表的な症状として、3つ上げることができます。
・急性外傷性(1球や1回で受傷したというエピソードがある)
・慢性微小外傷性(繰り返しの摩擦ストレスなど)
・圧迫性病変(筋肥大による圧迫)

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 実際にどの病変にあたるのかを理学所見・エコー評価・アプローチ後評価によって把握することができます。一番簡便でわかりやすい所見としては、エコー評価を用いることです。

神経脱臼や神経の摩擦ストレス・神経腫大はエコーで評価をすることが可能です。

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ただし、エコーがないという状況は現場含め多々あるかと思います。その際は、神経を触知しながら疼痛誘発動作を行うことで弾発感を観察したり、神経を触知し、大きさを左右差で比較することで予想だてをすることが重要であると考えます。

 特に神経脱臼や神経腫大に対しては、神経の滑走性や圧迫部位の改善を行うことで一時的にも疼痛の消失や筋機能改善、感覚の改善が見込まれます。しかし、徒手療法を行なっても全く反応を示さない場合もあります。
 その際は、急性症状(侵害受容性疼痛)や痛覚変調性疼痛の要素が強いことを疑うようにしております。もちろん自分自身の徒手療法の質を疑うため、他セラピストにも介入いただき反省することも多々あります。

2.TFCCに関わる神経の症状把握と描出の仕方

 末梢神経障害の種類を確認した後には、どの神経が障害されているのかを確認していきます。
 Guptaらは10体の解剖によって手掌・尺側部に尺骨神経の分枝、背側枝による神経支配を受け、Laporteらが前骨間神経・後骨幹神経・内側前腕皮神経も関与していることを示唆しています。

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そのため、私は尺骨神経・前骨間神経・後骨間神経の影響を受けていないかをチェックするようにしています。

◉尺骨神経の確認の仕方

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野球選手に必要なストレングストレーニング -その1-【トレーナーマニュアルvol.190】

初めに

こんにちは!
理学療法士として、千葉県で勤務しております
野坂光陽と言います!

現在は、理学療法士としてクリニックで勤務しながら
休日などを用いて、野球選手のパフォーマンスアップのために
パーソナルトレーニングを行っております。

また、先日NSCAという団体で
CSCS:Certified Strength and Conditioning Specialist
という資格を保持しております。

今回のメインどころとして
理学療法士の観点ではなく
CSCSの視点から、野球選手に必要な
ストレングストレーニング=筋力トレーニングについて
note記事にまとめていきます!

もちろん、身体の専門家である「理学療法士」としても
学ばせていただいているので、そちらの観点からも
ストレングストレーニングを紐解いていければと思います!

現在私はパーソナルトレーニング現場において
ストレングストレーニングのフォーム指導やプログラムデザインも
実施しております。

まだまだ学びの途中なので、情報不足であったり
間違った知識を公開してしまうかもしれませんので
もしこの記事をお読みになった方でご意見がある方は
遠慮なくコメントや私のSNS宛てにDMいただけると幸いです!

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みなさんでよりよい知識を学び、選手に還元できるように
頑張っていきましょう💪

ストレングストレーニングとは

ストレングストレーニング=筋力トレーニング?

世間一般的に言われているのが「筋力トレーニング」という
言葉ではないでしょうか?

僕は小〜高校まで野球を続けてきた中で、
筋力トレーニング:筋トレというのは
腕立てや腹筋背筋、ウエイトトレーニングと
とりあえずなんでもかんでも身体を鍛えることを
筋トレと呼んでいましたし、考えていました。

そして、それは今考えるとそこまで深く考えられたものでなく
ある意味伝統的であり古典的でもある昔ながらのトレーニングが
実施されていたように思います。

専門的な勉強を行う中で、もちろんそれら伝統的かつ古典的な
方法が間違っているとは到底思えませんし、もちろんプログラムの中に
取り入れることがあるのでそれらを否定したいというわけではありません。

今回私がこの記事内でお話していく「ストレングストレーニング」とは
バーベルなどを取り扱う類のトレーニングであるとご容赦ください。

トレーニングという概念の再定義

どんなトレーニングにおいても、それ自体が目的化しないように
するべきだと考えています。

どういうことかと申し上げると、、、

プッシュアップ:腕立て伏せを例に取りましょう

これも私が現役時代のお話になりますが
プッシュアップをするのは、ただ純粋に数をこなし
腕を太くするものであると考えてひたすらやっていました

しかし、時代が進み専門的な学習をする中で
プッシュアップで得られる恩恵がどれだけのものであるかを
思い知らされることになります。

プッシュアップ(別法含む)で得られる恩恵
・頭部-体幹-下肢の安定性
・腹圧の安定化
・前鋸筋-上腕三頭筋-大胸筋の共同収縮
・肩甲帯の安定化
・RFDの向上
・Anti-Rotationでの肩甲帯や体幹の安定性強化

挙げられるように、プッシュアップの恩恵って
めちゃめちゃ多いです。

ただ単純にプッシュアップをこなすと、これはプッシュアップをするという
「目的化」となってしまい、恩恵はフルに受けられないでしょう。

上記の恩恵を考えながら、意識も変えながら行っていくと
プッシュアップが「手段化」します

手段としてトレーニングを実施できるようになると
「足りない、もしくは向上させたい機能や能力」を補うための
「手段」として「プッシュアップ」がトレーニングプログラムとして
選択されることになります。

この「目的化」と「手段化」の施行の違いが
トレーニングプログラムひとつを取り出しても
大きく違うことがご理解できたかと思います。

トレーニングは、足りないもしくは向上させるための
一つのツールであり、それを「手段化」することで
最大の恩恵を受けることができます。
そして、「手段化」するためには
指導側がもちろん圧倒的な知識量や情報量、勉強量を
積まなければならないのと、選手側もしっかりと
考え、自分で学び、行動していく必要があると考えています。

ストレングストレーニングの必要性

まず第一に挙げられるのは間違いなく
「筋力の向上」のほかありません。
そもそも、ストレングストレーニングの目的の最重要項目だからです。

ストレングストレーニングプログラムでは、ピリオダイゼーションに基づき
その期ごとにトレーニングの目的は変化しますが
それらを期分けしたものが下の写真になります。

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レジスタンストレーニングのためのピリオダイゼーション NSCAより

野球を例に出して説明をしていくと、冬のシーズンがピリダイゼーションでのオフシーズンになります。
ここでのレジスタンストレーニングの目的は
「筋肥大と筋力及び基礎筋力の向上」になります

上記のように、その期に応じたレジスタンストレーニングの目標地点が
異なります。
なので、シーズン通して一律のトレーニングプログラムを組むのではなく、
そして冬だからといってきつい練習ばかりをするのではなく
「その期に応じたトレーニングプログラムが存在している」と
ご周知いただければと思います。

基本的な流れとしては、
筋肥大(筋肉量)の向上⇨筋力の向上⇨筋力発揮速度の向上
といったような流れでトレーニングプログラムを形成しております

第一段階の筋肥大段階では、筋肉量を底上げしていくイメージです。
いわば、身体の土台作りをしていくようなイメージで大丈夫かと思います。

第二段階では、第一段階で筋肉の「量」を底上げしたので、
今度はそこに「筋力」という要素を付け加えていく作業になります。
力というのは、簡単にいうと
「どれだけ重い物を持ち上げられるかどうか?」という機能になります。

これは、筋肉の肥大による重さを持てるだけのキャパシティ:準備期間が
あることによるものが大きいです。

春先のキャンプでのニュースで、
「〇〇選手、今冬で体重が〇〇kg増えて。。。」
のようなニュースが出ると思いますが
これらは筋肉量が増加したのか、脂肪量が増加したのか
ちゃんと測定してみないことにはわかりませんが
この時期では「筋肉の量」の増加が重要であることが言えます。

そして筋力段階で得られた「重い物を持つ能力」から今度は
第一以降期及び試合期にて、
軽い負荷でも力発揮をしていく必要があると考えていく段階に入ります。

最終的にはボールという軽い質量のもの
または1000gくらいのバットを高速で動かすためには

1.まず筋肉量を増やす
2.増えた筋肉がしっかり機能するように重い物を持てるようにする
3.機能的になった筋肉が速い動きでも機能するように負荷を変化させる

この順番が重要になります!

ウエイトの恩恵1 エネルギーフロー

ストレングストレーニング(ウエイトトレーニング)を
行うことで得られる恩恵は、前項でお話した通り
最終的に、ボールやバットを高速で動かすために必要なことと
お伝えしました。

それ以外にも実はウエイトの恩恵があります。

それは、運動の効率化です。

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CIB Academyの挑戦-BAXIS-【トレーナーマニュアルvol.189】

いつもマガジンをお読みいただき、ありがとうございます。
C-I Baseballの佐藤康です。

C-I Baseballでは、
・トレーナー育成
・野球現場でのトレーニング指導
・野球の臨床専門領域での教育
・ジュニア世代を対象としたアカデミー事業

を行っております。

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トレーニング領域では、野球に特化し、Medical・Physical・Skillの分野を理解した理学療法士が監修したトレーニング内容を実際に現場で指導できる人材育成を目指しています。

小中学生を対象とした少人数制でのアカデミーでは、運動機能・成長発達に合わせた野球の競技に共通して求められる要素を中心に構成し、「野球特化型トレーニング」を提供しています。

アカデミー発足1年目である2024年は、
・基礎運動
・スローイング
・スイング
・スピードアジリティ

の4つのコースを3か月クールで進め、
各回ごとのフィジカルチェックを開催してきました。

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特に、成長の個人差・個体差の大きい小学生のパフォーマンスデータは、今日報告されているものも少なく、その基準づくりの1歩としても進めていきたいと考えており、活動をしています。


BAXIS-野球の軸を鍛える-

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2025年よりスタート

まず、はじめに
2025年より、当アカデミーのネーミングを「BAXIS」(ベクシス)といたしました。私たちの活動や形がこの名前の由来に込められております。

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B:Baseball(野球の)
AXIS:軸(C-I Baseballが目指す)
そしてXには”無限の可能性”をもつ選手の意が含まれています。

これらのワードを統合し、
「野球の軸を鍛え可能性を広げる」
ことが私たちが目指す思いです。

私たちが目指す“軸”というのは
アカデミーのコンセプトにもある
「基礎的な運動能力を向上する」
ことにあります。

つまり、基本動作を構築し、身体の土台となる機能・基礎運動能力の向上を図ることがねらいにあります。

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子供のうちから、ひとつの競技だけに特化した運動経験により、上のスライドにある”ピラミッド”の最上位にある「スキル」に偏ったパターンが多いといわれております。

競技技能を高める練習が優先されるのはもちろん大事なことですが、その根底にある運動要素が低い選手も実際に多くいることが現状です。

神経発達の著しい時期にスキルの土台となるさまざまな基礎運動能力を高める環境づくりの必要性を感じております。

私たちは、一般的な野球のアカデミーにあるような、スキルの指導ではなく、運動の土台となる部分を強化し、競技パフォーマンスに繋げることを目標としています。


Academy Training

C-I Baseballでは2024年1月C-I Baseball Academyの運営をスタートしました。
対象は野球チームに所属する小学5〜6年生・中学生とし、野球に必要な身体の基礎の構築を目的としたトレーニングを毎週1回提供しています。

下記の記事では、当アカデミープロジェクトの経緯などをご紹介しておりますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

U-12コース‐小学生‐

小学生クラスでは、
現在、小学3年生から6年生までの選手が参加しております。

小学生クラスでは、主に「基礎運動能力」
フォーカスした内容を構成しています。

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発達学的にも成長期における動作の習得には高校生や大人と比較し、基礎的な運動要素の経験が競技専門的な動きの習熟に密接にかかわっています。

すなわち、育成年代における取り組みとして、
基礎運動の構築・獲得の重要性が高いといえます。

様々な運動経験をすることが身体操作性、動きの自由度を高め、技術向上に繋げて行くことを目的にしています。

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フィジカルチェック:スピード・アジリティコース

今回は、スピードアジリティコースの一例をご紹介していきます。

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