投球動作×バイオメカニクス – 海外文献から得た知見 -【トレーナーマニュアルvol.159】

初めまして!C-I Baseball3期生メンバーの三好航平と申します.
今回は2023年から開始したサポートメンバーによるnoteシリーズです.

本noteで私が書かせていただく内容は,野球関連の海外文献レビューになります.

私は今年3月まで大学院生として,多くの英語論文を読んできました.
その経験を活かして,皆様に野球に関する近年の英語論文をご紹介させていただければと思います.

文献情報

今回ご紹介する論文はこちらです.

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Crotin, Ryan L., Jonathan S. Slowik, Gene Brewer, E. Lyle Cain Jr, and Glenn S. Fleisig. 2022. “Determinants of Biomechanical Efficiency in Collegiate and Professional Baseball Pitchers.” The American Journal of Sports Medicine 50 (12): 3374–80.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36122355/

背景

Pitch Efficiency(投球効率)は効率的な投球メカニクスを定量化するために使用された指標であるが,”Pitch Efficiency”という言葉は1イニングあたりの投球数が少ないという意味で使用されることがアメリカでは一般的である.混同を避けるために,この研究では,Biomechanical Efficiency(バイオメカニクス的な効率の良さ)という言葉で新たな指標として提言している.

Biomechanical Efficiency:単位肘内反トルクあたりの球速の値
この数値が大きい投手は,肘関節への負荷を抑えつつ球速が速い投手であると言える.

Crotin et al. The American Journal of Sports Medicine. 2022

一般的に球速が速い投手は投球時に生じる肘関節内反トルクが大きく,障害リスクが高いことが言われており,肘にかかる負荷を抑えつつ球速を高めることはパフォーマンスと障害予防の双方から考える上で重要であり,Biomechanical Efficiencyは投球を評価する指標として有用であることが示唆されている.

では,何がBiomechanical Efficiencyに影響を与えるか.
この研究では,動作指導により修正可能と考えられる投球キネマティクスとBiomechanical Efficiencyの関連を調査することを目的としている.

仮説

  1.  投球キネマティクスとBiomechanical Efficiencyは関連し,Efficiencyが高い投手と低い投手で異なるキネマティクスを呈する
  2.  プロの投手の方が大学生投手と比べてEfficiencyが高い

方法

545名(大学生98名,プロ447名)の投球データを解析しています.モーションキャプチャー(12台の赤外線カメラ,240Hz)で投球動作を測定,対象者は18.44mの距離を5-10球,ストレートを全力投球を行った.

対象者特性とキネマティクスについて,ステップワイズ多変量解析を用いてBiomechanical Efficiencyの決定因子となるものを検討.また,決定因子についてMann-WhitenyのU検定を用いて高効率群と低効率群で比較し,カットオフ値を算出した.

算出項目

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Crotin et al. The American Journal of Sports Medicine. 2022より著者作成

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エコーを用いた投球障害肩の評価【C-I Baseball オンラインセミナー】

超音波画像診断装置(エコー)はご存じでしょうか?

一般的には、
産婦人科で妊娠した際に赤ちゃんを観察する、あれです!

近年、整形外科領域や、スポーツ整形外科領域でも注目されている画像診断ツールです。

理学療法士も、Drと一緒にその病態を観察したり、
医師の管理下において、その病態部位が
どのような動態をしているのか等の観点で評価にしようすることもあります。

今回のセミナーは、
理学療法士(トレーナー)が野球選手にエコーを使用する上で
私が大切だと思うことを解説していきたいと思います。

概論的な話も多くなってしまうかと思いますが、
実際に明日からの臨床でも活かせる内容になっているかと思います。

参考にしていただけたらと存じます。

図1
スクリーンショット 2021-02-26 9.25.03

エコーで見えるものは?

実際に何が見えているのか、見えるのかを簡単に解説したいと思います。

図2
図3
図7

エコーのメリット・デメリット

実際に使ってみての良かったこと、逆に悪かったこと

メリット

図4
図5

デメリット

図8

エコーを使用しての評価で気を付けること

実際に気を付けなければいけないこと

図9
図10

エコーを使用した介入例

野球選手において多い身体所見に対して、
どのようにエコーを使用していくのか

図11
図14

セミナー動画

ダイジェスト版

※noteを購入していただくと上記内容のセミナー動画を見ることができます。

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投球障害肩に対する運動療法のポイント【トレーナーマニュアル2024】

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投球動作のチェックポイントに沿った機能評価とトレーニング~下肢を中心に~【トレーナーマニュアルvol.154】

C-I Baseball 1期生の北山です。
今回はサポートメンバーの配信となります。

はじめに

我々理学療法士は医療機関で従事していることが半数ではないでしょうか。医療機関へ受診する患者は痛みがあるため受診するため、理学療法士の仕事は疼痛を扱うことになります。
そのためにはその患部に対する局所評価が必須になることは言うまでもありません。

では現場ではどうでしょうか。
基本的に目の前にいる選手は疼痛があるとは限りません。
現場ではパフォーマンスアップを求められることが大半です。
その際に先に述べた局所評価がどの程度有効でしょうか。

私はこれまでの経験では、局所への介入を中心に行った際投球動作へ繋がりにくいと感じてきました。
もちろん全く無効ではなく、有効な選手もいますしその重要性も認識はしております。
しかし全体的な印象としては局所機能が改善したから動作が必ずしも変わるわけではないと感じております。

投球動作自体は非常に高速な動作であり、その動作を直接分析することは容易ではありません。
そこで私は投球動作より動作レベルを落としかつ投球動作に繋がる評価はないかと考えました。
それが今回紹介する機能評価となります。

機能評価とは

私は投球動作を評価する際に以下のような方法を用いています。

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1は実際の投球動作を直接評価することです。
2は機能評価を用いて投球動作を間接的に評価することです。
3は機能評価からさらに深堀し局所的な機能低下に対して評価することです。

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機能評価において意識しているポイントは「評価でありトレーニングであること」です。
機能評価が改善することは投球動作が改善することを意味するくらいの関連性があることが望ましいと考えています。
そのためには機能評価は投球動作の要素を残した評価項目とする必要があります。

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その要素として
①関節運動
②重心移動
③床反力

の3つの要素を意識して機能評価を立てています。

Early cockingにおける機能評価のポイント

まずはEarly cockingについて機能評価を紹介していきます。

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距骨下関節と腸骨評価から導き出すアプローチ【トレーナーマニュアルvol.153】

いつもC-I Baseballのコンテンツをご利用いただき、心より感謝申し上げます。C-I Baseballは、活動を開始してから早くも5年目を迎えることとなりました。
私自身メンバーとして活動させていただき、CIBの仲間から刺激を受け日々勉強になっております。
臨床で行っていることを可能な限りnoteで発信していきますので、今後ともよろしくお願いいたします。

代表の増田より

5年目を迎えるにあたり、C-I Baseballの活動の方向性を整理しました。
・我々はこの先どのように進むべきなのか?
・どんな世界を作りたいのか?
・どんな活動をしていきたいのか?
など、今までの4年間に行ってきた活動や我々の価値観を改めて考えました。

そして、新たなC-I Baseballの方向性を定義しましたので、ご報告させて頂きます。

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整えることとは?

アライメントが崩れるということは、筋肉が伸張もしくは短縮していると考えます。
アライメントを整えないと筋出力は向上しません。

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しかし、ただ整えればいいのか?

教科書に載っている正常がその選手にとって整っている状態かと言われると答えは『NO』です。
距骨下関節指標中間位が個体差、左右差があるように他の関節(部位)も選手ごとに異なるのではないでしょうか?

異なるものに対しては、やはり評価が大切です。

今回のnoteは前回のおさらいと足部や腸骨をどのようにして評価し誘導方向を決定するのか、腸骨・肩甲骨誘導、腸骨誘導と、股関節エクササイズなどをご紹介いたします。

前回のおさらい

距骨下関節指標中間位

距骨下関節可動域は約30°ありそれには中間位が存在する。その中間位は左右や個々により異なる。
その左右や個々により異なる中間位を評価することは立位や歩行時の距骨下関節の動きを安定させるために必要である。
その中間位は個々により異なるため、距骨下関節が回内・回外・中間位なのかの評価したときの肢位を『距骨下関節指標中間位』ということにしている。

距骨下関節指標中間位評価

指標中間位評価は非荷重位で行う。荷重位では足部に荷重がかかることで足部構造が変化してしまう。
立位で後面から踵骨やアキレス腱の位置をチェックする方法があるが、荷重がかかることで体幹・骨盤の影響や横足根関節や足趾も加わり、色々な影響により足部構造が変化してしまう。
そのため純粋な距骨下関節の肢位がわかりにくくなる。


以下、距骨下関節指標中間位評価のスライド

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腸骨アライメントチェック

まずはASIS(上前腸骨棘)PSIS (上後腸骨棘)の触診から始めます。
腸骨前後傾中間位はPSISから2横指半下にASISがあると言われています。

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腸骨の動き

●挙上/下制
●前傾/後傾
●内転(内側移動)/外転(外側移動)
●回旋(骨盤全体の動き)

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腸骨は片側単独で動くわけではなく両側の位置や動きを把握できるといいと考えます。
左右の腸骨がどのような肢位になっているのか把握しましょう。

触診ポイント
●挙上・下制は腸骨稜で左右差確認
●前傾・後傾は矢状面でASISとPSISを確認

腸骨アライメントと足部

腸骨稜を触診し左右どちらが挙上・下制しているのか評価

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距骨下関節指標中間位回外が強い場合(両側比較し左右差がある場合)
→立位では回内位になるため同側腸骨は前傾・内転・下制位になりやすい

距骨下関節指標中間位に対して横足根関節回外の角度の差が強い場合
→立位になると距骨下関節回内よりも横足根関節の回内が大きくなるため、同側腸骨は前傾・内転位になりやすい
*挙上・下制は距骨下関節指標中間位により異なる

腸骨誘導は距骨下関節指標中間位の肢位が
●回外が大きい方➡️腸骨下制誘導
●回外が小さい方(回内傾向も)➡️腸骨挙上誘導

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ここからは今回のお話です。

腸骨評価・誘導

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腸骨評価

前回noteでは臥位膝PUSH TESTは下制方向しか行いませんでしたが、挙上方向の評価を行うことでさらにどの方向に誘導すればいいのかが確認できます。
8方向からPUSH TESTを行い、一番踏ん張れる踏ん張れない方向を評価します。

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