投球障害へのピラティスメソッドの活用③ー胸郭編ー【トレーナーマニュアルvol.150】

投球障害へのピラティスメソッドの活用③ー胸郭編ー【トレーナーマニュアルvol.150】

はじめに

C−I Baseball2期生の戸高です。
今回の配信はサポートメンバーシリーズとなります。

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私が配信する内容としては「ピラティス【pilates】」というメソッド1つのツールとして投球障害の治療、予防、パフォーマンスの向上にどう活かしていくかに焦点をあてて、3記事にわたり解説していきたいと思います。

投球障害へのピラティスメソッドの活用①
-呼吸編-
投球障害へのピラティスメソッドの活用②
‐腹腔内圧編‐
投球障害へのピラティスメソッドの活用③
‐胸郭編‐

ーこれまでの記事ー

胸郭(thoracic)

胸郭とは

投球動作において『胸郭』は重要な部位になります。
投球時の胸郭の役割の前に解剖学や運動学をおさらいしたいと思います。

胸郭とは12椎体の胸椎、12対の肋骨、胸骨から構成されるかご上の骨格になります。
解剖的な役割としては内臓の保護になります。

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joint by joint theoryから紐解く

Joint by Joint Theory から胸郭をみると可動性の関節になるので胸郭は可動性が求められる関節になります。
脊柱の可動性を見ている研究でも腰椎は伸展15、回旋5度で、胸椎は伸展20-25度、回旋30度と脊柱の中でも可動域に置いて胸椎の果たす役割は大きいです。
したがって胸郭は可動性が重要な場所になります。

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胸郭の運動

胸郭の運動に関与する関節は以下の3つになります。

胸郭を構成する関節
・胸肋関節
・肋椎関節
・胸椎椎間関節

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また胸郭は3つのパートに分類されます。

上位胸郭:胸骨柄と第1,2肋骨、第1,2胸椎
中位胸郭:胸骨と第3−6肋骨、第2胸椎の下半分から第6胸椎の上半分
下位胸郭:胸骨と第7‐10肋骨、第6胸椎の下半分から第10胸椎

そのパートによって肋椎関節の角度が異なっており、上位・中位胸郭では前額面に対し約25~35度、下位胸郭では前額面に対し約35~45度と下位胸郭のほうが開いているという違いがあります。

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そのため上位胸郭、中位胸郭は前後径方向、下位胸郭では横径方向に優位に動くとされています。
実際の運動イメージをよりわかりやすくすると、上位胸郭、中位胸郭は先程もいったように運動軸が前額面に近いため上位肋骨はポンプのハンドルように動いて、前後方向への動きが大きくなります。

下位胸郭は運動軸が矢状面に近いため下位肋骨はバケツのハンドルのように横径方向に大きく動きます。
それぞれ、pump handle motionbucket handle motionというふうに言われています。

これが、関節の特徴による動きの違いになります。横に広がる動きは下位胸郭の得意な動きになります。

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投球動作時の胸郭

投球動作ではよく胸郭と骨盤の捻転差分離運動が重要ということは言われています。

実際、右投げの場合、フットコンタクトから骨盤、胸郭の左回旋が開始されていきます。

Foot contactまでは骨盤の回旋が胸郭に先行していき、MERを迎える局面では胸郭の回旋が骨盤の回旋に追いついたあと、BRまでの間に胸郭は骨盤より回旋することが報告されている。

これから紐解くと捻転差というのは、骨盤に対して胸郭が遅れて回旋していくことで捻転であったり、分離運動が起こってきます。
また骨盤の回旋が胸郭よりも先に起こりますが、総可動域では胸郭は骨盤よりお大きな回旋可動域が必要になります。

胸郭としては回旋の可動域が重要です。

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足底接地からMERでの胸郭

足底接地、フットコンタクトから肩最大外旋MERまでは胸郭は伸展と、右回旋が起こるということが言われています。

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※右投手の場合

このフェーズで重要な点はトータルエクスターナルローテーション(TER)です。

・Total external rotation
投球中の肩外旋は肩甲上腕関節の外旋だけでなく、肩甲胸郭関節の後傾・上方回旋、脊柱伸展、股関節伸展などの総和というコンセプト

TERが最大となった瞬間をMERとしています。
にMERで肩甲胸郭関節・胸椎・股関節の問題が過剰なGHの外旋に繋がり、上肢の障害では問題視すべき点であると考えています。

胸郭の動きとしては右投手の場合は左側屈と右回旋、右の肋骨が後方回旋し左の肋骨が前方回旋する動きが重要になってきます。

投球動作においては左右の肋骨の分離した動きも重要だと考えています。

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ボールリリースからフォロースルーでの胸郭

ボールリリースからフォロースルーにかけては胸郭の屈曲左回旋が起こると言われています。

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このフェーズでは体重と同等の牽引ストレスが肩にかかるとされており、肩の障害のリスク因子になります。
胸郭や股関節動き、肩甲帯機能でこのストレスを分散させることがこのフェーズでは大事になります。

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胸郭の動きは先程もあったように屈曲と左回旋、右肋骨の前方回旋、左肋骨の後方回旋になります。
胸郭の動きとしては右投手の場合、右回旋が問題として扱われることが多いかと思いますが、このフェーズの動きに着目すると、左回旋も重要になるので、評価やアプローチを行う際は左右どちらもチェックする必要があります。

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胸郭の可動性を高めるピラティスムーブメント

今回は胸郭の可動性を高めるピラティスムーブメントを紹介したいと思います。
前述したように胸郭は屈曲・伸展だけの動きではなく、左右の肋骨の分離した動きも重要になります。

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ピラティスのムーブメントを行う際は3つの基本動作を意識して行うことでエクサイズの質を高めることができます。

Head Roll-up:ヘッドロールアップ

このムーブメントは胸郭の屈曲を促していく動きです。
屈曲系のムーブメントではリブフレアの改善にも効果的で、屈曲していく際にしっかりと息を吐き肋骨を内旋させることが重要です。

また背骨の分節的な動きを意識することが重要で、エロンゲーションさせながら背骨を1つずつ動かす意識を持つようにしていきます。
戻るときは腹筋群の遠心性で戻る意識も腹圧が抜けないためには重要になります。

Chest Opener:チェストオープナー

ピラティスボールを使ったムーブメントで胸椎胸郭の伸展も加わった動きになります。
このムーブメントでは胸椎の伸展をしっかり出してくのが大事で腰椎での代償動作は起こらないよう注意します。

また肘を床に近づけていくことで大胸筋をしっかりストレッチかけることができるので、ケアとしても使えるかと思います。
先程のヘッドロールアップと同様に生きをしっかり吐くことやエロンゲーションは意識すべきポイントです。

Bow&Allow:ボウ&アロウ

このムーブメントは回旋系でよく行っていると思います。
よくされるのは開いていく方だと思いますが、このムーブメントでは前に突き出す動きを入れてから回旋していきます。

このときの肋骨の動きは左手が上なので、手を前に突き出すときは右回旋で、開いていくときは左回旋の動きになります。
前に突き出したときは左肋骨は前方回旋で、開いて行くに連れて後方回旋していくといった動きになります。どちらの動きも重要なので肋骨の動きまで把握できると重要さがわかるかと思います。

Feel Good Arms Circles:フィールグッドアームズサークルズ

Bow&Allowとほぼ動きは同じですが上肢で円を描くように胸郭をコントロールしていくムーブメントです。
回旋していく際に、しっかりと手は遠くに伸ばしながら行うことをより意識していおります。

Thread The Needle:スレッドザニードル

このムーブメントは四つん這いでの胸椎回旋系の動きになります。
四つん這いでは肩甲帯の安定性も必要になり、回旋していくときにしっかりと床を押し前鋸筋を入れた状態で押しながら回旋すると安定性+可動性の使い方を獲得できると思います。

Seated Mermaid:シーテッドマーメイド

座位での胸郭系ムーブメントです。
フォロースルーの動きに近い動作になります。
手を置く位置も重要で、自分がしっかりと押しやすいところにポジションを取ります。しっかりと地面を押して、その力を回旋に活かしていきます。

まとめ

今回は投球動作における胸郭の動きとそれらを獲得するピラティスムーブメントを紹介しました。

胸郭の可動性において、肋骨の左右の分離まで考えることで普段のエクササイズの考え方も変わってくるかと思います。
普段のエクササイズにピラティスの要素を付け足すだけでも質があがり効果がより感じられることがありますのでぜひご活用ください。

最後までありがとうございました。

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