前回までハムストリングの肉離れに関するリハビリテーションを執筆させていただきました。その際には、次回は下腿三頭筋の肉離れについてという恋とで題材を描かせていただいていたのですが、マイトピックが顎関節と頸部の関連性なので順番を変更させていただきnoteを執筆させていただきます。
楽しみにしていただいた方がいらっしゃれば、大変申し訳ありません。
なぜ今回顎関節に注目するか・・・
野球選手の頸部症状(胸郭出口症候群、以下:TOS)には、TOSの斜角筋症状、肋鎖間隙症状、小胸筋症状のなかで斜角筋症状に対峙することが多いことが挙げられるかと思います。
斜角筋症状には、斜角筋本体へのアプローチや呼吸へのアプローチなどが考えられますが、多くは2つの要素・現象に対するアプローチに分けられるのではないかと考えております。
❶起始部へのアプローチ(第2-6横突起)
❷停止部へのアプローチ(第1肋骨)
今回は❶の一端を担う顎関節について、顎関節や口腔機能のプロでは当たり前の話かもしれませんが、整形外科クリニックに携わる目線で実際に現場で感じること、歯科医の先生とのディスカッションで得たものをまとめさせていただきます。
1.なぜ顎関節が斜角筋と関係があるのか
正直、顎関節の話は養成校でほとんど勉強することがない部位ではないかと思います。ただ、生活を送る上で絶対に無くてならない関節です。
なぜか、衣食住の食の時に顎を使うためです。食なしにアスリートは成り立ちませんし、特に若いアスリートは多くの食事を摂取します。一回の摂取のみならず、一日5食ないし7食摂るような選手もいて、
一食200~300回咬合動作を行う1)(20代のデータがなく70代のデータ)と考えれば、1日最低でも1000回以上は行う動作です。
1)Farooq M, Sazonov E. Automatic Measurement of Chew Count and Chewing Rate during Food Intake. Electronics (Basel). 2016;5(4):62. doi: 10.3390/electronics5040062. Epub 2016 Sep 23. PMID: 29082036; PMCID: PMC5656270.
一方、呼吸は1分間に10~20回とされ2)、おおよそ1日20000回とされています。呼吸ほど多い動作ではないため、頸部症状には呼吸が優先されてアプローチされている現状もあるのかなと感じておりますが、呼吸にアプローチをしても頸部症状に変化がないことを経験するのも確かです。
ただ、歯科医の先生との会話で一つ落とし穴があることに気が付きました。
これまで述べてきた呼吸へのアプローチ、これは体幹-胸郭を中心としたアプローチでした。歯科医の先生に教えていただいたのは、口腔環境や鼻炎などの副鼻腔の問題も呼吸を乱す要因となるということです。口腔環境の一部を担う顎関節にアプローチすること、これも呼吸に関わるアプローチにもなり得ると考え、今回はその重要性をまとめていきます。
Jones MT, Heiden E, Fogg C, Meredith P, Smith G, Sayer N, Toft L, Williams E, Williams M, Brown T, Gates J, Lodge D, Bassett P, Amos M, Chauhan M, Begum S, Rason M, Winter J, Longstaff J, Chauhan AJ. An Evaluation of Agreement of Breathing Rates Measured by a Novel Device, Manual Counting, and Other Techniques Used in Clinical Practice: Protocol for the Observational VENTILATE Study. JMIR Res Protoc. 2020 Jul 20;9(7):e15437. doi: 10.2196/15437. PMID: 32706740; PMCID: PMC7399957.
前置きはこれくらいにして、なぜ顎関節が頸部と関連があるのか、これには様々な影響があることが考えられます。
❶痛みの経路
❷姿勢
・Forward head posture, 以下:FHP
・舌位
❸呼吸
・口呼吸(アレルギー性鼻炎などとの関連)
❹口腔環境
・咬合
・噛み締め
・片側咀嚼
Bogduk N. The clinical anatomy of the cervical dorsal rami. Spine (Phila Pa 1976). 1982 Jul-Aug;7(4):319-30. doi: 10.1097/00007632-198207000-00001. PMID: 7135065.
Xu L, Zhang L, Lu J, Fan S, Cai B, Dai K. Head and neck posture influences masticatory muscle electromyographic amplitude in healthy subjects and patients with temporomandibular disorder: a preliminary study. Ann Palliat Med 2021;10(3):2880-2888.
Lee WY, Okeson JP, Lindroth J. The relationship between forward head posture and temporomandibular disorders. J Orofac Pain. 1995 Spring;9(2):161-7.
Miyake R, Ohkubo R, Takehara J, Morita M. Oral parafunctions and association with symptoms of temporomandibular disorders in Japanese university students. J Oral Rehabil. 2004 Jun;31(6):518-23.
上記に挙げたような要素が、頸部筋との関連になり得る根拠です。他にも、様々な要素が挙げられますが、この辺りを知っておくと問診の時に要素を抽出できるかと思います。実際に私は頸部痛やTOSと対峙した際にはこの辺りは逃さないように問診するようにしています。
ただ、咬合などの口腔環境に関しては我々ができることとは異なります。我々PTが頸部痛に対して関わる上で大切にしたいのは、解剖学・運動学を理解することです。
そちらをまとめながら、具体的にどのような評価・アプローチを行なっていくと野球選手のコンディショニングに良いかを提案いたします。
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