熱中症予防について【トレーナーマニュアルvol.208】

熱中症予防について【トレーナーマニュアルvol.208】

はじめに

すでに梅雨入りもかなり湿度が高くなってきた今日この頃ですが、間もなく高校野球では夏の甲子園に向けた各都道府県での県予選が始まろうとしています(一部の地域を除いて)。

毎年この時期に必ず話題となっているのが「熱中症」です。
せっかく3年間頑張ってきたのに最後の大会で熱中症となり、満足いかないプレーしかできず引退してしまうのは本人もそうですが、サポートしている側としても悲しいですよね。

今年の6月より熱中症対策の強化について法律が改訂されました。

1 熱中症を生ずるおそれのある作業()を行う際に、
 ①「熱中症の自覚症状がある作業者」
 ②「熱中症のおそれがある作業者を見つけた者」
がその旨を報告するための体制(連絡先や担当者)を事業場ごとにあらかじめ定め、関係作業者に対して周知すること

2 熱中症を生ずるおそれのある作業()を行う際に、
 ①作業からの離脱
 ②身体の冷却
 ③必要に応じて医師の診察又は処置を受けさせること
 ④事業場における緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先及び所在地等
など、熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置に関する内容や実施手順を事業場ごとにあらかじめ定め、関係作業者に対して周知すること

※ WBGT(湿球黒球温度)28度又は気温31度以上の作業場において行われる作業で、継続して1時間以上又は1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれるもの

厚生労働省富山労働局HPより引用

このように今回の改訂にあたり対象となるのは、屋外での作業が見込まれるものです。
野球現場についても同程度であると考えられ、対策をしていく必要があります。
熱中症については年々関心が高くなり、熱中症に関する事柄についてはもうすでに社会通念であるという時代に突入し始めていると考えた方がいいと思います。
そのため「知らなかった」は通用しなくなってくると思います。

今回はその熱中症について紹介していきたいと思います。

熱中症とは?

「熱中症」は、高温多湿な環境下において、体内の水分及び塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、循環調節や体温調節などの体内の重要な調整機能が破綻するなどして発症する障害の総称である。

厚生労働省 職場のあんぜんサイト

熱中症には以下の4種類があると言われています。

①熱失神
皮膚血管の拡張と下肢への血液貯留のために血圧が低下、脳血流が減少して起こるもので、めまいや失神(一過性の意識消失)などの症状がみられます。

②熱けいれん
大量に汗をかき、水だけ(あるいは塩分の少ない水)を補給して血液中の塩分濃度が低下したときに起こるもので、痛みをともなう筋けいれん(こむら返りのような状態)がみられます。

③熱疲労
発汗による脱水と皮膚血管の拡張による循環不全の状態であり、脱力感、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気などの症状がみられます。

④熱射病
過度に体温が上昇(40°C以上)して脳機能に異常をきたした状態です。体温調節も働かなくなります。種々の程度の意識障害がみられ、応答が鈍い、言動がおかしいといった状態から進行すると昏睡状態になります。高体温が持続すると脳だけでなく、肝臓、腎臓、肺、心臓などの多臓器障害を併発し、死亡率が高くなります。

JSPO スポーツ活動中の熱中症ガイドブック

①が最も軽症で④が最も重症とされています。
①②は現場で対応し、③④は医療機関への受診が望ましいとされています。

画像
日本救急医学会熱中症分類2015(大塚製薬HPより)

熱中症の選手が目の前にいる場合、まずは意識障害を認めるか否かがわかりやすい判断基準になるのではないでしょうか。
少なくとも意識障害を認めない(JCS=0)場合はⅠ度に留まるため、現場での応急処置となります。

しかしよくよく選手や指導者に話を聞いてみると、

選手or指導者「熱中症にはなったことありません!でも夏場に立ちくらみを感じたことはあります。」
トレーナー「それ熱中症だから!!!」

みたいな会話はよくあります。
つまり熱中症についてこれだけ話題となり気をかけて対策を練るようにはなってきているものの、まだまだ熱中症についての理解は不十分であると言わざるを得ません。

熱中症のメカニズム

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