野球現場で使える評価とエクササイズ【ショルダーモビリティテスト】

野球現場で使える評価とエクササイズ【ショルダーモビリティテスト】

今回は、【ショルダーモビリティテスト】から考える肩のエクササイズをご紹介していきます。

投球に必要な肩関節の運動

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投球動作では肩関節・肩甲骨・胸椎の連動した可動性が必要になります。

野球現場では、臨床現場と違い短時間で評価する必要があります。
そのため、各関節の動きをひとつずつ評価している時間はありません。
短時間で複数の要素を評価出来るものを選択する必要があります。

そこで役立つのが【ショルダーモビリティテスト】です。

ショルダーモビリティテストとは

ショルダーモビリティテストとは、肩関節・肩甲骨・胸椎の可動性をいっぺんに評価できるものです。

ショルダーモビリティテスト】
方法:        握り拳を作り、両手が脊柱で近づくように動かす
           評価パターンが2種類ありどちらも行う
評価基準: 両拳間が1つ以内(10cm)なら可動性良好

実際の評価方法の動画↓↓

ショルダーモビリティーテストの2パターンについて

ショルダーモビリティテストには2つのパターンがあります。

一側上肢を
・パターン1 挙上 外旋する方法
・パターン2 伸展 内旋する方法

の2パターンがあります。
どちらか一方ではなく、必ず両パターン評価することが必要です。

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代償動作の把握

評価を行う際は”代償動作”の把握も必須です。
両拳の距離でなく動きの過程も評価していきます。

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よく観察される代償動作
パターン1
・肩甲骨挙上
・肩関節外転位ではなく屈曲位
パターン2
・肩甲骨の過前傾
・上腕骨頭の前方移動

上記のような代償が生じてしまう理由は
関係する肩関節周囲筋の伸張性の低下が考えられます。

パターン1
肩関節挙上 肩甲骨後傾制限
・上腕三頭筋長頭 広背筋
 肩関節下方組織による制限
・大円筋 小円筋
 肩関節後方組織による制限
・大胸筋 小胸筋
 前胸部組織による制限

パターン2
肩関節内旋 肩甲骨内転制限
・棘下筋
 棘下筋による肩関節伸展位での内旋制限
・肩甲骨内転
 肩甲骨位置 菱形筋機能による制限

投球動作との関連

前述してきた肩関節の可動性の低下は、投球障害を引き起こす要因のひとつになります。

ここでは、ショルダーモビリティテストから得られた評価結果から予測することができる不良フォームについて解説していきます。

パターン1 肩関節 屈曲 外転 肩甲骨後傾制限

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肩関節挙上制限や肩甲骨後傾制限は、上腕骨頭の前方偏位を引き起こし、
求心位を保持できず肩関節の過剰外旋を生じさせます。

パターン2 肩関節内旋 肩甲骨内転 制限

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肩甲骨内転制限や肩関節内旋制限は、上腕骨頭の前方位+過剰な水平外転を引き起こし
impingementを生じさせる要因となります。

エクササイズの処方

野球現場では、肩関節の可動性低下に対して
徒手療法ではなくエクササイズを処方することで改善を目指します。

パターン1へのエクササイズ

肩後方組織

棘下筋・小円筋に対するストレッチ
方法:投球側上肢を前外方へ置き
   対側上肢を水平外転させる

前胸部組織

大胸筋に対するストレッチ
方法:投球側上肢を挙上外転位で床につく大胸筋が伸張されるように上肢を水平外転にする。  
 上肢の角度を変化させることで大胸筋の
各線維に対してストレッチを行うことが出来る。

肩下方組織伸張エクササイズ

上腕三頭筋に対するストレッチ
方法:台に肘を屈曲位で位置させる。
肩関節の屈曲と共に臀部を踵方向へ移動させ上腕三頭筋にストレッチを行う。
胸椎の伸展も合わせて行うことでより効果的。

広背筋エクササイズ  

広背筋は骨盤を固定して状態での
側屈や上肢挙上+回旋を加えることで効果的に
エクササイズすることが出来ます。

パターン2へのエクササイズ

肩甲骨内転エクササイズ

肩甲骨内転エクササイズは様々な種類がありますが胸椎の回旋と連動させて行うとより効果的です。

方法:四つ這いの状態で投球側上肢は外転外旋位にし手掌を頭につける。この状態から胸椎を回旋させていく。
※床面に対して平行なラインから上肢のラインが
60°以下である場合は投球障害を引き起こす確率が高いとされています。

肩関節内旋エクササイズ

 内旋制限の主な筋は棘下筋であります。
 棘下筋に対し静的ストレッチ
 による柔軟性獲得は 
 筋出力を減少させる恐れがあります。

 ストレッチするのではなく、
 棘下筋伸張位での
 肩甲骨+胸椎との連動性エクササイズ
 を行うことで
 効果的に柔軟性が向上することが出来ます。

今回は実際に野球現場で使用している評価からエクササイズまでをご紹介しました。
肩関節・肩甲骨・胸椎の可動性評価は、投球動作予測や障害の予防に対して活用することが出来ます。

野球現場では、日々のコンディショニングチェックとして
ショルダーモビリティテスト”は大変活用しやすいものとなっています。
評価するだけでなく、結果からエクササイズ処方まで行うことで、
投球障害を未然に防ぐことが出来ます。

今回ご紹介した内容が野球現場で活躍するセラピストや
今後野球現場に出ていきたいセラピストの方の
お役に立てれば幸いです。