野球選手のための前鋸筋トレーニング【トレーナーマニュアルvol.72】

野球選手のための前鋸筋トレーニング【トレーナーマニュアルvol.72】

C-I Baseball 記事【臨床編】で投球障害についての記事を担当しております新海 貴史です。

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普段は整形外科クリニックで投球障害の選手のリハビリテーションを行い、競技復帰をサポートしております。私の記事では臨床目線でお話させていただければと思います。

トレーナーマニュアルの概要は以下をご覧下さい!

https://note.com/embed/notes/n204ce7eb792b 

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今回の記事では野球選手のための前鋸筋トレーニングについて私なりの意見も交えながらご説明できればと思います。
最後までお読みいただけると幸いです。

初めに

今回の記事では野球選手のための前鋸筋トレーニングについて、投球動作との関連やパフォーマンスアップという観点で解説していきたいと思います。

前鋸筋の解剖学

まずは前鋸筋の解剖学について簡単に説明していきます。
前鋸筋の筋束は大きく3つに分類されています。

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前鋸筋の3つの筋束

上部筋束:第1, 2肋骨→肩甲骨上角 【肩甲骨下方回旋・前傾】
中部筋束:第2, 3肋骨→肩甲骨内側縁
肩甲骨外転】
下部筋束:第4肋骨以下→肩甲骨下角【肩甲骨外転・上方回旋】

またそれぞれの筋束は他の隣接した筋群と連結しています。

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上部筋束の筋連結
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中部筋束の筋連結
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下部筋束の筋連結

上部筋束:肩甲挙筋と連結
中部筋束:大・小菱形筋と連結
下部筋束:大菱形筋、外腹斜筋と連結

トレーナーやセラピストの方で徒手的に介入をする場合は、これらの筋連結を考慮したアプローチをすると効果的かと思います。具体的なアプローチはここでは割愛します。

投球障害と前鋸筋

前鋸筋は投球障害やパフォーマンスの観点からさまざまな報告がされています。

アライメントに関してですが、
前鋸筋の機能不全があると肩甲骨内側縁の突出(winging)が生じることは有名かと思います。
またそのような状態では肩甲骨は胸郭に対して不安定な状態になりますので腱板機能も発揮しにくい環境となります。

・腱板機能を十分に発揮するためには肩甲骨を胸郭に固定する必要がある.
 肩甲骨が胸郭上に固定されなければ二次的に腱板機能も阻害されてしまう.
・肩甲骨の固定性が低下すると、肩関節挙上時の上方回旋が減少し肩甲上腕リズムを乱す要因となる.

高村隆:投球障害の運動療法.臨床スポーツ医学臨時増刊号 野球の医学,2015

肩甲骨のwinging➡︎内旋角度増加はインターナルインピンジメントを引き起こす可能性も高くなります。

野球選手の肩甲骨内方回旋角度が増加している場合、あるいは上方回旋角度が減少している場合には、インターナルインピンジメントによる腱板損傷や関節唇損傷の危険性が高くなるため注意が必要である.

三幡輝久:屍体肩バイオメカニクス研究からみた投球障害肩:
インターナルインピンジメントに影響を及ぼす肩関節コンディション.
Orthopaedics投球障害肩の診療-予防・治療・復帰-,2017

投球時の肩関節痛を有する選手では肩甲骨の安定性低下を認める場合が有意に多かったという報告もあります。

大学野球部の新入生を対象としたメディカルチェックにおいて、投球障害肩・肘を有する選手の身体機能を比較検討したところ、肩痛あり群は肩痛なし群と比較して、EPT(Elbow Push Test)の陽性者が有意に多かった.

安本慎也, 他.:大学野球選手に対するメディカルチェック―身体機能と肩肘の痛みとの関連―
日本整形外科スポーツ医学会雑誌, 2022

EPTは肩関節の安定性を評価するテストになりますが方法については次項で説明します。

このように前鋸筋の機能低下が生じている選手は肩関節痛を引き起こしやすい可能性があることが分かります。

投球動作と前鋸筋

投球動作の中ではレイトコッキング(ステップ足の着地から最大外旋まで)で高い筋活動を認めることが報告されています。

前鋸筋はレイトコッキング期において高い遠心性筋活動を認める.

橘内基純,他:投球動作における肩甲骨周囲筋群の筋活動特性.スポーツ科学研究,2011

またレイトコッキングにおけるテイクバックで肩甲骨が内転した状態から腕を振り出す際に肩甲骨は上方回旋&外転の動きが生じますがそのフェーズで前鋸筋が強く働きます。
ここで前鋸筋がしっかりと働いてくれることによって、リリースまで十分な加速距離を生み出すことができます。

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前鋸筋機能の評価

ここからは選手に実際に行う評価になります。
誰でも実施可能で簡易なテストをご紹介しますのでぜひやってみて下さい。

◉上肢挙上位での出力テスト
臨床で投球障害の野球選手を評価してみるとこのテストが陽性になる場合がほとんどです。
肩関節の状態把握や復帰の際の基準として重要視しています。

・肩関節屈曲約120°とし、肩甲骨が上方回旋・後傾したポジションをとります。
・前腕もしくは上腕に抵抗をかけてこの姿勢を保持してもらいます。
・肩甲骨のwingingや肩挙上位が保てなければ陽性と判断します。

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