試合前のW-UPについて−チームアップと個人アップでは何をやればいいの?ー【トレーナーマニュアルvol.46】

試合前のW-UPについて−チームアップと個人アップでは何をやればいいの?ー【トレーナーマニュアルvol.46】

C-I Baseballの増田稜輔です。
いつもC-I Baseball「トレーナーマガジン」をご購読頂きありがとうございます。

今回も現場で活躍するトレーナー・これから現場に出たいトレーナーの方に
役に立つ情報をお伝えしていきます。

3月も後半に入り、プロ野球が開幕しアマチュア野球も春季大会が開始され
これからの時期は試合が中心になっていきます。
そんな野球現場から質問を受けました。

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野球現場の指導者の方はW-UPの構成に悩んでいる方が多い印象です。
W-UPの順番や時間配分、どんなメニューを入れればいいのか?
また、最近では選手の自主性を尊重し「個人アップ」を取り入れている
チームも多くあります。
しかし、「個人アップ」では選手が何をしていいのか理解できておらず
時間を持て余しているケースや試合に臨む身体が出来ていないケースが目立ちます。

このようにW-UPの構成については現場指導者も悩みをかかえています。
また、トレーナー側も
最適なW-UPはなにか?
○○はW-UPに入れていいのか?
など悩んでいる声も聞きます。

そこで、今回は「試合前のW-UP」をテーマに
現場から聞かれる疑問について考えていきたいと思います。

W-UPとは

まずはじめに「W-UP」の基礎知識について解説していきます。

W−Upとは
競技やトレーニングに向けて身体的・精神的準備を整えること
パフォーマンス向上や障害を軽減させるために行うものです。

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W-UPを構成するには「目的」を明確にすることが必要になります。
では、「試合前のW-UP」の目的は何になるのでしょうか?

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試合前のW-UPでは
試合中に「最大パフォーマンス」を引き出すために
精神的・身体的な準備運動を行い、パフォーマンス発揮につなげ
そして試合中に起こりうる怪我のリスクを軽減させるために行います。

つまり、野球動作に必要な
精神状態・可動域・筋発揮・連動性・心肺機能を試合に向けて高めていくことが求められます。

①試合に求められる精神状態


試合前の選手の精神状態は
緊張・不安・興奮などの要因により精神的に不安定な状態にあります。
精神的に不安定な状態は自律神経に作用し覚醒状態に変化が生じます。
覚醒状態はパフォーマンスに大きく関わる部分です。

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試合中の選手は適切な覚醒状態にしていくことが必要です。
過度にリラックスしていても覚醒レベルは下がり、過度な緊張状態も覚醒レベルを下げます。
そのため、W-UPをすることで覚醒状態をコントロールし
スムーズに試合に入れるように準備していきます。

②試合に求められる身体的運動

試合では「最大パフォーマンス」の発揮が勝敗に関わる重要な要素になります。

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身体的な準備とは身体に生理学的反応を引き起こすことです。
W-UPを行うことで身体には様々な生理学的反応が起こります、
その主たるものが
身体が温まる=体温・筋温が上昇している状態です。
生理学的反応を引き起こすことで身体は運動に向けて最適な状態を作り出せます。

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W-UPでは筋温を上げるために各運動を行います。
その過程で心拍数の上昇や可動域の拡大も同時に行っていきます。

③怪我のリスクを軽減する

野球の練習中や試合中にに生じる怪我は
肉離れ・捻挫と言った外傷がほとんどです。
肉離れや捻挫は外力に対して身体制御が遅延することで発症します。
これはウォームアップの段階から準備できてないから起こる
可動性や筋の反応速度の問題であると考えられます。

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多くのチームを見ているとW-UPの中で
瞬発系の要素がダッシュのみであるチームが多い印象です。
野球では走るだけでなく、減速するや方向転換、ジャンプなどの
動作も入っています。
W-UPでは試合でのパフォーマンスを想定した
スピードや強度で行うことが必要になっていきます。
ここのギャップが生じていると怪我を引き起こす原因となります。

上記の内容が一般的なW-UPの概要になります。
詳しくはこちらの記事に書いてありますので参考にしてください

ここからは指導者・トレーナーからよく聞かれる内容について
考えていきます。

試合までの時間の流れについて

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練習と試合前のW-UPでの大きな違いは時間の使い方です。
試合前は試合開始時間は決まっており、定刻に合わせて身体を作っていく必要があります。
W-UPを担当するトレーナーは時間配分を考えながら進行していくことが重要です。

ここでは一般的な試合前の流れを解説します。

第1試合の場合

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第1試合の場合は球場到着後、着替えてすぐに「球場内」でW-UPが出来ます。試合開始時刻も明確なためアップ時間もコントロールしやすく
スムーズに試合に入ることが出来ます。
個人アップ・チームアップの時間は選手の状態や疲労度、気温等も
考慮しながら20〜30分の幅でコントロールしていきます。

第2試合以降の場合

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W-UPのコントロールが難しいのが2試合目以降の場合です。
前の試合の進行状況によりW-UPの時間やタイミングが変動します。
トレーナーは流動的に対応し選手の身体の状態を作っていきます。
基本的には5回終了を目安に前後に個人アップの時間を設けながら調整します。
あまりにもアップのタイミングが早いと、筋温や体温が低下する可能があるので注意しましょう。
また、2試合目以降の場合はグラウンドin後も10分間のチームアップ時間があります。
なので、球場の外でやるアップと球場内でのアップで何もすべきなのかを
明確にすることが重要です。
誤っても重複するメニュー構成にならないように注意し、疲労度も考慮していきます。

試合前と練習ではW-UPメニューは違うのか?

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指導者やトレーナーの方から多く質問させるのがこちらのテーマです。
「試合前と練習でのW-UPは変えているのか?」

悩む方も多いと思います。
みなさんはどのようにしていますか?

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私は「変えないメニューと変えているメニュー」があります。
基本的にはメニュー構成は変えません。
試合前だからっといって特別なメニューを追加することはなく
「いつもやっているメニューを継続してやる」がベースになっています。

試合前に新しいメニューを入れるのは
慣れない動きのため選手のコンディションを下げる可能性が高いです。
なので、普段のメニューをそのまま試合前にも行います。

ただ、試合前と練習ではW-UPの捉え方は少し違っていると考えます。

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試合前のW-UPでは、試合で「パフォーマンス発揮」するために行います。
練習前も同様なのですが、プラスしてチームや個人の課題を改善・向上させるためのメニューを組み込んでいることがあります。

なので、「メニュー構成は基本的に同じ」ですが
課題改善のためのメニューは試合前には行いません。
そういった意味でメニューを変える部分があるとお伝えしました。
イメージとしては練習前に行っているW-UPメニューから
いくつかピックアップして試合前W-UPを構成しています。

試合前は疲労度やコンディション状態を考慮しつつ、最大パフォーマンスが発揮できるようにW-UPを構成していきます。
なので、量やテンポ・スピードなどを変化させます。

まとめると
W-UPのメニュー構成は野球でのパフォーマンス発揮ができるための
プログラムを構成し
練習前ではプラスして課題となっている事柄に対してのメニューを入れる
試合では、ベースとなるメニューは変化させずに、量やテンポ・スピードを変化させることを私は行っています。

試合前のチームアップメニュー

試合前のチームアップは約30分間で構成していきます。
そのため練習で行うような有酸素運動(ランニング等)のメニューを省くケースが多いです。
そのため、筋温・体温、心拍数をどう上げていくかがポイントになってきます。

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①可動性メニュー(10分間)

可動性メニューでは野球に必要となる各関節や筋肉に対して行っていきます。
主に動的なメニューを中心に構成し、関節可動域の拡大と筋の伸張性の向上
そして筋の収縮を利用することで筋温・体温を上昇させていきます。

可動性メニューは大きい筋がある下肢から開始していきます。
下肢から開始することで下肢の筋ポンプ作用により
血流の循環を維持し筋温を上昇させます。

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