こんにちは!
C-I Baseball サポートメンバーの理学療法士・久我友也です。
今年からトレーナーマニュアルとして、noteへの定期投稿をスタートいたします。整形外科クリニックでの臨床経験を活かし、医療的視点から野球選手に対する評価・治療のエッセンスを、実践的かつ分かりやすくお伝えしてまいります。
科学的根拠と臨床での経験や工夫を重視し、その中で現場での実践に役立つ情報をお届けいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

ライタープロフィール
Writer|久我 友也
理学療法士
X:https://x.com/tomokiyo0903
前回まで投球動作における鼠径部痛へのアプローチをシリーズでお届けしておりました。未読の方はぜひご参照ください。
さて、今回は「野球選手の腰痛」がテーマです。
今後の連載予定
- Vol.1:総論・腰椎椎間板ヘルニア編(本記事)
- Vol.2:腰椎椎間板症(HIZ関連)、椎体終板変性(Modic change)編
- Vol.3:腰椎分離症(終末期)、椎間関節編
- Vol.4:筋性腰痛編
- Vol.5:慢性腰痛編
このノートで話す内容:ざっくりまとめ
・野球選手特有の腰痛について
・見逃してはいけない疾患について
・保存療法から手術適応
・ヘルニアの自然退縮について
・腰椎伸展位確立のための6つの具体的プログラム
・椎間板内圧を最小化する運動療法の実際
など…
さっそくはじめていきます!
はじめに:野球選手×腰痛について
野球といえば肩関節・肘関節の障害に注目が集まりがちですが、実際には腰痛は肩・肘に次いで発生頻度が高い重要な障害です。
疫学
アスリートの約75%**が競技人生で1回以上の腰痛を経験
Ong A, Anderson J, Roche J. A pilot study of the prevalence of lumbar disc degeneration in elite athletes with lower back pain at the Sydney 2000 Olympic Games. Br J Sports Med. 2003;37(3):263.
大学生を対象とした研究では
各種スポーツの中でバレーボールに次いで、野球が腰痛発生率第2位

- 2011年から2017年にかけて、メジャーリーグおよびマイナーリーグでは206件の腰椎損傷により5,948試合の欠場が発生
- 約30%がシーズン終了を意味し、13%以上が手術を必要とした
- 腰椎椎間板ヘルニアが最も頻度の高い損傷で、投手・野手ともに全症例の約44%を占める
Makhni MC, Curriero FC, Yeung CM, Kvit A, Ahmad CS, Lehman RA. Epidemiology of Lumbar Spine Conditions in Professional Baseball Players. Clin Spine Surg. 2023;36(7):E283-E287.
- 投手のリスクが特に高く、1000選手露出当たり0.111件の腰部損傷発生率
- 野手は1000選手露出当たり0.040件で、投手が野手を大幅に上回る
- 背部・頸部の筋挫傷・靭帯損傷では、投手の負傷率(1000選手・試合あたり1.893)が他選手(0.743)の2倍以上
Makhni MC, Curriero FC, Yeung CM, et al. The Burden of Back and Neck Strains and Sprains in Professional Baseball Players. Clin Spine Surg. 2024;37(7):305-309.
これらのデータが示すように、野球選手に関わる医療従事者として腰痛について深く理解することは極めて重要です。
野球選手の腰痛の多様性
選手からの訴え、多様であり以下のようなケースが多い
動作別の疼痛パターン
「投げる時に痛い…」
「打撃の時に痛い…」
「走った後に痛い…」
「捕球体制をとるときに痛い…」
「ウェイトトレーニングのときに痛い…」

これらの症状に対し、前屈・後屈・回旋動作を確認して以下のように分類するのが一般的によく行われるアプローチかと思います。
・屈曲型腰痛
・伸展型腰痛
・回旋型腰痛

そして、これらの所見から機能改善を目的とした介入に落ち着くことが多いのではないでしょうか。

このように運動時痛と身体機能から介入方法を決定していくことに加え、「何が痛みを引き起こしているのか」を「推測」していくことが重要であると考えます。
なぜ、疼痛原因の推測が重要なのか
症状の発生源をある程度特定することが極めて重要です。疼痛の発生源を推測することができると、やることがおのずと決まってくるためです。
例として、今回取り上げる椎間板ヘルニアでは、徹底して腰椎への屈曲方向へのストレスを減らすことが重要です。
なぜなら、病態が椎間板内にある髄核が後方へ突出すること、つまり腰椎屈曲ストレスが加わることで椎間板内圧が上昇し、症状を引き起こす要因となるからです。
よって、腰痛を評価していく上では
特に以下の疾患の所見があるかどうかは必ず確認する必要があります
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 腰椎分離症

腰椎椎間板ヘルニア:Fukunaga T, Sasaki M, Bamba Y, Utsugi R, Matsumoto K, Umegaki M. A rare case of lumbar disc herniation mimicking lumbar discal cyst after percutaneous endoscopic lumbar discectomy. Interdiscip Neurosurg. 2021;25:101131.
これらはマッサージやストレッチ、エクササイズで改善しうるものではないため、医療機関での画像検査を要する腰痛かどうかの見極めが必要不可欠です。
以下に簡単に所見をまとめましたので、ご参照ください。

野球選手で注意すべき病態
本シリーズで取り上げる主要な病態として、以下のようなものをまとめてまいります。細かい病態などは成書をお読みいただければと思いますが、私がここだけは押さえておきたいという点に絞って、病態・評価・治療内容を紹介していきたいと思います!
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 腰椎椎間板症(HIZ関連)
- 椎体終板変性(Modic change)
- 腰椎分離症
- 椎間関節症
- 筋性腰痛
- いわゆる慢性腰痛
では、今回は腰椎椎間板ヘルニアについて
本題に入っていきます!!
腰椎椎間板ヘルニアについて
病態
基本的な発症メカニズム
腰椎椎間板ヘルニアは、腰椎の椎間板内にある髄核または線維輪内層が周囲の線維輪を穿破し、逸脱・突出することにより症状が発現する疾患です。

症状発現の流れ
- 線維輪の損傷や椎間板内圧の上昇 → 腰痛が発症
- 突出したヘルニアによる馬尾や神経根の圧迫 → 下肢神経症状が出現
注目すべき最新の知見は、物理的な損傷や圧迫に加え、産生された炎症性サイトカインも腰痛や下肢神経症状発生の原因となることが報告されていることです。
これにより、単純な「圧迫による痛み」だけでなく、炎症反応による痛みも重要な要素として理解されています。

①Le Maitre CL, et al: Catabolic cytokine expression in degenerate and herniated human intervertebral discs: IL-1beta and TNFalpha expression profile. Arthritis Res Ther. 2007;9(4):R77.
②Toyone T, et al: Low-back pain following surgery for lumbar disc herniation. A prospective study. J Bone Joint Surg Am. 2004;86(5):893-6.
疫学
- 男女比:約2〜3:1(男性により多い)
- 好発年齢:20〜40歳代(まさに野球選手の現役世代)
- 好発高位:L4/5、L5/S1間
日本整形外科学会, 他監:腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン. 改訂第2版. 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会, 他編. 南江堂, 2011.
スポーツにおける発症要因
- 椎間板変性に伴う線維輪の力学的脆弱性により髄核組織が線維輪を穿破
- 腰椎への軸圧や回旋運動が椎間板変性に影響
- 強い捻転力により線維輪の亀裂や断裂が生じる
Farfan HF, et al: The effects of torsion on the lumbar intervertebral joints: the role of torsion in the production of disc degeneration. J Bone Joint Surg Am. 1970;52(3):468-97.


日常動作での影響因子
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