みなさんはじめまして。
C-I Baseball4期生の高橋敬亮と申します。
2023年に参加させていただいた臨床コース・インソールコースをきっかけに、現在所属している整形外科クリニックにて理学療法士として勤務しております。
また、2024年からはC-I Baseballが行っているアカデミーにも参加し、現在はトレーナーとして活動させていただいています。
今回、初めてライターとして記事を執筆させていただくこととなりました。
本記事では、私がアカデミーでトレーナーとして活動していく中で学んだ内容について、いくつか紹介させていただこうと思います。
◇PHVA(Peak Height Velocity Age)
PHVAとは

トレーナーとして活動されている方は、トレーニングを行っている中で選手のトレーニング効果の差を感じたりすることはないでしょうか。
特に学生においては、同じ学年でも体の成長速度の個人差があったりすることで悩むこともあるかと思います。
また、性差による違いを感じたりすることもあるのではないでしょうか。
成長期の選手たちを学年で一括りとして同じトレーニングを行うことには大きなリスクを伴うことがあります。
そこで今回皆さんに知っていただきたいのが、世界基準の指標でもあるPHVAです。
PHVAとはPeak Height Velocity Ageの略で、日本語では「最大身長発達量年齢(またはピーク身長速度年齢)」と呼ばれたりしています。
簡単に説明すると、「年間での身長の伸び(率)が最も大きい年齢」のことです。
PHVAは単なる成長の記録ではありません。
FIFAやIOCをはじめとする世界のトップスポーツ機関や、欧米の長期選手育成モデル(LTAD)において、「アスリートの体を怪我から守り、才能を正しく伸ばすための世界共通の基準(グローバルスタンダード)」として広く採用されている指標です。
計算方法はとてもシンプルです。
「身長」「座高」「体重」「生年月日」という基本的なデータを専用の計算ツールに入力するだけで、その選手が現在PHVAの何年前(または何年後)にいるのかを誰でも簡単に割り出すことができます。
海外のスポーツ科学分野で広く使われているMirwald(ミルワルド)らの評価式を用いたExcelシートや、国内のスポーツ医科学サイト等で公開されている「PHVA算定ツール」を活用すれば、数値を打ち込むだけで一瞬で把握が可能です。
(「PHV計算ツール」や「Maturity Offset Calculator」と検索すると、無料で利用できるスプレッドシートやWebツールがいくつか見つかります)
以下のリンクで見ることができます。
BMIとPHVについて|育成年代向け成長のモニタリング|フィジカルフィットネスプロジェクト|指導者|JFA.jpBMIとPHVについてのページです。あなたのBMIや成熟度が分かります。ぜひ計算してみてください。www.jfa.jp
ちなみに「座高」の数値がなくても心配はいりません。
3ヶ月〜半年ごとに身長を計測し、その「年間伸び率(cm /年)」を追っていくだけでもPHVAは十分に把握可能です。
前回の計測時よりも明らかに身長の伸びるペースが加速してきたら「スパート期に入った」、伸びの勢いが最も高まった時期が「PHVA」、そして伸びが落ち着いてきたら「PHVAを通過した」と判断できます。
大切なのは「学年」で判断することではなく、「その選手の成長の波(伸び率)」を見つめることです。
性差と個人差
少し話が逸れましたが、ここで具体的に何歳頃にPHVAを迎えるのかについて話していきます。
一般的には明確な性差が存在します。
女子のPHVA:平均12歳前後
男子のPHVA:平均14歳前後
このように、女子の方が男子よりも約2年早く成長スパートのピークを迎えます。
しかしこれは大まかな目安であり、同性の同学年であってもPHVAを迎える時期には最大で3〜4年程度の個人差が存在すると言われています。
例えば、男子の平均とされている14歳の同じチームの中でも、
・すでにPHVAを通過し、骨格が成熟してきている選手
・まさに今成長のピークを迎えている選手
・これからPHVAを迎える選手
が同じ環境で混在しているというのがリアルな現場の姿です。
その背景を踏まえると同じトレーニングメニューを行っていても、ある選手には負荷が低すぎて効果が出ず、別の選手には過負荷となってしまうリスクが生まれます。
PHVA期の体へのリスク
では、なぜPHVAの時期を把握することが重要なのでしょうか。
その最大の理由は、PHVAの前後はとても怪我をしやすい時期だからです。
筋は作用する骨の長軸方向の長さに応じて最も効果的に働くように、長さと筋緊張が維持されるように最適化されると考えられている。つまり、筋の発育は骨の長さの発育に応じて生じるようである。(中略)その結果、身長最大発育の時期には、相対的に筋の発育が追いついておらず、筋柔軟性の低下やタイトネスの増大が生じ、未成熟で脆弱な骨に強い負荷が生じるリスクが高くなる。
飯田,2018「身体の発育と発達」より引用
このように、PHVA期では「骨の急成長」と「筋肉の発達」の間に大きなタイムラグが生じてしまいます。
骨が先行して伸びるため、筋肉や腱が引き伸ばされ、筋の柔軟性の低下やタイトネスが生じ、結果として骨の付着部や関節に常に強い牽引ストレスがかかります。
スポーツ障害であるオスグッド・シュラッター病やシーバー病も、この牽引ストレスが原因の1つといわれています。
野球では、骨の急成長によって肩甲帯や股関節の柔軟性が低下することで、フォームが崩れてしまい肩や肘に過度な負担が集中します。
これにより、リトルリーガーズショルダーやリトルリーガーズエルボーなどのリスクが最も高まる時期でもあります。
トレーナーや保護者の方が、「選手の体が急に硬くなった」を感じた場合、それは選手がケアを怠っていることが問題ではなく、実はPHVA期特有の生理的な反応である可能性も視野に入れておかなければならないと言えます。
PHVAを基準にしたトレーニングメニューの考え方

学年単位ではなく、選手ごとの成長度合いに合わせて指導内容を変えるために、成長スパート前後の用語と、PHVAを軸とした4つのPhaseに合わせたトレーニングメニューの考え方を知っておく必要があります。

PHVAを基準として選手の発育段階は大きく4つのPhaseに分けることができます。

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