C-I baseballの復帰プログラム‐担当する増田です。
今回の内容は
「成長期下肢障害の復帰プログラム」
についてまとめています。
成長期障害から復帰に向けてどのような関わり方をしていくのか?
どのようにトレーニングしていくのか?
アスレティックリハビリテーションまでの流れについてまとめていきます。
野球における成長期下肢障害
成長期における野球障害では
野球肘を代表とする肩・肘関節の投球障害が最も多いですが
次いで多いのが下肢の障害です。
”肩・肘”のように投球障害が注目されがちですが
投球よりも多くの機会で使用するのが下肢です。
しかし、下肢の障害は「成長痛」だからと
放置されてしまうことが多いです。
疼痛が出現しても一時期安静にしてまた競技を再開するケースがあり
結果的に疼痛を繰り返すことや症状が重度になってしまうケースがあります。
成長期の下肢障害は早期に対応し
段階的に介入することで競技復帰が可能となる障害です。
投球障害同様に下肢障害についても
段階的なトレーニングを行い復帰をサポートしていきましょう。
段階的な復帰プログラムの解説をする前に
成長期下肢障害についてもう一度復習しましょう。
野球における代表的な成長期下肢障害
下肢障害で多く経験するものが下肢障害が下記の3つです。
①オスグッド・シュラッター病
②シンスプリント
③シーバー病
詳しい病態については
「下肢障害に対する病態・動作」を参照ください。
ここからはなぜ成長期という時期に
障害が起こりやすいのか
身体的な面と環境面を踏まえて
解説していきます。
成長期ってなに?
まず、成長期の障害を解説していくには
“成長期”について知っておく必要があります。
そもそも成長期って具体的にいつなのか?
人の成長過程では、2回急激な身体変化が起こります。
そのうちの2回目の急激な変化を二次性徴期と言います。
二次性徴期
成長期とは主に二次性徴期を指すことが多いです。
この時期は身長が1年で10cmも伸びるなど
急激な身体変化が起こります。
この成長期の時期に骨格・筋が急激に発達します
一般的に成長期とは
男子13歳頃
女子11歳頃
と言われていますが、
ご承知の通り発達には個人差がかなりあり、
個々の発達状況を把握する必要があります。
筋・骨格系が発達してくるのは
男子13歳ごろ
女子11歳ごろ
これはあくまでも平均で
ご承知の通り発達には個人差があります!
なんで成長期に障害が起こるのか?
成長期に障害が生じやすのは、もちろん身体発達による
骨格・筋の変化が大きな要因のひとつではありますが
それだけではないと私は考えています。
成長期に障害が生じる原因
①身体発達
②環境や運動習慣の変化
③姿勢・体力・運動能力
上記の3つの要素が関係していると考えています。
①身体発達
前述してるように成長期は
骨格・筋が著しく発達します。
成長過程にある骨は、骨端線、骨端核が存在し骨は非常に脆弱な状態です。
骨よりも付着している靭帯の張力が強いため
骨には牽引ストレスが加わりやすいため
成長期には骨の障害が発生しやすいと言えます。
また、骨量の増加のピークは身長増加のタイミングよりも
遅れるため一時的な骨密度の低下が生じます。
この時期に筋への過度な負荷や
不良フォームでの運動を繰り返すことにより
障害を発生してしまいます。
不良動作や評価については
「成長期下肢障害の評価・アプローチ」
を参考にしてください。
②環境や運動習慣の変化
一般的に成長期と言われる13歳頃に
野球少年に何が起こるかというと
少年野球から中学野球への移行する時期です。
多くの少年野球チームは土日が中心の
活動になります。
しかし、中学生からは
部活動であれば平日+土日の練習
硬式クラブチームに加入する選手でも
平日に練習があったり
ない場合でも他部活に入るなどして
小学生時よりも運動量が増えてしまいます。
このような運動習慣の変化により
筋や骨への過負荷を引き起こすひとつの
要因となります。
だからと言って運動を制限するのではなく
成長に応じて指導者やトレーナーが
負荷量をコントロールする必要があります。
②姿勢・体力・運動能力
近年、子どもの運動能力の低下が叫ばれています。
私自身、クリニックや野球現場で
成長期の選手を診る機会がありますが
私たちの時代と比較して姿勢不良や
運動能力に劣る選手が多くなっている印象です。
スマホやゲーム時間が増えたことによる
不良姿勢の習慣化や
運動機会の減少による
基礎体力不足、運動能力の不足が起きていると考えます。
実際にデータを見ても
握力、立ち幅跳び、ボール投げの項目で
数値の低下が見られています。
※スポーツ庁:平成30年度体力・運動能力調査結果の概要及び報告書について
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/tairyoku/kekka/k_detail/1421920.htm
グラフから解るように
上肢の総合的な筋発揮や
上下肢の連動した動きなどの能力が
低下しています。
実際に下肢障害を発症した選手を診ると
不良姿勢や運動能力の低下がある
選手がほとんどです。
スポーツによって障害が発生するのではなく
日々の習慣や運動の頻度なども
成長期下肢障害には強く関係していると
思います。
成長期下肢障害を引き起こすパターン
オスグッド シンスプリント シーバー病の
3つの成長期下肢障害では
それぞれ発症する部位は違いますが
発症する選手の運動能力には共通する部分があります。
基礎運動能力
①姿勢不良
②しゃがみ込み
③パワーポジション
④片脚立位
前述した4つの基礎運動能力が低下している選手が
過剰な練習や過負荷なトレーニングを行うことにより
成長期の障害を引き起こす可能があります。
成長期の下肢障害を防ぐには
・身体機能面と・練習環境や内容の両面を改善していく必要があります。
野球動作中止基準
成長期下肢障害では症状の感じ方は選手によって様々です。
そのため、選手の主観だけでなく
身体状況や動きを評価して判断していく必要があります。
野球現場での選手対応として、疼痛が一時的なものか
持続的に痛む可能性があるのか判断が重要です。
疼痛を発生させているのが、筋肉?骨?靭帯?なのかを
評価し対応していきます。
筋肉の場合であれば、疲労による一時的なものの可能性もあるので
症状の強さに応じて対応します。
野球動作中止のポイント
・圧痛が強く逃避動作がある
・CKCでの疼痛による運動異常
・パフォーマンスの低下
・日常的な痛み(野球動作以外でも疼痛出現)
成長期の障害は、早期に対応することが大切です。
症状が長期化すると疲労骨折を併発したり
骨が変形した状態で治癒してしまうケースがあります。
持続的に疼痛が生じている選手には医療期間への受診を促し
早期に画像診断を行い状態を把握するようにしましょう。
アスレティックリハビリテーション
アスレティックリハビリテーション目標設定
他の障害同様にメディカルリハビリテーションにて
疼痛や機能が改善した選手の復帰までの”身体機能強化”を行っていきます。
野球動作で求められる動き耐えうる筋機能を構築していきます。
・全力疾走
・切り返し
・ジャンプ
・踏み込み時の衝撃吸収
成人と成長期でのトレーニングの違い
成人のアスレティックリハビリテーション
競技特異性を考慮し動作負荷に耐えうる身体を構築していきます。
野球のおいては最大筋力の向上やスピードを上げた瞬発的なトレーニングを行って行きます。
そのため、自体重の1.5〜2倍の重量負荷を加えながらトレーニングすることで筋の強化を図っていきます。
成長期のアスレティックリハビリテーション
成長期では前述しているように、
骨・関節軟骨に負荷が加わりやすく、負荷に対しての耐久性も低いです。
この時期にパワーアップも目的としたウエイトトレーニングを行ってしまうと障害を誘発する恐れがあります。
しかし、全力疾走やジャンプ場面では、成人同様に高い筋発揮が必要になり
自体重よりも負荷量は上がります。
そのため、成長期であっても筋負荷を加える必要があります。
筋の発達時期から考えても成長期に筋負荷をかけていくことは必要であります。
筋が最も発達する時期は、身長最大発育年齢(男子11〜12歳ごろ)と同時期であるとされています。
この時期に適切な負荷を加えることがその後の運動能力にも影響していくと
考えられます。
※大澤清二:最適な体力トレーニングの開始年齢文部科学省新体力テストデータの解析から:発育発達研究 第 69 号 2015;69:25-35
では、成長期ではどのようにして障害を予防しながら
筋負荷を高めていけば良いのでしょうか?
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