野球現場起こる外傷対応について【トレーナーマニュアルvol.36】

野球現場起こる外傷対応について【トレーナーマニュアルvol.36】

C-I Baseballの増田稜輔です。
いつもC-I Baseball「トレーナーマニュアル」をご購読頂きありがとうございます。
お陰様で2022年も多くの方にご購読頂いております。
今後も野球トレーナーにとって有益な情報を配信していきますので
よろしくお願い致します。

野球トレーナーとして野球現場で活動するには
トレーニング・コンディショニングや投球障害等の予防・治療ができればいい訳ではありません。
私のように理学療法士は普段、医療機関で勤務しているので
「外傷」に対しての経験が少ないと感じています。
しかし、試合や練習中に起こる「外傷」についても対応する場面があります。
そこで今回は今まで私が経験がした実際のケースをもとに
野球野球現場で起こる「外傷」について解説していきます。
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野球現場で起こる外傷について

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野球はラグビーやアメフトのように激しい衝突が少ないため
比較的「外傷」の発生頻度は低い印象があります。

・野球現場発生する外傷の種類
「外傷」の種類も擦過傷や打撲などがほとんどですが、
時には脳震盪や骨折、肩関節脱臼が発生することもあります。

上記のような外傷が発生したときに、トレーナーとして
対応し試合または練習が継続可能か、中止し医療機関の受診が必要かを判断しなくてはいけません。
そのため外傷への対応方法も少なからず知っておくことが
野球現場では求められます。

各外傷の対応について解説する前に、野球チームへ帯同する際に
やっておくべきことを紹介します。

野球チームトレーナーとしてチームに帯同する際にやっておくべきこと

①基本的な救命法を学んでおく

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万一に備えて、心肺蘇生法やAED(自動体外式除細動器)の使用方法について講習を受けておく必要があります。
実際に野球試合中に、胸部にボールが当たる事故も発生しており
AEDの使用により命が助かったことも報告されています。
現場に関わる以上、遭遇する可能性がありますので、トレーナーとしては必須事項であると考えています。

特に理学療法士はこのような救命法を学ぶ機会が少ないと思うので
各自、受講しておきましょう。

基礎的な救命法については
日本赤十字社にて定期的に開催されており、1日で講習を受けることができますので野球チーム帯同前にチェックしてみてください。
詳細は下記にリンクを添付しております。

救急法|講習の種類|講習について|日本赤十字社www.jrc.or.jp

②近隣の医療機関を確認しておく

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帯同しているチームの近隣に緊急時に受診できる医療機関があるのかを確認しておきます。
現場で対応出来なような外傷が生じた際や医療機関の受診が必要になった際に
対応してくれる医療機関を事前に把握し連絡が取れる状態にしておくことで
スムーズな対応が出来ます。

主に下記の医療機関をリストアップしておくことが必須です。
・整形外科
・眼科
・口腔外科
・総合病院

医療機関へは、トレーナーや指導者から連絡し
怪我の概要や選手の個人情報を伝え、受診可能か問い合わせることが多いです。
また、保護者の方への連絡も忘れずに行うと良いでしょう。

救命法の習得や医療機関への対応は、全スポーツ現場に帯同するトレーナーとして最低限のスキルです。
トレーニングなどの知識だけでなく、このような命に関わることの重要性も理解しておきましょう。

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ここからは実際に経験した、外傷対応の一例をご紹介していきます。

外傷への対応方法

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ここからは実際に経験した、外傷対応の一例をご紹介していきます。
野球現場では。前述した通り接触が少ないスポーツのため
擦過傷、打撲、捻挫、肉離れなどが多いです。

捻挫と肉離れの対応については以前のマニュアルで紹介していますので
詳細についてはそちらをご参照ください。

概要のみご紹介します。

捻挫の対応

捻挫は多く発生する外傷のひとつです。
野球現場ではSALTAPSを基準に受傷がプレーが可能か判断します。
関節運動による痛みや筋の出力低下、荷重が困難な場合は
プレーの中止を判断します。
特に、初回捻挫は痛みが強く出ますので基本的に中止にします。

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固定方法
固定は主にテーピングで行うことが多いです。
捻挫後のテーピング固定では足関節背屈+内反制御の
テーピングが多く紹介させていますが、
前下脛腓靭帯損傷例では背屈位で疼痛が増強する場合もあります。
ストレステストの結果を考慮して、固定よりは良肢位に保つようにすることが重要です。

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詳細については、こちらのnoteをご参照下さい。

肉離れの対応

野球におけるハムストリングスの肉離れは様々な状況で生じます。
主には走塁中や守備の切り返し動作や一歩目の対応時に
受傷することが多いですが
投手の場合には投球中に受傷することもあります。

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肉離れ受傷後は、基本的にプレーの継続を中止し
処置を行うのが望ましいと考えます。
(SALTAPSの項目がクリア出来ないと継続負荷)
理由としては、
野球現場では、適切な損傷部位、損傷状況の判断が困難なこと
野球動作ではハムストリングスや腹斜筋の活動を抑制出来ないこと
パフォーマンスレベルが著しく低下すること
以上のような理由により、監督やコーチの報告し
プレー継続を中止します。

圧迫方法
肉離れの後は、損傷組織周囲の血腫が生じます。
また、筋の伸張短縮によって疼痛が増強するため
圧迫にて、血腫を最小限にし、筋の張力負荷を抑えることが
その後のリハビリテーションへ移行するためには重要です。
血腫が残存してしまうと筋の癒着による、制限が生じ
疼痛も長引きます。

詳細については、こちらのnoteをご参照下さい。

打撲の対応

野球現場でかなりの高確率で対応することになるのが
デッドボールや自打球、打球処理時に起こる打撲です。
特に重篤な外傷ではないですが、発生件数としては多く骨折を伴うケースもあります。

また、試合中に発生することが多いのでの、処置方法と試合に復帰出来るかの判断も求められます。

今回は実際に起きた自打球のケースをもとに解説します。

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受傷シーン:打席中に自打球にて受傷
受傷部位:右膝関節 パテラ下内側部
選手の状態:受傷後、立ち上がれない状態

トレーナーの動き
ベンチで受傷シーンを確認し
選手が立てなくなったの見て監督に確認後グラウンド内へむかいます。
グラウンド内で受傷部位を確認し状態を評価する。

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その場での処置はできないので
選手と話しながら、SALTAPSに従って状態を評価しました。
評価は上の図を参照してください。
骨折の可能性が低いこと、疼痛が徐々に減少し、動作可能だったこと
カウントが2ストラクであり、ツーアウトだったことも踏まえ
選手と監督と話し今回の場合はプレー可能と判断し続行させました。

打席終了後のイニングに処置を行うます。

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