バイオメカニクスから見る投球動作の基礎【トレーナーマニュアルvol.109】

いつもC-I Baseballトレーナーマニュアルをご購読頂きありがとうございます。

C-I Baseballトレーナーマニュアルでは2023年7月より
「ゲストライター」をお呼びし、新たな知見を皆様にお届けしていきます。

記念すべきゲストライター第1弾は
帝京スポーツ医科学センターの大川靖晃さんに執筆していただきました。
大川さんには「投球バイオメカニクス」「球速」について2本執筆して頂く予定です。

そして、トレーナーマニュアル執筆だけでなく
「C-I Baseballメンバー限定セミナー」も2回開催致します。
トレーナーマニュアルでご紹介頂いた内容をより深く解説して頂きます。

初回の「C-I Baseballメンバー限定セミナー」は
7月13日21時より開始予定です。

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C-I Baseballメンバーに介入したい方は下記のリンクをご参照ください。
どのコースを選んでも大川さんのセミナーは「無料」で参加出来ます!

2023年育成プログラム – C-IBaseball−野球に関わる全ての人の学びの輪−

バイオメカニクスから見る投球動作の基礎

みなさん、こんにちは。
 
帝京大学スポーツ医科学センターの、大川靖晃です。
 
今回は、今月行われるC-I Baseballメンバー限定ウェビナー「バイオメカニクスから見る投球動作の基礎」の、前段となるような内容がご紹介できればと思っています。
 
まずは、自己紹介から。
 
詳しくは、こちらのサイトでプロフィールをまとめていますので、ご覧ください。

大川靖晃のプロフィールページ

現在、帝京大学スポーツ医科学センターに所属し、大学硬式野球部のAT兼SC兼サイエンティストとして部のサポートをしつつ、バイオメカニクス(特に投球動作)の研究を行なっています(教員として授業も教えています)。
この研究やサポートの拠点となっているのが、帝京大学スポーツ医科学センター内4FにあるMovement Performance Institute Tokyo (MPI Tokyo)です。

Movement Performance Institute – 帝京大学スポーツ医科学センター

各種SNS(Twitter, Facebook, Instagram)でも、日々情報発信を行なっています。
またYou Tubeにて野球に関する動画を、日々の参考にしてもらうためにアップしています。

Baseball Bibliotheca

帝京大学スポーツ医科学センターのホームページはこちらになります。

帝京大学スポーツ医科学センター

帝京大学スポーツ医科学センターでも、各種SNSで情報発信を行なっていますので、是非チェックをお願いします。

それでは、本題に入りたいと思います。

はじめに

まずは私が測定する際に使用している機器と、測定で一般的に行なっているステップを説明させていただき、バイオメカニクスが測定全体の中でどういった役割を果たしているかのイメージを持ってもらいたいと思います。

1. マウンド
2. ラプソード(ピッチング2.0)
3. Edgertronic(ハイスピードカメラ)
4. simi motion (カメラ8台を使用しての三次元動作解析)
5. フォースプレート

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チームトレーナーとして働く理学療法士の役割【トレーナーマニュアルvol.108】

いつもC-I Baseball「トレーナーマニュアル」をご購読頂きありがとうございます!
C-I Baseballは2023年5月で4期目を迎えました。
ここまで、C-I Baseballの活動を続けられているのは、応援し必要として下さる皆様のおかげです。
この場を借りて感謝申し上げます。

2023年7月よりトレーナーマニュアルもリニューアルしお届け致します。

○今期のトレーナーマニュアル構成

①野球現場でのトレーナー活動
チームトレーナー、育成年代への関わり、パフォーマンスについて
②臨床現場での選手への対応
投球障害への対応、インソールからの介入
上記の①、②においては今まで同様にC-I Baseballスタッフが執筆致します!

そして今期はなんと
◎ゲストライターの登場
バイオメカニクス、栄養、各分野の専門家の方に執筆
◎C-I Baseballメンバーの登場
2020年からC-I Baseballへ加入し育成メンバーとして活動していたメンバーがいよいよライターとして登場します。

C-I Baseballで学び、成長してメンバーの投稿もぜひお楽しみにしてください!

野球トレーナーマニュアル|C-I baseball|note

2023年の増田が担当するnoteテーマは「チームトレーナーとして働く理学療法士について」です!

1年間かけて皆様に4つの内容をお伝えしていきます

①チームトレーナーとして働く理学療法士の役割
②チームの障害を予防するために
③理学療法士がチームパフォーマンスにどのように関わるのか?
④今後、理学療法士に求められるスキル、能力について

1本目の今回は
「チームトレーナーとして働く理学療法士の役割」について解説していきます。

チームトレーナーとしての理学療法士の役割

理学療法士と聞くと病院やクリニックで選手の障害へ対応するイメージがあると思います。
最近では理学療法士でもパーソナルトレーニング等で選手に関わっている方も多くおります。
両者ともに共通するのが「選手に対してパーソナルで関わる」ことです。
つまり、理学療法士は目の前の選手一人に関わることが圧倒的に多くあります。

では、野球現場等のチームトレーナーとして理学療法士はどのように選手に関わるのでしょうか?

答えは
「環境によって関わり方が変化する」です。

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①チームトレーナーが理学療法士1名
②チームトレーナーが多職種かつ複数名

チームトレーナーとしての関わり方には上記の2パターン存在します。
私は両方のパターンで勤務経験があり、今回はその経験から
「チームトレーナートレーナーが理学療法士1名」の場合の役割について紹介していきます。

チームトレーナーが理学療法士1名の役割

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チームトレーナーが1名のパターンはアマチュア野球現場に多く存在します。
特に大学野球、高校野球のカテゴリーが多い印象です。
今回は理学療法士について紹介しますが、1人職場だと役割は資格に関わらず同じようなものになります。

チームトレーナーが1名の場合に求められる役割

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トレーニング、障害予防、障害対応・復帰までのリハビリテーション、外傷対応等、全ての範囲を1人で行います。

チームのトレーニングを指導しつつ、怪我をしている選手の対応・・・
全てを1人で行うことはかなり難しいです。

理学療法士が野球現場に出てから一度は経験する失敗談は
「現場を回すことが出来ない・・・」です。
これは私も経験しました。

理学療法士は1対1の関わりを得意としているため
怪我をしている選手がいたら、その選手1人に時間をかけ、その他の選手のトレーニング指導ができない場合があります。

この場合に考えるべきことは
「なにを求められているか?」です。

チームトレーナーが1名の場合に求められることは
「チーム全体への介入」を求められるケースが多いです。
つまり、1人の選手の怪我の対応よりも、チーム全体のトレーニングや障害予防を行い、チーム全体のレベルを底上げすることが重要です。
これはチームスポーツではよくあるケースだと思います。
しかし、理学療法士として関わっている人間としては怪我をした選手への対応もおろそかにしたくはない部分です。

では、どのように対応していけば良いのでしょうか?

ケース1

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・高校野球現場
・平日放課後の練習日
・練習メニューは技術練習+トレーニング

○トレーナーに課されるタスク
1)チーム全体のトレーニング指導
Aチームが技術練習中にはBチームのトレーニングを指導
Bチームが技術練習中にはAチームのトレーニング指導
2)怪我をしている選手の対応
(今回は肉離れの選手1名と仮定 この選手は受傷直後であり別メニューとなっている)

Q1:怪我をしている選手の指導はいつ、どのタイミングで行いますか?

条件:練習後の介入は出来ないケースを想定

この日の練習メニューを考えるとあなたの時間はほとんどがトレーニング指導となっています。

みなさんならどのように対応しますか?

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投球復帰に向けた肩関節機能評価【トレーナーマニュアルvol.107】

C-I Baseballでは来週より本格的に始動する新育成プログラムに向けて、プログラムに参加したいメンバーを募集しております。定員が埋まってしまったコースもあり、早くにお申込みをされた方は既にCIBのオンラインでのサービスを開始しております。

▶新育成プログラムとは

本年度は今までとは異なり
「プロフェッショナルを育成する」を
ゴールに育成プログラムを実施していきます。

●トレーニングコース
●臨床コース(投球障害肩)
●インソールコース

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育成プログラムの詳細はこちらをご覧下さい!

講師はC-I Baseballスタッフが担当し、皆さんの「知識・技術の向上」の一助になれればと思っております。
応募方法・応募条件・プログラムの詳細については
【C-I Baseball公式LINE】にて先行配信致します!!

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https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfeFOaGO2lS8RaR04A5b9Jj4J5oNbAWnFxhC62Hqp7vXQ9wUA/viewform

育成プログラム入会希望の方はこちらのリンクへ!

講師より”臨床コース”について

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<臨床コース講師・小林弘幸>
投球障害肩は、本当に多様な原因があると思います。選手の中には、たくさんの治療院、クリニックを渡り歩いて、治りたい!という方がたくさんいます。

私が選手だったら、この痛みの原因は何だ?と思います。その中で、我々”理学療法士”が何をできるか?この痛みの原因が、どんな動きで引き起こされているのか

どのような動きをしたら痛みがないのか?

動きの専門家である我々がその問いに回答しなくてはならないと私は思います。選手の痛みの解決方法を理学療法士やトレーナーがわかることは、信頼関係にもつながりますし、選手の自主トレ意欲向上にもつながります。そんな動きの評価や治療方法を、私の経験にはなりますがお伝えさせていただけたらと思います。

そして、皆さんでディスカッションしながら、野球選手の投球障害肩についてより深く考えるきっかけになればと思います。
投球障害肩で困っている選手を少しでも少なくできるよう、一緒に学んでいきたいと思います!

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投球復帰に向けた肩関節機能評価

今回の配信では、育成プログラム「臨床コース」講師担当の小林とC-I Baseball代表増田・副代表佐藤による「投球復帰に向けた肩関節機能評価」について講師の小林が重要視しているキーポイントを中心に解説させていただきました。(全22分収録)

投球復帰をテーマに前半部分では、機能評価における鑑別、実践内容からアプローチの優先順位について、後半部分では投球復帰基準に対する思考・実践内容について動画内でご紹介しています。

Agenda
■臨床対応における投球復帰で重要なポイント
■アプローチの優先順位を決める評価とは
■疼痛誘発テスト<疼痛除去テストの実践方法
■肩甲胸郭関節評価を重要視している理由
■投球復帰基準における考えと実践内容


全22分収録<このあとに動画を閲覧できます>

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投球障害肩に対する運動療法のポイント【トレーナーマニュアルvol.106】

C-I Baseballでは来月7月から開始する新育成プログラムに向けて、メンバーを募集しております。早い方はすでにお申し込みもいただき、オンラインでのサービスを開始しております。 本年度は今までとは異なり「プロフェッシ … 続きを読む

インソール作製のための動作分析のポイント【トレーナーマニュアルvol.105】

C-I Baseballでは来月7月から開始する新育成プログラムに向けて、メンバーを募集しております。早い方はすでにお申し込みもいただき、オンラインでのサービスを開始しております。

本年度は今までとは異なり「プロフェッショナルを育成する」をゴールに育成プログラムを実施していきます。

●トレーニングコース
●投球障害コース
●インソールコース

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育成プログラムの詳細はこちらをご覧下さい
https://c-ibaseball.com/top/training-program/

講師はC-I Baseballスタッフが担当し、皆さんの「知識・技術の向上」の一助になれればと思っております。

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インソール作製における評価

今回の配信では、育成プログラム「インソールコース」講師担当の須藤慶士とC-I Baseball代表増田・副代表佐藤による「インソール作製における評価」について解説させていただきました。(全45分収録)

インソール作製のための評価ポイントから、作製における実例紹介(ピッチング動作・バッティング動作)まで動画内でご紹介しています。動作の着眼点をはじめ、動作をみる視点を学んでいきます。

足部評価

インソール作製において「足部評価」の重要性は言わずもがなですが、難しいイメージを持たれている方も少なくないのではないでしょうか。

歩行や全体の動作を分析し、足部を誘導することでどのように動作に変化を与えられるか…

そのような疑問を抱いている方には、ぜひ聞いていただきたい内容です。

須藤が勧めるインソール作製のコンセプトは「誰でもつくれるインソール」としています。もちろん最低限の足部解剖・運動の知識は必要となりますが、足部を診る経験の少ない方にも合わせた解説をしていただいております。

インソールコースでBasicコース内でお伝えしている3つのポイント!
・距骨下関節/横足根関節/足趾

この3つの部位に焦点をあてインソール作製のベースとなる評価を進めていきます。評価により方向性を決定するため、何よりも評価の精度が重要です。

■インソール作製における足部評価のポイント
■距骨下関節評価を最重要視する理由
■距骨下関節ー横足根関節について
■足趾評価について

全15分収録

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理学療法士が野球現場で抱える悩みと解決方法【トレーナーマニュアルvol.104】

C-I Baseballの活動が開始し、今月で4年目を迎えました。
7月からは、新育成プログラムとして4期生のメンバーを迎え、新たな活動がスタートしていきます。

本年度は今までとは異なり「プロフェッショナルを育成する」をゴールに育成プログラムを実施していきます。

●トレーニングコース
●投球障害コース
●インソールコース

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育成プログラムの詳細はこちらをご覧下さい
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理学療法士が関わる野球現場

今回の配信では、C-I Baseball代表増田・副代表佐藤による「野球現場での悩み」について解説させていただきました。
(全40分収録)

C-I Baseballが関わるチームサポートの現状

C-I Baseballでは現在約40名ほどのメンバーが在籍し、少年野球・リトルリーグなどの小学生から大学・独立リーグまで、チームのトレーナーとして各個人が関わっています。

また、C-I Baseball団体としても
・リトルリーグ(東京都内)
・高校野球
・大学野球

に関わり、複数人のメンバーでチームのサポートに関わっています。

普段は各メンバーがそれぞれの医療機関で勤務しているメンバーが大半であることから、C-I Baseballでは野球現場で活動するにあたり、メンバー間でのオンライン・オフラインでの技術研鑽により、サポート体制を構築しております。

■C-I Baseballが関わるチームサポートの現状と参入方法
■各カテゴリーにおけるサポート体制
■年代別に応じたトレーニング指導のポイント
■C-I Baseball今後の活動展望


(全23分収録)

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インソール作製のための足部評価-動画解説-【トレーナーマニュアルvol.103】

C-I Baseballでは2023年7月より、4期生となるメンバーの募集に際し、新育成プログラムを開始していきます。

本年度は今までとは異なり「プロフェッショナルを育成する」をゴールに育成プログラムを実施していきます。

●トレーニングコース
●投球障害コース
●インソールコース

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インソール作製における足部-全体評価

インソールコース担当講師の須藤より、インソール作製時の根幹となる「距骨下関節評価」について動画で解説しています。

■距骨下関節評価
|徒手評価におけるポイント
■他評価からの距骨下関節確認
|脚長差について
|立位体幹回旋テスト
|PUSHテスト
|ランジテスト

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2023.05.22 プレセミナー@東京にて

5/22(日)に東京都内で開催されたプレセミナーでは、評価からパット処方までの流れを解説しました!
徒手評価・動作評価による実際の視点やポイントが集約されています!

ここから下は動画を公開しております。-25分収録-

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ボールリリースでの肩関節痛を改善するための評価とアプローチ【トレーナーマニュアルvol.102】

はじめに

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投球障害肩で来院する選手の中でボールリリース時に肩関節が痛いと言う選手を多く見てきました。

最大外旋位で肩の前もしくは後ろが痛いという選手も多いですが、リリースでも肩の前が痛いという選手を一度は対応したことがあるのではないでしょうか?

今回は、ボールリリース時の肩関節痛について、病態と評価・アプローチに分けながら私見も交えて解説していきたいと思います。

最後までお読みいただけると幸いです。

ボールリリースにおける肩関節痛

投球障害肩の病態と動作に関しては下記の記事をご参照ください。

リリースにおける肩関節痛の原因としては、投球動作の連続により肩関節後方構成体の伸張性が低下し、投球の加速期後半からボールリリースにおいて上腕骨頭の前上方へのシフトによる肩峰下でのインピンジメントがあります。

骨頭の前上方へのシフトを抑制し、骨頭と関節窩のズレが生じない状態でリリースを迎えることが重要となります。

それに加え、関節内で生じる前上方のインピンジメント(ASI)も存在します。
ASIは肩関節において屈曲位の内旋運動にて上関節上腕靭帯(SGHL)と肩甲下筋(SSC)が関節窩前上方部と衝突を繰り返すことによる障害です。

繰り返される投球動作により前方組織である上腕二頭筋長頭腱(LHB)やSGHLの緩みがあると
ASIが生じやすく、SSC損傷が合併している場合もあります。

今回のテーマでもあるボールリリースで最大の出力を指先に伝えるためにも肩甲帯・肩関節が適切なポジションを取れることは非常に大切になります。

評価

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肩甲上腕関節可動域評価

まず優先順位としては肩甲上腕関節の可動域制限がないかどうかをチェックすることが重要です。評価方法としてはCombined Abduction Test(CAT)、Horizontal Flexion Test(HFT)を用います。合わせて背臥位で上肢を挙上した際に可動域の左右差や疼痛が生じないかを確認します。

純粋な肩甲上腕関節外転の可動域がそもそも確保されていない場合、投球動作の中でも肩甲骨挙上や前傾といったエラーが生じやすいため必ず確認しましょう。

肩鎖関節軸での肩甲骨上方回旋

ボールリリースのポジションで上腕骨頭方向に肩甲骨関節窩を向けるためには肩鎖関節上での肩甲骨上方回旋の可動性が必要になります。

”肩甲骨の動き”と言うと胸鎖関節を軸とした鎖骨から動くような運動をイメージしがちです。
鎖骨の動きに着目しすぎると肩甲骨の挙上(シュラッグ動作)や前傾を誘発するリスクもあります。

投球動作、主にボールリリース時に重要となるのは肩甲骨上方回旋であるため、肩鎖関節を軸とした上方回旋の可動性と合わせて獲得していく必要があります。

肩甲上腕関節内旋可動域

リリースに関しては上肢は挙上位となっているため挙上位で内旋可動域が確保されていることが重要です。
しかし下垂位で求心位が確保されていない場合、挙上位ではより骨頭位置の偏位が強くなる(後下方の組織がより伸張される)ため、まず下垂位における可動域を確認し、その後挙上位の両方を評価します。

肩関節後方構成体や烏口腕筋のタイトネス・滑走不全肩関節の求心位不良が制限になっていることが多いと感じます。
リリースで上腕骨の内旋が不足していることにより肩関節痛を訴える選手は多く見受けられます。

上肢挙上位保持筋力

当たり前のことにはなりますが投球動作の中で最も出力を出さなければいけないフェーズはボールリリースの瞬間になります。
この評価ではボールリリースの上肢位置に近い形での出力をチェックするための評価方法になります。

投球障害で病院にくる選手の多くはこの検査が陽性になっている印象です。
肩甲骨のstability低下が原因であることがほとんどです。

肩甲骨のfitting機能評価

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リリースで体幹と肩甲骨ー上腕骨を協調的に働かせるためには肩甲骨と胸郭の適合性(fitting)が重要になると考えています。

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ツーシームの投げ方(前編)【トレーナーマニュアルvol.101】

まずは、自己紹介から

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また、同時に、私自身がMetaGate(メタゲート)という『野球技術系サイト』も運営しております。

ご興味あります方は、一度、ご覧ください。

META GATE | 2.5次元をとらえろ

【note】

Meta Gate【メタゲート】|note

【オンラインサロン】

オンラインサロンLP | META GATE

【Youtube】

BaseballスーパースローチャンネルMeta Gate [メタゲート]

今回は育成プログラム第3期、私の担当の第7回になります。

前回は、『変化球の投げ方:スライダー後編』をお伝えしました。

今回は、『変化球の投げ方:ツーシーム前編』をお伝えいたします。


ツーシームはシュート系の球で、横に食い込んでいき少し沈む軌道です。

カウント球やゴロを打たせるのに重宝します。

握りをずらしただけでツーシームを簡単に投げられる選手もいれば、何をやってもストレートにしかならない選手もいます。

簡単そうで難しいのが『ツーシーム』。

まずは、『ツーシーム』の軌道からご覧ください。

ツーシームの軌道

インコースに食い込んでくる軌道を見てください。

ツーシーム単独で見てもイマイチわかりづらいのでストレートと重ねています。

ストレートと重ねると手元に食い込んでくる感じがわかります。

ツーシームをカーブ・スライダーのように大きく曲げたがる選手がいますが、ストレートと比較しないと感じることができないぐらいの曲がりです。

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投球障害肩に必要な”大・小胸筋”のエコー観察【トレーナーマニュアルvol.100】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

なんと本日は、記念すべき100回目の投稿です!

記念すべき投稿を、担当することができて大変光栄です!

引き続き、少しでも選手に還元できるように、我々にできることを取り組んでいけたらと思っております。

よろしくお願いいたします。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今シーズンの私が担当する配信では、「エコー」を通じて
肩関節の解剖とそれに対する実際のアプローチを学んでいこうという
コンセプトの元、Noteを書かせていただきます。

元NPBチームドクターのスポーツDrと一緒にエコーを用いて、
野球選手の投球障害肩を診てきました。

投球障害肩になってしまうと、
『痛くて投げられない』
『何をしても良くならない』
『自分のプレーに集中できない』
『野球が楽しくない』
と悪循環になってしまいます。

私はそのような投球【障害】肩を持った選手に対し、
エコーを通じて、細かな解剖を理解しアプローチすることで
治療効果が奏功することを経験しました。

もちろんそれだけでは解決しないことも多数ありますが、
ケガからの復帰をするということを考えると、
細かな解剖を学んでいくということは必要なのではないかと考えています。

解剖書で見る肩関節だけではなく、
エコーを通じて、3次元的に捉える肩関節を一緒に学んでいけたらと思います。

投球障害肩に必要な”大・小胸筋”のエコー観察

投球障害肩における大・小胸筋

投球動作における、大・小胸筋は非常に重要な役割をすると考えております。

野球選手の筋の非対称性を見てみると、
大・小胸筋部分は投球側の方が筋厚が厚いという結果になっているからです。

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※Shin Hasegawa, et al.: Laterality of muscle thickness in athletes who perform throwing and hitting motions. Jpn J Phys Fitness Sports Med, 62(3): 227-235. 2013 図を引用改変

一般的には、
大・小胸筋を含めた肩関節内旋筋は投球動作の中で、
MER以降で作用します。

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さらにそのPhaseでは、投球障害肩の有病率が大きいPhaseということが言われています。

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MERで大・小胸筋のタイトネスがなく、
しっかりと肩関節複合体で外旋位を作れることが非常に重要であります。

最大外旋後にAccerelationでの肩内旋運動は、
大・小胸筋の筋力が必要であると考えます。

つまり、
筋の柔軟性と筋力ともに必要な要素だと考えます。

また、小胸筋においては、投球に必要な肩甲骨運動の妨げになると考えられます。

投球障害肩になりやすい肩甲骨運動は、
・下方回旋(前傾)
・外転(内旋)
・下制
となっていることが多いです。

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投球に必要な肩甲骨運動は、
・上方回旋(後傾)
・内転(外旋)
・挙上
だと考えています。

いわゆるCokingPhase~MERで必要な動きであると考えています。

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この投球に必要な肩甲骨運動すべてを阻害するのが、
小胸筋です。

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筋の走行から考えると作用としては、
肩甲骨の前傾・内旋(外転)・下方回旋・下制に作用します。

小胸筋はAccerelation期で必要な運動、筋力だと思いますが、
投球を考えるうえで、必ずケアしていかなくてはならない筋肉かと思います。

下記に、簡単に小胸筋と投球障害に関する報告を記載します。

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大・小胸筋の解剖

①筋の起始停止

小胸筋

起始  :第2(あるいは第3)~第5肋骨前面
停止  :肩甲骨の烏口突起
支配神経:内側及び外側胸筋神経(C7~T1)

大胸筋

起始①鎖骨部(上部):鎖骨の内側1/2
起始②胸肋部(中部):胸骨柄、第2~第7肋軟骨前面
起始③腹部(下部) :腹直筋鞘(ふくちょくきんしょう)の前葉(ぜんよう)
停止       :上腕骨の大結節稜(だいけっせつりょう)
支配神経     :内側及び外側胸筋神経(C5~C8、T1)

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教科書的な起始停止は上記のようになりますが、
小胸筋に関しては延長腱の報告が数多くあります。

延長腱とは、停止部分が肩甲骨の烏口突起までではなく、棘上筋の腱性部やその周囲に付着していただとの報告があります。

いわゆる破格例とされておりますが、
視覚的には連続性が保たれていなくても、組織的には上腕骨までの連続性があると考えても良いかと思っています。

下記のような延長腱が、10~40%の割合で小胸筋の延長腱が報告されています。

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・Weinstabl R , Hertz H , Firbas W Zusammenhang des ligamentum coracoglenoidale mit dem musculus pectoralis minor . Acta Anat 125:1986;126-131
・肱岡昭彦ほか:小胸筋の停止異常と鳥口上腕靱帯との関係について肉眼解剖による検索より.肩関節,1991;9:9-12.
・Homsi C ,et al . : Anomalous insertion of the pectoralis minor muscle : ultrasound findings . J Radiology , 84 : 2003 , 1007-1011.
・植木博子,他:小胸筋延長腱についての臨床研究.肩関節 38(2), 369-371, 2014

②支配神経

大・小胸筋の支配神経は、
内側・外側胸筋神経とされています。

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ただ、解剖の報告から観察するとどちらの神経がどちらの筋に多く分布しているのかが少し予測できます。

分岐が支配神経とイコールとはなりませんが、
参考になることがありますので、確認してみましょう。

大胸筋と小胸筋の神経入口部の肉眼的解剖学的構造

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外側胸筋神経の神経入口

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