こんにちは!
C-I Baseball サポートメンバーの理学療法士・久我友也です。
整形外科クリニックでの臨床経験を活かし、医療的視点から野球選手に対する評価・治療のエッセンスを、実践的かつ分かりやすくお伝えしてまいります。
科学的根拠と臨床での経験や工夫を重視し、その中で現場での実践に役立つ情報をお届けいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

ライタープロフィール
Writer|久我 友也
理学療法士
X:https://x.com/tomokiyo0903
前回まで投球動作における鼠径部痛へのアプローチをシリーズでお届けしておりました。未読の方はぜひご参照ください。
今回は「野球選手の腰痛」がテーマです。
連載シリーズ
- Vol.1:総論・腰椎椎間板ヘルニア編
- Vol.2:腰椎椎間板症、椎体終板変性(Modic change)編
今回はこれ⇧⇧ - Vol.3:腰椎分離症(終末期)、椎間関節編
- Vol.4:筋性腰痛編
- Vol.5:慢性腰痛編
さっそくはじめていきます!
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はじめに
アスリートが経験する腰痛は、大きく「前方要素」と「後方要素」の2つのタイプに分類されます。
前方要素の腰痛:椎体や椎間板(髄核、線維輪、椎体終板)などの障害
後方要素の腰痛:椎弓、棘突起、椎間関節などの障害
成長期のアスリートでは腰椎分離症に代表される後方要素の障害が多い一方で、成人アスリートの腰痛は椎間板や筋・軟部組織に起因するケースが大半を占めています。

日本のプロ野球選手を対象とした研究によると
20代選手の腰痛原因
- 椎間板ヘルニア:57%
- 脊椎分離症:24%
30代選手の腰痛原因
- 椎間板性腰痛:55%(最多)
- 椎間板変性の発生率:91%
- Modic変化やSchmorl結節も若手選手より有意に増加
Morimoto M, Okada R, Sugiura K, et al. Low Back Pain and Lumbar Degeneration in Japanese Professional Baseball Players. Orthop J Sports Med. 2022;10(10):23259671221125510.
このデータから、大学以降の野球選手における腰痛では、椎間板性腰痛への対応が極めて重要であることが分かります。
本稿では、椎間板性腰痛について、解剖学的構造から病態メカニズム、そして実践的なリハビリテーションまで体系的に解説します。
特徴的な症状と身体所見
椎間板性腰痛には特有の症状パターンがあります
痛みの部位と特徴
- 腰部正中の軸性腰痛(左右差が少ない)
- 体幹前屈動作で増悪
- 長時間の座位で増悪
- 座位からの立ち上がり時に痛み
- 臥位では症状が軽減
Lorio MP, Beall DP, Calodney AK, Lewandrowski KU, Block JE, Mekhail N. Defining the Patient with Lumbar Discogenic Pain: Real-World Implications for Diagnosis and Effective Clinical Management. J Pers Med. 2023;13(5):821.
さらに、アスリート特有の症状として、ランニングやジャンプなど「衝撃が加わる動作」で疼痛が増悪することも重要な所見です。
他の腰痛との鑑別ポイントとして
「椎間板性以外の要因を除外する」というが有効だと考えています。
椎間関節性腰痛との違い
伸展動作やKemp testで片側性の症状が強く出る(伸展でも椎間板への負荷がかかるという報告もあるので注意)
仙腸関節性腰痛との違い
仙腸関節ストレステストで症状が誘発される
臥位でも症状が持続
骨盤ベルトで症状が緩和
私の臨床では、これらの所見を一つ一つ確認し、該当しない場合に椎間板性腰痛の可能性を考えて治療を進めています。
椎間板の解剖学:なぜ痛みが生じるのか
椎間板の3層構造
腰椎の椎間板は、上下の椎骨の間にある線維軟骨性の構造で、3つの要素から構成されています。
椎間板は精巧な3層構造を持っています
1. 髄核(中央部)
ゲル状で含水率が高い組織
コラーゲンII型とプロテオグリカンが豊富
衝撃の吸収と分散を担う「クッション」の役割
2. 線維輪(周囲)
同心円状の層板構造を持つ強靱な繊維組織
外層:コラーゲンI型主体(強度重視)
内層:コラーゲンII型主体(柔軟性重視)
椎間板に加わる応力を支える「壁」の役割
3. 椎体終板(上下)
約0.6mm厚の硝子軟骨板
椎骨との境界を形成
髄核・線維輪への栄養供給路
この構造により、椎間板は圧縮ストレスに対して非常に強い耐性を持っています。


神経分布の特性:なぜ通常は痛まないのか
健常な椎間板の神経分布には重要な特徴があります
- 神経支配は線維輪の外側1/3のみに限局
- 髄核内部にはほとんど神経が存在しない
- 血管分布も同様に乏しい
つまり、正常な椎間板は「痛みを感じにくい構造」になっているのです。では、なぜ椎間板性腰痛が生じるのでしょうか?

椎間板性腰痛の病態メカニズム
椎間板性腰痛の病態には以下の要素が関連といわれています。
- 椎間板の生体力学的な不安定性
- 椎間板(線維輪)内への神経の侵入や感作、炎症
- 椎体終板の損傷
Fujii K, Yamazaki M, Kang JD, et al. Discogenic Back Pain: Literature Review of Definition, Diagnosis, and Treatment. J Bone Miner Res Plus. 2019;3(5):e10180.
線維輪が関与した病態
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