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1. はじめに
今回は、実際に臨床で野球選手を見ていてよく遭遇する症状、病態、
肘関節後方インピンジメントについて述べていきたいと思います。
先月、新海先生のNoteで、肘後方障害に対する運動療法というタイトルで執筆されていました。
非常に勉強になりますし、動画も多数ありますので、
ぜひ、ご参考にされてください!
『 投球動作で肘の後方が痛い 』
この訴えを聞いたとき、まず思い浮かぶ病態の一つが肘関節後方インピンジメントです。
特に野球選手では、投球時に肘関節へ大きな外反ストレスと伸展ストレスが加わります。
その結果、肘頭と上腕骨の肘頭窩周囲が繰り返し衝突し、肘後方〜後内側部に疼痛が生じることがあります。

しかし、臨床では単純に
「骨がぶつかっている」
「肘を伸ばすと痛い」
だけで捉えると、病態の本質を見逃してしまうことがあります。
肘関節後方インピンジメントでは、骨性の衝突が病態の背景にはありますが、
それだけではなく内側側副靱帯、尺骨神経、肘関節可動域、前腕機能、肩甲帯・体幹機能、投球フォームなどが複合的に関与します。
本記事では、投球障害肘における後方インピンジメントについて、病態・評価・リハビリテーションの視点から整理します。
2. 肘関節後方インピンジメントの病態とは
肘関節後方インピンジメントとは、肘関節後方で肘頭と肘頭窩周囲が衝突し、疼痛や可動域制限を生じる ”状態” です。
インピンジメントという名称は、病態ではなく、状態を表しています。
病態ということを考えると、インピンジメントが誘因となって生じる疼痛を
インピンジメント症候群といいます。
肩関節ではよく聞くところかと思います。

投球動作では、
加速期からリリース、フォロースルーにかけて
肘関節に強い外反ストレスと伸展ストレスが加わります。

※Werner SL et al. J Orthop Sports Phys Ther. 1993
※Solomito MJ et al. Sports Biomech. 2021.
このストレスが繰り返されることで、肘後方〜後内側部に機械的な圧迫や剪断力が加わり、以下のような変化が生じることがあります。
・肘頭後内側部の骨棘形成
・肘頭窩との衝突
・軟骨損傷
・滑膜炎
・遊離体
・肘頭疲労骨折
・肘頭骨端線障害
・内側側副靱帯機能不全の合併
つまり、後方インピンジメントは肘関節単独の現象というより、
投球動作に伴う肘関節への反復ストレスの結果として生じる
“状態” として捉えることが重要です。
3. なぜ投球で起こるのか
投球動作では、肘関節に大きな外反ストレスが加わります。
このとき、肘の内側では牽引ストレス、外側では圧迫ストレス、そして後方〜後内側では肘頭と肘頭窩周囲の衝突が生じます。
特にリリース前後からフォロースルーにかけて、肘関節は高速で伸展方向へ動きます。
投球時の肘伸展速度は2200〜2500 deg/sに達する。
この驚異的なスピードは、単なる肘関節伸筋(上腕三頭筋)の筋収縮だけでなく、肩の内旋に伴う遠心的な慣性力が引き起こすものである。
※Fleisig GS et al. Am J Sports Med. 1995
この反復により、肘頭後内側部が上腕骨の肘頭窩周囲と衝突し、疼痛が誘発されます。
現象としては、Valgus Extension Overloadというものがあります。
MER時に肘が外反ストレスを受けることによって、肘関節肘頭窩の内側に肘頭がぶつかることを言います。

もう一つ、リリースのタイミングで痛みを生じる現象があります。
Mechanical door stop actionというものがあり、リリース時に肘頭が肘頭窩へぶつかり、疼痛が生じます。

このような動作が肘後方インピンジを引き起こします。
ここで重要なのは、後方インピンジメントが「肘後方だけの問題」ではないという点です。
例えば、内側側副靱帯の機能が低下している場合、肘関節の外反制動が不十分となり、後内側部へのストレスが増大する可能性があります。

また、肩関節や肩甲帯、体幹の機能低下によって投球時の肘への負担が増加すれば、結果として後方インピンジメントを助長することもあります。
4. 症状の特徴
肘関節後方インピンジメントでは、以下のような症状がみられます。
・投球時の肘後方痛
・リリース後〜フォロースルーでの疼痛
・肘伸展時痛
・肘関節伸展可動域制限
・投球後の肘後方の違和感
・肘を強く伸ばしたときの詰まり感
・肘後内側部の圧痛
特に「肘を伸ばし切ると痛い」「投げた後に肘の後ろが痛い」という訴えは、後方インピンジメントを疑うきっかけになります。
ただし、肘後方痛を訴える病態は後方インピンジメントだけではありません。
肘頭疲労骨折、肘頭骨端線障害、遊離体、滑膜炎、尺骨神経障害、内側側副靱帯損傷なども鑑別する必要があります。
肘頭疲労骨折

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