野球選手の肉離れの復帰後のトレーニング・再発予防の身体作り【トレーナーマニュアル15】

野球選手の肉離れの復帰後のトレーニング・再発予防の身体作り【トレーナーマニュアル15】

C-I baseballの肉離れから競技復帰後のトレーニング・再発予防の身体作りを担当します高橋塁です。

日々、野球を中心にスポーツの現場で、トレーニング、コンディショニング、技術指導を行っています。

私自身が、日々のスポーツ現場での経験をもとに、障害をいかに防ぎ、かつ再発せず、パフォーマンスアップできるかをお伝えし、医療機関とスポーツの現場との連携をいかにスムースにできるかをわかりやすく発信していきたいと思います。

高橋塁プロフ写真①

【マガジン紹介】


C-I Baseballトレーナーマニュアルでは、臨床・現場での野球におけるケガの対応力を高めるためのマニュアルを配信しています。

・これから野球現場に出たい方
・野球のケガの対応力を高めたい方
・臨床での野球のケガの評価・トレーニング・復帰について悩む方


にオススメの内容です!
ぜひ、ご活用ください!!

まずは、ここまでの肉離れに関する小林弘幸さん、須藤慶士さん、佐藤康さん、増田稜輔さんのnoteにも掲載された内容を振り返りながらダイジェスト版として振り返ります!

まず、野球の現場ではいろんな怪我やアクシデントが発生します。

目次
  1. 野球現場トレーナーに求められること
  2. 肉離れの概論
  3. 肉離れの身体所見
  4. 肉離れの生じやすい動作
  5. メディカルリハビリテーション
  6. メディカルリハビリテーションの実際
  7. 復帰基準
  8. アスレティックリハビリテーション
  9. 段階的トレーニングプログラム
  10. 再発予防の身体作り
  11. まとめ

野球現場トレーナーに求められること

に1

肉離れを起こすには、きっかけとなる動作が必ずあります。
そのため、受傷機転の把握が重要であり

・なぜ受傷したのか
・どんな動きで受傷したのか
・どの機能の低下が原因になって受傷したのか


原因を考えていき復帰への道筋を立てていくことが野球現場で求められるトレーナーの役割になってきます。

普段から、走塁時の癖や、ランニング時のフォームチェックなどをしておくことも野球に携わるトレーナーとしては必要なことと考えられます。
つまり、普段のウォーミングアップから選手の特徴を捉えることが大切かと思います。

野球現場での受傷後の対応

グラウンド内で受傷した時の対応

・プレーを中断し選手の状況を確認する(試合中は審判の判断により中断)
・体動可能か判断し、体動困難であれば担架を使用体動可能であればグラウンドからベンチ裏へ移動させる
・評価を行う

それでは、まずは、肉離れの概論から。

に2

肉離れの概論

肉離れとはスポーツ動作中に起こる代表的な筋損傷です。
自らの拮抗筋の収縮や介達外力により、筋が過伸展されて損傷するものです。

【内的要因】
・筋力低下 

・柔軟性低下 

・拮抗筋との筋力アンバランス 

・運動神経単位の破綻


【外的要因】
・気温 

・走路の硬さ 

・脱水


などが考えられますが不明な部分が多いのも事実です。

に3

「病態・動作分析について」詳しくはこちらを御覧ください↓↓

肉離れの身体所見

基本的には画像診断で経過を追っていきますが、身体所見をみて経過を追っていくことも非常に重要です。
身体所見の評価は、

1、視診(皮下出血・発赤・陥凹・腫脹など)
2、触診(圧痛・違和感・筋硬結・熱感など)

に26

3、ストレッチ痛(SLR・ASLRなど)

腹斜筋の場合:基本的には起始・停止を考慮し、伸張を行います。

に27

・ハムストリングスの場合:評価はSLRを用いるのがいいと思います。他動にて行います。

に28

・軽度は70°以上
・中等度は30°〜70°
・重度は30°以下

・大腿四頭筋評価の場合:元々、可動域が狭い選手もいるので健側と比較し、疼痛の度合いや圧痛など総合的に判断

に29

・軽度が90°以上
・中等度が45〜90°
・重度が45°以下

・腓腹筋の場合:自動運動での評価になります。

に30

・軽度は膝伸展位で軽度の伸張痛
・中等度は膝屈曲位で軽度の伸張痛
・重度は膝屈曲位で伸張痛、つま先立ち不可


※ 伸張しても痛みが出ない範囲は普段もセルフエクササイズは行いましょう。(画像診断・医師の許可による)

4、筋力評価(徒手評価・筋力測定評価など)

伸張・収縮ができなければ、負荷をかけてのトレーニングができないしプレー復帰した際に再び受傷してします恐れがあります。
ですから、収縮時痛がどのような肢位・動作で起こるのかを評価しないといけません。
収縮を行うときは 自動運動⇒抵抗を加えての運動を行い評価します。

・腹斜筋の場合

に31

この4項目を中心とした、『総合的』な評価が大切です。

「病態・動作分析について」詳しくはこちらを御覧ください↓↓

肉離れの生じやすい動作

走塁時

走塁時で生じやすい肉離れは、ハムストリングスです。

に32
に33


受傷しやすい走塁は、【遊脚期での下腿の振り出しが大きい】・【接地期で体の前方へ踵が接地する】といわれています。
走塁中の受傷で最も多いのが、1塁ベース付近です。 

本塁から1塁ベース間と1塁オーバーランの減速時に発生します。

本塁ー1塁間での受傷

1塁ベースを踏む際に2つのパターン分類することが出来ます。
①ベース駆け抜けパターン
②ベースを踏みに行くパターン
肉離れの発生が多いのはベースを踏みに行くパターンです。

に34


①ベース駆け抜けパターン
目標がベースよりも先にあることでベース直前で減速することなく駆け抜けるため、肉離れのリスクが少ない。

②ベースを踏みに行くパターン
目標がベースであるために、膝関節を伸展させスライドを大きく広げベースを踏む。

に35

上半身の前方回転モーメントを制御するためにハムストリングスの遠心性収縮が起こり肉離れを受傷する。

1塁オーバーランでの受傷

1塁をオーバーラン時の減速場面での受傷パターンです。減速動作時に、速度をコントロールすることが出来ずに急激な減速動作が生じることで受傷します。

に36

減速時に下腿が地面に対して垂直に近い角度で減速することで、ブレーキングが出来ず上半身が前方へ回転し、ハムストリングス に伸張負荷が加わります。

守備時

受傷シーンとしては、球際の打球処理の際に受傷することが多い

内野手の受傷パターン

内野手ではゴロの打球処理の際に受傷します。特に左右方向の打球の際に受傷することが考えられます。

前方向での打球に対し、ステップを合わせながら緩やかに捕球態勢に入り重心が低い状態のため受傷リスクは少ないです。

に37

左右方向では、前方の打球と比較し、ボールへ走る距離が長く重心も高くなります(俗に言う腰が高い)。

重心が高い位置から、捕球態勢に入ることで、股関節屈曲運動が生じ、ハムストリングス に伸張負荷が加わり受傷します。

外野手の受傷パターン

外野手においても内野手同様に左右方向の打球処理の際に受傷することが多いと考えられます。
特にライナー性の打球の処理です。

に38

外野手では走行距離も長いため、トップスピードに近くためストライドが広がり、接地時に受傷します。

投球時

スッテプ脚ののFP~BRにかけての受傷が多く、投球動作時にステップ脚の膝関節を伸展し投球する選手で受傷しやすいと考えられます。

①ステップ脚 膝関節屈曲位接地→伸展運動

②ステップ脚 膝関節伸展位接地→伸展運動

近年の投手ではステップ脚の伸展運動を使い並進力を回転力へ変換し投球する選手が増えており、伸展力により大きなパワーを生む反面ケガのリスクも高いと感じます。

に39

腹斜筋の受傷機転機転

バッティングによる肉離れ

に40

投球による肉離れ

に41

腹斜筋の肉離れではバッティング・投球時に共通する動きが生じます。
共通する動き:下肢→体幹→上肢の順で運動連鎖が生じることです。
同一方向へ回旋する際に、どこか1つのポイントの連動性が低下することで腹斜筋への過剰負荷が加わると考えられます。

メディカルリハビリテーション

目標設定

に42

ハムストリングス損傷の目標としてジョグ復帰、腹斜筋の損傷としてスイング復帰が重要な目標設定となるかと思います。

肉離れの段階的復帰プログラムのゴール

に43

最終的なゴールは競技復帰です。
しかし、肉離れの再受傷率は高く、復帰後2週間以内での再受傷率することが多いとされています。

復帰直後の再受傷は

・復帰時期の誤り
・筋肉が競技負荷に耐えきれない
・伸張性が残存している


などの原因が考えられます。

以上のことから、肉離れから競技復帰を目指すためには

・損傷部位の治癒経過
・筋肉の耐久性
・適切な筋肉の伸張性

などの要素を踏まえながら進めて行くことが必要です。

段階的な対応手順‐フローチャート

急性期→亜急性期→回復期→アスリハへの移行と大きくわけて解説していきます。

に44

図で表す通り、各病期においてそれぞれの機能・動作の改善が求められる

に45

復帰の期間は重症度に応じてそれぞれ異なりますが、損傷した筋機能の回復・動作の獲得という流れについては基本的に保存療法であれば大きく異なることはありません。


メディカルリハビリテーションを進めるにあたって、以下はおさえておくべき事項であると思います。
『損傷した筋の治癒過程』・『肉離れの重症度』・『スポーツ復帰までの期間』・『病態理解(病期に応じた対応)』

トレーニング前におさえておくポイント

トレーニングを進める前に以下のポイントを注意しておきます。

① 重症度

Ⅱ型(奥脇の分類)の損傷にみられる腱膜自体に損傷があるかないかで復帰の期間は大きく左右されます。
そのため、復帰を考える上で、重症度における損傷の程度も重要ですが、損傷部位を特定して適切に対応することが重要となってきます。

②受傷機転の理解

③必要な初期対応

初期対応により出血をいかに抑え、その後の血腫形成を最小限に抑えられるかが、肉離れ治療・復帰のポイントとなります。
受傷直後から48時間まではRICE処置・過用を抑えた免荷歩行などは徹底すべき事項であります。

④再受傷の危険因子

ハムストリングス損傷の再受傷率は1/6~1/3と高い値のデータがあります。
再損傷してしまうと初回受傷と比べて、スポーツ復帰できるまでの期間がより長くなってしまいます。
再受傷を高める理由として

・不完全な治癒(MRIで治癒が確認できない)
・瘢痕組織の形成
・神経筋コントロール不足の残存・機能的な代償が挙げられます。


再受傷してしまう例として、同部位の損傷と他部位の損傷をするケースがあります。

同部位の受傷

不完全に治癒したまま、再受傷してしまう例です。
筋腱移行部型の損傷では、修復される早期に負荷をかけることによって再発しやすくなります。
そのため、損傷時の重症度を正確に把握して対応することが重要となります。

他部位の受傷

同じ部位の損傷ではなく、一度損傷した部位の近くを損傷する例です。
損傷しやすい動作の改善が図られないために、損傷した動作と同様の負荷が加わることによって起こりやすくなります。

メディカルリハビリテーションの実際

肉離れ受傷後のリハビリテーションの主目的

二次的な損傷や安静に伴う問題を予防しながら、スポーツ復帰に要する柔軟性、運動性(神経筋コントロール)、筋力、持久力を再獲得させること

急性期対応(受傷後~48時間)

受傷後1日目、2日目の理学所見の変化は競技復帰までの期間を予測するためにも重要です。
そのため、受傷後と同様に圧痛・伸張痛・抵抗痛・動作時痛の評価を行っていきます。

に49

Active knee extention test

に50

方法

股関節・膝関節90°屈曲位から自動運動にて痛みのない範囲まで伸ばし、伸展角度の左右差を計測

SALTAPS

現場ではSALTAPSという評価方法により、選手がプレー復帰可能かどうかを判断する方法があります。

に51

RICE処置

受傷直後はまずRICE処置が鉄則です。
受傷後48時間以内は損傷部位の疼痛を軽減させる目的で行います。
最近では長期間のRICE処置は治癒の遷延させるため疼痛がピークの時のみ行います。

アイシング方法

凍傷を防ぎながら行う必要がありますので1回15分~20分を目安に間欠的に行います。バンテージにて圧迫も同時に行います。

安静肢位

損傷部位の緊張が取れるポジションが望ましいです。
ハムストリングス :膝関節屈曲位
腹斜筋:側臥位(肩の下にタオルなど入れ軽度短縮位)

処置方法

受傷直後の急性期対応後は、患部を処置し医療機関の受診を行います。
受傷部へはテーピング+圧迫にて損傷部位への負荷を最小限にします。歩行困難の場合は松葉杖の処方を行うこともあります。

受傷部位へのテーピング方法

に52

圧迫方法

肉離れの後は、損傷組織周囲の血腫が生じます。また、筋の伸張短縮によって疼痛が増強するため圧迫にて、血腫を最小限にし、筋の張力負荷を抑えることが、その後のリハビリテーションへ移行するためには重要です。血腫が残存してしまうと筋の癒着による、制限が生じ、疼痛も長引きます。

に53

弾性包帯・自着式テーピングによる圧迫

※自着式テーピング(自着性であるため、弾性包帯よりも密着度が高い)
※LINDSPORTS 自着式テーピング リピバン(大腿部の損傷では75mmを使用しています。)
大会中やチーム事情でやむおえない場合はテーピング+バンテージでの圧迫で再度SALTAPSを評価しクリアできればプレーを再開させます。

急性期では物理療法による疼痛管理と組織の循環を促通します。疼痛が消失してきたら亜急性期の対応へ移行していきます。

物理療法

急性期は除痛、腫脹の緩和、組織の早期回復を目的とし物理療法が効果的です。

Hi-voltage治療器(高電圧パルス電流療法)

目的:鎮痛 血流循環増大 浮腫の軽減
パルス幅を小さくし高圧電流を加えることで、皮膚抵抗を最小限にし疼痛域値を上昇させる

超音波治療器

目的:組織修復の促通、浮腫の軽減
急性期では炎症症状があるため、非温熱モードにて実施します。皮下温度を上昇させず、圧電効果による組織の循環を促すことで組織修復や腫脹を軽減させていきます。

に54
マイクロカレント療法(MENS)
に55


目的:鎮痛 組織修復の促通、浮腫の軽減
マイクロカレントは750μA以下の微弱な電流のことです。毛細血管を刺激し血流の改善が起こることで発痛物質が除去される。
刺激がわずかなため、神経や筋肉を興奮させることなく血液循環を促すことが出来ます。鎮痛作用と治癒促進では設定が異なるため注意が必要です。

循環改善

血管や神経の走行する筋間中隔に対してリリースを行っていきます。

に56

◎リリース 動画

亜急性期対応

炎症が軽減した後はハムストリングスへの負荷を増大させる異常なバイオメカニクスや柔軟性の低下にアプローチしていきます。

亜急性期のプログラム

に57

☆ 患部エクササイズ

(※☆印は須藤慶士さん記事参照)

患部外トレーニング

ハムストリングス や腹斜筋の肉離れであれば、上肢帯のトレーニングは可能です。
肩関節の腱板筋トレーニング、上肢W–Trなど肢位に配慮し行うことが重要です。
特に腹斜筋では回旋運動や側屈運動が生じないように注意が必要です。

有酸素トレーニング

亜急性期では運動強度はかなり低下します。運動強度の低下に伴い、心肺機能も低下します。
心肺機能の低下は競技復帰の妨げになりますので、維持していく必要があります。

エアロバイク

最大心拍数の約50~60%強度から開始します。
選手のコンディションを観察しながら段階的に、強度を上げていき70%~80%下での運動を目指します。

最大心拍数の計算方法
208−0.7×年齢
目標心拍数の計算方法
208−0.7×年齢×運動強度

アライメント(ハムストリングスにおける負荷への影響を推察し確認していきます。)

に58

関節の異常運動(大腿骨の骨頭運動の評価では股関節屈曲時の大転子の運動を確認し、大腿骨頭の後下方への運動が減少していないかを確認)

に59

筋柔軟性・可動域

に60

筋機能

(筋力は最大筋力だけでなく、膝や股関節の主動筋と拮抗筋のバランスや左右差を評価し、改善を図っていきます)

に60

トレーニング

◎ ヒールスライド(ハムストリングスの機能訓練)

患部外のストレッチ


動作中の骨盤前傾につながる股関節屈筋群(腸腰筋・大腿筋膜張筋・中殿筋前部など)の柔軟性を高めておきます。

他関節エクササイズの介入

腹臥位での股関節伸展運動において、大殿筋とハムストリングスの活動のタイミングを確認します。
動作により、殿筋活動の遅延や筋長短縮位での弱化がある場合には殿筋のトレーニングを進めていきます。

回復期対応

回復期

受傷から2−4週付近で回復期へ移行していきます。回復期ではジョギング開始を目標とし

【動作獲得】・【ダイナミックアライメントの改善】・【遠心性収縮】

の向上を図っていきます。


回復期では筋への伸張負荷を加えていくためプログラムに移行する前にチェックすべき項目があります。


回復期への移行に必要なチェック項目


【歩行】・【ストレッチ】・【MMT4】


上記に項目全てで疼痛(ー)で回復期へ移行します。

回復期に入ると部分的に野球動作練習も可能となります。


【キャッチボール】・【トスバッティング】・【フィールディング】


段階的な方法として、負荷の少ない自動運動からスタートし、徐々に運動範囲や抵抗量を増やしていきます。


◎ ヒップリフト

◎ 浅屈曲位でのヒップリフト
◎ 片脚ヒップリフト+下肢挙上
◎ 片脚ヒップリフト+上下肢挙上


これらのエクササイズが痛みなく可能になるにつれて、伸張痛を確認し消失次第ストレッチの開始→ハムストリングスがより伸張されるポジションでの遠心性収縮エクササイズへと段階的に進めていきます。


◎ ストレッチ
ストレッチはハムストリングスの柔軟性の改善は再発予防のためにも重要な要素の1つです。
ストレッチが可能→患部主体のトレーニングを加えていく。


☆ 臀部ストレッチ・ハムストリングスストレッチ+股関節回旋ストレッチ
☆ SLRから収縮ex
☆ 求心性収縮ex
☆ 角度を変えての抵抗運動
☆ 抵抗運動 下腿内旋・外旋位・中間位

どの部位で圧痛が生じるのか?
どの範囲で伸張痛があるのか?
どの角度で収縮時痛があるのか? 

を、確認しながら行ってください。


この時期には肉離れの再発を予防することが重要です。
患部をかばうことで生じる体幹部のバランス不良や股関節の可動域制限などを評価しながら行っていきます。


荷重系のトレーニングは状態に応じて開始し、受傷しやすい筋の遠心性収縮能力の向上を図ることが重要となります。(※スクワットやランジなど)


以下の動画では立位で行っていますが、kneelingから開始し、疼痛の有無や異常運動なくできることで立位へとポジションを変えて行っていきます。


◎ グッドモーニング2種目(ハムストリングス近位の遠心性収縮トレーニング)

◎ 片脚デッドリフト
◎ 片脚リーチ

復帰基準

ストレッチ開始

筋の伸張痛が消失次第開始

筋収縮開始

受傷直後に伴う疼痛と筋緊張低下の改善後、等尺性収縮から開始する。収縮改善に合わせて徐々に求心性、遠心性収縮の順に変更していく。
一般的に伸張痛消失よりも軽負荷の収縮時痛消失の方が早いことが多いため、筋収縮は可及的早期に開始していきます。

ジョグ開始基準

・圧痛・伸張時痛・収縮時痛がないこと
・筋力や柔軟性テストで疼痛がないこと
・左右で柔軟性に差がないこと(SLR testなど)
・片脚ホップ・スクワット動作ができること(疼痛なし)
・片脚Calf raiseができること

ジョグ開始初期に関してはハムストリングスの負荷を考慮したうえで、オーバーストライドでの動作にならないように指導すべきであると思います。

スイング開始までの流れ

セルフストレッチ

クッションの高さを変えて徐々に大きく伸ばしていきます。
伸張された状態で深呼吸を行うことや、側屈運動を行うのもいいと思います。

に62

疼痛部位・伸張痛の度合いに応じて動かす角度・強度を変えていきましょう。
バランスボールを使用する際は、骨盤・体幹を動かしながら収縮・弛緩を意識できるといいです。

骨盤の固定性

◎ ドローイン

◎ 骨盤固定位での下肢挙上

◎上下方向のスイング

◎左右方向のスイング

◎ デッドバグ

◎ サイドSLR

◎ フロントブリッジ+下肢挙上

回旋可動性(柔軟性)

に64

◎ 腹部伸展
◎ 側屈
◎ 回旋

腹斜筋トレーニング

に65

協調性トレーニング

◎ スプリットローテーション

アスレティックリハビリテーション

アスレティックリハビリテーションの目標

に66

ハムストリングス損傷の目標

ハムストリングス の損傷では主に、遠心性の活動を高めスプリント動作や加速減速動作時のハムストリングスの機能改善を目指します。
【走塁動作の再獲得】・【フィールディング動作の再獲得】・【投球動作の再獲得】

腹斜筋損傷の目標

腹斜筋損傷では、回旋運動時の動作速度や耐久性の改善、ステップ足の強化を目指します。
【バッティング動作の再獲得】・【投球動作の再獲得】

ハムストリングスのアスレティックリハビリテーションプログラム

①筋耐久性

競技復帰後に再受傷しないためには、筋の耐久性を向上させることが必要です。
受傷後のW-Trでは1RMの50%強度から開始し85%強度での運動を反復的に行えれば復帰させています。


※筋負荷を与えた後は回復期間が必要ですので連続して下肢のTrを行わない
 W-Trと同日にスプリントトレーニングを行わないなどの注意が必要です。

(※◇は増田稜輔さんNOTE参照)

◇ヒップスラスト
◇スクワット
◇デッドリフト
◇ブルガリアンスクワット

②スプリント

スプリントトレーニングでは、ストライドが狭いものから段階的に行い、バウンディングまで進めていきます。
ダッシュ強度は、5〜10m程度の短ダッシュから開始します。
距離の短いダッシュではトップスピードに到達しないため比較的早期からトレーニングを開始できます。
ハードルのドリルと並行し進めていきストライドを広げても疼痛が生じなければ15m・20m・25mと走行距離を伸ばします。

◇ハードルハイニー
◇ハードルダッシュ
◇バウンディング

③減速動作

ハムストリングス の復帰には減速動作の獲得は必須です。
減速時に上半身重心が前方に傾斜しないように、踏み込み足の股関節の屈曲安定性、下腿の前傾制御のトレーニングが必要です。

加速場面から減速orストップする際には、目標物に対して、歩幅を狭くし、ステップすることで減速していくことが大切です。


減速orストップ動作には下肢後面筋の活動は必須ですので、減速トレーニングは下肢のW-Trが1RMの75%をクリアした後に開始します。


◇ ランジ
◇ 加速ー減速
◇ 加速ーストップ

④プライオメトリクス

プライオメトリクストレーニングでは筋の瞬発的な活動を高めます。
野球では、短時間に瞬発的なパワーが求められるので伸張ー短縮サイクルの活性化は重要な要素になってきます。
プライオメトリクスでは強い伸張負荷が加わりますのでストレッチ痛の有無の確認や75%以上のウエイトをコントロール出来ているかの確認が必要です。


◇スクワットジャンプ
◇ドロップジャンプ
◇デプスジャンプ

段階的トレーニングプログラム

に67

腹斜筋のアスレティックリハビリテーションプログラム

①筋の耐久性

体幹の回旋は股関節などの下肢機能との協調性も重要となるのでポジションを変えながらトレーニング強度を上げていきます。


◇チューブローテーション
◇フロントランジツイスト
◇ランジツイスト
◇MBスロー

②ステップ足強化

骨盤が開かない、側方へ偏位しないようにコントロールする機能構築していきます。

◇ サイドランジ

③プライオメトリクス


腹斜筋の受傷で多い、非投球側(回旋側)の内腹斜筋は投球やバッティング動作において急激に伸張位から短縮位へ切り替わります。
この切り替えのタイミング、反応速度にズレが生じることで筋へ負荷が加わると考えられます。
メディシンボールなどを利用したプライオメトリクストレーニングを行うことで収縮タイミングを向上を目指します。

◇ MBプライオ

段階的トレーニングプログラム

野球動作との関係 試合復帰までの流れ

回復過程と練習強度

ハムストリングス 、腹斜筋ともに野球動作が開始させるのは炎症症状が消失し筋の活動性が高まってきた回復期から行います。
ハムストリングスでは投球、バッティングは早期から開始出来ますが、守備や走塁は比較的後半から開始します。

に69

腹斜筋では回旋を伴う投球、バッティングは後半から開始し捕球練習や走塁練習は回復期から開始出来ます。


守備練習では、フィールディングは可能ですがスローイング強度を上げるのに時間がかかります。

に70

下記に各野球動作の段階的なプログラムを示します。

投球・バッティング開始基準

に71

スローイングプログラム

に72

ハムストリングスからの復帰ではPhase2:10〜30mから投球を開始していきます。
腹斜筋からの復帰ではPhase1:シャドーやネットスローから開始します。
腹斜筋の場合は、回旋時に疼痛が生じることから慎重に段階を上げていく必要があります。
回旋を代償しながら投球することで肩や肘の障害を引き起こす危険性があります。

バッティングプログラム

に73

ハムストリングス からの復帰では比較的早期よりバッティングが可能です。
バッティング中にハムストリングスに伸張負荷が加わる場面は少ないので疼痛がなければ早期にフリーバッティングを開始します。
腹斜筋では、スローイングプログラム同様に伸張に進める必要があります。

守備復帰プログラム

に74

守備復帰ではハムストリングはフィールディングを慎重に進めます。


左右方向の打球処理時に伸張負荷が加わりやすいので正面の打球処理から開始し、左右方向へは徐々に範囲を広げていきます。
腹斜筋はスローイング強度に注意し進めます。
スローイングプログラムと並行して段階的に投球距離、強度を上げていきます。

走塁復帰プログラム

に75

走塁練習ではハムストリングス は比較的試合復帰直前での開始となります。
特に1塁ベース付近でのプレーに注意しトレーニング強度とスプリント強度と並行し進める必要があります。

腹斜筋では疼痛が生じなければ早期から走塁練習は可能です。

再発予防の身体作り

肉離れが完治し、全体練習や試合に復帰したからと技術練習ばかりになって、身体の機能を維持、向上させないと再発の可能性もあります。
プロ野球選手もリハビリ機関に技術練習以外のトレーニングを行う習慣がつき、復帰後も継続的なトレーニングにより、技術レベルが非常に上がった選手を多くみてきました。「怪我の功名」ではないですが、リハビリ期間で得た習慣を選手に継続してもらうことが重要です。

メニュー提供

アマチュアスポーツの現場でもトレーナーさんを雇用しているところあると思いますが、個人指導までしていただけているところは少ないと思います。
病院に通院している選手や、トレーナーとして現場で出会う怪我をした選手に対しても継続したメニュー提供は重要です。

ストレッチ

大半の選手が全体練習に合流すると技術練習に忙殺されがちです。高校野球の現場でも練習前後の、ストレッチを始めとしたウォームアップやクールダウンに時間をさけているところは多くないと思います。

「肉離れ」からの復帰だけでなく、怪我からの復帰時には必ず、1日の中で、セルフケアの習慣を継続してもらうことが重要です。

漠然と、自宅や空き時間で「ストレッチをしましょう」と指導しただけでは、ほとんど継続してもらえないのが大半です。
ぺーバーで情報提供をするとかYoutube等の動画提供で具体的に、「この動画を見ながら5分でも継続しましょう」というような提案の方が効果的です。


【例その1】

ハムストリングの肉離れだから、下半身だけのストレッチをしましょうでは、不十分ですので、上半身のストレッチも習慣化できるようにしていきましょう。

体幹メニュー

よくリハビリ中に、部活動に参加してもやることがないと訴える選手もいるかと思います。ストレッチも時間をかければ、やることもたくさんありますし、体幹メニューも患部に刺激が入らないメニューもたくさんあります。

そこは、トレーナーさんの腕の見せ所です。同じことを継続させて行うことも重要ですが、時にはバリエーションをつけることも重要です。

普段の練習時でも体幹メニューも継続して、数種目でも行うことが重要です。復帰後も、全体練習で行われていない場合は、個人でも継続して行えるように指導していきましょう。


【例その1】

ウェイトトレーニング

私も多くの野球の現場に携わっていますが、高校生ともなるとウェイトトレーニングは、身体作りや体重増加のために、有用な練習メニューであると考えます。ある野球部では全く行っていないところ、オフシーズンだけのところ、シーズンを通して行うところ等とさまざまかと思います。

特に、ウェイト器具はあるものの、全く行われていない部では、自主練習の時間を技術練習だけに費やすだけではなく、ウェイトトレーニングはじめコンディショニングの時間として行うことも考慮していきましょう。


 ただ、高校生でも目を離すと、トレーナーサイドが充分にやり方を指導したつもりでも、全く違ったやり方となっていることがあるので、要注意です。我々のようにウェイトメニューの動画を作成して共有することも重要かと思います。


※ 今までのNOTEで動画公開種目(ベンチ・スクワット・デッドリフト・ベントオーバー・ダンベルランジ・アームカール)

全くウェイトトレーニングの習慣がないケース

(シーズン中) 週1回程度、火から木あたりに
ベントプレス、スクワット、デッドリフトを10回を3セット程度

(シーズンオフ)週2回程度
1日を上半身メニューを3~5種目を10回×3~5セット、もう1日を下半身メニューを3~5種目を10回×3~5セット

というような提供の仕方も必要かと思います。

小学生や中学生には自重メニューの提供も必要です。


(例その1)


アマチュア選はメニューの提供だけになると回数やセット数を勝手解釈して、行う傾向にありますので、回数やセット数の提示も明確にしましょう。

ランニングメニュー

毎回、ランニングメニューの掲載を行っています。最近、ランニング不要論的な発言をしてくるアマチュア選手もいますが、ランニングの種目もそれぞれ、意図すること、身体への効果もさまざまです。もう一度、そのあたりのこともトレーナーサイドが理解して、現場にあったランニングメニューを提供することも重要です。

スライド1

プライオ&MBメニュー

(※詳細は増田稜輔さんのnote参照)

このあたりも場当たり的に行うのではなく、シーズン中には週1回程度、上半身、下半身に刺激をいれることはもちろんのこと、技術練習につながるように適度に行っていくことも重要です。
シーズンオフであれば、MBの重さを上げたり、回数やセット数、頻度をあげることにより目的を明確にして行っていきましょう。

まとめ

肉離れはハムストリングスや腹斜筋だけではなく、身体の各所で発生します。どうしても、怪我をしていますと、何もせず、練習を見学というケースが多く見受けられます。トレーナーサイドからも今回も「肉離れ」に関しても、病態、原因を理解することも重要ですが、その後もリハビリ中からのメニュー提供しかり、リハビリ終了後にも選手が個人でも継続していけれるメニュー提供も重要です。

そのために事前に、メニューの目的や効果を充分に説明し、リハビリを経験したからこそ、怪我に強く、選手としても一段と上手くなるようにサポートしていきましょう。リハビリこそ、選手が一段と成長するチャンスだと私は思っています。

この情報へのアクセスはメンバーに限定されています。ログインしてください。メンバー登録は下記リンクをクリックしてください。

既存ユーザのログイン

CAPTCHA