C-I Baseballの増田稜輔です。
障害からの復帰プログラム
を担当させて頂きます。
医療機関と野球現場に勤務しているので
リハビリ→アスレティックリハビリ→競技復帰
までのトータルサポート方法を
お伝えしていきます。
医療機関と野球現場をつなげられるような
内容を発信していきますのでよろしくお願いします。
投球障害は休んでいても治りません
投球障害からの復帰には、原因となっているものを改善していく必要があります。
原因を改善せずに復帰すると、再度障害を引き起こす可能性があります。
投球障害から復帰する場合には、手順を踏むことが大切です。
今回は、投球障害肩の競技復帰までの
段階的なアプローチをお伝えします。
投球障害肩の段階的復帰プログラムとは
「痛みがない=全力投球OK」ではないです。
投球障害からの復帰には約4-8週間かけて段階的に復帰していく必要があります。
なぜ段階的に復帰が必要なのか
投球障害は勝手に治らないからです。
なぜなら、
障害を起こした原因が改善しないかぎり、投げればまた痛くなる悪循環を形成します。
投球障害からの復帰には原因となっているものを改善していく必要があります。
では、どのようなことが原因となるのでしょうか。
投球側は非投球側と比較し内旋筋力が強く外旋筋力が弱い
林田賢治:高校野球選手の肩内外旋筋力と投球動作の関係:肩関節2005;29巻 第3号:651-654
肩甲骨後傾運動が減少することで肩甲上腕関節外旋角度の割合が大きくなり
宮下浩二:投球動作の肩最大外旋角度に対する肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節および胸椎の貢献度:体力科学,(2009)58,379-386
ストレスが増大する。
inner muscle、僧帽筋下部線維は投球側で非投球側に比べて有意に低下していた。
川井謙太郎:投球障害肩症例における投球側と非投球側の肩関節機能の違い:理学療法科学 32(1):39–43,2017
投球肩障害の93%に投球動作の問題があった。
岩堀裕介:投球障害肩に対する投球フォーム矯正を中心とした保存療法の効果.肩関節 2000;24;377-382
過剰な水平外転は投球障害の一要となり得る。
宮西智久:野球の投球動作におけるボール速度に対する体幹および投球腕の貢献度に関する3次元的研究:体育学研究41:23-37、1996
投球障害の原因となる代表的な投球動作である「肘下がり」は、後期コッキング期から加速期における肩関節外転角度の減少に関連している。
井尻朋人:投球の早期コッキング期における胸椎後彎角度と肩関節外転角度の関係:第42回日本理学療法学術大会:Vol.34 Suppl. No.2
野球の投球障害において、過度の投球回数や不適切な準備や投球動作により腱板筋が疲労し、
林田賢治:投球障害肩の臨床診断.臨床スポーツ医学,1996,13(2) 137-146.
あるいは炎症を起こして拘縮しその協調した収縮が妨げられる。
その頻度が組織の修復するスピードを上回れば複合体に障害が蓄積しオーバーユースによる不安定症が発生する。
投球動作を90回繰り返すことにより肩関節内旋可動域が減少した。
柳澤修:高校生投手の投球数増加が身体機能に及ぼす影響ーいわゆる100球肩の検証ー:臨床スポーツ医学,2000,17(6):735-739
腱板筋力の疲労により上腕骨頭の上方移動が生じる。
Chen SK, et al.: Radiographic evaluation of glenohumeral kinematics: a muscle fatigue model. J Shoulder Elbow Surg, 1999; 8:49-52.
上記のように投球障害肩は
・身体部位の機能低下
・動作不良
・投球過多による筋の疲労
などの原因により身体運動連鎖が破綻し、特定部位に過剰な負荷が加わることで引き起こされます。
特にアマチュア選手は、
身体機能や動作スキルの未熟さ
毎日行われる練習により
投球障害リスクは高いと考えています。
3つの要素の割合は選手によってさまざまですが問題点を解決せずに投球動作を開始すると、
再び障害を引き起こし悪循環を形成します。
投球復帰後に問題になるのが、
「思い切り投げると痛い」
「投球数が増えると違和感が出てくる」
「昨日は痛くなかったけど今日は痛い」
筋が投球負荷に耐えられなくなり、
肩関節機能低下・動作不良を引き起こし、痛みを発生させてしまいます。
そのため、復帰に向けては、
機能・動作スキルの向上も必要ですが、
段階的に投球強度を上げていき、筋の耐久性を再構築していくことが必要であり、
スローイングプログラムが重要になると考えています。
投球障害肩の投球開始基準
投球開始には障害部位の疼痛の有無や
周囲の機能の改善が必要になります。
局所の関節内、筋、靭帯などの状態は
現場での評価では正確に把握することが困難です。
医療機関を受診し投球可能な状態であるかを判断してもらうことはとても重要です。
特に高校生以下の選手では、その後の野球人生を左右することもあるので必ず医療機関からの投球開始許可後に投球を開始するようにしましょう。
医療機関での投球開始項目
・障害部位の状態 →エコーやX-PのDr.所見
・障害部位の機能 →Special test 身体所見
最低限上記が改善していることが復帰の目安になります。
医療機関から許可後
「はい、投げていいですよ」
ではなく、
現場にいるトレーナーとしても投球開始許可が出た選手への評価は必要であり、
選手の身体状況を自らの目で把握した上で投球開始を許可します。
野球現場での投球開始項目
柔軟性 局所状態 腱板機能を評価します。
・CAT
・HFT
・HERT
・腱板機能評価
・各病態のspecial test
柔軟性評価
腱板機能評価
以上の肩関節の評価をクリアできれば、段階的なスローイングプログラムを開始していきます。
段階的スローイングプログラム
投球開始を許可されると、いきなり100%以上の力で投げてる選手やどのくらい投げていいのかわからない選手がいます。
「徐々に投げていいよ・・・・」
「痛くならないくらいで投げて・・・」
曖昧な表現で選手に伝えてしまうと、疼痛が再発するケースや投球強度が上がってない状態で試合に参加する選手がいます。
投球障害からの復帰には、身体機能+動作に合わせて、
最適な強度で進めていかないと再発するリスクが高まってしまいます。
トレーナーは選手に対して具体的なプログラムを提示し100%に近い状態で試合へ復帰させることが役割です。
トレーナーが選手へ伝えるべきこと
・どのくらいの期間で復帰できるのか
・現在どのくらい投げていいのか(距離球数)
・どんなトレーニングをするべきか
投球障害は繰り返し発症することも多いので、再発を防ぐ意味でも、現状、今後の復帰の流れをトレーナーから伝えることは選手との信頼関係を作るためにも大切な部分です。
選手の理解を得てからスローイングプログラムを開始していきましょう。
スローイングプログラム
スローイングプログラムは、4つのPhase 3つのstepで進めていきます。
投球距離・投球強度・投球数を段階的に向上させていきます。
選手の状態により投球数や投球間隔は変更していきますが基本的には
急に強度が上がらないよう注意をしプログラムを組むのが良いと思います。
下記のプログラムを参考にすると
復帰までは約48日程度かかります。
投球開始時の状態が良い選手でも最低30日程度かけてプログラムを組んでいきます。
スローイングプログラムの進め方
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