育成年代のトレーニングvol.5敏捷性Ⅱ【トレーナーマニュアルvol.81】

育成年代のトレーニングvol.5敏捷性Ⅱ【トレーナーマニュアルvol.81】

いつもお読みいただきありがとうございます。
C-I Baseballの佐藤康です。

私の前回の記事では”敏捷性”をテーマに
概論を踏まえた内容をお伝えしてきました。

敏捷性を構成する要素は大きく分けて、「認知・感覚系の機能+フィジカル要素」であり、敏捷性を向上するためには、両者の側面を組み込んだプログラムが必要であることをお伝えしてきました。

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参考:アスレティック・ムーブメント・スキル

★前回の記事はコチラ

今回はこれらの内容を踏まえたうえで、グラウンドで実際に行う実践的な内容に触れていきたいと思います。

育成年代に実践する敏捷性

はじめに、育成年代選手に対する敏捷性の強化としてプログラムを構成する背景をまとめていきます。

前回の記事でもお伝えしたように敏捷性を構成する要素には、状況を判断したり、その判断する意思決定を瞬時に行う反応時間の短縮など、認知機能の向上が求められます。

加えて、その判断から方向転換するためのスピードや筋力、動的な安定性などの体力的な要素を向上する必要があります。

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育成年代を対象とした敏捷性の課題を実践する上で、ゲーム形式にしたプログラムをよく実践することがあります。

これには、敏捷性の基礎を構築する上で
・楽しくできること(意欲的)
・競争心を高く持てること(最大努力)
・方向転換の課題(運動要素)

これらに対しどのように向上させるかを理解させることを促すために重要であると捉えています。

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プログラムには”意思決定”と”環境適応”の側面を組み込むことが重要

方向転換動作に重要な「減速」

野球の競技動作として求められる敏捷性要素の一つに減速が挙げられます。
打球にチャージした後のスローイングや走塁における「方向転換動作」はパフォーマンスを決定する重要な要素といえます。

方向転換のスピードを上げる、スムーズに行うためには減速-方向転換-加速の動作を無駄なく、スピーディーにできる効率的な動きが求められます。図式化したように「減速後の加速」は重要です。

そのため、ここからは「減速」にフォーカスして話を進めていきます。

ここから先は有料部分です

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▶「減速」をつくる要素

①姿勢・重心

まず重心の前方運動量を減速しスピードを落とすため、重心を支持基底面内に抑え、安定した姿勢をとれることが必要となります。
いわゆるパワーポジションやヒンジ動作の獲得などが当てはまります。

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重心を支持基底面の中心に維持する

★ヒンジ動作の構築はコチラ
トレーニング方法まで詳しくわかりやすくまとめられております!

上図でご紹介したパワーポジションにもあるように、地面に力を加えるための姿勢を確立できることで、大きな床反力を利用することにつながります。

方向転換の遅い動作例では、下肢関節の屈曲が浅く、不十分であることが挙げられます。重心位置が高いために不安定な停止となり、切り返しのスピードにも遅く、非効率な動作を生じやすくなります。

➁着地動作

下図にも示しておりますが、適切な減速・方向転換につなげるためには、効率的に前方の運動量を減速できる動作が必要となります。

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接地動作:大きな床反力・伸張性収縮の力を生み出すために下肢後方筋群の機能が重要

※補足
・減速して停止するのか?
・減速後、(停止/方向転換にて)加速するのか?
停止後の動作により、重心位置の目標は異なります。

重心は低ければ低いほど安定するため、停止するのであれば低い姿勢での動作が求められます。反対に、加速に向けた動きにつなげるためには、重心は”ある程度”高い方がいいと考えられます。

これは、明確な位置は運動学習により習得していくものであると捉えており、ここにすべき!という位置はありません。ドリルなどの課題を通し、自分の”ちょうどいい”方向転換の位置や動作を探ることにつながります。

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グラウンドでの実践例

ここまでまとめてきたことを前提に、グラウンドレベルでどのように実践していくか考えていきます。

敏捷性向上を目的としたドリルをこなすことも一つですが、ゲーム感覚が強くなりすぎたり、本来の目的を逸脱してしまうような動きもみられやすいことから、アシストトレーニングをドリル前(set間など)に取り入れ、設定した目的を達成できるよう取り組んでいきます。

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下記スライドにもあるようにスタート位置から設定した目標物に向け、できるだけ素早く加速し、その後の停止に要する動作・距離をチェックしていきます。

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ストップラインまでの加速が高ければ高い程、素早い減速が求められるため、前方運動量を減速させるより大きな伸張性収縮が要求されます。

<ドリル実践時の注意事項>
▶選手が加速ラインをできるだけ速く走っていること,
▶コーンを越えると同時に減速しはじめること

ジュニア・育成年代に取り入れる際は、競争させる要素も組み込み、課題に対して最大努力できる環境をつくるようにします。
(一番に線を越えられる選手は?停止までの距離を短くしクリアできるか?など)

また、ドリルをやみくもに進めるのではなく、課題達成に向けた効率的な動作の獲得を求めていきます。すなわち、減速・方向転換動作のブレーキングに重要となる下肢後方筋群(前後方向)・内側筋群(側方)の収縮を入れたアシストトレーニングを取り入れていきます。

★前後方向の減速・方向転換

★アシストトレーニング


側方の減速・方向転換

★アシストトレーニング

素早く方向転換スキルを発揮するには、身体位置を爆発的かつ効果的に変化させるために、伸張性の力を制御し、反射的な短縮性収縮を生み出す高いレベルの反射筋力およびプライオメトリック能力が要求される。

アスレティック・ムーブメント・スキルより引用

難易度を高める上での注意点

ドリル難易度を上げる一つの基準としては適切な動作の獲得ができ、効果的に停止できるようになったら進めていきます。

現場でよくWarm-upやドリルで用いる視覚的/聴覚的の指示に反応した停止(方向転換)を挙げます。

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どのタイミングで動作を切り替えるかの意思決定を視覚や聴覚刺激による外的刺激により変化させることができる反面、難易度を上げることが難しく、課題に対し選手の能力がどのくらい向上したかを客観的に判断すること難しいと言えます。

実際、競技場面ではフィールディングや走塁に置き換えると、打球スピードや守備位置・野手の動きなどの状況判断による意思決定により、必要とされる能力といえます。

可能な限り、実際の競技場面を想定した環境設定が望ましいですが、トレーニング環境で要求する限界もあり、私自身もまだまだ試行錯誤している部分です。

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遊び≠トレーニング

上記に挙げたような、プログラムを実践する上で一見遊びに見えるようなことがあります。選手に”遊び感”が強くなりすぎてしまったり、休息の管理が不十分であると、プログラム自体が間延びしてしまい、野球のために行う意識は薄れやすいと感じています。

そのため、実践する動きと休息を設定し、休息間にトレーニング時の自分の目標を自己設定したりする時間に充てるよう心がけ、伝えています。

先述したように、遊びと切り離して伝える上で、次のトレーニングの準備にアシストトレーニングを実践したりするなど実践しています。

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2回にわたり、敏捷性をテーマにお伝えしてきました。
試行錯誤な点もございますが、ご参考いただけたら幸いです。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました!

参考文献

1 アスレティック・ムーブメント・スキル:NAP limited
2 アスレティックスキルモデル:金子書房
3 広瀬統一ら:骨齢と暦年齢でみた成長期サッカー選手の反応時間とステ ッピング能力の横断的変化.体力科学(2002)
4 矢野琢也ら:ジュニアアスリートに対するスピード・反応・バランス能力を高める運動プログラム及び評価指標に関する研究

ライター紹介

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